本項の情報にはネタバレが含まれている可能性があります。原作未読の方はご注意ください。
プロフィール
号 | 三毒聖手(さんどくせいしゅ/Sandu Shengshou) |
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字 | 晚吟(ばんぎん/Wanyin/ワンイン) |
道具 | 剣:三毒 宝具:紫電 |
身長 | 185cm |
誕生日 | 11月5日 |
声優 | 中国語:郭浩然(アニメ)、彭堯(ラジオドラマ)、王凯(ドラマ) |
日本語:緑川光(アニメ・ラジオドラマ・ドラマトレーラー・ドラマ) | |
俳優 | 汪卓成 |
アニメ・ドラマ等様々なメディアミックスが展開されているが、中国の検閲などの事情で媒体ごとに多少性格や設定が異なっている。ドラマ『陳情令』では特にそれが顕著である。
概要
中国語読みはジャン・チョン。
雲夢江氏の現宗主。父・江楓眠が引き取った魏無羨と共に本当の兄弟のように育った。しかし今は夷陵老祖である魏無羨を深く憎んでいる。
実姉の江厭離を慕っている。金凌は甥に当たる。
攻撃的な性格で皮肉屋。
人物
誰かより劣ることを何よりも嫌う性格である。
どんなにくだらない比べ方だったとしても、彼が他の者に叶わないというような噂が耳に入るだけで、内心深く憤り、食事も喉を通らなくなるほどだった。とにかく相手に勝たないと気が済まない。
苛立ちを感じた時などには右手にはめた指輪(紫電)をさする癖がある。
現代編では『どの世家を怒らせても江家だけは怒らせるな。誰を怒らせても江澄だけは怒らせるな』などと言われ、世家に属さない修士らには特に恐れられている。
夷陵老祖を真似て邪術を使用する者を連れ帰り、白状するまであらゆる手段をつかって拷問している。
たとえ間違えて捕まえた相手でも、誰一人として逃がさない。
魏無羨が現代編で初めて彼の声を耳にした時は『冷酷な厳しさを感じさせる声』だと考えている。
彼の魏無羨への恨みは消えることはなく、熟成された酒のように増悪はどんどん濃くなっていた。
それは、鬼道を修練する全ての者に当たり散らすほどまでになっている。
唯一残された血縁である金凌を大切に思っており、「阿凌」と愛称で呼ぶこともある。
初めての夜狩である大梵山では、雲夢江氏の門弟をわざわざ他家の校服を着せて変装させてまで手助けをしていた。非常に高価で高級である「縛仙網」を使い、何としても獲物を獲らせてやりたいと考えていた。
そこまで苦心するほどに金凌が失敗することを恐れている。
金凌は、「若くして一人で仙門の大世家である雲夢江氏を仕切る運命を背負ったせいか、叔父は昔から冷たくて厳格な人」だと思っていた。いつも暗く沈んだ表情をしていて、その言葉は情を挟まず、誰に対しても一切容赦することはなかった。莫玄羽の正体が魏無羨だと確信した際には、長年纏っていた靄が晴れたかのように生気を取り戻しているように見え、それが骨の髄まで憎み、激怒してのものなのか、それとも彼と遭遇できた狂喜によるものなのかはわからなかったと考えている。
義兄弟の契りを結ぶことはなく、また他所の家と深く交流することもない為、江家は孤立状態となっている。
幼少期から家族への思いが一際強く、逆に余所者とは必要最低限にしか関わらない性格である。
現代編ではそれがより一層、金凌に対して過保護にさせているのだと思われる。
ドラマ陳情令では温家の温情を序盤から気に掛けており、手を貸すまでには至らなかったが、身内以外にまで目を向けられるような精神的余裕が見えた。
他者の噂話にはあまり興味がないようだが、断袖には嫌悪感を示している。
(魔道祖師の世界では、断袖は一般的に差別的な目で見られるような世界である)
女性への理想が高く、見合いには幾度か失敗している。
作者のコメントによると、江澄は非常に面食いなので、天使のような顔立ちに小悪魔のようなプロポーション、性格は必ず良く、江澄を尊敬していることが必須とのこと。能力が自分より劣っていて、口煩くないことも上げられていた。
