概要
『夢』の世界を舞台に夢幻三剣士であるのび太・スネ夫・ジャイアン、魔法使いのドラえもん、王女であり男装の剣士である静香の5人が、災いの根源たる妖霊大帝オドロームの魔手からユミルメ国、ひいては夢と現実の世界を救うべく戦う物語。
本作のモチーフとなったのは『ダルタニャン物語』こと三銃士で、竜のエピソードについては英雄ジークフリートの伝説を元にしていると思われる。また本作に登場する地名は、多くが童話作家から名が取られている。
なお、原作者である藤子・F・不二雄は今作を「予定していたゴールが外れてしまった」と語っている。当初は夢と現実の境界線が混ざる恐怖を描く予定だったが、描き進める内にキャラクターが暴走(いわゆるキャラの一人歩き)し、大長編ドラえもんの「非日常的でも日常性の世界観は壊さない」というこだわりも加わり、ラストが異なる方向に動いてしまったというのである。それでも、劇終盤の登場人物をのび太としずかだけに絞ったことで、劇中でも貴重な二人の明白な恋愛感情が深く掘り下げられたエピソードとなった。
原作と違い、映画ではラストの方でひみつ道具「気ままに夢見る機」を回収しに未来からきたロボットがトリホーそっくり、のび太たちの学校があり得ない位置に存在するなど、すこしふしぎな謎を残している作品でもある(アニオリによる原作改変と言えばそれまでだが)。
物語の規模としては歴代最小クラス(実質的にはゲームの中だけの物語である)と言え、ジャイアンとスネ夫が終盤でマイクロアンテナを外す場面を最後に出番が終了し、最終決戦に参加しないなど珍しくメインキャラクター5人が勢揃いしてない状態でエンディングを迎える点でも異色と言える(厳密に言えばのび太の魔界大冒険の舞台はパラレルワールドなので、ドラえもんとのび太とドラミを除いた他キャラは序盤と終盤以外は同一存在の別人であり、のび太の創世日記も創世セットの別宇宙を除けば「夏休みの宿題の自由研究」という日常の延長上と言えるが)。
同時上映作品は『ドラミちゃん青いストローハット』、『ウメ星デンカ宇宙の果てからパンパロパン!』。
エンディングテーマは『世界はグー・チョキ・パー』、挿入歌『夢の人』。両曲とも武田鉄矢によるもので、後者は名曲と名高い。
あらすじ
魔王にさらわれた静香を救うため、正義のヒーロー「黄金ハット」になって活躍する夢を見ていたのび太。しかしクライマックスまであと一歩というところで、ママに起こされてしまう。
夢と現実の落差を嘆くのび太は、せめて夢の中では良い格好ができる道具が欲しいとドラえもんに懇願するも突き放されてしまう。しかし家出先の裏山で夜遅くまで気絶していた為にドラえもんを心配させることになってしまい、結果として入れたカセットしだいで自由に夢を見ることのできるひみつ道具『気ままに夢見る機』を出してもらうことに成功する。
さっそく夢を見るのび太だが、それにかまけて宿題をやり忘れてしまったので、翌日にしかたなく裏山で大急ぎで済ませることに。
しかしそこはサボり症ののび太。一向に捗らず途方に暮れていると、突如として奇妙な老人が現れ「知恵の木の実」なるものを授けられる。勧められるまま食べてみると急に頭が冴えわたり、あっという間に宿題を終えることができてしまった。さらに帰り道、再び姿を見せた老人は気になる言葉を残して飛び去っていく。
君はもっと素晴らしい力を授かるのです。ただし、『夢幻三剣士』の世界でのことだが…
この言葉にまんまと乗せられたのび太はドラえもんに無理を言って『夢幻三剣士』のカセットを買ってもらい、夢の世界を冒険していくことになる。
主要人物
- ノビタニヤン:『夢幻三剣士』の主人公である選ばれし白銀の剣士。この配役だけは最初からのび太本人である。最初はシルクの無責任なガイドに振り回されたりスネミスに召使いとしてコキ使われたりと散々だが、スネミスとジャイトスを出し抜いて白銀の剣と兜を手に入れてからは名実ともに勇者として活躍していく。
- スネミス:スネ夫にそっくりな夢幻三剣士の一人。天下一の名剣士を自称する子爵。最初こそノビタニヤンを召使いとしてコキ使っていたが改心し、仲間となる。のちにスネ夫本人にやってもらう。
- ジャイトス:ジャイアンにそっくりな夢幻三剣士の一人。荒っぽい性格に、馬鹿力から繰り出す力強い剣術がウリで、白銀の剣士を自称する。ただし、仲間を思う気持ちは人一倍。のちにジャイアン本人にやってもらう。
- シルク:静香にそっくりな小さな精霊。『夢幻三剣士』のナビゲーターを務めるが、かなり無責任な言動をとる。後に「あくまで物語への案内役」と開き直る。
- シズカリア:静香にそっくりなユミルメ国の王女。白銀の剣士と政略結婚させられるのが嫌で城を抜け出す。その後色々あって合流し、男装した彼女は旅の剣士シズカールを名乗って彼らに力を貸す。のちに静香本人にやってもらう。ちなみに、のび太の配役への要求によりシルクとの二役にされた。
- ドラモン:夢幻三剣士に協力する化け狸もとい魔法使いで、マジックアイテムをたくさん保有している。なお、ドラえもんがのび太達の冒険に加入する際に扮した姿なので、本来なら『夢幻三剣士』の物語に登場しないイレギュラーキャラクターでもある。
