概要
通称「天浜線」と呼ばれる、静岡県中西部の掛川駅を起点に天竜二俣〜奥浜名湖を経由し、県西部の新所原駅へ至る67.7kmの路線を有する。
元は1935年4月17日に開業した国鉄二俣線で、東海道本線(東海道線)が軍事攻撃などで不通になった際ののバイパスとして建設された路線のため、両端でJR東海道線と連絡している。二俣線時代には、西は豊橋駅に乗り入れていた。
実は静岡県で唯一の全線非電化路線(他に非電化区間を持つ大井川鉄道井川線は一部区間が直流電化)。また単線でもあるがゆえに、全線を乗り通すには、東海道線の倍の2時間程度を要する。
ほぼ中間の西鹿島駅で遠州鉄道と連絡しており、共同のフリーきっぷなどもある。
中心駅である天竜二俣駅は、当路線の車庫があり、国指定登録有形文化財の「転車台」の見学会も行なわれている。
尚、2003年より、天竜観光協会の委託事業として「遠州天竜舟下り」を運営していたが、2011年8月に転覆事故を起こし、川下り事業から撤退する事となった。
車両
現役車両
TH2100形
TH1形を置き換えるため、2001年より導入。当初はTH2000形として3両が導入された。
新潟鐵工所製の18m級軽快気動車「NDCシリーズ」の一種。肥薩おれんじ鉄道等の車両と同形だがこちらはトイレがついていない。
塗装は公募を元に決められた。
2002年からは、保安ブレーキを二重化し、側面行先表示器をLED式にしたTH2100形に変更。2001年導入の3両も保安ブレーキを改造の上TH2100形に改番した。(側面行先表示はサボのまま)
同形車で転換クロスシートを装備するイベント用のTH9200形も1両存在する。形式名は、日本宝くじ協会の助成金を受けているため、くじ(92)の語呂合わせ。カラオケ設備や液晶モニター、ミュージックホーンを搭載。イベント時以外は一般車両と混じって普通の運用にも使用される。2021年10月3日からは、2代目「スローライフトレイン」として、カーテンやヘッドレストカバーをフィンランドのマリメッコ生地のものに交換、床を木目調にし、外装をヘリテージブルーをベースにした塗装にするなどのリニューアルが行われた。
近年ラッピング車両が増えており、2021年11月時点で以下の通り。
車両 | 導入 | 塗装 | 備考 |
---|---|---|---|
TH2101 | 2001年1月 | 湘南色Re+ | 2017年はおんな城主直虎 |
TH2102 | 同上 | キハ20色 | 2016年は戦国BASARA |
TH2103 | 同上 | キャタラー | |
TH2104 | 2002年2月 | 標準色 | |
TH2105 | 同上 | ヤマハPASラッピング | |
TH2106 | 同上 | 標準色 | 2020年はかけがわ茶エンナーレ2020、休車 |
TH2107 | 2002年12月 | 花のリレー・プロジェクト | |
TH2108 | 同上 | 標準色 | 2022年はホンダカーズ |
TH2109 | 同上 | 2021年2月~2024年2月はゆるキャン△ | |
TH2110 | 2003年11月 | 長坂養蜂場ぶんぶん号 | |
TH2111 | 同上 | シン・エヴァンゲリオン劇場版: | |
TH2112 | 2004年12月 | CNexsus | 2023年はどうする家康ラッピング |
TH2113 | 同上 | スズキカタナラッピング | |
TH2114 | 2005年12月 | 音街ウナうなぴっぴごー! | 2022年9月にラッピングリニューアル |
TH9200 | 2002年12月 | 宝くじ号 | イベント対応車両・スローライフトレイン |
↑TH2100形
↑TH9200形
TH2106は2022年頃重篤な故障を起こし休車中。部品取り車となっている。
このように近年車両故障が増えている上、交換部品が製造終了などの理由で調達出来ず、修理が出来ない車両が発生しているため、2025年度から順次置き換えられる予定。
導入予定車両
形式不明(電気式気動車)
JR東日本GV-E400系やJR西日本DEC700などと同じ川崎車両製の電気式気動車。
2025年度から1年に1両のペースで、15年掛けて15両を導入し、TH2100形を置き換える予定。1両3億4千万円。
ステンレスボディーで、天浜線のイメージカラーである橙色、緑色、青色のデザインが施される予定。
引退車両
TH3000形
掛川市役所前駅、フルーツパーク駅の開業等に伴い、増発を目的に1995年10月導入された、富士重工製の18m級気動車。「LE-DC」の一種。
TH3501、TH3502の2両が在籍。このようなナンバーになったのは、350馬力に因んだため。デビュー当時はアイボリーにオレンジのラインが入るオリジナル塗装だった。(イラスト一番左)
1996年2月6日より運行開始。他の形式と連結出来ないため、1両または同形式の重連で使用された。2000年まで運転されていた快速列車に優先的に入るようになっていた。
2005年12月には、TH3501が「トロッコそよかぜ」の2代目牽引車両になり、砂撒き装置の追加などの改造が行われ、2006年2月末には塗装も客車に合わせたアイボリーと茶色になった。(イラスト左から2番目)トロッコそよかぜは、2007年に車両不具合のため引退したが、塗装はそのまま変わらなかった。
2010年9月に部品取り車が必要になったため、TH3502が廃車になる。
2015年10月18日からは、フィンランド・マリメッコの生地を使用したカーテン、ヘッドレストカバーに交換の上、「スローライフトレイン」として運行された。(イラスト一番右)
