概要
1945年にイギリスで出版されたジョージ・オーウェルによる小説。人間を家畜や動物達に見立て、独裁で権威的な政治、特に20世紀に出現したスターリニズムを批判・風刺した作品。文章は童話のフリをしているが、内容は相当にエグい。登場するキャラクターはソ連の実在の人物をモデルにしている。
当時のイギリスはソ連と共に枢軸国と戦う連合国であったため、1944年では世に出せず、イギリスが反ソ的になった冷戦が始まった頃にようやく出版された。
1955年にアニメ映画化され、1999年には実写映画化されている。キャラクターの設定や結末が原作とは異なる。
原作あらすじ
荘園農場の管理者ジョーンズ氏は、大酒飲みの怠け者で、家畜の餌やりもサボる人物だった。
ある日老豚のメージャー爺さんは、人間を排除し、動物達だけで協力して生活していく理想郷を、仲間の動物達に語り、「イングランドの獣達」という歌を皆で合唱する。
メージャー爺さんが病死した後、いつものようにサボる農場主に腹を立てた動物達は暴力決起し、ついに「革命」を起こして飲んだくれの農場主を追い出してしまう。動物達の中でも特に頭のいい白豚のスノーボールと黒豚のナポレオンの指導の下、「動物農場」の運営が始まった。
- 2本脚はすべて敵である!
- 4本脚と翼を持つ者はすべて友人である!
- 動物は服を着てはならない!
- 動物はベッドで寝てはならない!
- 動物は酒を飲んではならない!
- 動物は他の動物を殺してはならない!
- 全ての動物は平等である!
豚達はこういう「動物の掟」を作って提示したが、多くの動物は「難しすぎる」と返答した為、「4本脚は良い!2本脚は悪い!」というスローガンに集約される事となった。皆で協力せねば、あの恐ろしいジョーンズが再び現れて、我々から搾取するに違いないのだ!
頭のいいスノーボールは、農場を快適化する為の風車建設を提案し、風車の図面を描く。この重労働を乗り越えれば冬場の暖房も実現化し、誰もが幸せになると言うが、ナポレオンは猛反対する。両者が対立した挙句、ナポレオンが密かに育てていた猟犬達の攻撃でスノーボールが農場から追い出されてしまった。
後からナポレオンの部下が言うには、スノーボールはジョーンズの送り込んだスパイだったらしい。ジョーンズは敵だ。そしてスノーボールも敵だった。4本脚は良い!2本脚は悪い!
ナポレオンは態度を改め、「スノーボールに盗まれていた風車の図面」を奪還して、風車建設計画を実行に移す。動物だけの力ではどうしても出来ない作業が山積みだし、近所の人間による妨害も降りかかる。あれは全部、ジョーンズやスノーボールの復讐に違いないのだ。
ナポレオンの態度に不審を感じて意見を言いに行った一部の動物も居たのだが、翌朝になると、全員の見守る前で「我々はスノーボールの命令で動いていた」と自白させられた後、猟犬によって公開処刑された。
農場内で、どうしても必要な物資を手に入れる為、雌鶏の生んだ卵を売りに出す事が決定される。雌鶏達は革命前の公約と違うと言って反対したが、制裁として食料も停止され、餓死者を出した後でようやく降伏。人間と取引する為の物資を自発的に提供していく事となる。
かくして、誰にも会わなくなったナポレオンが全ての決定を下すようになり、これに続いて豚たちも他の動物達を牛耳る立場になり、人間の家で寝起きし、外部の人間とも取引するようになった。頭脳労働を行う豚達は、他の動物達よりも良い食事をして、より長く休むべきだと説明される。反発をしても猟犬によって弾圧され、豚たちに支配された農場は人間の時以上に悪化してしまった。気がつけば、「動物の掟」も、文章が一部書き換えられていた。
- 動物はシーツのあるベッドで寝てはならない!
- 動物は過剰に酒を飲んではならない!
- 動物は理由なく他の動物を殺してはならない!
革命が成功した現在は、革命歌「イングランドの獣達」を歌う事も禁止されていた。全ての動物達は、ジョーンズに搾取されていた時代より良くなったとだけ信じて、重労働に明け暮れていた。
(逃げ出して他所の農場に亡命した者も居たが・・・)
動物仲間で一番の働き者だった馬のボクサーは、まさに馬車馬のように重労働を続けていたが、高齢と重傷で遂に倒れてしまう。ナポレオンは人間と連絡し、動物仲間もボクサーを車に乗せて送ったのだが、その車には「馬肉業者」と記されているではないか!全ての力を使い果たしたボクサーは、馬肉業者の車から脱出する力も残ってない。
しかし、ナポレオン派の説明によると、偶然にも馬肉業者の車を使っている動物病院に送られたに過ぎないらしい。「ナポレオンは動物病院でボクサーの最期を看取った」と宣伝されているが、現実には馬肉業者から受け取った金でウイスキー買って飲んでいた。
月日は流れ、革命当日の出来事を覚えてる動物も数が減ったある日の事。秘密特訓を繰り返していたナポレオンは、服を着て後脚の2本脚で立って、空いた前足でムチを持っていたのである。「動物の掟」も改訂されていた。
- 全ての動物は平等だが、一部の動物はさらに平等である!
- 4本脚は良い!2本脚はさらに良い!
最後にナポレオン率いる豚達は、近所の農園を経営している人間を夕食会に招いて農場経営を語り、「動物農場」の名前を「荘園農場」に戻す事を宣言する。
そして食後の余暇でトランプゲームを始めたのだが、誰かがイカサマをしたらしくて大喧嘩になってしまう。窓の外から様子を見ていた動物達には、「豚」達と「人間」達の見分けがつかなくなってきた。