「 私、まだこの世界を――碌に知らない 」
概要
東映アニメーションとニトロプラスによるオリジナルフル3Dアニメ映画。
正式名称は『 楽園追放 -Expelled from Paradise- 』。
本作は、荒廃した地球を舞台に、肉体を捨て電脳空間で生きる人類と、肉体を持ったまま地上で生活する人類との価値観の違いを描いたSFアニメである。公開日は2014年11月15日。
アニメーション制作はかつてのGONZOデジタル映像部門の流れを汲むグラフィニカが担当。
監督は『鋼の錬金術師』『機動戦士ガンダム00』等を手掛けた水島精二。脚本は『魔法少女まどか☆マギカ』『仮面ライダー鎧武』等で有名な虚淵玄が手掛けた。
キャラクターデザイン・メインメカニックデザインは新進のデザイナー齋藤将嗣、音楽は『UN-GO』『はなまる幼稚園』で水島と仕事を共にしたNARASAKIの手による。
また、『交響詩篇エウレカセブン』の京田知己が本編演出を手掛け、板野サーカスで知られる巨匠板野一郎がモーションアドバイザーとして京田の補佐を務めた。
本作は水島精二と虚淵玄という二人のクリエイターの作風が融合した作品として評価が高く、また本作のヒロイン、アンジェラ・バルザックのMMDモデルが映画上映に先駆け雑誌「Windows100%」に収録された事も話題を呼んだ。
また、虚淵の手がけたアニメ作品としては、比較的初期段階にシナリオが執筆されたものであるためか、難解な台詞回しが多く、キャスト陣の間では「何を言ってるのか分からない」と笑い話の種になっている(ただし約一名本気で悩んだ演者もいる)。
2017年3月26日には、TOKYOMXで地上波初放送。同4月から放送された『正解するカド』の制作にも東映アニメーションが関わっている為と思われる。
2018年11月19日には『スーパーロボット大戦T』への参戦が発表された。
2024年1月、『 楽園追放 心のレゾナンス 』と題した完全新作の制作を発表。再集結したメインスタッフによる「その先の物語」とアナウンスされており、添えられた英題は「 Liberated from Paradise 」に改められている。
また、同年11月15日からは公開10周年を記念した2週間限定のリバイバル企画「楽園追放 -Impelled by 10th Anniversary-」が開催され、全国34館で“アップコンバート版”が上映された。
ストーリー
われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか――
ナノハザードにより廃墟と化した地球。人類の多くは地上を捨て、データとなって電脳世界ディーヴァで暮らすようになっていた。
西暦2400年、そのディーヴァが異変に晒されていた。地上世界からの謎のハッキング。ハッキングの主は、フロンティアセッターと名乗った。
ハッキングの狙いは何か。
ディーヴァの捜査官アンジェラは、生身の体・マテリアルボディを身にまとい、地上世界へと降り立つ。地上調査員ディンゴと接触しようとするアンジェラを待ち受けていたのは、地上を跋扈するモンスター・サンドワームの群れ。アンジェラはそれを迎え撃つため機動外骨格スーツ・アーハンを起動する。
荒廃した地上のどこかに、フロンティアセッターが潜んでいるはず。アンジェラとディンゴの、世界の謎に迫る旅が今、始まった。
(公式サイトより)
主要キャラクター
アンジェラ・バルザック(CV:釘宮理恵)
フロンティアセッター(CV:神谷浩史)
登場メカニック
ディーヴァ保安局のエージェントがマテリアルボディを使用して地上へ赴く際に使用する機動外骨格。球形の収納形態を採り、戦闘時には手足が展開してずんぐりとした人型形態に変形する。コックピットはバイクスタイルで乗り込む形式を採用しており、これは後継機であるニューアーハンも同様。
ディーヴァから衛星回線を経由した演算バックアップによる高い戦闘能力を発揮するが、照準補整を始めとする高度な機能は完全にディーヴァに依存しており、スタンドアローンでの戦闘能力はそれほどでもない。
背部にディーヴァからバックアップを受ける為の通信用アンテナがあり、これを破壊された場合は駆動関連の制御も不可能となり、機能を停止する。
ディーヴァが開発したアーハンの新世代モデル。収納形態は球形であったアーハンに対して卵型となっており、人型形態の体格もスマートになっている。
人間一人分の電脳パーソナリティを運搬可能な大容量メモリを搭載しているため、パイロットがマテリアルボディを持たない状態、すなわち電脳パーソナリティのままでも運用が可能で、搭乗者への負荷を度外視した超機動による戦闘をも実現している。