2016年7月に車検切れのため運用離脱。廃車も検討されたが検査を受け、同年10月に運用復帰。この際、金帯がなくなる、スカートが黒になるなど、塗装が若干変更された。(イラスト左から3番目)
2020年12月3日に故障が発生し、運用を離脱。修理の部品の調達が困難なこと、不調箇所が多いこと(空調、ドアエンジン等)、元々2021年末に検査切れによる運用終了を予定していたことから、2021年5月23日に乗客を乗せない特別運行列車(遠州森駅~三ヶ日駅間)によるラストランを行い引退した。
引退後は、都田駅近くにある欧風家具店「ドロフィーズキャンパス」に売却され、カフェとして使用される。
TH1形
1988年3月の開業時に導入された富士重工製のいわゆる「レールバス」。15mの車体を持つボギー車で貫通扉を装備するタイプ。
15両が在籍し、2005年まで活躍した。最後まで残ったTH106、211はミャンマー国鉄へ譲渡された。
車内設備の違いによって、TH1~4形の4タイプがある。
形式 | 車番 | 車内設備 | その他 |
TH1形 | TH101~110、115 | セミクロス(4組) | |
TH2形 | TH211 | セミクロス(4組) | お座敷対応、トロッコ牽引 |
TH3形 | TH312、313 | セミクロス(6組) | |
TH4形 | TH414 | ロングシート | お座敷対応 |
TH211は、2000年3月より「トロッコそよかぜ」牽引車両となり、塗装も客車に合わせたデザインだった。また大型のデジタル式速度計、ミュージックホーンを装備し、側面には看板取付用の金具が設けられていた。
トロッコそよかぜ
2000年3月26日より遠州森駅~三ヶ日駅間を運転するトロッコ列車として登場。
THT101(運転台付き車両)とTHT201(中間車)の2両が在籍し、TH211(後年はTH3501)と連結した3両編成で使用された。
JR貨物のトキ25000形を名鉄住商工業で改造したもので、長良川鉄道の運転台、名古屋鉄道HL車の乗務員扉と尾灯、北陸鉄道の前照灯等を取り付けたキメラ。アルミ板を使用し、レトロな外観に改造、塗装は上半部がアイボリー、下半分が茶色とされた。
車内は木目調のボックスシートで、自転車も搭載できる。
2006年に台枠に亀裂が見つかり運行中止、修理する予定だったが、莫大な費用がかかることが判明し、そのまま2007年7月7日に廃車された。
駅一覧
整理券番号 | 駅名 | 乗り換え路線 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 掛川 | ||
2 | 掛川市役所前 | ||
3 | 西掛川 | ||
4 | 桜木(遠江桜木) | ||
5 | いこいの広場 | ||
6 | 細谷 | ||
7 | 原谷 | ||
8 | 原田 | ||
9 | 戸綿 | ||
10 | 遠州森(遠江森) | ||
11 | 森町病院前 | ||
12 | 円田 | 新東名遠州森町PAは当駅近辺にある。 | |
13 | 遠江一宮 | ||
14 | 敷地 | ||
15 | 豊岡(野部) | ||
16 | 上野部 | ||
17 | 天竜二俣 | 現役の扇形車庫がある。 | |
18 | 二俣本町 | ||
19 | 西鹿島 | 遠州鉄道 | |
20 | 岩水寺 | ||
21 | 宮口 | ||
22 | フルーツパーク | ||
23 | 都田 | ||
24 | 常葉大学前 | ||
25 | 金指 | ||
26 | 岡地 | ||
27 | 気賀 | ||
28 | 西気賀 | ||
29 | 寸座 | ||
30 | 浜名湖佐久米 | カモメの駅として有名。東名高速道路と交差。 | |
31 | 東都築 | ||
32 | 都築 | ||
33 | 三ヶ日 | ||
34 | 奥浜名湖 | ||
35 | 尾奈 | ||
36 | 知波田 | ||
37 | 大森 | ||
38 | アスモ前 | ||
39 | 新所原 | 東海道本線 |
路線図
関連イラスト
余談
- 上野部駅~天竜二俣駅は、数年で廃線になった光明電気鉄道を跡を転用したもの。トンネル内に痕跡が残る他、天竜二俣駅付近に廃線(ホーム)跡が残る。
- かつて天竜二俣駅から佐久間駅まで、国鉄路線(佐久間線)を建設する予定があった。
- 天竜二俣駅付近にC58、キハ20、20系が保存されている。
その他
- 音街ウナとコラボしており、ラッピング列車やグッズの他、掛川駅にパネルがある。また、音街ウナと駅メモコラボイベントも2021年に実施。2022年9月23日にラッピングをリニューアルし、オレンジベースのデザインから、紫ベースのデザインに変更された。
- ゆるキャン△のキャラクター、各務原なでしこの実家が浜名湖佐久米駅最寄りという設定。作品内に同駅と気賀駅が登場し、これを記念して2021年にラッピング列車の運行や記念きっぷの発売がされた。ちなみにドラマ撮影列車はTH2104を使用。
- シン・エヴァンゲリオン劇場版:||に登場する第3村のモデルが天竜二俣駅。ジオラマも製作されており、公開もされた。ただし、劇中に天竜浜名湖鉄道の車両は登場せず、123系や40系などが停車していた。2021年8月1日~9月26日、11月17日~2022年1月31日曜日には、駅名標を「第3村(駅)」にするイベントも行われた。 公式によるツイート。同年11月17日からはラッピング車両も運行開始。