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ディストピア

でぃすとぴあ

ディストピアとは、『ユートピア』の対義語として扱われる世界観。しかしユートピアで描かれる要素と共通する部分も多く、実のところユートピアの裏返しの姿である。アンチ・ユートピアとも呼ばれる。
目次[非表示]

ディストピアの始まり

ディストピアは、16世紀以来ヨーロッパ世界で「理想郷」とされてきた理性が統制する社会に対する批判として生まれた。 日本語訳では「絶望郷」「暗黒郷」など。

そもそも「ユートピア」とは、当時のヨーロッパのような「非合理なものによって世の中が支配される不安定な現実の世界」に対する批判として生まれた概念であり、かいつまんで言えば「感情や非理性のような非論理的・非合理的なものを排除した、効率的な理想の社会」である。しかしこれは行き過ぎれば「必要で合理的なら何やってもいい」になり、個人・少数派の意思(感情)を抑圧または排除すること(=全体主義)にもつながってしまう。

実際、ディストピアを題材にした作品が急増したのはソビエト連邦(1917年)の様な社会主義国家やナチス・ドイツ(1933年)といった全体主義国家が台頭してきた時期と重なり、ユートピアに対する失望、また理性信仰・合理性信仰に対する警鐘として発展してきたことがうかがえる。

ディストピアの特徴

ディストピアの前提として、表面上はあたかも完全無欠の理想社会であるかのように見える。

しかしいざ蓋を開けてみると、お題目の実現のためにどこかにとんでもないしわ寄せが来ていたり、そもそもお題目自体が嘘っぱちだったりする。

単一の思想・価値観の強制

「○○(指導者の名前など)に従い尽くすことこそ唯一かつ最大の幸福である」「××(特定の民族や思想など)は悪の化身であり滅ぼさなければならない」「□□(ディストピア国家並びにディストピア思想等)こそ世界のあるべき姿にてそれ一色に世界は染まるべきである」「罪人の子は必ず罪人になる」等、カジュアル多様性を頑として認めない一面的かつステレオタイプな思想(特に選民思想)を押しつけて他の考え方を許さない。(従わない場合は洗脳拷問などを加える)


The world will be OUR'S!!



敵性思想排斥の正当化

ディストピアの前身もまた別の腐敗した権力(特定の思想者、軍、政府など)が支配していたというパターンが多く、指導者は決まって「腐敗した権力への粛清」という反体制的活動をきっかけに絶対的支持を増やしていく傾向にある。そこから次第に「腐敗した体制の排斥のためなら何をしても構わない」という極論が生まれディストピア化を推し進めていく。特に共産主義個人主義は真っ先に標的にされやすく、指導者は極端な反共主義者並びに合理主義者である事が多いが、結果的に自分たちが忌み嫌っていた体制側に自分たちがなってしまっている例も幾度も確認されている。
実際は腐敗した権力を批判する側にも大義名分など存在しないのは当然なのだが、「反体制」の部分にしか目が行かない大衆がこういった考えを支持し安直な二元論的思想に染まる事が多い。このような指導者は度々国民に士気高揚(と銘打った論点のすり替え)のために「打倒!○○(腐敗した権力及びその賛同者)」と連呼するパフォーマンスを繰り返すのも特徴である。
要するに支配する者が変わるだけである。

超管理体制

24時間ずっと誰か(もしくは何か)に監視され続け、一個人の一挙手一投足の全てが管理される。監視するのは機械だったり専門のエージェントだったり、もしくは社会の構成員(主人公含む)が互いに互いを見張りあっていたりもする。ネットスラングの「おや?こんな時間に誰か来たようだ」はこの要素をネタ化したものと言える。中には、強制収容所等の施設に押し込められる形で管理される場合もある。人口調整もされ、恋愛から結婚性行為妊娠出産家族寿命までも管理される。また、極端な場合、高齢者や障害者等の生産力が見込めない者を殺処分する事も。そう、ディストピアの世界では生産力の見込めない者は穀潰しでしかないのだ。

監視社会



極端に制限された自由

「~時以降は外出禁止」「何処其処へ行ってはならない」などの移動制限から始まって、芸術娯楽服装髪型言動飲食人間関係職業選択など、社会のあらゆる分野での行動に制限がかかる。それどころか思考にすら制限がかかることもある(この場合テレパシーや機械などによって監視されている)。特に表現の自由・報道の自由は厳重に管理され、体制に不利な情報や体制批判などは徹底的に隠蔽・弾圧される。

球体牢獄



過剰に徹底した教育方針

前述の単一の思想・価値観の強制に通じる事だが、学校等で個性を徹底的に排除した全体主義並びに合理主義を是とする教育方針が多い。中には、幼い頃より親元から引き離して徹底した教育(要するにスパルタ教育)を施す事もあり、親の存在意義が『人材を生み出す道具』にて、親子の愛情が軽視どころか一切無視され、親の愛情を知らずに育つ子も少なくない。このように徹底した教育並びに訓練を施された子供が少年兵として投入される事も多い。

