概要
昭和に公開された最後の作品でもある。
本作の製作時、藤子・F・不二雄が体調不良で入院していたため、存命時のドラえもん映画作品の中では唯一、原作漫画の大長編ドラえもんが描かれていない。
その代わり、フィルムコミックが初めて上下巻が1988年4月28日に発売された(発行日は5月28日)。表紙絵は藤子が(1987年12月に上巻、1988年1月に下巻)描いている。
本作は西遊記がモチーフであり、唐の時代の中国を舞台としている。脚本はもとひら了が担当したが、「西遊記の世界」というアイディアは藤子・F・不二雄本人から出されたものである
この作品は道具の出しっぱなしが原因でドラえもん達の住む世界が妖怪に支配された世界になっているため、恐怖演出が強く描かれているのが特徴である(先生やママが顕著だが、学校の劇の練習の場面でのモトヒラと出来杉の台詞も中々狂気を感じる)。
また、藤子・F・不二雄が原作を用意した映画・大長編では、基本的にインテリ的な発想はスネ夫が担当するのだが、本作はジャイアンが機転を利かせる場面が多く見られる。また、ジャイアンがタイムマシンを操縦する場面がある(映画ドラえもんで、ドラえもん・のび太以外がタイムマシンを操縦するシーンは大山版『鉄人兵団』のしずかに次いで2人目)。
ドラミちゃんが終盤でドラえもん達を助けに現わるがこのデウス・エクス・マキナに関しては賛否両論が激しい。
なお、次回作もデウス・エクス・マキナの存在により賛否両論が激しくなっている。
あらすじ
小学校の新入生歓迎会に際し、のび太のクラスはのび太の案で「西遊記」の劇をやることになり、孫悟空役は出木杉がやることになった。
そんな中、孫悟空が実在すると信じるのび太はタイムマシンで7世紀のシルクロードへ向かう。そこでのび太そっくりの孫悟空を目撃し、自分を悟空と呼ぶ謎の少年と出会い、その事を他の者に告げるもそもそも架空のキャラクターであるはずの孫悟空の目撃談など誰も信じない。
引くに引けなくなったのび太は皆を連れて、唐の時代に赴き、ドラえもんのひみつ道具・ヒーローマシンでのび太自ら孫悟空に成りすましたものの調子に乗って、ボロを出し、結局バレたことで嘘つき扱いされ、ひみつ道具使い放題を行うことなった。この裏で恐ろしいことが起きているとも知らずに…
現代に帰ってくると最初はヒーローマシンの西遊記で遊び始めるもイベントなしでゲームが終わってしまい、以降も食卓でゲテモノ料理が出たり、西遊記の劇は牛魔王が悟空を食べる結末となり、ついには知人たちが妖怪に変貌してしまう。
原因は唐の時代でドラえもんがヒーローマシンの出入り口を開けっぱなしにしていた為、起動中の西遊記の敵役である妖怪たちが現実世界に飛び出してしまい、三蔵法師を食べたことでゲームキャラクターから進化し、人類を滅ぼしたためであった。
影響を受けなかったのは過去にいたドラえもん一行だけであるが元の世界に戻すには唐の時代へ戻って、妖怪軍団をヒーローマシンに回収するか倒すしかない。ドラえもんはヒーローマシンでのび太を孫悟空、ジャイアンを猪八戒、スネ夫を沙悟浄、しずかを三蔵法師とし、再び唐の時代へ向かう。
レギュラーキャラクター
彼の不注意が基で今回の事件が起きてしまうが一行の参謀役として活動。
ポスターなどではのび太と同じ孫悟空になっていたがのび太の夢の中ではお釈迦様だったぞよ。
孫悟空のポジションにつく。
珍しく、自分の提案が認められたものの主役に選ばれずに不満に思い、孫悟空を探し、偶然歴史修正のため、孫悟空になった自分を見つけ、その事を知らずに大喜びする。
当初は誰からもその事を信じてもらえず、孫悟空だと認めて貰えなかったが歴史復元の旅の途中にしずかに認めてもらえ、最後はジャイアンからも(リンレイに本当の名前を名乗ろうとした時)「お前は孫悟空だよ」と言ってもらえた。
三蔵法師のポジションにつく。
他の3人とは事なり、冷静で三蔵法師を演じるがヒロインらしく、真っ先に敵に捕らわれてしまう。
猪八戒のポジションにつく。