専門用語
ナノハザード
環境改善用ナノマシンの暴走によって地球文明の崩壊と自然環境の激変を招いた、120年前の大災厄。これによって地上は荒廃し、超巨大化した節足動物・サンドワームを始めとする異形の生物が生息する世界へ変容した。
ナノハザード以降の人類の98%は電脳パーソナリティと呼ばれるデータ集合体となって電脳空間ディーヴァへ移住しているが、残りの2%は肉体を持ったまま、文明レベルの後退した地上で生活を送っている。地上の工業技術は大幅に衰退しており、旧時代の都市遺跡から発掘される集積回路や合成肥料は貴重品と言える。
ディーヴァ
月と地球の間にあるラグランジュ1に建造された宇宙ステーション。
肉体を持った人間は居住しておらず、電脳パーソナリティとなった人間達が電脳空間で生活を送っている。電脳空間で様々な悦楽を得られる事から、地上で暮らす少数派の人間達とはメンタリティに差異が見られる。人類の文化の保存を謳ってはいるものの、情報の取捨選択によって取りこぼされたものも多い。
ナノハザードを経て、人類の98%がこのディーヴァへと移住しているが、施設の演算リソースは有限であるため、パーソナリティに割り振られるメモリは個人の能力によって増減し、有能なパーソナリティには優先的にメモリが割り当てられる。
怠け者や向上心の無い者にはアーカイブ凍結などの処罰が下されることもあり、中には少ない割り当てからルームシェア感覚でメモリを共有する者達も居る。
地上の人間ともコンタクトは行われており、保安局の活動が地上にも及ぶ場合は、鉱物資源などのデータを報酬として、現地の人間が協力者として徴用される事例もある。
保安局
ディーヴァ傘下の治安維持組織。多数のエージェントを従え、高度な技術力・軍事力を以ってディーヴァの平和と秩序の下に活動を行う。競争社会の縮図のごとく、他のエージェントを出し抜いたり抜け駆けに走ったりは茶飯事。任務報酬としてメモリが与えられるため、ディーヴァの中でも相応の自由と幸福を手にすることができるものの、エージェントとして不適格と判断された者に対する処分は冷徹で、降格や解雇どころかアーカイブとして凍結されてしまうケースも存在する。
劇中ではアンジェラが所属する情報部の他、査察部や中央審議会の存在にも言及されている。劇中での保安局高官3名はそれぞれ巨大な神像(ゼウス像、仁王像、ガネーシャ像)のアバターの姿でのみ登場。内、ゼウス像と仁王像は男性の声、ガネーシャ像は女性の声で喋ってる。
マテリアルボディ
ディーヴァの住人が地上で活動する為のクローンボディ。精神マトリクスを馴染ませるには本人の神経網を再現する必要があるらしく、記録されている遺伝子情報をベースに数十時間で生成され、パーソナルデータをこの肉体に移して使用される(これは電脳空間で暮らすディーヴァの住人達が一度は肉体を持った生命として誕生している事を示している)。
パーソナルデータがディーヴァへ帰還した際にはボディは昏眠状態となり、任務終了後はテロメア短縮コードが送り込まれる形で生命活動を停止、処分される。ディーヴァの価値観では不要品・消耗品を捨てるのと同じ感覚だが、これを処理する地上の人間にとっては遺体を取り扱うのと同義である。
主題歌
『 EONIAN -イオニアン- 』
作詞 - 六ツ見純代 / 作曲 - Mish-Mosh / 編曲 - 前口渉 / 歌 - ELISA
劇中では「ALISE」(アライズ - ELISAのアナグラム)という歌手の楽曲として、登場人物が歌う場面がある。
『楽園追放 -Expelled from Paradise-』本予告編
こちらは「EONIAN -イオニアン-」が使用されているバージョン。
PV
『楽園追放 心のレゾナンス』ティザーPV
関連イラスト
関連項目
青の6号:CGの実験的作品である事やGONZOの3DCGの評価を決定づけた事などアニメーションの歴史的な共通項が多い。
うーさーのその日暮らし:水島精二繋がりとも言えるコラボでアンジェラ・バルザックが夢幻編にゲスト出演。そして、ダスウサの中の人は…。
外部リンク
『楽園追放 -Expelled from Paradise-』
『楽園追放』インタビュー前編「なぜ楽園なのか?を考えて欲しい」- アニメ!アニメ!
『楽園追放』インタビュー後編「人の死なない話にしようね」- アニメ!アニメ!
水島精二監督に独占インタビューを敢行!! - animate Times
脚本・虚淵玄が語る「作品を読み解くカギ」とは? - 映画.com
「CGは表現者のやりたいことをやれるところに到達した」- GIGAZINE
『楽園追放』は"社会の壁"を壊してヒットを勝ち取った - ASCII,JP