ダメコンとは
ダメコンとは、ダメージ・コントロールの略。その名の通り、受けてしまったダメージをコントロールし、被害を抑え活動を継続するための技術である。
艦艇のダメコン
戦闘の用に供される艦艇は攻撃を受ける事により損傷する事が前提である。
損傷によっては機能の喪失または沈没に繋がる事があり、少しでも沈みにくくする措置をダメージコントロールと呼称する。
ダメコンは船体の構造や損傷の予防処置といった事前の備えと損傷発生時の応急処置に分かれる。
船体の構造
水密区画
砲爆撃、雷撃によって船体に破孔(はこう)が生ずると浸水が発生し、浸水量が多ければ多いほど沈没までの時間は早くなる。
戦闘艦では浸水を最小限に留めるために船体を細かい隔壁で区切り、浸水を一つの水密隔壁内で留めて浮力を確保する。そのため戦闘中は必要箇所以外の全隔壁を閉鎖し浸水に備える。
また、水密区画の一部に設けられた排水ポンプで船外に排水する。
片側に浸水があった場合、船が傾き転覆する恐れがあるため反対側に注水する場合もある。
装甲化
攻撃等によって破孔を生じにくくするために、装甲を強化する。
ただし、全面をぶ厚い装甲で覆ってしまった場合、コストもかかるし重量が増加して速力などの性能が低下するため、弾薬庫や機関部といった重要部位(バイタルパート)周辺のみ強化している。
空母において、装甲を強化して気密性を高めた事が裏目に出た例がある。
同艦はアメリカ海軍の潜水艦アルバコアから雷撃1発を受け、漏れ出した燃料が気化して艦内に溜まり引火、轟沈した。
頑丈な開放式格納庫など爆発エネルギーを逃がす構造になっていなかった事や艦載機用のエレベーターの故障により充分な換気が行えなかった事等も原因の一つである。
現在の高性能防空艦艇は対艦兵器の性能向上から重装甲化をやめ、破片または機関銃弾等への防御のみの最低限の装甲に留めている。
そのため衝突事故や自爆攻撃で容易に船体に大穴があく事がある。
二次被害の防止、抑制
二次被害とは、戦闘時の被弾や故障による火災、弾薬の誘爆などである。
火災が発生して戦闘の継続が困難であり、鎮火も難しいと見なされた場合、海没(自沈)処分が行われる。
弾薬の誘爆が発生した場合、その威力などから大惨事になる場合が多く、爆沈する事もある。
火災の抑制には可燃性の内装を除去したり、積荷を火災発生時に投棄するほか、スプリンクラーを設置するなどして対処する。
弾薬などの爆発物による誘爆の防止策には、爆薬、発射薬の性質改良や、弾薬庫への注水装置などがある。
火薬は密閉空間内で燃焼する事によって推進力や破壊力を生み出すため、ミサイルを接着剤であえて壊れやすく作り、火災発生時には熱で自壊して空気中でゆっくり燃焼させる事で爆発させないという改良が施されている物もある。
アメリカ海軍では、1967年6月に発生した航空母艦フォレスタルの艦上火災事故を教訓に新兵へのレクチャーを行っている。
現代の例
1975年11月22日にベルナップ級ミサイル巡洋艦ベルナップが空母ジョン・F・ケネディと衝突して火災が発生。
弾薬類は即座に回収されたために誘爆による轟沈こそ免れたものの、熱に弱いアルミ合金製の上部構造物が燃え尽きてしまった。
1977年に21型フリゲートF169HMSアマゾンでは火災の際にアルミ製梯子が熱で溶解し、消火活動を阻害しており、以降に製造される艦艇は鋼鉄製構造物に変更された。
1982年のフォークランド紛争にて失われたHMSシェフィールドも同様にアルミ合金構造物であると言われているが、実際には前述のHMSアマゾンの教訓から鋼鉄製構造物となっていた。
しかし、不発だったエグゾセ対艦ミサイルのブラスト(噴射炎)の残燃料への引火、機関部の及び補機室のジーゼル燃料へと引火した事で発生した火災により電気系統の損傷や有毒ガスの発生によりダメコンは不可能になっていた。
火に対する乗員の防護も完全ではなく、この一件をきっかけとして応急員を含めた乗員の難燃性防護服の着用が徹底される事になった。
なお、鎮火後に修理の為に曳航中に悪天候と遭遇、ミサイルの命中孔から浸水して沈没した。
