概要
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』の登場人物。
主人公・ドラえもんの妹。
同作者が描いたスピンオフ作品及び映画作品『ドラミちゃん』では主人公を務める。
元々は読者によって生み出されたキャラクターであり『小学四年生』1973年3月号にて初めてドラミ(ただし容姿は現在とは異なる)の姿が描かれ、『小学五年生』1973年4月号掲載「ハイキングに出かけよう」(TC0巻収録)にて正式に登場したが、この時の名前は「ドラ美ちゃん」であった。
また、連載時に★4月1日からテレビに出るよ!と書かれているが、これはドラミがテレビに出るという意味ではなく、ドラえもん初のアニメ化作品である日テレ版ドラえもんの予告である。
日テレ版はドラミが出てくる前に打ち切りとなり、実際にドラミがテレビに出たのはシンエイ動画によって再アニメ化されたドラえもんの「おまたせ ドラミちゃん初登場! のび太の海底ハイキング」となった。
以下、ドラミの設定及び描写を記述する。また、原作版と派生作品の設定を分けて記述するのが難しい為、便宜上どちらも同じ項目に織り交ぜて記述する。
このようなことが起きた原因は2つある。
一つは『ドラミちゃん』という、スピンオフ漫画の設定をそのままドラえもんに採り込んでしまったためである。
もう一つは、藤子の知人で漫画家である方倉陽二がかなりドラミを気に入っていたのか、ギャグ漫画『ドラえもん大百科』で作者も知らないうちに、どんどん設定に尾ひれを付けてしまったためである。後に作者がなかったことにした良いオイル、悪いオイルというオイル設定(質の善し悪し関係なく同じオイルを分けた兄妹という設定のみ残された)などもこれが原因だが、逆にメロンパン好き、後述するチューリップ型のタイムマシンなどは公式設定となり、チューリップ型タイムマシンに至っては原作にも登場した。
機能
ドラえもんと同じオイル(缶に入ったロボット専用オイル)を使用して開発された為、兄妹の関係とされている(大山のぶ代版アニメオリジナルエピソード「ドラえもんのびっくり全百科2」、水田わさび版アニメ「のび太くん、さようなら!ドラえもん、未来に帰る…」、水田版アニメオリジナルエピソード「ドラミが生まれた日」)。
しかしオイルを使用した際、缶をよく振らなかった為に上澄みの薄いオイルと底に沈んだ濃いオイルに分かれてしまい、ドラえもんは薄いオイル、ドラミは濃いオイルを使用した影響で、ドラミの方が高性能になったとされている(『ドラえもん最新ひみつ百科1』、上記の「ドラミが生まれた日」。ただし『決定版ドラえもん大事典』では、ドラミがドラえもんに対し「私の方が後に開発されたのだから、高性能なのは当たり前じゃない」とフォローしている)。
誕生日は2114年12月2日(『決定版ドラえもん大事典』、『ドラえもんひみつ大百科』等、様々な書籍で確認可能)。『2112年ドラえもん誕生』では、ドラミ自身が「子守用ロボットの補助役として開発された妹ロボット」と発言している。しかしその一方、上記の「ドラミが生まれた日」ではドラえもんと同様にマツシバロボット工場で開発されており、作中では博士が「耳を失ったドラえもんを元気づける為に開発した」と発言している(ただしドラえもんが耳を失ったのは2122年8月30日〈TC11巻収録「ドラえもん大事典」〉であり、後者における描写は矛盾が生じている)。
上記の「ドラミが生まれた日」では、ドラミはドラえもんの妹として開発された特注品として扱われている。その一方、『ドラえもん道具カタログ』では、ドラえもんと共にドラミも量産型の市販品として扱われており、値段は100万円とされている(特売品であるドラえもんの値段は20万円)、
