「降伏だと? 馬鹿にしおって! 生きて虜囚の辱めを受けろと言うのか!?」
声優
OVA版:平野正人
新アニメ版:桜井トオル
概要
原作小説『銀河英雄伝説』に登場する、自由惑星同盟側の軍人キャラクターの1人。階級は中将。第6艦隊司令官、旗艦はペルガモン。デザインはOVA版では、中肉中背の体格に短く刈り上げた頭髪。劇場版では、やや筋肉質な体格に威圧感の強い目線に変更される。新アニメ版では、頭髪が借上げたものに変更されたが、他はOVA版と劇場版に中間とも言えるものとなった。
豪胆で粗野な性格の持ち主で、部下の進言は聞き入れず、パエッタと同様にイエスマンを求めるタイプ。ジャン・ロベール・ラップ少佐の上官でもある。特に藤崎竜の漫画版では、自分の意に沿わない進言を繰り返すラップに対して平然と暴力を振るい、「死んだら事故死と処理すればよい」と言い切るなど、敵国のミンチメーカーな装甲擲弾兵総監以上の野蛮人振りである。
アスターテ会戦に参加、同盟軍左翼を担う。しかし、事態の急変と切迫した状況に対して適切に対応できず、後背襲撃を受けた挙句に敵前回頭という無謀な命令を出して大敗、戦死する。
なお、パエッタと違い、第4艦隊に対する危機管理は薄い面があった模様で、パエッタが心理的にも焦りを見せている一方で、ムーアは平然としている。ある意味では、どんな状況下でも肝の据わった人物・・・・・・とも言えないのが現状である(後背からの襲撃で、冷静さを欠いている事を考慮すると)。
手腕
劇中における指揮能力は、小説・OVA・劇場版・新アニメ、どれをとっても有能とは思えないものである。とりわけ、最初で最後のアスターテ会戦では、右側背からの襲撃に対してラップの進言を蹴っての敵前回頭を行うなど、冷静な判断力に欠けるきらいがある模様。
PCゲーム等では、指揮能力としては低くは無いものになっている。彼の性格を考慮してのことか、攻撃に特化した反面、防御は低く設定されるなど、その能力はパストーレ中将に近いものがある。
ただし、銀河英雄伝説タクティクスでは、艦隊指揮官としてトータルで見ても、能力値は低めにしか与えられていないなど、使い所に難しい面がある(討論で強化は出来るため、その低さは解消出来ると思われる)。
経歴
OVA版
アスターテ会戦に登場。第6艦隊1万3000隻を率いて、包囲艦隊の左翼部隊を務める。作戦遂行中、ラップを始めとした幕僚達と昼食をとっているところで、ラップから「第2艦隊との合流」を進言されるも、にべもなく却下してしまい、作戦通りに進めてしまう。
その後、右後背からラインハルト艦隊の襲撃を受けてしまう。第4艦隊との戦闘を放棄したのか、と戸惑いを見せ、ラップから「第4艦隊は敗退したのです!」と忠告される。それに対し「不愉快なことを言うな!」と返し、「現実はもっと不愉快です!」とさらに返される。
慌てて反撃命令を下すが、時すでに遅く、旗艦ペルガモンを直撃弾が襲い、艦橋ごと吹き飛ばされて戦死してしまった。
この会話の流れは、時間の都合上、戦闘開始直後からされているが、実際は開始前に会話がされているものである。後の劇場版は、もっと原作よりに会話の展開が進んでいる。
劇場版
パストーレ同様、出兵式に初登場する。兵力は1万3000隻とOVA版と同様。出陣直前の会議では、ダゴン星域の殲滅船を再現させることから、自信を持って「今回も我が軍の勝利は疑いない!」と豪語している。
しかし、ラインハルト艦隊が第4艦隊と接触するという予想外の行動を見せたことから、現場に急行する方針に変更する。ラップから「兵力を集中すべき」との意見具申を受けるも、ダゴン決戦に固執する彼は、「吾らがラップ少佐は、時の司令官、リン・パオ、ユースフ・トパロウル両元帥に勝る知恵の持ち主らしい!」と豪快に笑い飛ばして聞く耳を持たなかった。
だが、後衛部隊の駆逐艦から4時半の方角に艦影補足の報を受けて、訝しげになる。「どちらの4時半だ? 午前か、午後か!?」と下手な冗談を飛ばしつつ、第4艦隊がまだ持ち堪えている筈だと思い込んでいた故の油断であった。
その後、実際に敵襲を受けると知ると、迎撃しつつ右に回頭するという無謀な命令を発してしまう。ラップは「時計方向に急伸して回り込むべき」との意見を述べるが、冷静さを欠いた彼には受け入れられず、無防備な横腹を晒して大損害を受けた挙句、そのままウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ大将指揮する分艦隊の猛撃を受けて決定的打撃を被ってしまう。
旗艦ペルガモンは、帝国軍戦闘艇ワルキューレの攻撃を受けて戦闘能力を奪われ、大半の見方が散り散りになって孤立してしまう。その中で、包囲されたところに降伏勧告を受けるが、彼の逆鱗普触れる。
「降伏だと? 馬鹿にしよって! 生きて虜囚の辱めを受けろと言うのか!」
ラップからも降伏の受諾を進言されるも、「貴様、命を惜しむか!」と一喝。さらには
「こうなれば玉砕あるのみ、死して武人の魂を敵に見せつけてくれるわ!!」
とさえ言い放った。これにラップも激怒、自己満足の為に兵士を道連れにしようとするムーアこそが卑怯者、と返される。ムーアも強硬な手段に出て、ラップも上官反航罪として拘束させてしまう。
その直後、「全艦、全速!」と号令を発した途端、集中砲火を受けて大破。彼は崩壊する指揮塔から転落死し、そのままペルガモン諸共宇宙の塵となってしまった。
新アニメ版
経緯はほぼ原作並びにOVA・劇場版と同じである。違うとすれば、映像化されたうえでの差異にある。4時半の方角より艦影を捉えた際に、それが帝国軍であるとは信じず、帝国軍は未だに第4艦隊と交戦中であると信じていた。劇場版やOVAでは、この報告に全く動じなかったが、本作ではやや自分を奮い立たせるような雰囲気を持っていた。
背後を帝国軍に執られた後、ラップの迂回する提案を退けて敵前回頭を実施。艦隊は混乱し、さらにペルガモンが損傷したことでモニターが破損してしまい、外部の状況が投影されず不明となってしまう。
ここで降伏勧告を受けるが拒否した挙句(なお、この時の台詞は原作小説に準じたもので「俺は無能者であっても、卑怯者にはなれん!」とされている)艦内に格納されていた艦橋を、再び外へ露出させて直接目視下で戦闘を続行させる。ところが、この瞬間に帝国軍が実弾を斉射、発射したのはクラスター型の徹甲散弾で、これらがペルガモン艦橋を直撃してモニターを破砕し内部で起爆、轟沈に至り、ムーアやラップらも戦死してしまった。