のび太とブリキの迷宮
のびたとぶりきのらびりんす
正式タイトルは『ドラえもん のび太とブリキの迷宮』。
ロボットであるドラえもんが主人公であり、ロボットの登場も普通だったシリーズの中でも、ロボット技術とその文明が進んだ末の未来を批判的に描いた作品となっている。
しかもストーリーの大半で作品の要であるドラえもんが不在となり、のび太達4人がひみつ道具無しで奮闘する異色の作品でもある。
更に、物語中盤でドラえもんが電撃の拷問を受けた末に完全に破壊されてしまう。その為、歴代の大長編・映画作品でも唯一、主人公の死(完全故障)が明確に描かれた作品となっている。当時、映画や大長編を楽しんでいた子供達に児童向け漫画の主人公でも容赦無く死に追いやられるという衝撃を与えることになった。
のび太の父・野比のび助がテレビから海もスキーも楽しめると言うブリキンホテルに予約したと聞き、春休みの予定がなかったのび太は大喜び。
結局それはパパの夢とわかって落ち込むが、突如そのホテルからトランクが届く。
開けてみると門が現れて、ドラえもんとのび太がくぐった先はブリキン島だった。
ホテルの人々に丁重にもてなされ、島で楽しむドラえもんとのび太。
しかしのび太の我儘に呆れ「未来へ帰る」と言ったドラえもん。しかし戻って来ないのび太を心配したドラえもんはそのまま探しに行くが、何者かによって連れ去られてしまう。一方のび太はそれに気づかぬまま一人家に帰ってしまう。
後日、のび太はしずか・ジャイアン・スネ夫と共に島に再び訪れるが、突然の襲撃を受けた上にドラえもんが攫われた事実も知り大慌てする。
ドラえもんを救おうと決意した矢先、今度はブリキン島そのものが動き出し飛び上がった。
島の正体はチャモチャ星から来た宇宙船で、のび太達は島の主であるサピオ・ブリーキンから「ロボットに支配された故郷の星を救ってほしい」と頼まれる。
ドラえもんを連れ去ったのもまたチャモチャ星のロボットと知り、ドラえもんがいないままサピオに協力し冒険に旅立つ事になったのび太達。
そして、ドラえもんとチャモチャ星を救う鍵を握るのがブリキンホテルの地下に眠る大迷宮であった……。
サピオ・ブリーキン / サピオ・ガリオン(映画版)(CV.皆口裕子)
チャモチャ星人の少年。
ロボットに乗っ取られたチャモチャ星を救うため、頼れる仲間を探して地球に辿り着いた。
前向きで諦めない性格だが、ロボット依存社会で生きてきた結果自力では長距離を歩けないほど体力が弱くなってしまい、カプセルの生活を余儀なくされている。また、事情が事情ゆえに仕方ないが、のび太たちを勝手に巻き込みながらも残りのメンバーが帰還出来ない状態でのび太としずかを無理矢理地球に戻すなど些か身勝手な面がある。
チャモチャ星で起きた事件も相まって、ロボットに対しては強い不信感を抱いている。
ブリキン(CV.大木民夫)
ブリキンホテル支配人を担当するロボット。サピオが頼れるロボットの一体。
タップ(CV.鈴木みえ)
ブリキンホテルに仕えるウサギのような姿をしたキャラクターで生物なのかロボットなのか否かは不明となっている。口の中にかなりの量のモノを詰め込むことができる。
ピエロ(CV.堀内賢雄)
ブリキンホテルに仕えるピエロ型ロボット。荷物運びや芸を担う。
ガリオン・ブリーキン公爵 / ガリオン侯爵(CV.屋良有作)
サピオの父で科学者。ロボット依存社会の危険性に気付きブリキン島のラビリンスで対抗策を研究していた。
王に直訴するも研究の末に身体を壊していたのかそこをロボット達に突かれて強制収容されてしまった。
ガリオン夫人(CV.佐久間レイ)
サピオの母。
アンラック王(CV.中庸助)
チャモチャ星の国王。ロボット社会に何の疑問も持たず、ナポギストラーに頼り切っていた。
今作のラスボス。
体の大半がコンピューターでできた発明家のロボットで、人間に楽な生活をさせるために作られた…
のだが密かにロボットによる人間支配を企んでいた。
そしてイメコンによる人間貧弱化計画を経て革命を起こし、独裁者となった。
自己中心的で神経質な計算高い腹黒い性格で、人間を見下す一方油断ならない厄介な存在として警戒していた。
ネジリン将軍(CV.加藤治)
ロボット軍を指揮する将軍で、ナポギストラーの忠実な部下だが、一方でナポギストラーの神経質なことに苦慮している。年寄り(=旧式)であるためすぐにネジが解けて動けなくなってしまう。
隊長(CV.緒方賢一)
ネジリン将軍の部下で、軍隊を仕切る部隊長。ドラえもんをサピオの仲間と判断して捕らえた。
サンタクロース(CV.中庸助)
原作ではサンタのロボット(チャモチャ星にもクリスマスの文化があるらしい)だが映画では人間になっており外見や人物像も異なっている。
人間達が捕まった結果、子供も居なくなった事で人生に絶望し引退して自宅に籠っていた。
