概要
アメリカ海軍の空母の艦級の一つで、3隻の同型艦が太平洋戦争の開戦までに建造された。
3隻の艦籍番号が連続していないのは、ヨークタウン(CV-5)、エンタープライズ(CV-6)が建造された後、ロンドン海軍軍縮条約の空母保有制限量の余裕分でワスプ(CV-7)を建造し、ロンドン海軍軍縮条約のエスカレータ条項発動後にホーネット(CV-8)を追加する形で建造したためである。
艦の大きさは基準排水量2万tクラスで、蒼龍・飛龍と翔鶴型の中間程度だが、当時のアメリカ空母では搭載機の一部を飛行甲板上へ繋止する露天での駐機を行っていた他、予備機を格納庫甲板の天井から吊るすことで常用搭載機数を増やしたため、搭載機数は80機以上で翔鶴型に匹敵。
太平洋戦争の序盤、太平洋の守るべき広さの割に正規空母の絶対数が少なく、大西洋にも正規空母を振り向けなければならないアメリカ海軍空母機動部隊の中核となって非常に重要な役割を果たし、正規空母の集中投入で太平洋を暴れまわる日本海軍を相手に何度も空母対空母の大規模な海戦を繰り広げ、ヨークタウンとホーネットが1942年までに失われた。
ダメージ・コントロール
アメリカ海軍の得意とするダメージ・コントロールもあってか、恐るべきタフさを見せている。
「船体の甲板(機関室上部にあたる)が装甲化されていた」、「開放式格納庫により、爆風や揮発ガソリンを外に逃すことができた」等がタフさの理由として挙げられるが、水中防御に関しては割り切った設計で、魚雷攻撃に弱かった。このため、エンタープライズには1943年の改装の際、バルジが追加された。
- ヨークタウン
1942年5月に発生した珊瑚海海戦への参加によって受けた損傷の修理には3ヶ月が必要と見積もられたが、3日間の修理で翌月上旬に発生したミッドウェー海戦に参加。
飛龍に2度攻撃されたが、1度目の攻撃で発生した火災が2度目の攻撃の時までに消火を終えて航行していたことから別の艦と誤認されたため、空母2隻撃沈と報告された。
その後の応急処置で自力航行可能となる寸前だったが、伊168の魚雷が横付けしていた駆逐艦ハムマンに当たり、爆雷の誘爆でヨークタウンの水線下の損害が拡大し、翌朝沈んだ。
- エンタープライズ
大戦中大小15度に亘る損傷に見舞われるが、驚異的なダメコンと強運によって最前線に出撃して戦果を挙げ続け、同型艦で唯一第二次世界大戦を生き残った。
ちなみに、あまりのタフさから大本営発表で9回撃沈された事になっているなど、珍しい記録も持っている(もちろんタフさ以外にも「今回こそ沈んでいてほしい」という希望的観測も多分に含まれたと思われる)。
- ホーネット
1942年10月に発生した南太平洋海戦に参加した際、エンタープライズが損傷によって離脱したことから日本海軍機の集中攻撃を受けて航行不能になり、味方に雷撃処分されたものの沈まず、追撃してきた日本海軍の駆逐艦によって雷撃処分された。
当時、アメリカ海軍の魚雷は命中しても大部分が不発という欠陥に悩まされていた。
戦歴
ヨークタウン級のみが複数参加した作戦は、次のとおりである。
- マーシャル・ギルバート諸島機動空襲(ヨークタウン、エンタープライズ)
- 東京初空襲(エンタープライズ、ホーネット)
- ミッドウェー海戦(ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネット)
- 南太平洋海戦(エンタープライズ、ホーネット)
各艦の戦歴は個別記事へ → ヨークタウン・エンタープライズ(CV-6)・ホーネット