単純に理想が高いだけではなく、実の両親が不仲であったことも積極的になれない要因であるだろう。
雲夢育ちの為辛党だが、魏無羨が作った料理はあまりにも辛すぎて我慢ができず、毎回茶碗を床に叩きつけて不味いと罵っていた。
血統を重要視しており、魏無羨が金光瑤に対して「かなり感じがいい」と言うと、どんなに利口でも(母親の身分が低いため)結局家臣止まりと返している。綿綿に対しても容姿は良くても身分が低いことを指摘していた。
容姿
『世家公子の風格容貌格づけ』第五位。
群を抜いた美貌の男。
第二位の藍忘機と面と向かって立つとやや見劣りして、どこか落ち着きに欠けて見えると言われている。
容姿性格ともに父親よりも母親の方に似ている。
細い眉に切れ長な目をしていて、その容貌は刺々しい美しさを醸し出している。
彼が人を見る目は、まるで二本の稲妻のように冷たい。
つがえた矢の如く、すぐにでもこちらを射てきそうな表情で、静かな立ち姿にも傲慢さと自負が滲み出ている。
道具
- 紫電
非常に強力な仙器で、普段は指輪の形になっている。
使用する際には、ビリビリと音を立て紫色に光る電流の鞭になる。
非常に細く、雷雲の空を駆ける雷の一端を握っているかのように見える。
奪舎した者に当たると、体と魂が分離し、魂魄が肉体から打ち出される。
一度当たれば例外はない為、何事もなくぴんぴんとしているのであれば、奪舎したわけではないということが明らかになる。
紫電の威力は主人の制御一つで、大きくも小さくも、致命的なほどにもお遊び程度にも調整できる。
- 三毒
江澄の仙剣。
家族
- 父:江楓眠
気立は穏やかで雅やか。
妻の虞紫鳶とは同世代の修士として十代の頃から知り合いであった。
二人の付き合いは深くなく、家柄はよく釣り合っていたが、当時は誰もこの二人を一組の男女として考える者はいなかった。彼と噂になるのは魏無羨の母・蔵色散人だった。
後に家同士の縁談があったが、江楓眠本人は虞紫鳶の性格と人柄を好ましく思ってはおらず、これは良縁ではないと婉曲に何度も断った。
結局、蔵色散人が部下の魏長沢と結ばれ、道侶となって出て行ってしまってから、折れる形で縁談を受け入れたのだった。
二人の結婚は確かに成立したが、常に関係は悪く話もまったく合わず、年がら年中別居状態であった。この結婚によって得られたものは、一族の勢力が強固になったことくらいだった。
ドラマ・陳情令では実は虞紫鳶を愛していたのだとわかるような描写があるが、原作では明確に彼女を愛していたかどうかの記載がないため、彼の真意は不明である。
江家の家風は明朗で度量が広く、正直で屈託がないものだが、虞紫鳶の性格はそれとは全く正反対だった。母親に気質が似てしまった江澄は、幼い頃から江楓眠から江家の家風を教え導かれていたが、結局変わることがなかった。
ちなみに、江澄と魏無羨が遊ぶ際、凧の骨組みを作るのはいつも江楓眠だったという。
- 母:虞紫鳶
強気で冷たく厳しい。
眉山虞氏で三番目の子供である為、三娘(サンニャン)と呼ばれている。
幼馴染の金夫人と仲が良く、江厭離と金子軒の婚約を決めた。
江澄を次期宗主として厳しく躾け、魏無羨のことを家僕として引き離そうとしている。
辛辣だが、魏無羨に対して本気でむごい仕打ちをしたことは一度もなく、せいぜい二、三回だけ鞭で打って、罰として外出禁止と祠堂で跪いて反省するように命じるくらいだった。
側仕えの侍女に金珠と銀珠がおり、虞紫鳶が子供の頃からそばにいる。
- 姉:江厭離
面倒見が良く、優しく包容力がある女性。料理が上手で特に『蓮根と骨付き肉の汁物』が人気。
後に金子軒と結婚する。生まれた子は金凌。字は魏無羨に付けてもらうよう頼んだ。
過去
江澄が八、九歳だった頃、魏無羨が蓮花塢に来た。その当時江澄は遊び相手として子犬を何匹も飼っていた。魏無羨がそれにとても怖がることを知ると、江楓眠は犬たちを他家に譲るよう優しく諭した。江澄はひどく嫌がって癇癪を起こしたが、結局犬は譲ることになった。
