ソビエトロシアでは、記事があなたを書く!
ソビエトロシアでは、概要があなたを説明する!
元来は米国のコメディアン、ヤコブ・スミルノフのジョークから。
アメリカでは、あなたはいつでもパーティ(party)を見つける。 |
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ロシアでは、党(party)があなたを探し出す! |
In America, you can always find a party. |
In Russia, party always finds YOU!! |
アメリカでは、あなたはテレビを見る(watch)。 |
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ソビエトロシアでは、テレビがあなたを監視(watch)する! |
In America, you watch television. |
In Soviet Russia, television watches YOU!! |
といった具合に、主語と目的語を倒置しただけでディストピア的な全体主義国家になってしまうジョークであった。
現在では、ソビエト連邦自体が崩壊してしまったため、こうした政治的含意の意味は薄れ、不条理感を狙ったものが多い。現在のロシア連邦ではなく、ソビエト連邦をネタにしたジョークであることを明確にするため、もっぱら「ソビエトロシア」(Soviet Russia)と表記するようになった。
ソビエトロシアでは、不条理感があなたを醸し出す!
ソビエトロシアでは、多言語がロシア的倒置法を侵食する!
ロシア的倒置法の多言語への応用
ところでこの英語由来のロシア的倒置法、実は日本語にすることで、本質的な面白さは保たれても微妙なニュアンスが色々削がれてしまっているのである。しかしこれは日本語に限ったことではない。以下、順を追って見ていこう。
英語版ロシア的倒置法
まずは本家本元の英語から。
英語版ロシア的倒置法には、以下のようなごく緩やかな規則が存在する。
- 基本型は「In Soviet Russia, (主語) (他動詞+3単現のs) (YOU!!)」である。
- 倒置後の主語は、単数形にする。not "In Soviet Russia, cars drive YOU!!"
- 可算名詞の単数形には、冠詞を付けない。not "In Soviet Russia, a car drives YOU!!"
- 文の最後は大文字「YOU!!」で終わらせる。「!」は2個で、可能ならば斜体が望ましい。
これらの原則は、(アメリカ人の考える)英語のできないロシア人の特徴を捉えたものである。特に3.「冠詞を付けない」はロシア語の特徴を反映させている。これらのことから分かるように、ロシア的倒置法は英語であることで最も面白さが発揮されるのである。
日本語版ロシア的倒置法
以上の英語版と比べると日本語版には何ら工夫のしようがなく、ただ「あなたが」と「〇〇を」の部分を入れ替えるだけである。まあ、そもそも日本語の名詞には単数・複数という区別がないのだから仕方がないと言えば仕方がない。
ロシア語版ロシア的倒置法
いわば逆輸入であるが、日本語版と同様に英語版のニュアンスは失われてしまう。
しかしロシア語版には面白い特徴がある。それは「YOU!!」の訳し方である。まず、ロシア語には2人称代名詞が2種類存在し、「вы(あなた)」と「ты(君、お前)」がある。ここで、ロシア語版ではどちらを採用しているかというと後者の「ты」であり、それを適切に変化させて「ТЕБЯ!!」(君を、お前を)と訳している。なるほど、こちらの方がより「同志よ!」感が出て良い気がする。
ソビエトロシアでは、この記事があなたを加筆する!