身長は100cmで、体重は91kg(『ドラえもん最新ひみつ百科1』、『決定版ドラえもん大事典』、『ドラえもんひみつ大百科』)。パワーは1万馬力で、ドラえもんの約77倍(上記の「ハイキングに出かけよう」)。また、専用の「タイムマシン」として、赤いチューリップ型の「チューリップ号」(『決定版ドラえもん大事典』)あるいは「時空間チューリップ号」(上記の「のび太くん、さようなら!ドラえもん、未来に帰る…」、アニメ版『ドラえもん』公式サイト「ひみつ道具カタログ」)を所持している。構造は個室のようになっており、ドラえもんが所持する「空飛ぶじゅうたん型」のタイムマシンより安全性が確保されている。
体色は黄色。ドラえもんと同様に耳がないが、その代わりに大きな赤いリボンが取り付けられている。このリボンは「リボン型集音装置」(『映画アニメドラえもん「のび太の日本誕生」』)あるいは「リボン型超高感度集音装置」(『ドラえもんひみつ全百科』)と呼ばれる装置で、遥か遠くの音を聞き取ることが出来る。それだけでなく動物の言葉を理解することも可能で、自由に取り外すことも出来る(『決定版ドラえもん大事典』、上記の「ドラミが生まれた日」)。また、上記の「ドラミが生まれた日」では、ドラミに耳を取り付けず、その代わりにリボン型の集音装置を取り付けた理由は、耳を失ったドラえもんが気にしないように配慮した為と描写されている。
しかし水田版アニメオリジナルエピソード「南極ペンギンを救え!」では、ペンギンの言葉を理解する為に「動物語ヘッドホン」を使用している。また、外国語を理解することは出来ないらしく、水田版アニメオリジナルエピソード「王子を守れ!伝説のドラミ三剣士」では外国人と会話する為に「ほんやくコンニャク」を使用している。
また、リボン型の集音装置にはレーダー機能も搭載されている。その為、「レーダーひげ」が取り付けられているドラえもんとは異なり、ドラミにはひげが取り付けられていない(『ドラえもん最新ひみつ百科1』及び『決定版ドラえもん大事典』では、上記の理由に加えて「女の子にひげがあるのは変だから」と説明されている)。
目には「必殺ウインク光線」を発射する機能が搭載されており、光線には恋人達を結び付けたり、喧嘩している人物達を仲直りさせる効果がある(『ドラえもん最新ひみつ百科1』、『決定版ドラえもん大事典』、『ドラえもんひみつ大百科』)。また、胸には「ハート」と呼ばれる装置が搭載されており、人の愛を感じてエネルギーに変換する(『映画アニメドラえもん「のび太の日本誕生」』)。
鈴は「子守り歌鈴」(『ドラえもん最新ひみつ百科1』、『決定版ドラえもん大事典』、『ドラえもんひみつ大百科』)であり、特殊な音波を出すことで音色を聞いた人物を安らかな気持ちにする。それだけでなく、泣いている赤ん坊をあやすことも可能。
「四次元ポケット」は高級品(『ドラえもん最新ひみつ百科1』)であり、女の子らしく模様が描かれている。また、花型のしっぽはドラえもんと同様に機能停止・起動スイッチになっている(『映画アニメドラえもん「のび太の日本誕生」』)。
また、のび太の部屋の押し入れを寝床にしているドラえもんとは違い、ドラミは自分の部屋を持っている(『決定版ドラえもん大事典』、上記の「ドラミが生まれた日」)。鏡はタイムマシンの出入り口になっており、貝型のベッドの下にはリボンコレクションがしまわれている。
それだけでなく、部屋には「ウルトラAV(オーディオビジュアル)システム」(熱帯魚が泳ぐ水槽とテレビ映像を自由に切り替えることが出来る大画面)、「ハイパーシンセサイザー」(ピアノ型の装置で、フルオーケストラのシンフォニーを演奏可能)、「コンピュータ」(大学のマザーコンピュータにアクセスし、勉強や読書はもちろん、ゲームも出来る装置)も設置されている。
パーソナリティ
