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時計じかけのオレンジ

とけいじかけのおれんじ

『時計じかけのオレンジ』とは、アンソニー・バージェスによる小説を原作とした、スタンリー・キューブリックによる長編映画作品である。
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概要編集

スタンリー・キューブリック監督ワーナーブラザーズが配給した映画。1971年に公開され、日本公開は1972年となった。原作はアンソニー・バージェスが1962年に発表したディストピア小説である。


舞台化もされており、日本では2011年小栗旬主演で上演された。


本項目ではよく知られた映画版について解説する。


内容編集

近未来ロンドンを舞台に、ケンカやレイプ麻薬リンチと言った犯罪に耽溺する少年たちを、ベートーヴェンなどのクラシックの名曲に乗せてコメディタッチに描いている。


治安対策として個人の感情をコントロールしようとする政府、子供のことにはほとんど関心を示さない放任主義な親たち、そして汚職のはびこる行政や警察機関と言った歪みきった社会を、ありったけの皮肉を込めて描いた風刺劇である。


作中では、主人公を含む少年たちが会話の中で“ナッドサット”と呼ばれる独特の若者言葉を使用する。これはロシア語と英語を組み合わせて作られた人工言語である。


また本作は、「世界初のドルビーノイズリダクションシステムを使用し、ステレオ録音された映画」として有名である。ただし、劇場公開版フィルムは、当時の映画館の設備の都合上モノラルである。


反響編集

本国イギリスでは公開から間もなくして上映が打ち切られた。これはキューブリックによる判断であり、本作の影響を疑われた少年事件が起こったことから監督であるキューブリックへの殺害予告があったためである。


アメリカではX指定(17歳以下禁止)で公開されたが大ヒットし、映画の暴力表現の規制緩和に大きな影響を与えた。過激な表現からカルト映画の扱いを受けている一方、米国アカデミー賞の作品賞にノミネートされたり(受賞は逃している)、ニューヨーク映画批評家協会賞を受賞するなど、批評家筋の評価も高かった。


手塚治虫は映画版公開以前に作品の紹介を読み、タイトルをパロディした『時計仕掛けのりんご』と言う作品を発表している。


日本公開時には本編中に陰毛が写っていたことから修正が入り、無修正版が出回るようになったのは1997年になってからだった。本作が1991年に正式にビデオ化される以前のサブカルキッズの間では、違法コピーされた本作のビデオドラッグをキメながら観るという風潮があったらしく、有名監督と大手映画会社による大作であるにもかかわらず、アングラ・カルト映画の代表格という扱いを受けていた。


ストーリー編集

近未来のロンドン、反逆児アレックスは彼の悪友たちとともに、夜毎街に駆り出しては、行きつけのバーで麻薬入りのミルクを飲んだり、初老のホームレスをリンチしたり、不良グループと大乱闘し、ウルトラバイオレンス(無軌道な暴力)を大放出したかと思えば、今度は民家に押しかけ、そこの婦人を集団でインアウト(輪姦)したりと、歯止めの利かない非行に走っていた。

放任主義的な両親は彼が夜毎非行に走っている事など露知らず、彼の言い分を鵜呑みにするばかりだった。

ある日仲間たちと、町外れの豪邸に忍び込んだアレックスは、そこで一人暮らしをしていた初老の女性を殺害してしまう。

その場から立ち去ろうとするが、仲間の裏切りに合い、駆けつけた警官に逮捕されてしまう。

その後懲役刑を喰らったアレックスは、刑務所では模範囚として大人しくしていたが、何とか早く出所する方法はないものかと、内心ではまったく悪びれてはいなかった。

そんなある日、アレックスは人づてに、政府が面白い実験をやろうとしていると言う情報を耳にする。

それは『ルドヴィコ療法』と言うもので、この実験の被験体になれば、すぐにでも刑務所から出所できるという話だった。

たまたま刑務所を訪れていた内務大臣に自分を売り込んだアレックスは、運よく被験体の座を射止めることに成功する。


刑期の短縮を喜ぶアレックスだったが、実はこのルドヴィコ療法は、個人の思想を強制的にコントロールするというものだった。その結果、彼は暴力やセックスを頭に浮かべる度に、強い吐き気を催すようになった。無事に出所できたアレックスだったが、そこで彼を待ち受けていたのは、無抵抗な彼に降りかかる、かつての被害者たちからの暴力だった……。