同戦争で失われた21型フリゲートF170HMSアンテロープはアルミ合金製構造物であったが、こちらは炎上する事なく航空爆弾の不発弾処理失敗により大破、沈没している。
カウンティ級ミサイル駆逐艦HMSグラモーガンも地上発射型のエグゾセを被弾して艦載のヘリを失っているが、命中箇所が甲板上構造物で被害が小さかった上に不発、残燃料による火災は消し止めることに成功している。
船内に木材を用いている艦があるため、火災の際には延焼の原因となってしまっている。
消火設備も古く、設備が使用できない区画がある、故障が多いなどの問題もある。
ウダロイ級駆逐艦アドミラル・ザハロフでは軽量化のために隔壁やハッチまでもアルミ合金を使用していたために火災の際に隔壁が燃えてしまい延焼、二区画とも注水することで鎮火している。(同艦は修理されず、退役している)
応急処置
被弾時に破孔を塞ぎ、消火活動を行うダメコン班は機関科などの乗員で編成され、常日頃から訓練を行っており、浸水を杭で抑え、木材をその場で切って破孔を塞ぎ、ガソリンで派手に燃えている炎をホースで消火する訓練が有名である。
もし、一般公開などで護衛艦に乗船する機会があれば、赤色に塗装された器具や各所に設置された木材に注目して欲しい。
それがダメージコントロール用の機材である。
『艦隊これくしょん』におけるダメコン
艦隊これくしょんにおけるダメコンは、実際の艦船におけるダメコンとは意味合いが若干異なる。実際の艦船のダメコンが「沈む前の応急処置」「誘爆の防止などで乗組員への損害を防ぐ」といった意味合いであるのに対し、艦これにおけるダメコンは「沈んだ後に艦娘を助けてくれるお守り」という認識の方が正確である。
あらかじめ艦娘に装備させておく事で、敵の攻撃による轟沈を1度だけ防ぐ「応急修理要員」「応急修理女神」がダメコンと呼称される。
応急修理要員の装備妖精さん達は木材とハンマーを持っており、応急修理女神は電動ドリルを持っている。
「応急修理要員」は大破の状態にまでしか復旧できず、燃料や弾薬の回復も行われないため、その後の戦闘を継続するのは困難となるが、「応急修理女神」は耐久力を完全に回復し、尚且つ燃料・弾薬までフルチャージされる分、入手頻度は少なめで希少価値となっている。
また、発動時のタイミングは轟沈時の演出が挿入された後となるため、心臓に悪い事この上ない。
2014年4月末のアップデートにより、あらかじめ旗艦にダメコンを搭載する事で旗艦大破時の強制帰還を回避出来るようになり、ダメコンを消費して進撃(旗艦の耐久力が中破状態にまで回復)するか、このまま帰還するかを選ぶ事が可能となった。
因みに見た目が少女の艦娘をどのような方法で轟沈を防いでくれるのかは不明であるが、艤装の修理を装備妖精さんに任せている明石の例を見るに、突貫で艤装の修復(と、艦娘のケア)を施しているものと思われる。
ただし、ロスト判定が存在しない演習では、轟沈してもダメコンは発動せず、消費もされない。恐らく、大破での演習強行による経験値稼ぎや、ダメコンガン積みで轟沈→復活の繰り返しでの嫌がらせを防止するためと思われる。このため、大破の状態で演習に挑み、致命傷を負った場合、復活することなく轟沈扱いとなる(表記上はHP1の大破のまま)。これはロストと同じ扱いとなり、艦娘には経験値が入らず、戦果報告の評価も下がってしまう。
以上のことから実際の図鑑表記にある「轟沈を防ぐ」というよりも「轟沈によるロストを防ぐ」アイテムだという認識の方が正しいだろう。「実際には沈まないはずの演習だからこそダメコンの訓練しろよ」とかは言ってはいけない。
アニメ版では、轟沈していないにもかかわらず赤城に応急修理女神が使用され、反撃に転じた。
その他の用法
艦隊これくしょんの2次創作における「ダメなコンゴウ」の略
ちなみに2次創作漫画柴ドッグ提督シリーズでは、夕立が「ダメなコンテンツ」と勘違いし、時雨から「それ積んじゃだめだよね」と突っ込まれ、応急修理要員の1人からも「ダメチャウワー」とクレームを受けている。
また最終決戦の前に大潮、霰、卯月が北上に送ったお守りの中に応急修理女神が潜んでいて(こちらも「ダメチャウワー」と言っていたが、何故か妙に怨恨でも混じってそうな感じに描かれていた)、敵の攻撃でやられた北上を救出している