「邪魔者に死を。それが私の仕事ですので」
「バッタオーグ!完成していたのですか…!」
「さぁ貴方も死んで、私の幸福の一部となって下さい」
CV:大森南朋
スーツアクター:柏崎隼風
データ
身長/不明
体重/不明
特直・力/粘着性の糸を利用した攻撃、機械仕掛けの子グモ、4本の隠し腕
概要
原典の蜘蛛男に相当し、英語表記はKUMO-AUGMENT-01。クレストは鋭角的な蜘蛛。
ガスマスクのような形状のマスクを被っており、マスクには蜘蛛の足を模したドレッドヘア状の装飾パーツが生え、ヘルメット全体で一匹の蜘蛛を模したデザインになっている。
蜘蛛男の特徴であった3つの単眼は光学センサー郡の周囲に六角形のペイントが施されるという形で再現されている。また、頬から側頭部手前にかけて緑の発光体が配置されているのも特徴。赤いラインが伸び、蜘蛛の足状に配置されている。口元は釣り具のリールを意識してデザインされた。
赤と黒のジャケットと、ショッカーのエンブレムが入ったズボンを着用するという身軽な装い。その印象に違わず、連続バク宙や後方宙返りしながら飛び降りる等、アクロバティックなアクションを披露しており、トリッキーな動きでライダーを翻弄する。
……のだが、作中でセルフ・ツッコミをしたように、よりにもよって武器の1つである蜘蛛糸を活用したトリッキーな動きをするのが困難な場所でライダーと戦ってしまった。
どうやら、「シン仮面ライダー」の世界では「スパイダーマン」のコミックや映像化作品は存在しないかメジャーではないと推測される。
能力はオリジナル同様口から吐く糸を使用する他、本来の腕以外に左右2対の腕(本来の腕と合わせ3対6本。脚と合わせると4対8本となり、モチーフである蜘蛛と同じ数になる)を隠し持っており、これで相手を羽交い締めにして絞め殺すことを好む。スーツに複数のファスナーがついているのは、この腕を生やす都合もある。
人物像
基本的には敬語の慇懃な口調で喋り、「裏切り者に死を。それが私の仕事です」など自分に関する事柄については「それが私の~です」と付け加える独特な口癖を持つ。
組織内では主に裏切り者の追跡や抹殺を担っており、自らの手で他者の生命を奪う殺人行為を「幸福」としている。
特に、素手で相手を絞め殺す際に最も大きな幸福感を感じる模様。
普段は冷静沈着で、口調も丁寧で一見すると紳士的にも見えるが、「おしおき」としてルリ子の目を潰そうとするなど残忍な本性を時折表している(これに関しては、ルリ子の正体及び能力を把握した上での戦略的な面もあったと思われる)。
標的に一度逃げられてもすぐにクモ型の発信器を仕込んで追跡する抜け目の無さも併せ持ち、不穏分子の掃除人としての実力も高い。
SHOCKER上級構成員の1人ではあるが、他の構成員とは異なり独自の拠点を有している描写はない。
狂気染みた性分ではあるが、一方でK.K.オーグからは「クモ先輩」として敬愛されており、SHOCKER内部でも一目置かれる存在であった模様。
また、強い仲間意識を持つ人物でもあり、裏切り者である本郷に対しても、最初は「裏切り者がほざかないでください」と裏切ったことに対する嫌悪感を示していたものの、内心では上述した態度を見せている。
彼との戦闘では「同じオーグ仲間を殺めるのは遺憾ですが、古来よりバッタは災いの象徴ですし仕方ありません。」と複雑な心境を露わにし、「人間を捨てたオーグメントのために人間を殺す」「同じオーグ同士で出来れば戦いたくない」「既に人間ではないあなたと分かり合えないのが残念」と発言し、爆弾で仕留めるまでに留めたり(後述のように脱出されたが)攻撃の回避に徹したり極力直接的な戦闘や直接手を下すことは避けており、後述のように理解されないことへの悲痛な叫びを上げている。
活躍
下級構成員を引き連れてSHOCKERの反逆者である本郷猛と緑川ルリ子を追跡。
ルリ子を捕らえようとするが仮面ライダーに変身した本郷に阻まれ、一度撤退。その後、緑川弘と再会した彼らの前に再び出現する。
