概要
AMX-10RCはフランス製の装輪装甲車である。RCとは"Roues-Canon"の略で、装輪型戦車駆逐車両を意味する。一般的には装甲偵察車両と呼ばれ、後述の通り大変に尖ったクセのある性能を誇る。
開発はフランス軍の造兵廠、イシー=レ=ムリノー工廠(AMX)。1970年に開発を開始し、1978年から生産に移行した。6×6型装輪、前面に操縦手が座り、中間が砲塔で車長・砲手・装填手、後部にエンジンを配する。
仕様
火力は極めて強力で、105mmライフル砲を主砲とする。ほとんどMBT(主力戦車)並みの主砲で、命名通り戦車すら撃破可能な火力である。当然ながら、当時の偵察用軽戦車でこのような大火力を搭載した車両は見当たらない。砲身スタビライザーは未設置で手動装填を行う。後年の改修で射撃統制システムが追加されている。
装甲はアルミニウム製で小銃を防げる程度。これ以上厚くすると機動力を損なうので、最低限に留められている。ただし、対NBC兵器防護は備わっている。
走行性能は極めて優れている事で知られる。6気筒もしくは8気筒ディーゼルエンジンで6輪が全て駆動輪であり、油気圧サスペンションは地上高を21cmから47cmまで自在に変えることができる。路上最高速度は時速85kmで無給油1,000km走行可能。1m幅の塹壕を渡り40度傾斜斜面も突破可能など、不整地踏破性能にも優れている。方向転換には車輪の向きを変えるのではなく左右車輪の速度を変えることで方向転換する機能を採用している。
運用
フランス陸軍の調達数は累計300両を越え、冷戦後まで使用されていた。またモロッコに100両以上輸出されたほか、カタールにも数両輸出されている。
現在はジャグア装甲偵察戦闘車への置き換えが始まり、一部はウクライナ侵攻への対処としてウクライナに供与されている。
しかしウクライナの戦場では、(仕方がないとはいえ)装甲が薄いことが災いし、砲弾の破片が貫通して全乗員が死亡した例もある。なおそれ以降は運用を改め、機動力を活かした自走砲のような運用がなされている。