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概要

パラドクス英語:Paradox)とは、ある特定の物事を考える時に生じる問題の一種で逆説とも。パラドックスとも言われる。

一見妥当に見える前提と理論であるが、結果として受け入れがたい結論が生まれ、それを問題だと判断した際にその理論を指して呼ぶ言葉。基本的にはどのように解釈しても矛盾が生じてしまうものを指す。広義には矛盾は生じないが直感と実際の答えが大きく異なるものも含み、これは疑似パラドクスと呼ばれる。

似たような言葉としてジレンマがある。ジレンマは論理の整合性を問うものではなく、損得がからんでくる事象でどれが最善策かを論理的に特定しにくいものを指す。もともとは数学哲学の世界で使われていた言葉だったが、なんにでも応用できる考え方のため、様々な分野で使用されるようになり、現在では、「矛盾」「ジレンマ」「意図に反した結果」「理論と現実のギャップ」を表す言葉にもなっている。

パラドクスの「パラ(para-)」とは「反対の」という意味を持つ冠詞であり、しいて対義語をあげるなら「オーソドクス(orthodox)」の「オーソortho」は「正しい等の意味を持つ」となる。

主な「パラドクス」

クレタ人のパラドクス

  • クレタ人が「クレタ人はみんな嘘つきだ」と言った時このクレタ人の発言は真か偽か、というものであり自己言及のパラドクスと呼ばれる。ただし「クレタ人には嘘つきもいれば正直者もいる」と解釈すれば何も矛盾は生じない。これは日常生活でもよく例を見付けることができ、例えば「張り紙禁止」と書いてある張り紙等がそれにあたる。これらのパラドクスはメタ言語などにより解決を見出すことが出来る。
  • 嘘つきのパラドクスとも言われる。


全能のパラドクス

  • 何でもできる存在は、自分にも持ち上げられない石を作ることができるのか。というもので上の自己言及のパラドクスに似ている。
  • もし自分が持ち上げられない石を作った場合、その石は持ち上げられない、故に「全能では無くなる」。作れない場合、できないということなので全能ではない、というものである。
    • 「その石を作った時点で全能でなくなる」と考えれば一応筋は通るのだが……。


人食いワニのパラドクス

  • ワニが一人の人間に「自分が今から何をするか当てたらお前を食わないが、外したら食う」と言った場合、ここで「お前はこれから私を食う」と答えたとする。こうするとワニが人間を食べた場合人間の言ったことは正しい事になる。即ちワニは人間を食べられない。しかしワニが人間を食べなければ人間の言ったことは誤りとなりワニは人間を食べなければならない、という上の全能のパラドックス同様にどちらを行うにせよ矛盾が発生するパターン。
  • 刑事ドラマ古畑任三郎』第13話「笑うカンガルー」では、ワニをライオンに置き換えたものが紹介された。


アキレスと亀

  • 足が遅いとされると俊足で有名なアキレスが競走を行うとする。ハンデとしてアキレスは100m後ろからスタートする。アキレスは1秒間に10m、亀は1秒間に1m進むとする。するとアキレスが100m進んだ時に亀は10m先を進んでいることになる。
  • そしてまたアキレスが10m進んだ時には亀は更に1m先を進んでいることになる。更にアキレスが1m進んでも亀は10cm先にいる……。
  • これを繰り返すとアキレスは亀に一生追い着けない、というものである。実際には何のことは無くおよそ11.11秒後にはアキレスは亀を抜かすことになる。これは説明の仕方によりパラドクスが生じている例である。


