「許さんッ!!」
「創世王は、俺が殺す!」
「怪人がこの世界から居なくなれば、それで十分だろ」
変身する仮面ライダー
概要
『仮面ライダーBLACKSUN』の主人公。原典である『仮面ライダーBLACK』の南光太郎にあたる人物。現代での年齢は70歳。
幼い頃に秋月信彦と共にキングストーンの片割れを埋め込まれ、黒いバッタ怪人となった中年(初老ほど)の男。服装は黒のロングコートとVネックの薄手の黒のロングシャツ、黒のボトムスと色は違うが黒の指ぬきグローブを着用するなど全身黒ずくめ。
怪人に変身する際は腰に変身ベルトが出現し、全身が包み込まれるように変身する。
普段は廃バスを住処に借金の取り立てや暗殺と言った汚れ仕事で食い扶持を繋いでおり歴代ライダーの中では異色の経歴の持ち主である(それまでは何らかの職業に就いていたり学生やフリーターが多かったため)。
服装に違わぬ暗く重い雰囲気を携え、優しさを垣間見せながらも心を強く閉ざしたような態度を取る。
かつては『護流五無』の一員だったが、ある一件から現在は離反。その時の事が現在も尾を引き、暗い性格に繋がっている。
また、その際の出来事から左脚を悪くしており、投薬が欠かせない(因みに使用しているのは日本では麻薬に指定されているケタミン)。怪人の食べ物である「ヒートヘブン」を一切摂取しておらず、そのこともあってか一向に脚が治らず人間と同じく歳を取っている。 ただし、世紀王故か実年齢(70歳)よりは若い容姿をしている。
一方でこのような決して良いとは言えないコンディションであっても、下級怪人程度なら苦もなく圧倒できる高い戦闘力の持ち主。特筆すべきはその異常なタフさで、劇中で蜘蛛怪人に背後から生身の状態でぶっ刺されても対して動じず逆に脚を引っこ抜きにくくして最終的に先端を潰す、金鳳花怪人の花の棘攻撃を片腕で難無く防ぎ刺されても全く動じない、変身前に心臓を潰される程の攻撃を喰らっても直ぐに変身に移行するなど、驚く程頑丈な体をしている(恐らく怪人としての強さや50年間の汚れ仕事で鍛え上げられた事などが要因かと思われる)。この頑丈さは終盤にかけても描写されている。
ある日、いつもの通り暗殺を請け負うが、ターゲットであった和泉葵がキングストーンを持っていた事から暗殺をためらい、更に成り行きでクモ怪人から葵を守った事から交流が始まる。
護流五無との争いで養母を亡くし、行く宛を失った葵と共同生活を送る中でかつての優しさを取り戻していくが……
孤独な男の壮絶な生き様
この先は『仮面ライダーBLACK SUN』のネタバレを含みますので、十分にお気を付けてお読みください。
科学者だった父の南光三が秋月総一郎と親友だった関係もあり、総一郎の息子である秋月信彦とは幼い頃から共に育ち、兄弟とも取れる程の絆を結んだ親友であり、ビルゲニアの事を「ビルゲニアの兄ちゃん」と呼ぶなど当時から面識がある。
幼少期に地図にない村に滞在した時期があり、11歳になった1963年、父や総一郎らにより、信彦と共に体内にキングストーンを埋め込む手術を施されて怪人となった。その後、手術の傷跡がなかなか癒えなかったため、光太郎は創世王の青い水を塗ると痛みが取れるというビルゲニアの話を思い出し、信彦を誘って創世王が安置されている祠を訪問。小さな瓶に入っていた青い水を傷に塗布していたところ、目を覚ました創世王に見えない力で拘束されて驚いたものの、手を伸ばした創世王に頭を撫でられたのちに解放されるという体験をしている。
怪人への差別を巡って、人間と怪人の衝突が多発していた1972年。信彦と共に、知り合いのビルゲニアやオリバー・ジョンソンらが所属する組織「五流護六」の集会に出席。怪人の権利獲得を目指す活動家のダロム、ビシュム、バラオム、新城ゆかりらと出会う。当初は信彦と同じく暴力的手段を用いることに否定的だったが、ゆかりに惹かれたことから組織に加わる。
