もしかして→Plott
概要
英語の「plot」のことで、動詞としては「書く」「描画する」「点を打つ」「置く」などの意味があり、名詞では「構想」や「描画(されたもの)」を意味するほか、一定の意味・意図を持って書き出されたものや、グラフやグラフ上に描画されたものなど、さまざまな意味がある。
ここから転じて、小説や戯曲、漫画など創作における「物語の構成や枠組み」を指す用語としても使われている。
日本語で言うあらすじ、すなわち「ストーリー」(物語の内容そのもの)の要約、という意味で使われることがあるが、ストーリーが出来事の前後関係(時系列)を「設定」したものであるのに対し、プロットはストーリー以前の段階の、キャラクターの行動による因果関係や、物語の要点を「設計」したものを指すため別物である。プロットはどちらかと言えば「ナラティブ」(物語がどのように語られるのか)を要約したものに近い。
ただし、英語圏での「プロット」と日本の「プロット」は使われ方が微妙に異なり、日本のプロットは「ストーリー」としてある程度細かな情報を盛り込んで一本の流れを構築した時点のもの、ストーリの概略を指すこともある。
あるいはより大きな意味での「物語の構築パターン」を表現することもある。
『白雪姫』であれば、「姫」、「王妃」といったキャラクターの個人の名前や立場、「毒林檎を用いた殺人」、「王子様のキス」といった具体的な行為を書かずに物語を示すと「主人公は悪者から狙われ、逃げ込んだ先で出会った仲間と友情を築く。悪者の策略により一度は窮地に追いやられるが、仲間のお陰で無事復活し、悪者は罰を受け、主人公と仲間たちはその後も幸せに暮らすことができた」というような形になる。
このパターンに当てはまる作品は『白雪姫』以外にもさまざまあり、これらの作品は「プロットが共通している」と言うことができる。
プロットに「なぜ主人公は狙われたのか」「どうやって仲間と知り合ったのか」「仲間が主人公を助けるための手段とは」といった、場面をなだらかにつなぐ要素や説明を付け足していき、さらに舞台設定や細かなキャラクター像、関係などが補足され、物語=シナリオとして完成することになる。
pixivにおいても概ね上記の通りの使われ方だが、より幅広く文章の下書きや構想に関するメモ書き、漫画のネームなどを指すことも多い。
ストーリー・トライアングル
ロバート・マッキーによる解説書『ストーリー』にて提示されているストーリーの設計パターンを三角形で示したもの。プロットを一定のパターンに当てはめたものが示されている。
→参考
- アークプロット(Arch-plot)
主に映画制作の場において物語の緩急をグラフ的に示すことを「アーク(弧)」と言うが、古典的なアークに則って組み立てられたプロットのこと。
単独の主人公が能動的に物事に取り組み、さまざまな困難を通して新たな価値(観)を得るという筋書きで、物事には明確な因果関係があると描かれ、ストーリーの最初と最後で大きな違いが起こる。
- ミニプロット(Mini-plot)
アークプロットの特徴を削ぎ落とし、ミニマルに仕上げたプロット。
大きな出来事は起きず、受動的な主人公の内面性を描いた、という意味で「小さい」ということもあれば、群像劇など一つ一つのストーリーが短くなっている、という意味で「小さい」というのもある。小さいが物事は確実に変化が起こっている。
- アンチプロット(Anti-plot)
上記に挙げたような明確な因果に基づく展開をあえて外し、物事の前後をあえて入れ替えたり、現実と空想の区別が曖昧であったりする、不条理性を持ったプロット。
いわゆるメタフィクションもここに含まれることがある。
マッキーは、創作物のほとんどは、これら三つに明確に区別されるというわけではなく、いずれかに属しつつ複数の要素を持ってプロットが構築されている、と説明している。
また、以下のような分類も紹介している。
- ノンプロット(Non-plot)
登場人物に変化が見られないプロットの事。
起承転結は関係なく日本の日常物もこれに該当するという記述もある。
- プロットアーマー(Plot Armor)
シナリオの展開、作中の勝敗が読めてしまう事。「あるある」や「ご都合主義」的な展開が透けて見えてしまい、気分が冷めるような状態。