小クモ型の兵器でルリ子を気絶させて本郷を蜘蛛の糸で拘束し、身動きのとれない本郷の眼前で弘を殺害。ルリ子を回収すると本郷への置き土産として爆弾を小屋に置いて去った。
体内に残留するプラーナを排出し、大きく弱体化した仮面ライダーでは爆発から逃れることはできないと考えていたが、爆発を免れて後を追ってきた仮面ライダーと再戦。
「邪魔者に死を。それが私の仕事ですので」
けしかけた戦闘員を片付けた仮面ライダーと直接交戦し、力任せ気味な仮面ライダーに対し軽快な身のこなしで攻撃を躱し、戦闘員を倒した様の賞賛しながら互角に渡り合う。
小屋で拘束した時のように糸による拘束を仕掛けるも仮面ライダーに同じ手は通じず、糸はコートで防がれた上そのコートで視界を遮られた隙に強烈な一撃を食らってしまう。
改めて仮面ライダーの能力を評価すると、ダム下方の足場へ糸を駆使して降下し、追ってきた仮面ライダーを全ての腕と足を使って拘束。
「見てください!この圧倒的な殺傷能力!ヒトではない喜び!」
「あなたも私と同じオーグメント……!なのに、この幸せがなぜわからんのです!?」
「さぁ…貴方も死んで、私の幸福の一部となって下さい…!」
しかし、空中に飛び上がった仮面ライダーの高速回転による遠心力で拘束を振り解かれてしまい自身にとって不利な空中戦に持ち込まれたことで形勢が逆転。
「しまりました! 空中では私が圧倒的に、不利ィィィ!」
自分の不利を悟ると同時に繰り出されたライダーキックを喰らい、ダムの壁に叩きつけられたことで敗死。その亡骸は白い泡と化して消滅した。
なお、空中では不利と語っているが別の世界の似たような能力を持った正義の味方のように高層ビルや街灯や電信柱などが有る場所で戦えば(蜘蛛の糸を有効活用する事で)空中戦の方が逆に有利に戦えた可能性は有る。
真の安らぎはこの世になく
「勇気を出して「こちら」においでなさい。「人間」を捨てて美しい獣の世界を共に生きましょう」
「怒りや暴力に満ちていても……魂は汚れない、自然を生きる幸福を……私は求めます」
実直な性格で常に礼儀正しく、イチローのような子供相手であっても意思を尊重することが出来る度量の深い人物だが、詰襟の学ランや道着など他の服を着ている時でも一貫して仮面を被り、素顔を一切現さないなど何処か変わっているように感じられる側面もある。
実はマスクの下の素顔は酷く焼け爛れており、これは「愛する人を見殺しにした罰」として自分自身で融かしたものである。元々は黒い長髪の端正な顔立ちの青年で、本名は「マサ」。
後述する経緯からか「人間嫌い」で「“人ならざる者になること”が希望」と語るほどに自己嫌悪も強い。一方で「子供にはまだ救いがある」とイチローの身を案じる様子を見せている他、「組織内で生き残れるように」とイチローの鍛錬にも付き合い、イチローの思想には共感する事もある。
サソリとは同じ派閥の仲間ではあるが、性に奔放なサソリとは折り合いが悪く、「体育の授業」において半ば本気の殺し合いを演じてイチローを唖然とさせた。
本業は組織内の「掃除」=組織内の不穏分子の排除である。一方でイワン博士の派閥にも属しており、敵対派閥のクラークからは「危険人物」「頭のネジが飛んでいる奴ら」と一纏めに評された。
登場時点で既に改造人間であるためか卓越した身体能力と戦闘力の持ち主で、奥の手として口から糸を吐く能力を持つ他、スパイ兵器としてSHOCKERが開発した高性能の子蜘蛛を扱うことが出来る。また、第3話では光学迷彩とまではいかないまでもドローン兵器のセンサー類を誤魔化すことが出来るパーカーも着用している。
第7話でイワン博士の手による新たな強化手術の処置が終わり、人外合成型オーグメントの第1号として生まれ変わった。首から下は蜘蛛男と同じく蜘蛛のような黒い体毛に覆われた姿となっている。
後に妹を紹介し仲良くして欲しいと話すイチローに対し「子どもを紹介しに来たのか」「ここは学校ではない」「訓練を怠るな」などと以前よりも冷たく対応しているが、これが強化手術の影響によるものかは不明。
その外見が原因で大っぴらに活動できないらしく飛行機でアメリカに赴く際は楽器として箱詰めにされた。
