「僕は人を守りたいと思う、自分の心を信じる。」
演:池松壮亮
変身する仮面ライダー
概要
『シン・仮面ライダー』に登場する青年。改造人間「仮面ライダー」に変身する。
原典と同じく頭脳明晰・スポーツ万能で、髪型は癖毛気味の長髪。大学時代は生化学者の緑川弘に師事しており彼を「先生」と呼び慕っている。
原典と比較すると、石ノ森漫画版やTV版初期の頃の改造された事に苦悩する『影のある寡黙な青年』としての本郷…をより強調し、感情表現に乏しく他人とのコミュニケーションが苦手な所謂「コミュ障」であり、それが原因で師と同じ生化学者となっている原典とは異なり現在は無職で、唯一の趣味であるバイクでツーリングしながら自分探しの一人旅をしていた。(コミュ障の他には後述の過去も影響している可能性があり、あくまで原因の一つに過ぎない。)
(原典の本郷猛は別にコミュ障という訳ではなく、子供には朗らかに優しく接し、大学時代の友人も多い)
一方で他者を傷付ける事を嫌い、自分が理不尽な状況に巻き込まれても相手に恨み言を言わず、相手の止む無き事情や自らの義理を感じれば、それを果たそうとする等、余りに優し過ぎる人物として描かれている。
変身前は黒いロングコートを羽織っており、劇中ではオーグメントへの改造後、自分を連れ出した緑川ルリ子と共に行動する。
余談
- 本作品のオーディションが行われた際、主演の池松氏は上海にいたため、対面ではなく、オンライン形式で行われ、「本作品についてどう思う?」などといった話が主で台詞をひとつ読んだくらいであったという。合同記者会見で庵野は、「自分の中で藤岡弘、さんが演じる本郷猛のイメージが強すぎて、異なる方向性を目指さなければならない時に彼がマッチした」と語っている。なお、このように藤岡氏の本郷とは全く違ったイメージの本郷を演じた池松氏であるが、宣伝写真等で見ることができる満面の笑みは藤岡氏のそれと非常に似ていると評判である。
- アクションの練習中に靭帯損傷の怪我を負ってしまい、制作発表では松葉杖を付いて土壇する羽目になったが、本人曰く撮影に支障はないらしく「改造手術に失敗した」とのジョークを飛ばしている。なお、初代で本郷猛を演じたかの藤岡氏も撮影中にバイク事故に遭い、一時主役を降板している(藤岡氏不在の代替案として滝和也、2号/一文字隼人が生まれたのは有名な話)。
- 池松氏は2005年公開の映画『鉄人28号』にて金田正太郎役を演じたほか、直近ではNHKで放送されたドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』にてオダギリジョーのパートナーとなる主人公・青葉一平を演じており、クウガと1号がコンビを組む形となった。なお、池松氏は幼少期の頃はあまり特撮に馴染みがなかったようであるが、本作で演じた本郷猛と仮面ライダー第1号には自身が演じたこともあり相当な思い入れがあることをインタビューで語っている。
- 映像作品で初めてとなる、一人称が一貫して「僕」の本郷猛である。
関連タグ
本郷猛(仮面ライダーTheFirst):別世界の本郷猛。SHOCKERからマインドコントロールを受け、バッタ型怪人「ホッパー1号」として破壊活動を行っていた。
令和ライダー主人公
五十嵐一輝/バイス → 浮世英寿 →((本郷猛(シン))→一ノ瀬宝太郎
この先、ネタバレ注意!
優しすぎる戦士、その壮絶な生涯
SHOCKERによってバッタオーグに改造された当初は、人間の身体を容易に砕ける力と他人の命を奪っても平然としていられるマスクの効果に強い嫌悪感を抱いていたものの、コウモリオーグ戦後、『人を守りたい』と思う自分の心を信じる事を決意し、徐々に正義の戦士「仮面ライダー」として戦う覚悟を決めていく。
その一方で、心の根底にある優しさだけは変えようとせず、相手が誰であろうと倒した敵には必ず黙祷を捧げ、ハチオーグに対してはルリ子の気持ちを汲んで投降とSHOCKERからの脱退を促し、マスクをして戦った際もとどめに出来たはずのライダーキックを外す精神力を見せた。
彼の協力者によれば、その優しさが本郷の良い所であり同時に弱点でもあるという。
他人を傷つける事は忌避するが、改造された自分の肉体は物語の進行に伴いある程度受け入れる。ただし、食事を必要としない点は、「つまらない体になった」とぼやいていた。
コミュ障と言われつつも相手への配慮は忘れず、ルリ子が他人を信じない発言を見せると、「僕ではなく、僕のプランを信じてくれ」と言う等、誠実な人柄である事が分かる。
そんな性格故に、自分を勝手に巻き込んで改造した緑川博士の遺言も律儀に守っており、ルリ子は呆れながらも父が彼を選んだ理由に納得している。