その経緯があって長い間江澄は魏無羨に対して敵意を抱いていたが、一緒に遊ぶようになり打ち解けてからというもの、二人はいつでもともに出かけてはあちこちでいたずらをするほど仲良くなった。犬から魏無羨を守る役目はいつも江澄だった。
ちなみに魔道祖師は一貫して魏無羨視点であるが、幼少期のエピソードは魏無羨本人が朧げにしか覚えていない為、こちらは江厭離から聞いた内容である。
蓮花塢ではよく門弟たちと凧を射る遊びをしていた。いつも魏無羨が一位で、江澄は二位だった。江澄は凧を矢が届かないほど高く遠くまで上げてしまうか、あるいは無事に射れたとしても魏無羨の凧より低いかのどちらかなのだ。二人の凧はいつも父の江楓眠が骨組みを作り、江厭離が絵を描いてくれていた。
座学時代、授業がない日は魏無羨らと朝から晩まで遊び惚けていて、皆で魏無羨と江澄の部屋に入り浸り、夜な夜な酒を飲んでは腕相撲をしたり、サイコロを振ったり、春宮図を見たりして過ごしていた。
授業中は真面目に勉強しており、さらに雲夢江氏の名声を高める為に最前列の席にいた。
蓮花塢では、次期宗主となるべく厳しく口を出す母・虞紫鳶と、それを諌める江楓眠との間で板挟みになっていた。虞紫鳶が魏無羨を家僕と言う際には庇おうとする様子が見られる。
暮渓山では度々面倒を起こしがちな魏無羨を制止している。ついには脚を折られた藍忘機を背負おうとする彼に対し、「自分たちのことすら満足に構ってられないっていうのに、他人のことに余計な首を突っ込む余裕なんてあるのか?」と警告していた。
屠戮玄武と遭遇した際、皆を先に逃がそうとする魏無羨に対して、お前も早く来いと最後まで気にかけていた。
洞窟内に残された魏無羨を助ける為、数日間奔走して蓮花塢へと戻る。魏無羨と藍忘機が屠戮玄武と戦う中、彼もまた気力体力ともに尽きるまで一刻も休めなかったが、江楓眠は屠戮玄武を倒した魏無羨らの武功を褒めるだけで、江澄へ労いの言葉は掛けなかった。その件に関しては「父上は母さんのことが好きじゃないから、俺のことも一緒くたに気に入らないんだ」と魏無羨に対して弱音を吐いている。
- 雲夢双傑
「俺は父上が好むような性格じゃないし、望むような跡継ぎでもない。父上は俺のことを、宗主として相応しくない、江家の家訓も信念も理解していない人間だと思ってる。その通りだよ!」
鬱憤を晴らすかのようにそう口にすると、魏無羨は「家訓がなんだっていうんだ! 家規家訓は必ず守らなきゃいけないものなのか?」と言う。歴代の宗主が皆家訓を遵守してきた者ばかりとは考えられないのだと。
「将来お前が宗主になったら、俺はお前の部下になる。お前の父親と俺の父親みたいにな。姑蘇藍氏に双璧がいるからってなんだよ。雲夢には俺たち双傑がいる!」
江澄のことを宗主として相応しくないなんて、誰一人そんなことは言わせないと。たとえ江澄自身がそう言っても、魏無羨は殴ってやると言った。その言葉で、江澄はようやくいつもの調子を取り戻し、鼻を鳴らしたのだった。
- 平穏の終わり
温氏に攻め込まれ、江澄と魏無羨は虞紫鳶の手によって蓮花塢の波止場へと連れ出される。
江澄は今まで母に抱きしめられたことも、口付けをされたこともなかった。どうしたらいいのかわからないという顔で、彼女の胸に抱き抱えられている。彼女は息子だけは守ろうと、私情で先に蓮花塢から逃そうとしたのだ。
二人は紫電で縛られ、乗せられた小舟は瞬く間に数丈先まで流れ出した。
途中江楓眠と合流したが、彼は事の深刻さを察知し、二人だけをそのまま逃した。江楓眠の乗る船はどんどん遠くへと離れていく。江澄は絶望して悲痛な叫び声を上げた。
ようやく紫電が解けた頃、二人は蓮花塢へと戻る。温氏が囲む中、二人は修練場に人が山積みとなっているのを見てしまった。その中にはよく知っている姿が数多くあり、そして、変わり果てた江楓眠と虞紫鳶の姿もあったのだ。
二人はよろめきながら駆け出し、蓮花塢を離れた。一気に数里も走ったところで唐突に江澄は立ち止まり、引き返そうとする。仇を討つのは今じゃない。そう言う魏無羨に対し、江澄は今じゃないならいつだ? もうお前にはうんざりだ、さっさと失せろと返した。
「なんであの時、藍忘機なんか助けたんだ?!」
