概要
1997年3月8日公開。藤子・F・不二雄(藤本弘)は本作の執筆中に亡くなったため、遺作となった。映画ドラえもんで制作総指揮として藤子・F・不二雄と表記されるのは本作が最後となった。
漫画版では連載第3回目の執筆途中で藤本は意識を失って病院に搬送され、そのまま死去した(勘違いする人も多いが、ペン入れではなく下描きの段階)。
藤本の体調不良により、本作は通常とは異なる作画体制で連載が進んでいた。通常は藤本がコマ割りを行い、鉛筆で下描きをし、ドラえもん等のキャラクターは全身を、のび太等の人間の場合は顔のみを藤本がペン入れし、その他の部分は藤本の指示のもとでチーフアシスタントが人間の体のペン入れを行い、その他のアシスタントも含めて背景等の作画を行うという流れだった。しかし、本作ではこの通常の方法で作画されたのはてんとう虫コミックスでのカバー画と4〜6ページのみで、79ページまでのその他のページは藤本の下描きにアシスタントがすべてペン入れを行うという作画体制で描かれている。
80ページ以降は生前に藤本が遺したネーム、アイデアメモ、原案、芝山努監督に伝えていた大まかな結末までのストーリーをもとにチーフアシスタントの萩原伸一(のちのむぎわらしんたろう)ら藤子プロのスタッフによって作画が行われた。芝山努監督は早い段階で話の大筋を教えてくれるのは珍しかったと語っている。
本作はF監修の作品では最後となるためか、『ドラえもん』世界の根幹にかかわる設定が明かされている。それと対照的に、敵キャラは『宇宙小戦争』に並ぶ歴代最弱候補となっているが。
しかし、『子守りロボット』であるドラえもんにとっては藤本作品での最後の相手としては相応しい敵と言える。
ストーリー
「生命のねじ」により命を得たのび太のウマのぬいぐるみ「パカポコ」。思いっきり走らせたいが、そんな場所は無く、夜に空き地で走っていた。
ある日、スネ夫の自慢話にのび太は「牧場を持っている」と嘘をついてしまい、何とかならないかと考えていると、ドラえもんが22世紀から福引の小惑星引換券を持ってくる。そこに牧場や町を作ろうと思い、「どこでもドア」で片っ端から星を調べあたってみるが、ハズレ券なので使いものにならない星ばかり。しかし、最後に残った星の番号をドアに告げると、ドアの先は大自然の広がる美しい星に繋がっていた。
ドラえもんたちはこの星に各自が持つおもちゃを持ち込み、パカポコと同様に生命のねじで命を吹き込んで開拓を始め、おもちゃの町「ねじ巻き都市(ねじまきシティー)」を作り上げる。
しかしこの星で原因不明の雷雨など、不思議なことが次々に起こる。
そんなある日、1人の脱獄囚が野比家を通りかかって見つけたどこでもドアをくぐってねじ巻き都市に忍び込む。その凶悪犯・熊虎鬼五郎は、偶然落ちていた「タマゴコピーミラー」で自らのクローンが生み出されると、彼らを率いて都市の乗っ取りを目論む。ドラえもんたちはその事態に気づかないまま、高度な知性を備えた状態で生まれたおもちゃ・ピーブたちとともにより良い町づくりを進めていく...
ゲストキャラクター
ピーブ
声 - 佐々木望
Pと書かれた赤い帽子を被るぬいぐるみのブタ。落雷によって高い知能と言語能力を得た最初のぬいぐるみでぬいぐるみのリーダーを務めるようになる。
プピー
声 - 白川澄子
ぬいぐるみのブタでピーブの妹分。ドラえもんが人工的な雷を使って知能を得るが、人工製ゆえか少々幼く多少呂律が回らない感じである。
パカポコ
のび太が「生命のねじ」で命を吹き込んだウマのぬいぐるみ。
アイン・モタイン
声 - 菅原正志
ぬいぐるみのウシ。落雷によって高い知能を得た学者。環境に配慮できる技術に取り組んでいる。
レオナルド・ダ・ヒンチ(漫画のみ)
ぬいぐるみのウマ。アイン・モタインと共に落雷によって高い知能を得る。
トーマス・メエージソン(映画のみ)
声 - 塩沢兼人
ぬいぐるみの羊。アイン・モタインと共に落雷によって高い知能を得る。上記レオナルドの代役。セリフの「め」の部分を「メェー」と伸ばす癖がある。
ウッキー
声 - よこざわけい子
「生命のねじ」を使って命を吹き込まれた、しずかのぬいぐるみのサル。いたずら好きで、命のネジを勝手に持ち出し、更に「どこでもドア」をくぐって地球に行き、いくつかの物体に命を吹き込み、ねじ巻き都市に連れてきた。
ゴジちゃん(漫画)、ティラ(映画)
声 - 茶風林
ジャイアンにより命を吹き込まれた赤い恐竜のぬいぐるみで彼に弟のように愛される。普通のぬいぐるみだったが中盤では二階建て程の体格へと成長した。