北極で遭難したジャイアン達を救い、更にブリキンホテルでドラえもん達に出会った事で再び希望を取り戻し、大量のおもちゃをプレゼントした(後にドラえもん達はひみつ道具でそのおもちゃを改造し、ロボット軍に奇襲をかけた)。
チャモチャ星
地球と似た人間の種族が暮らす、地球以上の高度な技術を要する文明を築いた星。
特にロボット技術はかなり発達しており、多様な面でロボットに任せて依存していた。
しかしそのせいで人間の肉体の弱体化を招き、更にナポギストラーによるロボットの反乱が起きた結果、ロボットが支配する星に変わってしまった。
ブリキンホテル
予約したホテル。「スキーと海水浴がいっぺんにでき、しかもガラガラにすいている」のが謳い文句。
しかしまだ広告費が無いためCMは深夜のみであり、客が来ない。
元はサピオ一家の別荘であり、島全体が宇宙船になっている。
また、ロボットたちの攻撃が来た際に隠し部屋も完備されている。
地下は下記の大迷宮になっている。
ラビリンス
サピオの先祖が趣味で作ったというブリキンホテルの名物である全長184㎞に及ぶ超巨大地下迷宮で、本作のタイトルの「迷宮」となっている。
挑戦者は数百人いるが、非常に広大かつ内部は非常に入り組んでおり、クリア者はゼロ。
(漫画版では)サピオ曰く「迷って入口に戻ってくる事も出来ずに中で数年後にロボットに救助された人もいる」とさりげなく非常に恐ろしい説明がされている(まあドラえもんの『迷路探査ボール』の前には無力な訳だが…)。
ちなみに唯一、ガリオン公爵だけがゴールである中央ホールまでの正解ルートを把握しており、道順は小型ナビゲーションロボットのガイド・マウスに入力されている。そのため、この中央ホールは秘密裏にコンピュータウィルスを開発するための研究室として使われた。
そのゴールで有る中央ホールの研究室にサピオの父であるガリオン侯爵がコンピュータウイルスを隠していた。
ちなみに入り口のデザインがトラウマになる程怖い事で有名である。その為、のび太は一回ドラえもんを探すため地下に入った際は恐怖心から引き返していた(作中でもサピオも言っていた様に、ここでのび太が引き返したのはある意味英断と言える)。
イメコン
「イメージコントローラー」の略。
ナポギストラーの最大の発明で、人間が考えるだけでロボットにその意思が伝わって、一瞬でロボット操作ができる代物。
そのおかげでチャモチャ星の人間は指一本動かすことなく生活できるようになったという。
しかし、ナポギストラーがこれを発明した真の目的は人間を貧弱にして容易く人間を支配できる計画を遂行する為だった。
その後もナポギストラーを中心にロボット達のネットワークとして使われていたが、これを逆手にとってガリオン侯爵はコンピューターウィルスを拡散させようとしていた(余談だが、現実世界でもイメコンのように人間が考えただけで機械を操作する研究はされている)。
コンピュータウイルス
ガリオン侯爵が密かに発明した、チャモチャ星を救う希望。尤も、使えばロボット文明に依存して勤労意欲も体力も失ったチャモチャ星人にとっても、大打撃必須の諸刃の剣という側面も有る。
感染したロボットは(何故か)「いとまき」を合唱し、最後は壊れる。
カプセル
チャモチャ星人たちが使う乗り物で、貧弱になった彼らのほとんどはこれに乗っている。
あらゆるところにも移動でき、手の代わりにアームを使って物を取るなど、手足をほとんど使うことなく生活できる。
ナポギストラーが弱体化した人間達の為に発明したのだが、同時に更に肉体を弱体化させるという目的もあった。
更には強制収容機能もあり、抵抗したガリオン侯爵を収容後、収容所へ運んだと思われる。
なお、のび太とドラえもんをブリキンホテルから迎えに来た車は自動操縦でありカプセルはこの車の技術盗用で作られた可能性がある。
おもちゃ
サンタクロースからドラえもん達が貰ったおもちゃ。
クジラ、ライオン、ゾウ、怪獣、サル(シンバルを持っている)のぬいぐるみや風船、飛行機と言った沢山の種類が有る。
作中ではドラえもんのひみつ道具で改造し、
- アイ,ロボット:本作のモデルとされる。SF作家アイザック・アシモフの小説と、それを原作とした映画が存在し、本作ほど依存してはいないが、ロボットが社会になくてはならない存在として浸透した裏で、陰謀が起こっている。
- ロックマンX:シリーズを通して、人類に反乱を起こしたレプリロイド(シリーズにおける人型ロボット)と、主人公エックスたちの戦いが描かれている。
- フレッシュプリキュア:敵対勢力として登場する管理国家ラビリンスは、人間を幸福にするためのコンピュータが堕落した人間に失望して支配下に置くという点では似ている。
- ウルトラセブン:第43話第四惑星の悪夢という内容がかなりそっくりな話が登場する。
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