抜き打ちテストのパラドックス

  • ある時先生が抜き打ちテスト、即ちいつやるか分からないテストを来週の月曜から金曜のいずれかにやることを予告した。それに対してある生徒が「木曜の夜までテストが行われなければ金曜日にやることが分かる、よって金曜日にはテストは無い。すると木曜日がテストが可能な最終日である。しかし木曜日までにテストが行われていなければ木曜日にやることが分かる。よって木曜日にテストは無い。これを繰り返すと月曜日までテストは出来ず抜き打ちテストは出来ない」と主張した。これは一見すると正しいように見えるが実際には異なる例である。
  • 「死刑囚のパラドックス」あるいは「予期しない絞首刑のパラドックス」とも呼ばれる。
  • この話のポイントは複数存在する。
    • 「いつやるか分からない」の厳密な定義。これの解釈次第では何も矛盾は生じない。
    • 「○曜日にテストはできない」と生徒が予測した時点で、その日に抜き打ちテストをすることが可能になってしまうということ。
    • 未来の出来事を前提として論理を組み立てていること。月曜日にテストができるかどうかを判断するのに「金曜日にテストはできない」という事象を前提とすることはできない。
    • 木曜の夜になった時点で先生の発言に矛盾が生じてしまうこと。金曜日にテストをやってもやらなくても矛盾してしまう。
  • 生徒が「先生、今日は抜き打ちテストができないはずです」などと言うと、逆に抜き打ちテストが可能になってしまうのである。


砂山のパラドクス

  • 今ここに10000粒ので作られた砂のがある。この砂山から1粒の砂を取り除くと9999粒の砂となるが確かに砂山である。同様に9998粒にしても砂山と言える。ではそれを繰り返して最後の1粒の砂となった時、これは砂山と言えるかどうか?
  • これは数学的帰納法を利用したパラドクスであり似たようなものにハゲのパラドクスというのもある。こちらは「髪の毛が1本の人はハゲである。髪の毛が2本になったとしてもハゲであるといえる。ならば髪の毛が増えてX本になったとしてもハゲである」というものがある。
  • このパラドクスは数学的帰納法の誤用によって生じる。例えば砂山にせよハゲにせよ定義が曖昧である。そのため、例えば5000粒以上の砂が積んでいれば砂山だが4999粒以下では砂山で無い、と定義したとすればパラドクスは生じない。ただし一個差程度で砂山が砂山でなくなるとは考えにくく、哲学的にはあまりこちらは公認されておらず、他の考え方として、砂の集積物が砂山と呼ぶことを否定したり、砂山から砂粒を1つ取り除いたとき、必ずしも砂山のままではないと主張したり、一粒の砂であっても砂山と呼べる…などと定義することでパラドクスを回避する。


殺人ジョークのパラドクス

  • BBCのコメディ番組モンティ・パイソンのスケッチ(コント)の一つで「読めば必ず笑い死にする世界一面白いジョーク」を他人に披露する事は出来るか。
  • 作中これを書いた作家とそのジョークを読んで死亡。ジョークは100ヤード先から読んでも笑い死にする大変強力な殺傷能力を保有していたため、当時ナチスドイツと戦争状態にあった英国軍はこれをドイツ語に翻訳して兵器として利用する事を思いついた(読めば死ぬため、一人で全文翻訳する事が出来ない。よって翻訳家は一人に付き一単語ずつ翻訳する事になった)。翻訳されたジョークはドイツ語を理解していない兵士にのみ配給され、お堅いSS将校サンすら笑い死にさせるほどの猛威をふるったが、終戦後は英国軍に恐れられ丁寧に埋葬された。
  • 結局、ジョークの何が面白かったのかは誰も知らない。「見れば必ず死ぬ画像」とか「聴けば必ず死ぬ音楽」の類いのパラドクスの始祖とされる。


親殺しのパラドックス

  • 過去に遡って自分を産む前の親を殺した場合、自分は生まれてはこないはずである。すると親は「存在しないものに殺される」こととなりこれは矛盾するため、自分が生まれてくるという矛盾である。実際にはタイムトラベルそのものが現段階では不明であるがSFなど、タイムトラベルを取り扱った作品ではこのパラドックスが登場することもある(バック・トゥ・ザ・フューチャーなど)
  • 作品によっては親は殺せない(即ちどうやっても親を殺せないから自分が存在する)もの、親を殺したとしても自分は死なない(時間軸が別のものになる)もの等が存在する。