今作でも腕節の強さで頼もしさを見せたり、牛魔王に捕まった際には「牛丼にしてやりてぇ」と啖呵を切るシーンも。実はのび太以上に悟空役をやりたがる場面がいくつかあり、ヒーローマシンで八戒に選ばれた時もそのことで駄々をこねていた。
沙悟浄のポジションにつく。
相変わらず日常では罰ゲームをドラえもんの道具使い放題を提案するずる賢さを見せるも戦いではヘタレさを見せ、恒例の「ママ~」に加え、ママに必ず帰ることを誓うシーンもあるが本作ではママも妖怪化してしまっているので重々しさもある。
お馴染みのドラえもんの優秀な妹。歴史改変したのにもかかわらず、何らかで兄のピンチに気付き、助けに駆けつける。
タイムマシンに乗った姿で三蔵法師から観世音菩薩と呼ばれていた。
エンディング映像では兄妹水いらずが描かれ、フィルムコミックスでは「お兄ちゃんが牛魔王に食べられそうになった際に現れたのは観世音菩薩らしさを出したかったから」という意味合いも告げている。
ゲストキャラクター
リンレイ
(CV:水谷優子)
悟空を探しに来た時にのび太が助けた少年。その正体は牛魔王と羅刹女の子・紅孩児である。
両親の命令でスパイとし、潜り込んでいるが元から良心があったのか三蔵法師と旅を続けるうちに罪悪感を抱くようになり、のび太達が捕らえられた際、彼らを救い出す。なお、タイムマシンで悟空を探しに来たのび太がリンレイと普通に会話出来たのもヒーローマシンから出てきたからである。
原作の西遊記の様な炎の槍や超能力は持たない。
三蔵法師
(CV:池田勝)
実在する唐の時代の仏教の僧侶「玄奘三蔵」。経典を手に入れるため天竺への旅をしている。
実は最初からリンレイの正体をわかっており、彼がスパイとし、同行しようとしたのを知りながらもあえて彼を弟子として同行させていたり、行き場を失ったリンレイを自ら引き取るなど、誠実で心が広い人物。
三蔵法師は中性的な美青年僧のイメージが強いが、この作品では実在の三蔵法師にのっとった中年男性的な風貌で登場する。
ドラえもん劇場版において初の実在した歴史上の人物である。 キャラクターデザインは、藤子・F・不二雄作品『T・Pぼん』のエピソード『白竜のほえる山』に登場する三蔵法師に基づいている。
自分達を助けに来てくれたドラミちゃんを「観世音菩薩様(観音菩薩)」と呼んでいた。
牛魔王
(CV:柴田秀勝)
火焔山に棲む妖怪たちの王でリンレイの実父。
自身の身体の大きさを自由自在に変えることが可能で、ヒーローマシンから出た時は部下達とほとんど同じ大きさで最終決戦では身長35m、体重2万トンと化した。
この巨体でヒーローマシンを踏みつけて壊し、妖怪達の封印方法を封じたことで、ドラえもん、のび太、ドラミちゃんを追い詰めた。
しかし、のび太が最後の力を振り絞って巨大化させた如意棒で壁に叩きつけられた際に心臓が停止して息絶える。
これにより全ての妖怪達は力を失い、自身の亡骸は噴火を起こした火焔山の溶岩に居城もろとも飲み込まれた。
捕らえたドラえもんたちを食べようとした際、メインの三蔵法師ではなく、最初にドラえもんを「まずはそこの太った(美味しそうな)青ダヌキからだ!」と言って食べようとした。ロボットなのを知らずに・・・(意外とメインは最後に取っておくタイプ?)。
のび太を「悟空」と呼んでいて、その時にのび太は「えっ!?僕の事知ってるの!?」と驚き興奮していた。
ゲームギガゾンビの逆襲にも、重要な役として出ている。
羅刹女
(CV:栗葉子)
牛魔王の妻でリンレイの実母。
空を自在に飛ぶ妖力を牛魔王から与えられており、強風を巻き起こす芭蕉扇を持っている。その力でのび太を苦しめた。
リンレイの裏切りで捕らえていたドラえもん達を解放されてしまうが、最終決戦の最中にしずかちゃん、スネ夫、ジャイアン、三蔵、リンレイを再度捕らえることに成功する。
しかし、牛魔王がのび太に倒され、夫の死を悲しむ間に自身も力を失い、火焔山の溶岩の中に落下して最期を迎えた。
形見となった芭蕉扇はスネ夫とジャイアンが火焔山の炎を消すために使用した。