多数のための少数の犠牲(逆もあり)

社会の多数派(もしくは選ばれた少数)を残すために、残りの少数(多数)を犠牲にする。多数を優先する考え方自体は民主主義・権威主義問わず殆どの社会で見られるが、ディストピアの世界ではこれがより極端化し、例えば「食糧が足りません!」「よしわかった、少数派(大抵は社会的弱者)への食糧供給を打ち切ろう」、「資金が不足しております!」「うむ、〇〇(指導者が上流階級出身の場合は平民、平民(特に貧困層)出身の場合は富裕層が多い)への税をより重くしよう」、「〇〇にて感染症が発生しました!」「〇〇の住民共を建屋に押し込めて煙を焚け!(いわゆる殺処分)」といった具合に、選ばれなかった方は人間扱いされない。

給餌



公然の格差

上記の犠牲に関する項目に通ずるが、身分や階級による格差社会が公然と認められ、極端な貧富の差が存在していることが多い。貧困層の人々は上流社会の人間からは人間扱いされなかったり、その存在を隠されることすらある。

深部へと



粛清

体制にとって不都合な存在(特に政治犯・思想犯)を、体制側が秘密裏に(あるいは公然と)処刑する。前者の場合は主に『現在の体制には何ら問題はなく、反体制派など存在しない』という上っ面を糊塗するため、後者の場合は恐怖政治などで見せしめや大衆の娯楽として粛清や公開処刑が行われる。また、反体制組織が相手の場合は軍事力を以て標的を殲滅し、最悪の場合、口封じの為に現場に居合わせた非戦闘員への虐殺も行われる。

ディストピア
MAL:人類居住区強襲作戦



指導者ならびに体制の上層部に関する情報が不明瞭

指導者本人が基本公の場に出て来ず、出て来ても放送媒体を通した形や素顔を全く明かさない形での登場など、国民でさえ生の姿を見た事がない等がある。中には指導者の存在そのものが虚像であったり、体制を司る上層部でさえ虚構の情報で改竄されていたり謎めいた集団だったり、公の指導者が実権を奪われた傀儡だったりと様々。そもそも人ならざるものが正体(スーパーコンピューター等)だったりする。

二度手間



独裁政権による権力の乱用

国家の元首に権力が集中する(元首自身が指導者)にせよ、国の象徴としての存在(傀儡政権、立憲君主制など)であるにせよ、権力が体制側に集中する(いわゆる中央集権)独裁政権が多く、自分側の過失を権力で取り繕う等の権力の乱用も多い
上層部の親族というだけで能力関係なしに特権階級の待遇が与えられる滅茶苦茶な矛盾が生じていることもある。

閉鎖的な対外政策

前述のように国のあらゆる存在が徹底管理されているが、外交関係においても例外ではない。亡命による情報漏洩を防ぐ等の目的で他国間を行き来する事を禁じる等の鎖国政策をとる国家も少なくない。また、軍事力を背景に侵略を視野に入れている国家も多く、一度宣戦布告したら停戦交渉しないし、何より相手側の交渉にも応じず、完全に滅ぼすまで戦争を続ける事が多い。国民に対しては「対外関係は良好である」と報道する等の情報操作が行われる場合も。

極端な能力主義

体制維持に直結する能力(特に身体能力で、軍事警備治安職に必須)を持つ者とそうでない者との待遇が極端化しやすく、前者は特権まで与えられる程優遇されるが、後者は人間扱いされないばかりか淘汰される事も少なくない。また、優れた能力を持つが体制にそぐわない者(体制側から真っ先に政治犯や思想犯とされやすい学者芸術家等)は傀儡の指導者(特に個人主義者で個人主義を履き違えた利己主義の正当化が目的のケースが多い)として祀り上げられたり、自分が望まない作品を制作するよう強いられたりする等、道具のように扱われる事も少なくない(ディストピアの世界ではただでさえ人が駒のような扱いを受けるのは珍しい事ではないが)。

escape



税率の二極化

体制にそぐわない者に対する税率が極めて高く、そうでない者には税率が高くなく、中には免税の権利が与えられる者もいるという不公平な課税政策も少なくない。前者は犯罪者(特に政治犯・思想犯)として摘発された際に財産全て没収…と実質100%であり、グレーゾーンの者でも重税を課される事も少なくない。後者においては特に軍事・警備・治安職等体制維持に関わる者(いわゆる支配者層)が免税の対象になりやすく、その裏で重税に喘ぐ前者がいる。