妖魔の親玉で、大きな耳と2本の触角が生えたプテラノドンのような顔をした本作の黒幕であり、ラスボス。自分がゲームのキャラクターであることを自覚しており、白銀の剣士に倒されることもわかっているキャラでもある。自身が倒されるラストを覆して現実世界へ干渉し、『気ままに夢見る機』ユーザーの全夢世界を支配しようと目論む。
ドラえもんのキャラクターの中でもかなり珍しい、一度だけ生き返る事が出来るとはいえのび太と静香を殺したキャラでもある。
六本の腕を持つ蜘蛛に似た妖魔。毒の剣を用いた六刀流の剣術と口から吐く粘着性の高い糸で戦い、土の精を操っている。
奇襲に失敗してなんとか逃げ帰るも、最後はオドロームに敵前逃亡を指摘されて処刑された。
- ジャンボス将軍(CV:郷里大輔)
象に似た妖魔。耳を羽ばたかせて飛ぶことができ、水の精と鉄の精を率いている。
のび太と一騎打ちを挑むも片耳を切られて墜落した。映画ではそれで終わりだが、原作はその後に巨大化してのび太を捻り潰そうとした。
オドロームのペットの梟。人語を操るだけでなく人間に化けたり、夢の世界と現実世界を行き来でき、現実世界から未来世界に電話を掛けるなどといった芸当も見せる。ただし、参謀とは名ばかりでそこまで優秀ではない。
白銀の剣士の出現は不可避であっても、竜を犠牲にした上での不死身にはなれない=殺害可能な利用者を捜すために人間に化け、現実世界で条件に当てはまるのび太を言葉巧みにその気にさせ、夢幻三剣士のカセットを購入させるよう仕向けた。
その他
- 竜(CV:石丸博也)
竜の谷に住む人語を解し、喋れる竜。口から吐く炎には浴びたものを石に変える力があり、その血は浴びるだけで不死身に成れるとされる。そのため、今までに多くの戦士たちが血を欲して彼に挑んでは石化され、現在の竜の谷は石像だらけとなっている。
ただし、もともと平穏を愛するなど良識のある性格であり、挑戦者たちを石像に変えていたのも自身の身を護るために仕方なかったが故の行いであった。
のび太に弱点の口髭を斬り落とされて一度倒されるが、「いくら竜でも人間の勝手で剣を刺して血を取るなんてヒドイことはできない」と止めを拒んだ彼の優しさに胸撃たれて和解。浸かれば1度だけは生き返ることができる竜のだし汁が浸み込んだ温泉と、アンデル市への近道を提供する。
見た目は原作では東洋の竜だが、映画では西洋のドラゴン。
- 熊(CV:神山卓三)
森に住む熊。
子供を助けたのび太にお礼として竜の住処を案内した。
- ユミルメ国王(CV:田中亮一)
シズカリアの父。原作では白髪姿の老人だが映画では学校の先生にそっくりであり、80ー44の引き算に手間取る家臣に対して一瞬先生の服装になって「そんな計算もできんのか、廊下に立っとれ!」と言い放っている。
用語解説
気ままに夢見る機
枕のような形をしたひみつ道具。専用のカセットをセットすることで、ゲームソフトの内容に応じた夢を見ることができ、「マイクロアンテナ」を額に付ければゲーム内の登場人物にもなれる。
夢の中でのパラメータ設定は使用者に依存するが、現実では泳げなくても泳げるようになったり、現実世界でダメなヤツほど活躍できるようになったりするらしい。
また、秘密のスイッチ「かくしボタン」が存在しており、それを押すと夢と現実を入れ替えることができる。
夢幻三剣士(ゲームカセット)
『気ままに夢見る機』の人気ソフト。内容は剣と魔法の世界であるユミルメ国を舞台に、白銀の剣士とその仲間たちが魔王である妖霊大帝オドロームを倒すといった典型的なRPG。
商品としては限定一品限りであり、説明書によれば「パワーが強く、現実に影響を与える可能性がある」とのこと。
その言葉通り、コンピュータ上のキャラクターでしかないはずのオドロームたちはシステムを超えて現実世界へ侵出しているなど、『夢幻三剣士』の夢は確かに現実世界に影響を与えている。
白銀の剣(しろがねのつるぎ)
ヨラバタイジュという雲にも届かんばかりの大樹の天辺に安置された宝箱の中にある、オドロームを唯一倒すことができるという剣。宝箱の中には他に兜、マント、籠手、具足が収められている。
剣は凄まじい切れ味を誇るだけでなく名刀「電光丸」と似たような機能を持ち、他にも魔法を受け止めたり本物のオドロームを見破って突進したりする力がある。
夢幻三剣士
作中ではノビタニヤン、スネミス、ジャイトスの3人がユミルメ国の救済を夕日に誓ったことで結成された。
しかし、終盤には「マイクロアンテナ」で夢の世界へ行っていたスネ夫とジャイアンが離脱したために事実上解散しており、最終決戦に2人は出てこない。
なお、本来は静香も最終決戦には離脱するはずだったのだが、スネ夫とジャイアンには直接話して「マイクロアンテナ」を取ってもらったの対し、静香はいつものお風呂に入っていたため、静香のママに伝言として頼んだ事で静香にちゃんと意図が通らず「マイクロアンテナ」が残ってしまい、最終決戦にも登場することになった。
関連イラスト
関連項目
うつつまくら:夢と現実を入れ替える道具。