『月刊コミックブレイド』(マッグガーデン)2008年12月号(2008年10月発売)より連載開始し、2011年1月号にて連載終了。全5巻。略称は「パラブル」。
ストーリー
5人の主要キャラクターと共に、『天使の試練(パラドクス)』と呼ばれる謎に挑むミステリークイズ×学園ファンタジー。
西暦2008年、人類は未知の超常的存在「天使」の脅威に晒されていた。
天使は人間に謎を課す。『天使の試練(パラドクス)』と呼ばれるその謎に、正解すれば天恵(メダル)がもたらされ、失敗すれば天罰(ペナルティ)が下される。
人智を越える奇跡のような報酬と、人智を越えた暴威による破滅。繰り返される異常気象と暗躍する組織。
これはそんな青い星の上を強く逞しく駆け抜けた少年少女の旅の記録。
S県青葉市、国立栄光学園……通称『A校』の生徒会メンバーたちが知恵と勇気で立ち向かう対神問答合戦奇譚。
そう、人生はたった一度きり。どうせだったら楽しい方がいい。
人生を楽しくするのは程好い娯楽に程好いスリル、そして、素敵な仲間がいればそれで十分。
構成
Stageごとに前半を出題編、後半を解答編として分けられており、出題編で提示された「試練」に読者自身が挑むメタフィクション構造の推理パズル。ヒントとなる箇所には“白い羽根”によるマーキングがなされている。と言っても謎解きは登場人物に任せ、物語だけを読み進めることも可能。
漫画作品ではあるが作中で選択肢が登場することもあり、誤った選択肢に対応したページへ進むとバッドエンドを迎えるというゲームブック風の演出もある。
後半になると「逆襲編」と銘打たれた2部へと移行し、ミステリー的な要素は控えめとなり、ドラマ部分の解決が主体となる。1部を大きな出題編として、解答編にあたるのが2部。
キャラクター
A校生徒会
姫川 ブルー・クリスティア
本編の主人公(ただし第一部ではヒロイン扱い)。日本人と英国人のハーフで、一年生ながらに生徒会長を務める正義感の強い少女。愛称はクリス。『姫』。
金髪で小柄な愛らしい容姿で、性格は明るく好奇心旺盛で行動的、日々学園のために奔走する頑張り屋。しかし努力が空回りしてしまうタイプで、生徒達からの評判はあまり良くない。
実力的にはまだまだ未熟だがどこか人を惹き付ける部分があるようで、クセの強い生徒会メンバーを引っ張っている。
蒼十郎の視点で展開した第一部では殊更に純朴な性格として描かれていたが、彼女自身の視点で展開する逆襲編では時折垣間見せていた本性が描かれた。
聖 蒼十郎
『魔法使い』の異名を持つ、第一部における主人公。A校高等部2年生で、生徒会では正式な役職はなく見習い扱い。
性格は温和だが臆病で、下級生からカツアゲをされそうになっても強く抵抗できないなどから周囲からはヘタレ扱いされている。しかし頭脳は優秀で、特に発想力や想像力に特筆もの。天使の試練を攻略するにあたって生徒会の中で要となる人物。
多くの天使を攻略していくが、皮肉なことに……
恐怖やストレスの負荷が許容量を超えると手足の震えや嘔吐感に苛まれ行動不能になり、時には気を失ってしまうことも。さらに酷いときには生命状態も危ぶまれる。
実は幼い頃に愛と親密な関係にあったが、ある事件に巻き込まれて記憶喪失となってしまい現在は生徒会の仲間としての付き合いに留まっている。
九条 愛
A校高等部2年生で、生徒会会計 兼 書記 兼 風紀委員長。『鬼神』の異名を持つ。蒼十郎や鉄雄とは同じクラス。
ショートカットに眼鏡の似合うクールビューティ。仕事狂で生徒会の事務仕事は実質彼女一人で全てをこなしている。
国内屈指の名家である九条家の令嬢で、彼女の美貌と家柄に惹かれるものは男女の区別なく後を絶たない。だが本人はごく少数を除いて徹底的に他人に感心がなく、むしろ自分から他人を拒絶している節すらある。ただし鉄雄とは犬猿の仲で頻繁に言い争う姿が見られ、彼相手には時に自分から喧嘩を売る場合もある。
蒼十郎とは幼なじみだが、親しかった彼が突然行方不明となってしまい、再会後も記憶喪失と錯乱により刃物を向けられて拒絶され、絶望してしまう。
『鬼神の雷(トールハンマー)』という必殺技を持つ。基本は3回転ソバットだが、様々なバリエーションも存在する。