後に、主要メンバーとなった後は、時の総理大臣だった堂波道之助の孫、堂波真一を拉致するという手段により、組織代表と総理との会見を実現した。しかし、総理と会見したダロムらは、怪人の教育、労働、参政といった権利保証を認められたが、引き換えに「革命ごっこを終わらせ政党を作れ」「他国と戦争になった時には怪人達には最前線で戦って貰う」と、逆に道之助の提案を受ける。同時に、「創世王を引き渡せ」「本気を出せばいつでも怪人達を根絶やしに出来る」と、従わなければ他の怪人を人質に取るという脅迫を受ける。ビルゲニアは創世王と怪人達を護る為猛反発するが、争いを望まないダロム、ビシュム、バラオムは傘下に入ることを決断。その情報を蝙蝠から聴き、会見の結果に反発したビルゲニアに従って、信彦、オリバー、ゆかりと共に組織を離脱し、秘かに運び出した創世王を伴いとある山中に潜伏した。
数日間は皆で順調に潜伏していたが、ゆかりの本当の目的が「創世王を殺して、これ以上怪人に改造される人間を増やさない事、今生きている怪人達には、ヒートヘブンに頼らず寿命を全うして欲しい」と知り、怪人と人間の未来の為、信彦と共にゆかりへ自身のキングストーンを預け、創世王を打倒しようとする。しかし返り討ちにあって左足をへし折られる重症を負い、蝙蝠に助けられ命は繋いだものの、計画がバレた事によりゆかりはビルゲニアによりサタンサーベルで斬殺されてしまう。間一髪で蝙蝠により木の上に隠れた所からその一部始終を観てしまい、信彦はバラオムに敗れ捕えられていまった事も相成り、彼の革命運動はここで終わりを告げた。
50年後の2022年。古傷の左足を引き摺りながら、借金の取り立てや暗殺などを請け負いつつ、廃棄されたバスでの独り暮らしという、荒んだ生活を送っていた。
ある日、仕事の一環で和泉葵の暗殺を請け負うが、葵が自身のキングストーンを所持していた事に驚愕。そして、彼女を狙うクモ怪人と闘い勝利。彼女を守る事を決める。その夜、バスに葵を背負って帰った所で50年の縛から逃れた信彦と再会。未だ創世王の排除を諦めていない彼の誘いを断り、我関せずを貫こうとするが、キングストーンを持つ葵がゴルゴム党に狙われていることもあり、否応なしに戦いへと巻き込まれていく。
葵との共同生活が始まってからは、キングストーンを狙う護流五無が差し向ける刺客を返り討ちにしながら葵に戦い方を教える生活をしていた。
そんな中、葵がニックに攫われてしまった事を小松俊介から知らされ、信彦と共に葵が囚われた場所である、かつて怪人たちが生活していた村へ急行する。
その場で襲ってきたカマキリ怪人と交戦するが、カマキリ怪人は葵が怪人にされてしまった姿であった。
「よくも葵を……怪人に……!! 許さんッ!!」
「変……身ッ!!!」
葵を怪人にしたビルゲニアへの怒りから完全体に変身。創世王の後継者たる世紀王ブラックサンとしての力を完全に覚醒させ、ビルゲニアを圧倒。世紀王ブラックブレードでビルゲニアの左腕を切断して追い詰めるも、すんでのところでビシュムの妨害を受け、その際に葵も再び連れ去られてしまう。
その後に囚われた葵を助けるべく護流五無本部に乗り込み、葵と合流。その場で葵の持ち去ったキングストーンを追ってきたダロムと戦闘、撃退した後は創世王と対峙する。
死闘の末に創世王の心臓をもぎ取るも左足を切断されてしまったが、コウモリ怪人の協力もあって足を持ったまま脱出に成功する。
ノミ怪人の拠点で治療中に人間への憎しみにより仮面ライダーになった信彦が現れ、「怪人だけの世界のために一緒に来い」と誘われるが、それを拒んだため対立。左足を無くしてしまったハンデもあり、信彦に敗北。しかし、クジラ・ノミ・コウモリがキングストーンを投げ渡して気を逸らしている間に撤退に成功する。
その後クジラ怪人が深海から持ってきた命のエキスを浴びた事で左足も接合され復活。
それでも起き上がることもままならない満身創痍な状態であったが、最後の戦いに赴くためにこれまで50年間忌避してきたヒートヘブンを食べ、更なる力を得る。
完全復活した光太郎はバトルホッパーを駆り、護流五無本部地下にある創世王の亡骸のもとまで向かい、そこで待ちかまえていた信彦との最終決戦に挑む。