主な登場人物編集

主人公(原作小説では狂言回しも兼任している)。白ずくめの4人組"ドルーグ"のリーダー格。毎晩のように麻薬、暴力、盗み、レイプを繰り返すサイコ野郎。頭が切れ、喧嘩も強く女にも困っていなかった。


  • ディム

アレックスの仲間。小太り。なぜか一人だけ鎖を武器としている(他の仲間は刃仕込みの杖)。ある日の喧嘩を恨んでアレックスを嵌めた。後に警官に就職。アレックスとの再会時のやりとりは必見。ウェルウェルウェル。


  • 浮浪者の老人

"ドルーグ"4人組に面白半分にリンチされる。数年後もそれを忘れておらず……。


  • ビリーボーイ

アレックス達と敵対するグループのリーダー。ナチスをイメージした衣服を着用。アレックス達と乱闘を繰り広げたが敗北、あっさり物語から退場する。


  • フランク

前衛的なデザインの家に夫婦で住む初老の作家。「時計じかけのオレンジ」という単語は、彼が記していた書物の題名である。4人組に家に押し入られ、その際の怪我が原因で足が不自由になり、妻も精神的ショックで自殺してしまう。

妻がアレックスに「雨に唄えば」を歌いながら犯されるシーンは非常に有名。


  • キャットレディ

猫と卑猥なアートだらけの家に住む若作りしすぎなオバハン。家に侵入してきたアレックスによってアレを振り下ろされ...。


  • 牧師

アレックスが収監された刑務所の教誨師。模範囚の彼を気に入り『ルドヴィコ療法』について教える。エキセントリックで自己中な人物だらけの本作において、比較的まともな発言をする。


  • マッチョの男

フランクが妻を亡くした後ボディガードとして雇った男。流れ着いたアレックスを介抱するが……。

ちなみに演じているのは後にダース・ベイダースーツアクターとなる人物である。


ナッドサット編集

作中に登場する若者言葉で、ロシア語と英語を組み合わせたような造語。

  • ドルーグ・・・仲間、悪友
  • アルトラ・・・暴力、リンチ
  • ミルク・プラス・・・麻薬入りミルク
  • トルチョック・・・お仕置き
  • ヤーブロッコ・・・キン○マ
  • ガリバー痛・・・頭痛
  • カッター銭・・・おめぐみ
  • デボチカ・・・女の子、ビッチ

ここに挙げたものはごくごく一部である。


原作小説の日本語訳を手がけた翻訳家からは、解説にて翻訳時の苦労を語る中で「訳者泣かせ」と評されている。


まぼろしの最終章編集

原作小説がアメリカで初めて出版された時は、原作者アンソニー・バージェスの意向に反して、最終章がまるごと削除された状態であった。少年犯罪を題材にする上での自主規制だったのかもしれないが、これに沿って映画が製作されている。

暫くは日本でも「映画の原作だから最終章は省略する」という態度であったが、2008年になってようやく早川書房も完全版で出版した。


最終章は、大人になったアレックスがそろそろ暴力を卒業してカタギの仕事に就こうと言い出す内容である。

「少年は誰でも暴れて当然。あれは全部若気の至りだな」という若さ故の過ちを認める言葉が最後に付け加えられると、全編の印象が大きく変わってくる。


本作の影響を受けたキャラクター編集

ラフィット

WhiteRascals


関連タグ編集

小説 映画 SF SF小説 SF映画

スタンリー・キューブリック

アレックス・デラージ

風刺 ディストピア 暴力 表現規制


外部リンク編集

時計じかけのオレンジ - Wikipedia

映画 時計じかけのオレンジ - allcinema

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