無限ホテルのパラドクス

  • 客室が無限にあるホテルには「満室=もう入らない」の規則があてはまらない。
  • 論理的には正しいが、直観的には違うパラドックス。具体的に言えば客室が無限にあるホテルがあり、今無限の客が宿泊している。しかしながらここに1人の宿泊希望客が現れた。支配人はアナウンスを行い全ての客を現在の部屋の番号の1つ上の番号の部屋に移動させた。これにより1番の部屋が空くため宿泊希望客は無事宿泊が出来た。次に無限の人数の宿泊希望客が現れた。すると支配人はアナウンスで全ての客を現在の部屋の番号の2倍の番号の部屋に移動させた。これにより奇数番の部屋が空くため無限の宿泊希望客は全て部屋に入れた、というもの。


シュレディンガーの猫

  • の中にがいる。生きているか死んでいるかは開けるまでわからない。箱を開けるまで、猫は生きていると同時に死んでいる。


テセウスの船

  • すべての部品を交換したは建造当初と同じと言えるのか、古い部品で組み立てたもう一つの船とではどちらが「本物」か、という問い。似た事例として「創業当時から『継ぎ足し継ぎ足し』してきた秘伝のタレは創業当時と同じと言えるか?」というものが有る。
  • これに関しては「創業以来厳しい品質管理を徹底してきた」事実が本質なので、創業時の成分が残っているか?だとか同じタレなのか?など、同一性を問うのは可能だが不適切な例えとの見方もできる。


スワンプマン

  • 「テセウスの船」と同一のパラドックス。雷に打たれて死んだ男Aと、沼の泥から生まれた物体B。外見から記憶までAと全く同じであるBのアイデンティティーを問う。


ベリーのパラドックス

  • 例えば「19文字以内で記述できない最小の自然数」という自然数の定義文は、しかし19文字で記されているため矛盾してしまう。このパラドックスは「ZFC公理系」を使うことで回避することが可能らしい。例えば「ラヨ数」と名付けられた巨大数は、このパラドックスを回避している。


疑似「パラドクス」

中国語の部屋

  • 中国語を理解出来ない男を部屋に閉じ込め、マニュアルに従った文通をさせるという物。男は中国語を見た事も聞いた事も無いが、『この手紙にはこの返事を返せ』というマニュアルに従う事で完璧な答えを部屋の外に返信出来る。部屋の外に居る者から見れば、まるで中の男が中国語をマスターしているように見える。しかしながら当の男は中国語が全く分からないまま返事をしているに過ぎない。


ヘンペルのカラス

  • 世界中の黒くないものを調べて「カラスではない」と証明すれば一羽もカラスを調べることなく「カラス=黒」を証明できる、という理論。これは対偶を利用した論理である。対偶とは本来の命題が「1+1=2である」だった場合に「2でなければ1+1でない」となるものである。
  • 対偶と元の命題の真偽は一致するため「カラスは黒色である」という対偶である「黒色で無ければカラスではない」が成り立つことになる。その為、あらゆる黒くないものがカラスでないことを示せば確かにカラスは黒色である事をカラスを見ずに証明できる。しかしながら当然黒いものは有限とはいえ限りなく多い為、調べ尽くすのはまず不可能( 悪魔の証明 )である。


フェルミのパラドックス

  • この宇宙は膨大な銀河の集まりであり、ならば太陽系のような星系も無数に有る。よって地球と同じ条件の星は無数に有るはずなのに、宇宙人は未だに見つかっていない。なぜ宇宙人の居る確率が非常に高いのに、宇宙人は見つからないのか?
  • 仮に宇宙人が存在した場合は文化や価値観の違いで地球に来ようとしないか、あるいはケセラー・シンドローム等で地球に来るのが不可能だからというのが現在の定説である。ただし地球人の側が宇宙人を見付けられていない事の説明にはなっていない。


πのパラドクス

  • 無限乱数列(0~9の数字が不作為で並んでいる数列)であるπの中のとある部分を切り取ればどのような自然数であっても含まれている、というものである。これはπに限らない。実際に調べることは不可能に近いが、これは無限のパラドックスとして実際に正しいとされている。