夫には従順で部下には厳しく失敗して戻って来た銀角を「このドジ!」と罵った。
息子に対して冷たく見えるが「この裏切り者!」と罵倒しながらも少し躊躇う様子を見せたり、フィルムコミックでは死ぬ時に気にかけていたり母親らしい一面が出ていた。
夫と共にゲストキャラの家族が悪役という複雑な設定はのび太の宇宙漂流記のリアンの実父のリーベルト司令官や、のび太とロボット王国のチャペック先生の双子の弟のデスターなどと同じである。
金角
(CV:石森達幸)
牛魔王の子分。鎧にカタカナで「キ」と書かれている。名前を呼ばれた相手が返事をするとその相手を吸い込んでしまうというヒョウタンを持つ。幾度となく三蔵法師を狙うが、結局は逆に自分が返事をしてヒーローマシンに戻されるという皮肉な末路を迎えた。
原典の西遊記やその派生作品ではヒョウタンによる初見必殺とも言える超強敵だったが流石にロボットのドラえもん相手は分が悪かった様子。
牛魔王と違って悟空の事は知らないようである。
双子キャラあるあるで一部VHS版などでは、作画ミスで銀角になっているシーンがある。
銀角
(CV:加藤精三)
牛魔王の子分。金角の弟。鎧の文字は「ギ」。金角がヒーローマシンに戻された後に敵討ちのためにドラえもんたちを狙う。当初はヒーローマシンの特性を知っており、彼らを追い詰めるも降参したふりをしたドラえもんの機転でヒーローマシンに戻される。
最初、リンレイが自分に立ち向かってきた時は正体に気づいたのか差し出そうとしない姿勢に躊躇う様子を見せ、立ち去った。
モトヒラくん
(CV:難波圭一)
のび太たちのクラスメートで眼鏡をしている少年。
冒頭における劇の練習シーンで登場。クラスの演劇の脚本と演出を担当して細かく丁寧である。彼のモデルは、この作品の脚本を担当したもとひら了。
ヒーローマシンのコンピューター
(CV:石井敏郎)
物語の登場人物になりきり、自由に遊ぶことができる22世紀の最新ゲームマシンのヒーローマシンの中でプレイヤーに音声で説明を行う。
姫
(CV:原えりこ)
本名「ピーチ姫」(某ゲームの姫では無い)。ドラえもんがプレイしたヒーローマシンの「バイキング」中の登場人物。ドラゴンに捕らえられていた。
タイムマシン(音声)
(CV:三ツ矢雄二)
この映画ではタイムマシンに音声制御装置が付けられており、ナビゲーションの役割をする。
声を認識し、その指示に従って自動操縦となりナビゲートしてくれるのはいいのだが、
自動操縦の精度が低い上に操縦がやや乱暴で融通がきかないという欠点を持ち、結果的にのび太の約束を果たすことが出来ず、嘘つき扱いされた上、騒動の原因にも繋がってしまう。
このような事もあって最終的にドラえもんに「役立たず」呼ばわりされ音声制御装置をオフにしてしまった。
なお翌年の「日本誕生」でもタイムマシンには音声制御装置が付けられているが、あちらは時空嵐流の発生を警告するなどかなり有能。
主題歌
オープニングテーマ「ドラえもんのうた」
作詞 - 楠部工 / 補作詞 - ばばすすむ / 編曲·作曲 - 菊池俊輔 / うた - 大杉久美子 / セリフ - 大山のぶ代(ドラえもん)
エンディングテーマ「君がいるから」
作詞 - 武田鉄矢 / 作曲 - 山木康世 / 編曲 - 都留教博 / うた - 堀江美都子、こおろぎ'73
表記揺れ
関連タグ
西遊記:この作品の元になった作品。一部の作品では三蔵法師は今作のような聖人ではなく、見かけで判断し、真実を見抜こうとしない未熟な僧侶として描かれるものもある。
飛べ!孫悟空:こちらの三蔵も事実に基づきゴツい男性に描かれてる
ギガゾンビの逆襲:この作品が出ているゲームである。
トカゲのスープ:のび太のパパ、のび助が食べようとしていた料理。
TVアニメ版・不動明(ふどうあきら):のび太達の目の前でわざわざメガネを飛ばし、スーツやネクタイを破きながら牛魔王のような半人半牛の妖怪に変身した先生の中の人繋がり。
神々の熱き戦い、レディレディ!!、ビックリマン、鬼ヶ島へ急行せよ:同日公開の東映まんがまつり。