概要
CV:家弓家正
『銀河英雄伝説』の登場人物。
自由惑星同盟の政治家で、登場時には財務委員長を務め最高評議会議員の一人でもあった。
バーラトの和約締結後は臨時政府の最高責任者に就任しており、同盟の末期にあって無能な政治家や汚職まみれの政治家ばかりの同盟政府にあって、数少ない政治家としての能力と良識を持った人物だった。
幼馴染であるシドニー・シトレとはよく憎まれ口を言い合う友人同士で、軍人であるシトレからも一定の信頼を置かれていた。
アンドリュー・フォークが持ち込んだ帝国領侵攻作戦についてはヨブ・トリューニヒト、ホアン・ルイと共に反対する。だが、コーネリア・ウィンザーを筆頭とした推進派の猛賛成に押し切られて作戦は可決されてしまい、失敗した挙句に投入した3千万将兵のうち2千万人近い戦死者を出すという致命的な大敗を招いてしまった。
銀河帝国による『バーラトの和約』の後、誰も座りたがらない最高議長の席に敢えて座ることになったが、これがレベロの転落人生の始まりであった。同盟の存続に固執するあまり帝国側の言いなりになってしまい、ハイネセンの高等弁務官として着任したレンネンカンプの要請という名の政治的圧力に屈し、退役生活を送っていたヤンとその一派を拘束しようとしたが、逆にそれを好機としたシェーンコップ達の逆襲を招き、挙句ヤン一派に拉致されたレンネンカンプが自ら命を絶つという結果に終わってしまった。
この失態によって自由惑星同盟政府の信頼と銀河帝国との関係性は修復不可能なほどの破局を来してしまい、事実の重さに堪えかねたレベロ議長は憔悴の果てに自身の殻に閉じこもり、ただひたすら仕事をこなす生活に逃避してしまった。旧知の言葉にも耳を貸さず、日に日にやつれ果てて言動も挙動もおかしくなってゆく議長の痛々しさに、周囲の人間も次第に愛想を尽かし離れてしまうことになった。
その後、『第二次ラグナロック作戦』でハイネセンが陥落の憂き目に遭うと、保身に走った同盟軍統合作戦本部長・ロックウェル大将の一派によって銃殺される。
レベロ自身も自分が歴史上の悪役になった、と自覚しており、己の最期もヤンを謀殺しようとした報い、と自業自得として受け入れながらも『私の良心と君たちの良心とでは、課せられた義務が全く違う――――だがよろしい、私を撃って君たちの安全を買いたまえ』と毅然とした佇まいで最期を遂げた。
後にハイネセンに降り立ったラインハルトは、ごく短時間ではあり、特に感想のようなものは残さなかったが、安置されたレベロの亡骸を礼節に則って悼んでいる。
一方のロックウェルらは、ラインハルトの面前に引っ立てられた後に処刑された。
人物
腐敗した自由惑星同盟のなかにあって、汚職に手を染めず社会のために働き続けた清廉な政治家だった。生真面目で責任感の強い性格の持ち主で、衰弱し続ける同盟を憂い続けていたが、政治家としては融通がきかず、有事においてリーダーシップに欠けるところがあった。平和な時代であれば優秀な政治家として活躍できていたのだろうが、動乱の時代では周囲の状況に振り回され能力を発揮できず、政治家として変節を余儀なくされてしまった。
また猜疑心の強い人物であり、本来なら心強い味方になれたヤン・ウェンリーに対してもその軍事的才能と名声の高さから「第2のルドルフ・フォン・ゴールデンバウムになるのではないか?」と恐れを抱いていた。これが、後のヤン謀殺未遂事件の実行に繋がってしまったと言える。(とはいえ、似たような猜疑心は政敵であるトリューニヒトも抱いており、これがガイエスブルグ要塞襲来直前の秘密査問会につながっていた)
時代に翻弄され、身に合わない役職に就いたがために自分と周囲を裏切り続けることになった挙げ句、保身に走った軍人たちの手によって殺害されてしまうという末路をたどったため、同時代の人間からも後世の歴史家からもその報われぬ人生を哀れまれた。ただ、彼の名誉の為に言えば、作中において、平時の人は決して有事の人に劣るものではない、と言及されており、特に彼については置かれた状況・情勢と本人の性格や才覚・器量との相性が極めて悪かったに過ぎない、という点に留意する必要がある。
レベロの政治能力は、政治の腐敗に毅然と異を唱え、左右のバランスが取れた思想でもって国家の間違いを正すというモノであった。裏返すと、政治の中枢に立って国家の舵取りをするタイプ、少なくとも国家存亡がかかった有事において、舵を取るような政治家では無かったのである。
自らの最後が迫る中、腐敗した軍人達に真っ正面から向き合い堂々と間違いを正した姿こそが、皮肉にもレベロという政治家の本質を表していたのである。
資質に関しては同じく同盟の政治家であるウォルター・アイランズは「平時では単なる汚職政治家」、「危急に対して適切な対処とリーダーシップを取る事が出来る有事な人物」というレベロとは正反対の資質を持った人物であった。
藤崎版
藤崎版ではもっとも名誉を回復した人物の一人である。
同盟元首となって以降もヤンに対しての不信感は一切見せておらず、バーラトの和約に基づくレンネンカンプの要求にも『同盟市民で有る以上、裁くも護るも同盟憲章下に行われる』と毅然とした態度で反論、さらにヤンを横領罪(同盟市民の血税で作られた戦艦をメルカッツ提督に持たせて隠匿した事)による任意同行の名目で手許に保護する。
その後ヤンを帝国軍に奪取され、そのヤンをシェーンコップらが奪い還し、ヤンがハイネセンを離れた後にも帝国軍に対して『ヤンの行動は同盟市民として自らの自由と権利を護った結果に過ぎない』と堂々とヤンの弁護を行う。
第二次ラグナロック作戦時、引退していたビュコックに勝算ゼロでありながら復帰を提案したのもレベロであり、最後にロックウェル一派に殺害された際にも、元々自分だけ生き延びる気はなかったことを明かしている。
レベロとビュコックの訃報の際にはヤンは「二人を無理にでも連れ出すべきであった」と後悔し、またレベロに現役復帰を提案されたビュコックも「長年の戦友とも言うべき男」と語っていた。
物語展開としては原作と概ね同じ経過を辿る中、レベロはヤンを信じ、可能な限りの協力を実施していた。
他方、原作では「レベロが変節しないでヤンを後押しすれば情勢も良化していたのではないか」とも言及されていたが、この点は結果として否定されることとなった。