大学時代、警察官であった父親が人質を取った犯罪者を説得しようとした際に、ナイフで刺され殺害される様を眼前で目撃するという暗い過去を体験しており(犯人はなおも暴れようとしたため、同僚警官に撃たれた)、その時に感じた強い絶望と、銃という力を使わずに犯罪者も助けようとした父の姿勢(一方で、自分と母が残される事よりも、人質の心配を最後にした事には思う所があった模様)から「大切な人を守れる力が欲しい」という願いを持ち、それがSHOCKERに選ばれた理由になったとされる。
数々のオーグ達を倒し、終いにはルリ子すら喪いながらも、仮面ライダー第0号/チョウオーグ=緑川イチローとの決戦に一文字隼人と共に挑んだ本郷。仮面ライダー第0号のプラーナの供給元である玉座をサイクロン号2台を犠牲にして破壊する2人だが、仮面ライダー第0号は強敵で次第に追い詰められていく。
だが、プラーナの供給源を破壊されていた仮面ライダー第0号も次第にプラーナを消耗し弱体化。何がなんでも食らいついていく2人を前に0号も押されほぼ互角の戦いとなるが、一文字は両腕、本郷はベルトを破壊されてしまう。
しかし、本郷が0号を押さえた一瞬の隙を突いて一文字が頭突きで自らのマスクと共に仮面ライダー第0号のマスクを破壊し、本郷はイチローに自分のマスクを被せた。
本郷のマスクにプラーナを固定化し存在していた妹のルリ子と邂逅を果たしたイチローは、彼女と交感した事でハビタット計画を放棄する事を決断。こうして、ルリ子が本郷に託した「兄を止めてほしい」という願いは叶えられた。
激闘の末にプラーナを急速に消耗したイチローの命は既に尽きようとしていたが、本郷もイチローを止める為に大量のプラーナを消耗、更にベルトの破損でプラーナの制御ができなくなった本郷は自らの死を悟る。
一文字の目の前で、本郷とイチローは肉体が溶解して跡形もなく消え去ってしまう。
一文字「本郷…?」
「……後は頼んだ、一文字」
一文字「本郷ッ!!…何だよ、また一人かよ…」
ルリ子はK.Kオーグに殺され、本郷もイチローを止める為に命を落とした。
だが、2人の魂とプラーナは仮面ライダー第1号のマスクに遺され、傷ついた本郷のマスクは立花が回収、ルリ子の魂は本郷の願いによりマスクから安全な場所へ固定化される事となった。
修復されたマスクは一文字が「ただ1人の仮面ライダー」として再び被り、本郷の魂は一文字と新たなサイクロンと共に人類の平和を守るため走るのであった。
肉体は失えども、劇中でルリ子が繰り返した「辛いという字に横棒を一本足すと幸せになる」という言葉通り、辛い境遇の中で足された「一文字」によって、本郷の戦いはひとつの幸福を実現したのだった。
そして幸せをもたした「一文字」も、一匹狼で戦っていた太い1本ラインから、細い2本の線で互いに支え合う仮面ライダーとなったのである。
真の安らぎはこの世になく
漫画版では本編の時系列から2年前の父を失った直後の大学時代の姿が登場。
科学研究所のインターンで緑川と対面している。
この頃から優秀な学生として注目されていた模様。
わずかな間だが緑川博士に「味わった絶望」と力を欲する事について話していた。
そして2年の月日が経ち、バッタオーグとなった本郷はルリ子の手引きで脱走し…
映画本編の主人公であり、漫画がイチローをはじめ他の登場人物の過去の掘り下げに費やされているため、意外と出番は少なめ。
余談(ネタバレ)
- 漫画版の仮面ライダーにおいても本郷はショッカーライダーとの戦いで死亡するが、こちらでは脳髄だけが残り、終盤で脳髄をアンドロイドのボディに組み込むことで復活している。洗脳が解けて仮面ライダー2号となった一文字と通信により会話や五感を共有する事でサポートしており、『シン・仮面ライダー』ラストでの本郷と一文字の会話のオマージュ元となっている。
関連タグ(ネタバレ)
五代雄介:平成ライダーシリーズにおける「1号ライダー」。暴力を嫌う点、父を亡くしている点、最終決戦でベルトを破壊されてしまう点など共通点が非常に多い。彼が手にした究極の力の制御には、本郷も持つ「優しさ」が鍵となった。
乾巧:癖毛で人付き合いが苦手な主人公繋がり。ルリ子と行動を共にする姿から彼を連想したファンも多い。
火野映司:本郷と同じく過去に大切な人を失った過去があり、仮面ライダーの力を行使し、弱き者たちのため、大切な人たちのためにSHOCKERの様に人の欲望を弄ぶ敵と戦い抜いた。
鷹山仁、南光太郎(BLACKSUN):昭和ライダーのリメイク作品における主人公達。いずれも似たような結末を迎えている。
秋山蓮(小説版):同じく警察官の息子であったが、ある意味で本郷とは真逆の人生を歩んでいる。
天道総司:完璧超人だが、無職という点が共通している。