熊虎鬼五郎(くまとら おにごろう)
声 - 内海賢二
前科百犯の脱獄囚。コミカルな描写は多いが、死人が出ることも構わず放火を行い、ドラえもん達を始末しようとするなど(しょっちゅう強盗や空き巣が出てくる)『ドラえもん』世界の現代において恐らく一二を争う大悪党。偶然入ったのび太の部屋の「どこでもドア」に入りねじ巻き都市のある星へ迷い込む。クローン達にオリジナルである自分が率いるものだとして「社長」と呼ばせている。皆同じ顔なためホクロの提案により途中から帽子を被るようになった。
中の人は『のび太の恐竜』のドルマンスタイン役。また初代しずかの中の人の夫。
声 - 松尾銀三
熊虎鬼五郎のクローンの1人。しかし、本物と違って優しい。
鬼五郎の中の人とは『きかんしゃトーマス魔法の線路』でも共演している。
黄金の大魔神
星に住む、正体不明の怪物。鬼五郎達はおろか、ドラえもん達にも襲い掛かる。決まった形を持たず、大蛇や巨大カブトムシ、戦車と自由に姿を変えられる。
何故か攻撃されても全く反撃しない。
この怪物にはとある秘密があり…
種をまく者(漫画)/種撒く者(映画)
ねじ巻き都市が築かれた星にいた意志ある植物たちの創造主。
創造主と言っても「“神”とはちょっと違うが似た様なもの」とのび太に語っている。
36億年前、地球と火星にもアミノ酸やタンパク質などの有機物質=「生物の種」を散布し、生物を誕生させた(ピーブたちに知性を与えた落雷も彼が起こしたもの)。
鬼五郎から金塊と勘違いされるほど常に金色に輝いているが、決まった姿を持たず、上記の黄金の大魔神、大蛇、巨大カブトムシ、果ては戦車など、自在に姿形を変えることが可能であり、のび太に話しかけた際には話し易い様にドラえもん、玉子(漫画のみ)、ギリシャ神話風の少年の姿をとった。森の奥にある湖を根城にしている。
侵入者たちに対し、嵐を起こして威嚇したり、強大な姿に変身して襲いかかるなどもしていたが、自分が作った生命体の根付いた星を荒らされないように守ろうとしていただけで、本質的には敵ではない。
地割れに落ちたのび太が植物たちに助けられたことから、気絶した彼と精神世界でコンタクトをとって自身の素性を明かす。
自然を大事に想うのび太やビーブたちには期待しており、鬼五郎の件は彼ら自身が乗り越えるべき「試練」として自身の干渉を放棄すると、新たな「種」を蒔くべく別の星へと旅立って行った。
ウッキーにより命を吹き込まれた物体たち
彼らも街の住人となる。
水で鎮火する。
骨格標本
ホクロにかみつき怖がらせる。
パンダ(映画のみ)
声 - 青木和代
パンダの乗り物。パンダの形の部分が独立して命を得た。
ザンダースおじさん(漫画のみ)
カーネル・サンダース像に似た人形。鬼五郎一家をチョップで打ちのめした。
「○野□三」の選挙ポスター(漫画のみ)
空中を舞いながら選挙の呼びかけ文句を叫ぶ。
舞台
とある星(ねじ巻き都市)/SSS-ZY-997894(大長編)/SSS-BC-555(映画版)
元々は種をまく者が植物の楽園にしようとして作った惑星で、火星と木星の間にある小惑星帯のどこかに築かれた植物の星。種をまく者の手でカモフラージュの作用となるシールドを張って隠していた為、本来なら地球から認知されないようになっている。
しかし偶然にものび太がカード番号を読み間違えてドアに入力した(大長編では不明。映画版での本来の番号はSSS-BC-333で、のび太は3と5を読み間違えていた)為、本来とは違うこの星に空間が繋がったことで行き来できるようになった。
水と植物に囲まれた自然豊かな惑星だが、動物は生息していない。
この星の植物には意思があり、当初は種をまく者と協力してドラえもん達を追い出そうとしていたが、ぬいぐるみや玩具達が自然と共存出来るような都市づくりを始めた事によって考えを改め、のび太のピンチを何度も救っていた。
登場するひみつ道具
外れくじ
生命のねじ
エッグハウス
タマゴコピーミラー
自家用衛星
人間機関車セット(SLえんとつ&客車セット)
とう明ペンキ(原作のみ)
石ころぼうし(映画のみ)
カメレオン気球(原作のみ)
ヤミクモガス(映画のみ)
フワフワ銃 - 前作に出てきた物で、記念に貰った。
フエルミラー(原作のみ)
タマゴ逆転装置
植物の素(原作のみ)
主題歌
エンディングテーマ「Love is you」
作曲 - 矢沢永吉 / 編曲·作詞 - 高橋研 / 唄 - 矢沢永吉