概要
本艦は、フランスの次期空母として計画されたものである。旧式化したクレマンソー級空母をシャルル・ド・ゴールとともに置き換えるべく、CATOBAR空母として設計が進められていた。
※CATOBAR:Catapult-Assisted Take-Off But Arrested Recoveryの略。カタパルト発進し、着艦ではアレスティングワイヤーを使う方式。アメリカ空母を思い浮かべると分かりやすいかもしれない。
来歴
フランスでは戦後、クレマンソー級空母二隻を運用していたが、時が進み老朽化が目立つようになった。そこで、原子力空母によってこれらを置換するはずだったが、第1号であるシャルル・ド・ゴールには少なからぬ欠陥が存在した。正規空母として運用するには中途半端な大きさで(満載で40,000t級)あったことも災いし、フランス海軍は新たな原子力空母を設計する必要に迫られた。
ここで目を付けたのが、イギリスのCVF計画であった。CVFは満載65,000t級の大型艦であり、十分なサイズを持っていたため、好機と見たフランスはイギリスとの共同建造を提案することになる。イギリス側も費用軽減のため、渡りに船、とばかりに飛びついた。
しかし蓋を開ければ、
- 通常動力への圧力:フランスは原子力空母を希望していたが、もともとCVFは通常動力型である。ということは、原子力化すれば艦の設計が著しく変化するし、これを修正していては、共同建造の旨味である費用削減が達成できなくなるため、イギリス案を受け入れざるを得ない。イギリスは原子力化による建造費高騰を嫌っていた。
- 運用思想の違い:CVFはSTOVL、PA2はCATOBARである。一応CVFには、CATOBAR化しても耐えるだけの柔軟な設計がされていたとはいえ、ある程度のコストはかかる。また、英仏共同での軍事行動の際、特に設備のないイギリス側が、フランスの固定翼機を受け入れることが不可能になるので、作戦での柔軟性が低下する。
- その他の問題:建造に関する問題や、空母計画に対する意識が二国間で異なっていた。
という問題が顕在化した。イギリスでは空母計画が比較的順調に進行したが、フランスは具体的な建造時期すらも定めず、結局計画は白紙に戻された。このため、一隻も建造はされていない。
設計
CVF(クイーン・エリザベス級)を基にして、アングルドデッキや蒸気カタパルトを装備した正規空母である。搭載機は40機ほど、排水量は70,000t級で、フランス海軍で最大の軍艦となるはずだった。搭載機数はシャルル・ド・ゴールよりも大型であるにもかかわらず同じであるが、これは艦載機搭載スペースの他に海兵隊や特殊部隊を1個大隊程載せられるスペースが確保されていたためで、小規模作戦なら空母としての役割を果たしながら単艦で陸上部隊の投入も可能だった。なおこのスペースは短時間で艦載機搭載スペースに改装可能で、より空母としての能力を高めることもできた。
機関などの配置は不明であるが、主機関はCVFと同じくMT30が採用され、これを中心とした統合電気推進方式を予定していたとされる。出力も変わらず、速力も26ノットほどであった。自動化により乗員を削減し、ド・ゴールから300名ほど少なくなるといわれていた。
武装はCVFがCIWSと機関砲のみだったのに対し、艦対空ミサイルの装備も考えられていた。
その後
こうしてPA2はキャンセルされたが、2020年12月にシャルル・ド・ゴールの後継となる次世代空母「PANG」が発表された。計画では全長約300m・満載排水量約7万5000tの原子力空母で、2基の電磁カタパルトを備えた搭載機数約40機のCATOBAR空母として2038年の就役を目指すとされている。
関連タグ
クイーン・エリザベス級空母 - 原型艦。こちらはスキージャンプ甲板を有するSTOVL空母だが、将来的にはPA2同様のCATOBAR空母へ改装できるよう柔軟な設計がなされている。