概要
歩兵随伴から騎兵随伴へ
1933年の新型歩兵支援軽戦車開発にオチキス社は、より軽量の戦車のデザインを提出した。これは、車体各部を鋳造し継ぎ合わせるという新技術によるものだった。この競作はルノー社とオチキス社の二社で争われたが、結局採用となったのはルノー社案 (Renault R35軽戦車)であった。不採用 となったオチキス社案だったが、最高速度が高かったため多少の手直しを行ったうえで騎兵用戦車として採用されることになった(手直しを行ったところで最高速度は30km/hに満たず、このような低速車を騎兵戦車として採用した背景には歩兵科と騎兵科の確執があったとも言われている)。
特徴
サスペンションはルノー社のラバー式とは異なり水平コイルスプリングを利用したシザース式サスペンションを採用しており、一人用の小型砲塔(R35軽戦車と同型である)に短砲身37mm砲が装備された。 最初の生産型であるH35には1935年型エンジン(排気量3,480cc:75hp)が搭載されていた。
発展
H35の走行性能向上型として1939年型エンジン(排気量5,976cc:120hp)を搭載したモデルが後に製作され、こちらはH38と呼ばれる。エンジンが大型化したため車体後部が一段高くなっているのが H35との相違点である。
オチキス社の騎兵用戦車シリーズの最終型がH39と呼ばれる車両で、こちらはH38の火力強化型で ある。短砲身37mm砲では対戦車戦闘に不安があるとして長砲身37mm砲を採用している。ルノー社のR35でも後期型車両は同じ長砲身砲を採用しているが、長砲身型の生産数は当戦車の方が圧倒的に多い。ちなみに車両のH35の名称などは分類上便宜的に呼ばれているだけのもので、制式には「オチキス軽戦車1935年型」などのように制式採用年で呼ばれているだけであった。
実戦
フランス軍騎兵部隊に配備されていた当戦車シリーズはドイツ軍によるフランス占領時に鹵獲され、ドイツ軍によりフィンランドやノルウェー、バルカン半島などで戦線に投入された。また一部の車台は自走砲用として転用されており、PaK40対戦車砲やleFH18榴弾砲を搭載した自走砲として生まれ変わっている。
余談
余談ではあるがフランスの武器製造メーカーであるオチキス社は文具の『ホッチキス』を開発したメーカーとしても有名である。ホッチキスの針を装填する方法は重機関銃の給弾方法を参考にしていると言われている(ホッチキスはオチキスの英語読みで、フランス語では頭文字のHを発音しないためオチキスと読むのである)。
関連イラスト