鋼田 鉄雄
A校高等部2年生で、生徒会書記 兼 応援団長。『鉄人』の異名を持つ。蒼十郎や愛とは同じクラス。
赤毛で大柄、鋼鉄の肉体と賞される屈強な身体を持ち、喧嘩では負け知らず。素行が悪く学園内では不良のレッテルを貼られているが、精神年齢が高く面倒見は良いため、同じはみ出し者達からは広く慕われている。また学園内では彼を番長と呼んだり、兄貴分と祭り上げる鉄雄団なる愚連隊を結成する者達もいるが、鉄雄自身はどちらも存在を認めていない。
高い身体能力と戦闘能力を誇り、生徒会内では肉体労働担当。しかし本作が謎解きに主眼を置かれている作風のため、頭脳派ではない彼が活躍出来る場面は限られており、原作者自身からも「不遇」と言われる。
イベントや天使の試練で自分の出番がないと見るとさっさと表舞台から下がって昼寝してしまうなど、面倒と思う事への参加は消極的。しかし父・鉄心や生徒会仲間の愛など、反目する相手からの挑発にはムキになることもある。
神堂 竜也
A校高等部3年生で、生徒会副会長。『百面相』の異名を持つ。フランス出身
明るめの長髪にすらりとした長身、甘いマスクを持つ美男子。性格は極めて軟派で軽薄、女性とみれば片っ端から声をかける女たらし。しかし交友関係は広いため幅広い年代の友人がおり顔も広い。
その異名の通り変装が得意で、子供や人外以外ならばあらゆる姿に変装可能。また優れた身体能力と潜入能力があり、試練攻略に必要な情報収集において多大に貢献する。
あまりにも天使の正体や機関の内情に詳しすぎるため、怪しさと混乱を振り撒いていく頼れる先輩。
クラリス / イザナミ・アメノムラクモ
第1部では18歳という若き国際天使対策機関所長として登場した少女。『全能者(ソウルドライバー)』の異名を持ち、あらゆる天使降臨事件の解決と全容解明を使命と語る。試練攻略に関しては蒼十郎や愛をも上回る、国際天使対策機関の所長に相応しい実力者。ときに生徒会の活躍を見守り、ときに敵対する。神堂とは何らかの因縁があるようだ。
逆襲編が開始してすぐ記憶喪失となり、神堂に拾われて「クラリス」という名前となってA校高等部3年生に編入、生徒会入りすることとなった。
1部では謎めいた女性だったが記憶を失って以後はやたらポジティブな性格になり、自身の記憶喪失さえ仕方のないことと割り切って、あっという間に生徒会のメンバーとして馴染んでいった。
可愛い子が好みで生徒会のメンバーたちに性別を問わずアプローチをかける。神堂だけは「軽い男はNG」と塩対応であったが、その一方でどこか見覚えがある模様。
長い金髪をお下げに結った美少女。その容姿はイザナミエルと瓜二つである。
サブキャラクター
鋼田 鉄心
本庁天使課に勤める刑事で、階級は警部。42歳。鋼田鉄雄の父。
面倒見が良く部下からは慕われるが、上層部からは反抗的な態度を取ることが多いために疎まれている。
ずば抜けた腕力と戦闘力を誇り、彼の放つ鉄拳は岩をも砕く破壊力があるという。PXP上で、総合的な戦闘能力では作中最強であることが明かされた。
息子とは反目しあっており、顔を合わせる度に殴り合いの喧嘩となっている。
大空 美鈴
A校の校長を務める25歳の女性。また、クリスティアの義母。
生徒達を一人前に育てるという強固な信念を持つが、そのためには一切手段を選ばず、体罰厳禁の風潮を鼻で笑うかのように鉄拳制裁も辞さない。その苛烈さゆえ優等生からも不良からも女帝として崇められている。愛が尊敬する唯一の教師。
冬の城から解放されたクリスティアを養女として引き取り面倒を見ているが、非常に過保護。自分のことをたとえ校内であろうとも校長ではなく「ママ」と呼ぶことを強要する。
校長職の他にもデザイン事務所を構えたり、機関とも取引するなど、活動範囲は一介の教師に留まらない。
九条 真奈
国内屈指の名家・九条家の現当主であり、九条愛の母。34歳。
童顔で常に穏やかな笑みを湛えているが、その手腕は泣く子もショック死する“獄炎鬼”と言われ、機関でさえ彼女の動向には気を払うほど。
精神性が人間社会からはかけ離れており、そのことを知った幼い愛はショックを受け以来ほぼ絶縁状態となっている。
イザナミエル