10年後はイチローの元を離れ死神派でイワン博士と共に行動を共にしている。
イチローの目的については批判的らしく派閥的には対立しているが彼の身は案じている。
過去
漫画版において、彼の過去が判明。
大学時代に親しい仲だった「浩介」という名の青年がいたが、彼が同性愛者である事をカミングアウトした結果、学友に無断で性的指向を暴露されるというアウティングをされた事を苦に浩介は電車にて自殺。
(おそらく精神世界において)浩介の性的指向を馬鹿にする学友達に怒りを感じながらも結局その場の空気に負け、本心を押し殺して愛想笑いしながら同意してしまっていたかつての自分を眺め、自己嫌悪に泣いていた。その時、巨大な蜘蛛のような存在に「もっとピュアで美しい生き物に変身」するように唆され、暴走(この時、彼の体は黒く塗りつぶされている。)。
自らを「正気」だと言いつつも和解しようと顔を出したヘルマンを即座に殺害。悪意を込めていたぶろうとするなどサソリから見ても明らかに精神性が変化していたようで、イチローやサソリにもそのまま襲いかかり彼らを苦戦させる。
しかしプラーナのもうひとつの側面により、 彼の記憶を見たイチローとの戦いの中で本名を呼ばれた事に動揺。なおも攻撃するも「心はクモさんでいて」と諭され抱きしめられる形で躱されたことで戦意を喪失、膝から崩れ落ち事なきを得た。
前述の「愛する人を見殺しにした」という発言からクモオーグも同性愛者で、浩介とは恋人関係にあったか、もしくは浩介に対し恋心を抱いていたと思われる。
余談
- 一連の登場場面は細かな1シーンやカット割、ロケ地に至るまでTV版の第1話「怪奇蜘蛛男」を徹底的にリスペクト・オマージュしており、その再現度は極めて高い。2021年9月に公開された特報PVで既にその片鱗を覗かせており、ファンの間で話題となった。
- 本作の全国上映終了の一週間前に公開された終映告知映像において、登場キャラクター達の最期の台詞が次々と流れる場面があり、敵であったオーグメント達も野望の裏に秘めた絶望や哀しみを含んだ辞世の句らしき重い言葉を残していく。ところがこのクモオーグだけは上記の通り「自分が苦手な空中戦に持ち込まれてしまった」ことへの嘆きが最期の台詞となってしまった為に他の悲痛な遺言に比べて明らかに浮いており、ツッコむ声が多発することとなってしまった。
- 他のオーグメントのスーツアクターが演者と兼任となっている中で、唯一演者とスーツアクターが異なるオーグメントとなっている。(もっとも、壮年期の大森氏にあの激しいアクション自体無茶以外の何物でもないが。)
- また、スーツアクターを務めた柏崎氏は『ウルトラマンコスモス』でコスモス(ウルトラマン)・ルナモードのスーツアクターを務めていた猫俣博志氏のご子息。
関連タグ
外星人第0号メフィラス:シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバースに登場した中で、独特な口調を有している紳士然とした悪役繋がり。
外星人第2号ザラブ:メフィラスと同じくシン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバースに登場する悪役。クモオーグの口癖によく似た「それが私の仕事だからだ」という台詞がある(原典のザラブ星人にも「そうすることが私の仕事なんだ」といった台詞がある)。
澤田亜希/スパイダーオルフェノク:殺人を厭わない冷酷な人格、垂直の壁に張り付き移動する能力、口から糸を吐く能力を駆使した戦闘スタイル、仮面ライダーとの決戦の地がダムなど共通点が多い。
エヴァンゲリオン第13号機:監督繋がり。同じく隠し腕を生やすギミックを持つ。ただし、こちらは2対4本。
スパイダークモノス:同時期の戦隊に登場する蜘蛛モチーフのヒーロー。
ドクモンド:原典『仮面ライダー』に登場する「ツチグモ」(ジグモ)の怪人。
クモライオン:原典『仮面ライダー』に登場する「蜘蛛」と「ライオン」の合成怪人。
ボンドルド:セリフの言い回しが似ている。ただし、彼には殺人を快楽とする側面はない。