概要
パラドクスの一種。
世の中のカラスは全て黒いか否かを調べる話を元に、何かを証明する事の違和感を提唱した物語。
提唱者であるカール・ヘンペルにちなみ、この名前で呼ばれている。
内容
『カラスは全て黒い』ということを証明したい人間が居るとする。そこでその人間はその証明の為、世界中の「黒くないもの」を全て集め、その中にカラスが存在しないことを確認するという方法をとることにした。
黒くないものが全てカラスでなければ、カラスは全て黒いということも証明したことになるという寸法である。
かくしてその人間は世界中の黒くないものを確認し、その中にカラスが含まれてなかったことから前述の証明に『成功』した。
しかしそれと同時に、その人間はある事に気付く。
自分がカラスを一羽も調べることなく、カラスは黒いということを証明しているということに。
どういう事なの…
この物語がおかしいように見える理由は、世界中の黒くないものを調べたという無理難題を達成している点にある。この行動が常人には不可能である為、見た者は違和感を感じるのだ。
高校数学で習う通りある命題とその対偶命題の真偽は一致するため、あることを証明するためには、その対偶を証明してもよい。この場合『カラスは全て黒い』かどうかを調べることは『黒くないものは全てカラスではない』かどうかを調べることと同じなのである。
カラスを調べずにカラスのことを証明できるというのも理論上はおかしくない話なのだが、譬え話が途方もないスケールなので感覚的に違和感を感じてしまうのだ。
ちなみに現実的な話としては、黒くなければカラスでないとは限らない。
一部の品種やアルビノのカラスなど、『黒くないがカラスである』という存在は実在している。