性格は真面目でしっかり者。ドラミちゃんはドラえもんより優秀で性能がいいのだが、ただし、生真面目すぎて融通が利かないところがある。ひみつ道具に頼らず、まずはのび太(本人)に実力で物事を解決させようとする傾向がドラえもんよりも強い、それが災いし、大きな事件になった事もある(つまりいくらドラミちゃんがドラえもんより性能が高くて良い道具をたくさん持っててもドラえもんように簡単に道具を出してくれないのである)。
ドラえもんの不在時ドラえもんの代わりにのび太の世話を任された時も最初からドラえもんのようには簡単に道具は出す気はなかったようで、まずはのび太本人に努力させ自分で解決させようとポケットの道具を出すのを渋っていた(のび太の海底大冒険)。
普段はのび太の玄孫・セワシの所で暮らしており、彼の世話をしている(上記の「ドラえもん大事典」、TC24巻収録「ションボリ、ドラえもん」等)。
それだけでなく、天才ロボットグループのリーダーであり、ロボット養成学校を首席で卒業(『ロボット学校七不思議!?』)した後、宇宙大学の大学院にて文学、哲学、科学等を研究している(『ドラえもん百科』)。実際にドラミには「超高性能コンピュータ」(『ドラえもん最新ひみつ百科1』、『決定版ドラえもん大事典』)あるいは「ウルトラ・スーパー・デラックス・コンピューター」(『ドラえもんひみつ大百科』。ドラえもんと同じコンピュータ)が搭載されており、特に前者は「今後、どんなに科学が発展しても、二度と作れないと言われている22世紀最高のコンピュータ」とされている(『ドラえもん最新ひみつ百科1』)。
好物はメロンパン(『ドラえもん最新ひみつ百科1』、『決定版ドラえもん大事典』、『ドラえもんひみつ大百科』)であり、苦手なものはゴキブリ(TC9巻収録「ウラシマキャンデー」)。原作版では少し驚く程度だが、『ドラえもんわくわくひみつ道具スペシャル』では、恐怖のあまり「地球はかいばくだん」を取り出している。
趣味は音楽全般で、カラオケはもちろんピアノを弾くことも出来る(『ドラえもん最新ひみつ百科1』、『決定版ドラえもん大事典』)。それだけでなく、歌唱力も「七色の美声の持ち主」と言われるほどに高い(『ドラえもん最新ひみつ百科1』)。
原作版初期はドラミ自身が「あたし家庭科専門なの」と発言しており、「どこでもドア」等のひみつ道具を所持しておらず、彼女が持つ道具は家事に役立つ物ばかりだった(上記の「ハイキングに出かけよう」。ただしこの設定は完全に無くなった訳ではなく、水田版アニメオリジナルエピソード「くしゃみに気をつけろ」では、ドラミが「家庭科は得意なんだから!」と発言している)。
現在はドラえもんと同様に数多くのひみつ道具を所持しており、彼と同様に未来デパートから購入している(『決定版ドラえもん大事典』。水田版アニメオリジナルエピソード「走れドラえもん!銀河グランプリ」でも、のび太からレースに出場出来る車を所持しているか尋ねられた際、ドラミは「お兄ちゃんや私はデパートで売っているような物しか持っていない」と発言している)。
また、タイムマシン(『決定版ドラえもん大事典』)、どこでもドア(TC7巻収録「山おく村の怪事件」)、「フエルミラー」(漫画版『人魚大海戦』)等、一部の道具はドラえもんよりドラミが所持する物の方が高性能とされている。
その一方、ドラえもんと同様に安物の道具で済ませることもある。TC4巻収録「海底ハイキング」では、のび太が長期間家を留守にすることになり、彼の両親が心配しないようにする為、ドラミがのび太の代わりとなるロボットを用意した際は「中古ロボットを(のび太と同じ姿に)改造した」と発言している。
現在は真面目でしっかり者かつ優等生として描かれているドラミだが、原作版初期は物事の分別をつける事が苦手な、やんちゃな妹として描かれていた。ドラえもんよりも後に開発されたロボット故に、上記の通り一万馬力を誇るパワーでドラえもんを強引に押さえ付けたり、その一方で機械(自分が所持していないひみつ道具)に弱い様子が描かれている(上記の「ハイキングに出かけよう」)。のび太からも「あのチビ帰せないの?」と露骨に迷惑がられていた。
