概要
軍艦における主砲
逆に言えば、主副2種類以上の砲を装備している事がそもそもの前提条件となる。
大航海時代、軍艦に大砲を積み始めてからしばらくの間は技術的な制限で大砲の大きさとスタイルはそれほど変化が無く、したがって軍艦の砲は多少の口径と口径長の差はあれど、基本的には同じ大きさの砲をどれだけ積めるかという点が軍艦の強大さを表す指標となっていた。
100門艦などのいわゆる戦列艦と呼ばれる木造帆船の頃で、当然ながら砲に主も副も無かったのである。
18世紀の半ば、産業革命によって蒸気機関、発達した先進砲がもたらされると、舷側に砲門を並べる戦列艦は防御力の低さが問題となり、海軍は主力艦の船体を鋼鉄の装甲で防御するようになった。
装甲艦の始まりである。
すると装甲によって防御された敵艦を砲で撃沈する事は難しくなり、砲の巨大化と超射程化に拍車がかかるようになっていく。戦艦、そして大艦巨砲主義の始まりである。
しかし戦艦とて海の上に浮かんでいる以上、持てる全ての砲を敵艦の装甲を撃ち破るに足る巨砲にする事は難しいため、対戦艦用として威力重視の大口径主砲と、軽艦艇向けに取り回しに優れた小口径の副砲の複数種類の砲を装備するようになっていった。
これが主砲の始まりである。
その後の戦艦の発達において、前弩級戦艦時代には中間砲(準主砲)や補助砲を装備したり、軍用機の出現に伴って対空砲を装備するなど艦砲装備には変遷があったが、もっとも強力な砲が主砲と呼ばれるという原則は継承された。
また巡洋艦においても多種類の砲を搭載したため、もっとも強力な砲を主砲と呼んだ。
ちなみに、魚雷艇、潜水艦などに搭載された艦砲を主砲と称する場合もあるが、あくまで主砲という名称は本来、「"主"以外の砲が存在する」事が前提である。また、これらの艦艇では主兵装がそもそも砲ではなく魚雷であることがほとんどである。
ただし第二次世界大戦の巡洋艦・駆逐艦を例にとると、対艦用途の艦砲はそもそも単一口径である場合が殆どで、それ以下の口径の砲はもっぱら対空砲だったが、その場合でも最大口径の対艦砲を『主砲』と呼ぶ事が多い。
なお巡洋艦や駆逐艦では、主砲が対空射撃も可能、または戦艦・空母クラスの対空砲を主砲とするケースも多かった。(対空砲とて航空機しか撃てないものではないため)
また初期の航空母艦(空母)は水上砲撃戦を考慮した主砲を持っている場合があったが、第二次世界大戦までにそのような装備は殆ど廃れていった。
その後の空母は駆逐艦主砲に匹敵する対空砲を多数並べている艦が多く、結果として多くの駆逐艦と空母は同程度の単一口径の砲を持つが、慣例上、駆逐艦の場合は主砲と呼ぶのに対し、空母の装備する対空砲は基本的に主砲とは呼ばない。
戦車における主砲
戦車の場合、多くは旋回可能な砲塔一基に砲を一門搭載、補助的に対人目的として機関銃を搭載する形式である。つまり多くの戦車は搭載する砲はひとつしか無いのが普通であり、現代艦艇同様主砲という呼称を用いることは少ない(通常は「戦車砲」と呼ばれる)が、主砲と呼ばれる場合もある。
とはいえ、多くの砲を備えた戦車は皆無ではなかった。→多砲塔戦車
その他の使われ方
日本における野球用語で、チームの主力・長距離打者を球(弾)を遠くまで打つ(撃つ)姿になぞらえて大砲と呼ぶ慣習があり、転じてその中でももっとも有力、すなわちもっとも多くのホームランを量産する(=射程距離が長い)バッターを『主砲』と呼ぶ場合がある。
ちなみに野球で投手-捕手を意味する「バッテリー」という用語は、電池ではなく、砲塁・砲陣地・砲台という意味のバッテリーに由来している。
フィクションでの主砲
創作物でも基本的には「主砲=装備している大砲の中で最大のもの」という扱いには変わりはない。
ただ「自艦が装備する主砲と同等の砲の攻撃に耐えられる」という戦艦の主砲の定義(あくまで暗黙の了解、用途に合わせた必然だが)に当てはまらない決戦兵器レベルの高威力の兵装がある場合、主砲として扱われる作品と扱われない機体(または作品)が存在する。
例えば宇宙戦艦ヤマトでは波動砲は決戦兵器、主砲はショックカノンと分けられているが、マクロスシリーズのマクロス・キャノンは主砲とされている、等。
pixiv的な使われ方
艦艇の場合と同じく、対象の人物に搭載されている最も立派な唯一の大砲である。
※副砲が無いのにとかヤボな事は言わない!
詳しくは下記関連タグ参照。
割とお下品な用法なので、「俺の主砲が…」などと一般的な場面で使うのは控えよう。
また大砲を自称することで必然的に大きさを誇る形になっているが、「その粗末な7.7mm機銃しまえよ」などと突っ込まれることもしばしば。