概要
装輪装甲車のうち、特に大口径のカノン砲(75~105mmクラス)を装備したタイプの俗称。身も蓋もなく言ってしまえば足回りが無限軌道(キャタピラ)ではないタイヤ式の戦車。
詳細は装甲車の項目も参照して欲しいが、"戦車"という名称が付いているものの車体自体は装輪装甲車である以上、武装や装甲には制約があり、あくまでも待ちぶせなどの防衛戦闘や威力偵察、歩兵に対する火力支援などに使われる軽戦車的な車両である。戦車と区別するため機動砲や戦車駆逐車と呼ばれる事も。
近年は高性能化が著しく、経済的に主力戦車を導入できない国がその代替として導入したり、空輸での利便性から即応展開用として導入されたりしている。
メリット
- 主力戦車に比べ、生産や維持のコストが安い
- 燃費が良く、騒音が少ないため静粛性にも優れている
- 小型軽量にできるため、道路網や空輸を生かした、高速な機動展開が主力戦車よりしやすい
- 移動する際にトレーラーに乗せ換えたり、ゴムキャタピラに交換する必要がなく、時間や手間の大幅な節約になるため何かと使いやすい。
- 上記の利点を持ったまま戦車砲と同等レベルの大火力を提供できるため、一定の敵装甲車両や小型の上陸用舟艇ならば破壊しやすく、弾薬自体も対戦車ミサイルよりも安価。
デメリット
- 主力戦車ほど装甲を厚くできないため、主力戦車との正面戦闘には向かず、もちろん壁役にもなれない。最悪の場合、(大きさや速度等にもよるが)砲弾の破片が貫通して乗員が死傷する
- 発砲時の踏ん張りが効きにくく、必然的に威力が低い主砲を採用せざるを得ず、主砲を大口径化しようとすると反動制御に高い技術が求められ、コストの安さを打ち消してしまう。
- タイヤの数に重量を分散できるとはいえ、無限軌道ほどの悪路走破性は期待できず、泥濘地などは空転したりはまり込んで行動不能になる可能性もある。
- ランフラットタイヤ/コンバットタイヤによって被弾時に一定の走行能力が保てるとはいえ、タイヤごと吹き飛ばされればそれにも限度がある。
なお、冷戦後にNATOおよびワルシャワ条約機構諸国が核以外の兵器について取り決めた軍縮条約であるヨーロッパ通常戦力(CFE)条約は、戦車に相当する主砲火力・装甲・路外機動力を全て備えた装輪装甲車であれば戦車と見做すと定めている。
つまり現在の欧米諸国の「装輪戦車」は、火力は確保しつつ戦車扱いされないように装甲と路外機動力のどちらかまたは両方で妥協した装輪車両であるとも言えるだろう。
装輪戦車として扱われうる装甲車の一覧
ここではpixiv百科事典に記事のあるもののみを取り扱う。それ以外の「装輪戦車」については外部リンクを参照。
- チェンタウロ戦闘偵察車
- ストライカー装甲車:派生型のうち火力支援型のMGS(Mobile Gun System、機動砲システム)が該当する。
- 16式機動戦闘車
- ルーイカット
- AMX-10RC:偵察戦闘車だが、105㎜砲を搭載しており火力は高い。しかし上記デメリットの内、砲弾の破片が貫通した事例が存在する。