説明
見る人を笑わせることを主題とした映像・舞台・漫画作品など全般を指す。
pixivのタグとしては漫画作品に付くことが多い。また、2016年10月まで小説のカテゴリータグだった。
コメディとギャグ
似た意味にギャグという言葉があるが、おおむね下記のような違いがある。
1.「コメディ作品」は原則的にストーリーラインがきちんと構築されており、物語の本線や伏線を絡み合わせることで起きる「ズレ」や「おかしさ」を滑稽に描くことで見る人の笑いを誘う類の作品である。オチのどんでん返しや笑いに繋げる目的で、物語の伏線にシリアスな展開を盛り込むことや、最後に感動的な結末でまとめるケースもしばしば見られる。これに対して「ギャグ作品」はストーリー性はほとんど無視され、奇抜な笑いを取りに行くことが多い。
2.コメディ作品の登場人物は「個性豊かな普通の、あるいはちょっと変わった程度の人たち」が中心であるのに対し、ギャグ作品ではしばしば「突拍子も無いキャラクター」が登場して、場を引っ掻き回すのが通常である。
3.コメディ作品では物語全体の中で時系列やキャラ設定を崩すことがほとんどないのに対し、ギャグ作品はネタのためなら途中で設定をコロコロ変えることも少なくない。
4.コメディ作品の笑いは概して「健全な笑い」であり(エロスが入ることはしばしばあるが)、不条理や風刺、ブラックユーモア、楽屋オチなどを盛り込むことはあまりない。これに対して、ギャグ作品の笑いは「なりふり構わない笑い」であり、前出の要素を盛り込むことを厭わない。
5.コメディ含む長編作品で前後関係に矛盾が見られる場合は下手なだけだが、ギャグ作品の前後関係の矛盾は「死亡+超回復(日常オムニバス)」「楽屋オチ(メタフィクション)」の様式に沿ったものである。
6.「話が進むのが異様に遅い長編(脱線、牛歩)」と「4コマ単位のストーリーラインだけは構築されているギャグ作品」とで立場の逆転が起きることや、「意識せずギャグになったストーリーライン」と「不快な死ネタや下ネタ、毒にも薬にもならない日常風景」とで立場の逆転が起きることがある。
しかし両者は決して相容れないという訳ではなく、コメディ漫画とギャグ漫画の両方の要素をかけ合わせた作品も決して少なくない。作品によっては本筋らしきものがないのにコメディを名乗っていることもあったり、ギャグ作品としてスタートしたのに途中で本筋らしきものができてバトル漫画に移行するような作品もあるなど、その境界はあいまいである。
ギャグ漫画の「死亡+超回復」の用法を生かしたストーリーギャグ漫画(キャラを崩す必要性があるため、ギャグ漫画の用法を使っているもの)、メインのストーリーの合間に長いギャグを挟むギャグストーリー漫画(設定上はギャグは飾りだが、アニメ化などでギャグをカットして面白さや人気を損なうことがある)もあり、メインの題材と使われている用法でジャンルが決まるとされている。
一般的に「コメディ漫画」は「ギャグ漫画」ほど笑いどころが多くないと思われがちだが、これは前述の要素が原因で、必然的にギャグ漫画の方が「笑わせどころの手数が多くなる」ことに起因するものである。しかしコメディ漫画には「ストーリーの絡め合わせを活かした笑い」という、ギャグ漫画とは異なる可笑しさを描けるという特性があり、しばしばギャグ漫画を凌ぐ爆発的な腹筋崩壊ストーリーが描かれる。一方で、ギャグ漫画でも「不条理な世界観」や「残酷・暴力描写」や「エロティシズム」や「笑える・笑えないに関係ない日常風景」などを見せることに主眼を置き、笑いを重視していないものがある。このため、一概に「コメディ漫画の方がギャグ漫画よりも笑いが薄い」「ギャグ漫画はシリアスや恋愛との相性が悪い」とは言い切れない。
要するに、「コメディ漫画=本筋があってそこに笑いを乗せる(=長編向き)」「ギャグ漫画=本筋がないかあっても重視されず、笑えるシチュエーションを重ねる(=短編・オムニバス向き)」程度の違いである。
「コメディはシリアスと笑いが同居してグレーになっている」「ギャグはシリアスと笑いがブロック分けされている」という特徴もあるが、両方の用法を使っている作品も少なくない。
つまり、シチュエーションの描写に終始するいわゆる日常系(空気系)にギャグを盛り込めばそれはギャグ漫画となる。キャラ萌えなどギャグ漫画のギャグ以外の要素が注目されるケースも増え、コメディ漫画とギャグ漫画が別世界のように扱われることは少なくなった。
コメディのジャンル
- シチュエーションコメディ、シットコム……連続ドラマで放送する喜劇。一つの場所で展開する話が主
- スラップスティック(スラップスティックコメディ、ドタバタコメディ)……動きなどが大げさな喜劇
- ラブコメ(ラブコメディ、ロマンチックコメディ)……喜劇&恋愛
- ホームコメディ……喜劇&ホームドラマ
- ブラックコメディ……喜劇&ブラックユーモア
ジャンルの傾向
日本では恋愛ものと喜劇を組み合わせた「ラブコメディ」が人気で、代表作の数だけでも数えればきりがないほどである。
上述の複数のコメディを組み合わせたコメディもある。
かつてはギャグ漫画・コメディ漫画とストーリー漫画はほぼ明確に区別できていたのだが、近年ではどちらとも区別できない=一つの作品の中でギャグ展開とシリアスな展開に振れる幅が大きく、これらを全てひっくるめて一つのエンターテインメント作品として仕立て上げられているような作品も少なからず見られる。