そして最終回、仲間達の尽力により復活を遂げ、創世王の部屋で信彦と対峙する。彼は、以前創世王がいた玉座で待っていた。
「そんな所に座って、創世王にでもなるつもりか?」
信彦「そうだ。俺が創世王になって、世界を取り戻す」
信彦の出した答えは、自分が創世王を継承し、その力で自身が望む世界を創造する事だった。
「…じゃあお前を殺す…!」
信彦「…やってみろ…この老いぼれが…!」
「変、身!」
信彦「変身…!」
そして、光太郎がキングストーンを投げ捨てたのと同時に、信彦とは鏡合わせの構えをとって同時に変身。
信彦が変身したシャドームーンと最後の戦いの幕が上がる。
格闘戦から始まり、ブラックブレードとシャドーブレードの剣戟、念力やライダーキックといった各々の強力な技を繰りだす壮絶な死闘が続く。しかし、ライダーキックを放ったと同時に腹部にシャドーブレードを突き刺され、再び重症を負わされる。
信彦「『あの世』でゆかりが待ってるぞ…」
彼を掴み上げ、信彦はこれまで抱いてきた想いを告げる。
信彦「怪人になった時から…こうなる『運命』だった…諦めろ…!」
そして、念動力で壁へ釘付けにされてしまう。
親友である信彦と共に、お互いの両親からキングストーンを埋め込まれ、怪人として共に育ち、五流護無という新たな仲間達と巡り合わせた。
しかし、彼等を待っていたのは怪人と人間の果てしない戦いの歴史。それどころか、かつての仲間達とも殺し合わなければならないという悲劇の歴史だった。そんな彼等に裏切られ、見限り、もう後戻りは出来ない今を信彦は嘆く。
信彦「創世王を新たに生み出すのに、キングストーンを奪い合う事を親父達は知っていた!それを俺とお前に持たせたんだ!」
「…信彦…」
信彦「俺とお前は、奪い合う為に生まれたんだよ!」
お互いの仮面の下にある瞳は、怒りと悲しみに満ちていた。
信彦「光太郎!」
そして、強烈な一撃を喰らわされ、とどめを刺された…かに思えたが、
「…それは…違う…」
瀕死の重体でありながらも、光太郎は自分の信じた事を信彦に告げる。
「…親父達は…俺達に…争わせようとしたんじゃ無い…争わない、俺達だから、選んだ…!」
そして、腹部に突き刺さったシャドーブレードから逃れると、落ちていたキングストーンを拾い上げる。
「…そう思ったら…駄目か…?」
しかし、信彦は再び念動力で彼の首を絞める。それでも、光太郎の歩みは止まらず、彼に強烈なライダーパンチを喰らわせ、変身を解除させる。そして、同じく変身を解除した光太郎は自分の想いを告げる。
「俺はお前から奪うものなんて何も無い…!だから俺に託せ…!俺が創世王を殺す…!怪人は…人間だ…!誰かと出会って恋をする…!子供だって作る…!それで生きて…いつか死ぬ…。何も特別な事は無い…!」
信彦「光太郎…」
光太郎は、50年間幽閉の時を生きた信彦とは異なり、生きて様々なものを見てきた。恋をする怪人と人間。そうして生まれてきた怪人と人間の子供。人間と同じように学校に通う怪人。そして、ゆかりと同じ想いを受け継いだ一人の少女。だからこそ、彼は胸を張って言える。
「ゆかりが望んだ世界に…嘘は無いと…俺は思ってる…!」
そう言った光太郎の言葉で、信彦はかつての光景を思い出す。
50年前、人間と怪人の共存を望んだ仲間達。その名を刻んだ旗を見上げた。
「この世界は、本当に変わるのかな?」
信彦「その為に何をすれば良いのか、まだ何も分からないなぁ」
そう呟くかつての光太郎と信彦に、ゆかりは告げた。
ゆかり「しょうがないよ。私達は何も特別じゃない。起こしたものを誰かに受け継ぐだけの、歴史の通過点だから」
そうして集まった彼等は、一枚の写真に映る。そこには、怪人の姿で映ったとしても共に肩を並べた、夢見る若者達がいた。
信彦「…もう皆んないなくなった…ゆかりも…オリバーも…皆んないたんだ…ダロムも…ビシュムも…バラオムも…ビルゲニアも…!」
共に誓い合った仲間達。もうその面影は無く、彼等の前から姿を消していった。
信彦「…光太郎…俺はあの頃に戻りたい…!」