「藍忘機と金子軒なんか、死んだら死んだで良いだろう! 奴らが勝手に死んだって、俺たちになんの関係がある?! どうしてこうなった?!」
江澄は深い悲しみと怒りのあまり、完全に理性を失っていた。父さんと母さんを返せと震える声で訴える江澄に、魏無羨も涙を流しながら何も言い返せずにいたのだった。
江澄も内心ではよくわかっている。あの時たとえ魏無羨が藍忘機を助けなかったとしても、温氏は遅かれ早かれ何らかの理由をつけて江家に襲いかかってきただろうということを。それでも、魏無羨があんなことをしなければ、まだ挽回の余地があったかもしれないと思わずにはいられなかった。
二人は江厭離のいる眉山虞氏へ向かう。江澄はずっと俯いたまま右手を胸に抱きしめ、家族の唯一の遺品である紫電に繰り返し触れていた。何度も蓮花塢の方を振り向いては、今では魔の巣窟と化したかつての自分の家をじっと見つめる。いつまでも悲しみの涙が止めどなく溢れ続けていた。
二人は小さな町に足を踏み入れる。
魏無羨は江澄にここから動かず座っているよう念を押しながら、食糧調達に向かった。
魏無羨と離れた後、江澄は温氏に捕まっていた。彼が救出された時には、少なくとも肋骨が三本は折れ、戒鞭による傷もあった。早急に薬と安静が必要な状況だった。
魏無羨は温寧を頼り、夷陵の「監察寮」に向かうことになる。そこで目覚めた江澄は、自分の「金丹」が化丹手に消されてしまったのだと茫然自失の状態で呟いた。
「金丹」は一度消されたら二度と再生できない。ただの一般人に成り下がる。そうなれば、仙門の者はもはや廃人も同然。
江澄はひとしきり半狂乱の笑い声を上げてから、寝台に倒れ込み「なんで俺を助けた?」と自暴自棄な様子で言った。
ちょうどその時、扉が開いて温寧が戻ってきた。彼は顔色を窺いながら飲み薬を手に寝床に近づいてくる。
温寧が口を開く前に、その身に纏っている温氏の校服が真っ先に目に入り、江澄は「温狗を見てなんで殺さねぇんだ!?」と興奮状態に陥った。江澄は温寧を蹴りつけると、薬が彼の体にぶちまけられてしまった。魏無羨は驚いて、彼を引っ張って起こしてやる。その姿を見て、江澄はさらに怒りをあらわにした。
「温狗を見てなんで殺さねぇんだ?! 今、奴を引っ張り起こしたな? 死にてぇのか?!」
江澄には彼に救われた当時の意識がなく、ただただ憎い敵の一族だとしか考えられない。恩人だという認識はなかった。
彼の大声が響く中、突然紅の影が一筋、扉を蹴破って中に入ってきた。温寧の姉・温情が江澄の頭に一本の針を刺したのだ。その針によって江澄は寝床へと倒れ込んだ。
江澄は頭に針が刺さったまま三日間昏睡し続けた。その間に骨と外傷はすべて完治したが、永遠に消せない一筋の戒鞭の痕と、決して取り戻すことができない金丹だけは、どう手を尽くしても治らない。
さらに三日が過ぎた後、江澄はようやく頭から針を抜かれ目を覚ました。しかし、目が覚めてもぴくりともしない。水も食事も抜き、まるでひたすら死を願っているようだった。
「江澄、起きろ。飯を食おう」
「お前が体力を回復しなけりゃ、どうやって金丹を取り戻すんだ?」
魏無羨のその言葉に、江澄は目を瞬かせる。
『抱山散人』……死者を生き返らせ、骨に血肉を再生させられるという世外の傑人。かの人に助けを求めれば、金丹を取り戻せる。期待から江澄の目に正気が宿った。
今すぐにでも会いに行きたいと言う江澄に、「抱山散人の山にはたくさんの禁忌がある。ゆっくりお前に教え込まないといけない」と魏無羨は宥めた。
「山に登ったら、絶対にじっくり辺りを見回したり、山の景色を覚えたり、他の人の顔を見たりしてはならないんだ。い。お前は絶対に何もかも、言われた通りにやるんだぞ」
「わかった!」
今、魏無羨がどんな要求を突きつけたとしても、江澄は目を赤くしながらそのすべてに「わかった」と答えるだろう。
江澄は目隠しをし、魏無羨の教え通りに山を登っていった。魏無羨は一緒に登ることはできない。
さっきの町でお前を待っているからなと言って別れる。その後、魏無羨は行方不明になった。