環境や人々への配慮を著しく欠いた産業の推進

急激な産業の推進(軍需産業をはじめとする重工業、プランテーション、線維等の資源目的の乱獲等)の過程で公害や生態系のバランスの悪化等の様々な環境問題が発生し、その問題が置き去りにされる事も少なくない。また、産業特区造成の為に多くの人々が立ち退きを命じられたり、強制労働に従事させられたりで、前者は現地の人々への補償が一切なく、後者は労災が発生した場合、本人の過失として片付けられる事が多い。

支配されながらもそう感じない人々

上記のような徹底支配を受けているにもかかわらず、「自由である」「平等である」「差別など一切ない」等と自分が支配されていると全く感じない者も多い。理由は簡単で、決まって「腐敗した権力への粛清」から大勢の支持を集めた者が指導者になっているからである。
そんな人々の中で、その体制への不満を何らかの形で表現する者が出ようものなら、その者があぶり出される形で即座に告発された末に摘発され、危険人物として始末される事も少なくない。これもディストピアの為せる業と言える。

センシティブな作品



淘汰される弱者

経済弱者である貧困層においては、略奪を働いて(特に富裕層相手に)処罰される事が多い一方、管理外である事から摘発が困難な事も少なくない。その為、略奪の標的にされやすい富裕層も弱者に分類され得る。また、裁判においても元々自分の所有物(財産等)を、他者(体制上の強者)が自分の所有物と主張すれば主張する側の所有物となるという極めて不公平な裁定も少なくない(逆の場合は勿論取り下げられる)。過剰に徹底した秩序によってもたらされた弱肉強食の世界と言えよう。

Bait (QHD)



不当な待遇を受けた者の心身に及ぼす影響

前述の徹底支配の中で全然支配されている感じがしない者が多い一方で、その支配により様々な不当な待遇(受ける側からして)を受ける者も少なくない。そうした支配の中で粛清や自殺等で命を落とす者もいれば、そうでない者でも心身に及ぼす影響が大きく、亡命あるいは体制の崩壊等によってその支配から解放されても、将来に希望が全く持てないだけでなく、当時の仕打ちを昨日の事のようにはっきり覚えている者も少なくない。

一服警備員



現実の鏡としてのディストピア

ユートピアが「いまだ実現していない、理想の社会」を描くことで現実社会を批判するのに対し、ディストピアは「実現しうる、最悪の社会」を描くことで現実社会を批判している。どちらも架空の社会によって現実社会を批判しているという点において、ユートピアとディストピアは表裏一体の関係であるといえる。

ディストピアに似て非なるもの

文明社会が崩壊し、無秩序な荒廃した世界を時にディストピアと見なすこともあるが、この場合は「ポストアポカリプス」と呼ぶジャンルに当てはまり、理不尽な価値観や秩序に支配されたディストピアとは異なる。また、文明崩壊後に新たな秩序に支配された世界がディストピア的な設定の場合、両ジャンルが共存する場合もある。

ディストピアを扱った作品

小説







映画

国内



海外


アニメ


漫画


特撮


ゲーム

RPG


アドベンチャーゲーム


アクションゲーム


シミュレーションRPG



格闘ゲーム


STG


FPS


TRPG


音楽


スラング


他、該当作品があれば追加願います。

微妙な作品

階級設定のせいで割と誤解されがちだが上層部に反抗したエージェントであっても死刑にされることはない代わり、アーカイブ化による永久幽閉という意味では死より重い量刑がかされている。また出自に関係なく努力次第で上位階層を目指せるという点で階級の隔たりも緩やか(ディンゴは上層部の顔色を気にする必要があるといっていたが、アンジェラは『あなた程の才能があれば問題ない』という趣旨の発言をしている)でありディストピアというには若干弱い。


外部リンク

ディストピア - wikipedia
ディストピア(Category) - wikipedia

関連タグ

対義語:ユートピア
表記ゆれ:デストピア

SF 全体主義 共産主義 新自由主義 商業主義
暴民政治 恐怖政治 洗脳 独裁者 世界征服 カルト
ポリティカル・コレクトネス ソフィスト 詭弁 デマゴーグ 上級国民 マジョリティ マイノリティ
世界観 パラレルワールド ブラック企業

トロッコ問題There_Is_No_Alternativeデスティニー・プラン:いずれもディストピアを発生させやすい問題。

ストックホルム症候群

オーバーテクノロジー:ディストピアとはセットで語られやすい要素の一つ。新しい技術が誕生するということは「完全犯罪達成の道具としての悪用も可能」という意味でもあり、世界全体の治安悪化からディストピア化が進むといった流れも珍しくない。

お家騒動:こちらもセットで語られやすい要素の一つ。権力を行使する側が持つ決定権があまりに強大すぎるが故に、その最高位を狙おうと組織内部でクーデターを起こす構成員が発生する。上述のオーバーテクノロジーも合わせれば、クーデターに成功すれば最新鋭の技術すら独占が可能となる事も意味する。

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