本作のナビゲーターであり、最高位の天使。また物語のラスボスでもある。レオタードに身を包み仮面とシルクハットを被った少女の容姿をしている。
彼女がコマを通して読者に語りかけることで、読者自身も作品に参加しているのだという気分を味わわせるのに一役買っている。
Web小説『アルセウスの冒険』の登場人物
アルセウス・エクスカリバー
小説における主人公で、国際天使対策機関のエージェント。機関に入る前は盗賊を生業に世界を放浪していた。
空色の髪に赤色の目をした少年。A校生徒会の神堂竜也のかつての姿。
「エクスカリバー」は、機関において最も優秀なエージェントのみが就くことの出来る最高位の階級である。
ブルー・バルムンク
機関に所属する科学者。24歳。性格は温厚で、子供っぽさも残す長身の青年。
「バルムンク」はエクスカリバーより2ランク下の階級。
神堂 明菜
国際天使対策機関のエージェント。階級はエクスカリバーより1つ下の「ティルヴィング」。
20代前半で黒髪長身の美女。アルセウスの同僚であり、優秀なエージェントである。
アルセウスに対し、友情の一言では表現しきれないほど親密で献身的な態度を見せる。
氷室 竜也
国際天使対策機関のエージェント。階級はティルヴィング。
30代前半でスキンヘッドの巨漢。アキナと同様にアルセウスの同僚であり、友人。
義理堅く律儀な性格だが、直情型であるためおちょくられやすい。
クラリス・クラストキー
機関の所長。17歳という若年ながら、突出した行動力と判断力で機関の頂点に君臨した。
赤い髪に金色の瞳、童顔の割りに目つきの鋭い美少女。アルセウスと交際している。
その他
- 連載中、コミックブレイド本誌にてPXP(パラドクス・ブルー・パラダイス)というオマケコーナーが毎月1ページ(最終回のみ3ページ)掲載されていた。内容はキャラクター同士による楽屋裏的な雑談、小ネタ、追加試練など。設定や伏線に関わる部分は、本編でほとんど回収されている。いちおう。
- ネット展開として公式特設サイト「PARADOX BLUE ONLINE」が開設されていた。web限定のPXPや設定画が見られるPXT、本編の前日譚的な内容となる小説「アルセウスの冒険」が公開されていた。本編の裏側、特に機関と黒幕に関わる部分を語るものだったが、連載終了後一区切りがついたところで更新停止、そのまま立ち消えとなってしまった。
- 単行本2巻~4巻のカバー下には、本編を劇中劇と位置づけた書き下ろしの短編小説『パラドクス・ブルー危険領域 俯瞰パラドクス・ブルー』を収録。登場人物はパラドクス・ブルーの読者である高校生・榊コウタロウと、その幼馴染の日比野アカリと加賀マサヒコ、天使イザナミエルの4人。
- 単行本1巻発売時に、EXTRA Stage『ロンドン・デイズ』の試練を攻略して応募すると正解者の中から抽選で66名に原作者書き下ろし小説をプレゼントするというキャンペーンを行っていた(2009年6月に応募を締め切っている)。小説のタイトルは『フローレンスの日記』で、内容はフローレンス・ホームズを主人公にアーサー・ワトソンとの交流を描いた青春小説。
- 2巻のEXTRA Stage『小林少年道中記』でのキャンペーン内容は、正解した応募者全員に追加試練付きのポストカードと、抽選で1名に作品登場権をプレゼント(2009年11月応募締め切り)。
- 3巻のEXTRA Stage『ジャンヌ様燃ゆる!!』では正解した応募者から抽選で100名に追加試練付きポストカードをプレゼント(2010年3月応募締め切り)。ちなみに4巻にはEXTRA Stage自体はあるがプレゼントキャンペーンは実施されていない。
- 5巻では完結記念プレミアム企画として、応募者全員サービスで原作者書き下ろし小説をプレゼント予定(応募締め切り2011年4月10日必着、1000円分の切手が必要)。
- マッグガーデンがコミックマーケット向けに発行している『コミックブレイド海賊本』のVol.VII~IXに、各2ページずつの番外編が掲載されている。特にIXに収録の『その後のパラドクス・ブルー』は、コメディ仕立てながら最終回より数年後の生徒会メンバーの姿が見られる貴重なものとなっている。