誕生日のパラドクス

  • 何人の人を集めれば、同じ誕生日の人が二人いる確率が50%になるだろうか。論理的矛盾ではなく、直観的な答えと全く違うという意味のパラドックスであり多くの人は直感で100人以上と答えるのではないかと思われる。実際に確率を計算してみると「同じ誕生日の組合せが1組でもある」という事象の余事象は「同じ誕生日の組合せが1組でもない」であるためX人居る時に全員の誕生日が違う確率を求める。
  • 2人目が1人目と誕生日が異なる確率は364/365である。3人目が1,2人目と誕生日が異なる確率は363/365である。X人目の誕生日が1,2,...X-1人目の誕生日と異なる確率は(366-X)/365であるためそれらを全て掛け合わせたものを1から引いた数が「同じ誕生日の組合せが1組でもある確率」となる。これが50%を超えるのは23人の時であるから実際には23人居れば同じ誕生日の人が二人いる確率は50%を超えることになる。


モンティ・ホール問題

  • モンティ・ホールが司会者を務めるアメリカのゲームショー番組「Let's make a deal」の中で行われたゲームに関する論争に由来する。
  • ゲームのルールは以下のようなもの

・3つのドア (A,B,C) があり、(景品、はずれ、はずれ)がランダムに入っている。
・挑戦者はドアを1つ選ぶ。
・どのドアが当たりかを知っている司会者が、残り2つドアのうち1つを必ず開ける。
・司会者の開けるドアは、必ず「はずれ」である。
・司会者は挑戦者に「ドアを選びなおしてよい」と必ず宣言する。
・挑戦者はドアを変えるべきか否か?

  • 数学者を含む多くの人が「残ったドアは2つなのだから当選確率は1/2であり、変えても変えなくても当選確率は変わらない」と錯覚した。だが実際は挑戦者が選んだドアの当選確率は1/3で、残ったドアの当選確率は2/3なので、変えた方が当選確率が上がる。
  • なぜ変えた方が当選確率が上がるのかは、以下の通り。
・最初にドアが3つ示された時点で数学のルール上、分母の数は「3」であり、その問題中変わる事は無い。
・挑戦者が選んだドアAは3つの内1つなので当選確率は1/3。残ったドアBとドアCの当選確率は2/3。
・どのドアが当たりかを知っている司会者が、わざとはずれのドアCを開けてみせる。この時点で、司会者が開けたドアCの当選確率は「0」になり、残ったドアBに当選確率2/3が集約される。しかし、挑戦者が選んだドアの当選確率は1/3のまま。
・司会者は挑戦者に「あなたはドアを変えてもいいし、変えなくてもいい」と言った。
・挑戦者はドアを変えるべきか否か?
  • ドアが100ある場合を考える
・最初にドアが100示された時点で数学のルール上、分母の数は「100」であり、その問題中変わる事は無い。
・挑戦者が選んだドアは100の内1つなので当選確率は1/100。残った99のドアの当選確率は全て99/100。
・どのドアが当たりかを知っている司会者が、わざと98のはずれドアを開けてみせる。この時点で司会者が開けたドアの当選確率は「0」になり、残った最後のドアに当選確率99/100が集約される。しかし、挑戦者が選んだドアの当選確率は1/100のまま。
・司会者は挑戦者に「あなたはドアを変えてもいいし、変えなくてもいい」と言った。
・挑戦者はドアを変えるべきか否か?

サイコロの確率

  • ○が3つ、△が2つ、×が1つ描かれている6面サイコロがある。このサイコロを2つ用意して、同時に転がしたときに、最も高い確率で現われるのはどの印の組み合わせか、という問題である。多くの人が、○の面が一番多いのだから「○と○」と直感で答えるだろう。だが、この直感は間違っている。
  • 非常に単純な事だが、6×6の全36通りの組み合わせを書き出してみると、「○と△」の組み合わせが12通りあって確率が最も高い一方、「○と○」の組み合わせは9通りである。
  • もちろん、これは数式で簡単に示すことができる。「○と○」となる確率は1/4(=3/6×3/6)であり、「○と△」の組み合わせとなる確率は1/3(=3/6×2/6+2/6×3/6)となる。


創作作品の「パラドクス」

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数学 哲学 論理
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