しかし、原作版の連載が進むにつれて優等生の側面が強調されて描かれるようになり、原作版初期のやんちゃぶりは鳴りを潜めるようになっていった。
ただし、自分の想定外の事態が発生した時は「手に負えない」と言いながら、ドラえもんに助けを求めることがある(TC30巻収録「ハツメイカーで大発明」)。それだけでなく、ドラえもんと同様にドラミも隙を突かれて攻撃されてしまい、「スモールライト」を使用する前に気絶してしまったことで、のび太達がピンチに陥ったこともあった(大山版アニメオリジナルエピソード「ジュラ紀でドラミが大ピンチ」。その後、駆け付けたドラえもんが「タンマウォッチ」を使用して時間を停止し、のび太達の窮地を救った)。
ドラえもんズの一員であるドラ・ザ・キッドとは恋仲であり、互いに「ガサツ君」、「へちゃむくれ」と呼びながらからかい合っている(『ロボット学校七不思議!?』)。ドラミがキッドと出会い恋仲になったのは、ドラえもんが耳を失い青い身体になった後の出来事なのだが、スピンオフ作品『ザ・ドラえもんズスペシャル ロボット養成学校編』2巻収録「ミクロの敵をやっつけろ」では、ドラえもんがまだロボット養成学校に通っている頃から交際している設定になっている(ただしこの描写は『2112年ドラえもん誕生』及び『ロボット学校七不思議!?』と矛盾している)。
しっかり者で突っ込み担当になることが多い大山版に比べ、水田版のドラミはしっかり者の部分はそのままだが多少ぶりっ子な部分があり、美的センスもズレている所があり、のび太がドン引きするほどのゴンスケがレース用に作ったアヒル号を「可愛い」と目を光らせたり、サボテンのような変なおもちゃを気に入り、ドラえもんにプレゼントしようとし、セワシを引かせた。
人間関係
原作においては出番の少なさゆえにドラえもんとのび太とセワシの3人以外と絡むシーンはほぼない。
スピンオフ作品『ドラミちゃん』では主人公ゆえに毎回出番があり、野比のび太郎だけでなく、その両親との交流も少なくないが反面、のび太郎の友人たちとの交流は少ない。
大長編のドラミ
先述の通り、原作での登場回数は少なく、特に大長編ではドラえもんが実質2人存在する展開を避けるためか藤子・F・不二雄が直接手掛けた作品では『魔界大冒険』のみ登場している。
大長編のドラえもんは所謂マイナス補正がかかって「肝心な時に頼りにならない」面が強調されてしまっている事が多いが、ドラミは変わらず有能さを発揮しており、何度も美味しい所を持って行っている。
藤子・F・不二雄が手掛けた訳ではない派生作品を含めれば『パラレル西遊記』、『新魔界大冒険』、『緑の巨人伝』、『新・宇宙開拓史』、『人魚大海戦』、『新・鉄人兵団』、『奇跡の島』、『ひみつ道具博物館』、『新・日本誕生』、『南極カチコチ大冒険』にも登場している。
大長編及び映画版、『ザ・ドラえもんズ』作品以外でドラミ自身が主役となる映画作品は『ミニドラSOS!!!』(『日本誕生』の同時上映)、『アララ♥少年山賊団!』(『ドラビアンナイト』の同時上映)、『ハロー恐竜キッズ!!』(『ブリキの迷宮』の同時上映)、『青いストローハット』(『夢幻三剣士』の同時上映)である。
関連イラスト
非公式擬人化
関連タグ
ドラえもん ドラえもんの登場人物一覧 ドラえもん(キャラクター)
ドラえもんズ 野比のび太 セワシ ドラ・ザ・キッド パワえもん
方倉陽二:原作版連載初期における藤子・F・不二雄のチーフアシスタント。ドラミの大まかな設定(同じオイルを使用した兄妹、チューリップ号、好物と苦手等)は彼によって生み出された方倉設定と呼ばれるものが底本であり、それを公式〈藤子・F・不二雄本人・藤子プロ・シンエイ動画・テレビ朝日〉が整理した上で拾い上げられた。