信彦の顔には、先程までの怒りと憎しみは無かった。自分を見失い、仲間達を手に掛け、悲しみに沈む男の涙があった。
そして、自分の腹部からキングストーンを抉り出し、光太郎に託す。
信彦「…俺には…もう…必要、無い…」
「信彦…!」
信彦「…光太郎…俺の…闘いは…終わりだ…」
「…信彦…おいっ!信彦!」
信彦は光太郎に全てを託し、長い人生の幕を閉じ、息を引き取った…。
最後に語り合い、自身のキングストーンを託して息絶えた信彦の亡骸を抱きかかえる中、既に心臓のみとなっても鼓動を続ける創世王が迫ってくる。今度こそ決着を付けるために創世王の心臓を貫くが、その瞬間激しい光が光太郎を包み込む……
孤独に戦い続けた男の、その最期
実は創世王を完全に打倒するにはサタンサーベルが必要だった。2つのキングストーンと世紀王である光太郎と信彦の肉体が揃っていた結果、図らずも光太郎は創世王を継承してしまい、自分の意志とは関係なく、ヒートヘブンの原料となる体液を搾取され続けるだけの存在に成り果ててしまう。
だが最期は再会した葵に僅かに残った自我で介錯を頼み、彼女に刀身の折れたサタンサーベルを突き立てられたことで肉体が崩壊。二つのキングストーンを残して死亡した。
彼の戦いは最期まで報われなかったものの、「……もう泣かないで」と願う葵の頭を撫で、安らかな表情を浮かべて散っていった。
余談
- 演者の西島氏は今作が仮面ライダーシリーズ初出演となる。また今作のコンセプトデザインである樋口真嗣が監督を務める『シン・ウルトラマン』で禍特対専従班班長田村君男を演じている。また、テレビドラマ『警視庁アウトサイダー』で西島氏が、主人公・架川英児として出演した際に、BLACKSUNの変身ポーズを披露した(このドラマでは他にも特撮のパロディが多く含まれている)。
- なお、年齢が60歳と紹介している媒体もあるが、これが事実だとすると1972年の光太郎はわずか10歳というあり得ない年齢になってしまう(仮に本家と同じ19歳でも70歳手前な上、それまでヒートヘブンも口にしたことが無かったことから老化が止まっていたわけでもない)。そもそも劇中の描写から考えると70~80代が妥当であるため、60歳はミスか「60代」の誤表記かと思われる。後に仮面ライダー図鑑にて現代の年齢は70歳と表記された。
- 1話から変身していた姿は実は【仮面ライダー】ではなく【怪人】としての姿であり、彼が本格的に仮面ライダーとして変身したのは5話とライダー史上初登場が非常に遅い仮面ライダーという異色の存在である。
関連タグ
仮面ライダーBLACKSUN 世紀王サンドライバー 仮面ライダーブラックサン 黒殿様飛蝗怪人 黒創世王
山本大介 - 『仮面ライダーアマゾン』の主人公。元祖有機的な改造人間(バイオボーグ)でありグロテスクな技を使うライダーの先駆け。また機械的な要素が一切ない元祖ワイルド系のライダーである。
麻生勝 - 『仮面ライダーZO』の主人公で年齢は彼の方が若いが醸し出す雰囲気、一見無口でぶっきら棒見えるが心優しい性格、周囲の人間に年の離れた未成年者がいる、感情が高ぶると咆哮(ほうこう)しながら変身するなど共通点が多い。また劇中であまり名前を呼ばれない点でも似ている。ただし一歩間違えればこうなるとされる
風祭真 - 同じバッタ怪人で敵怪人の頭部をもぎ取った者繋がり。共通点は上記の麻生と一部一致している。またシン自体も没案ではパワーアップする案もあり、悍ましい怪物の姿から徐々に誰もが知ってそうなヒーローの姿になっていくという流れも想定されていた。そういった要素を本作が上手く継承したとも言える。
木野薫/アナザーアギト - 服装や雰囲気および木野のキャラクター性や雰囲気が南光太郎と似ている。またアナザーアギトの姿がリアルな造形をしたバッタ怪人という点でも似通っている。
次狼/ガルル - 『仮面ライダーキバ』の登場人物。おっさんライダー繋がりかつ性格や醸し出す雰囲気及び咆哮しながら変身する者繋がり。また仮面ライダーブラックサンの姿はガルルと非常に似ている
水澤悠/仮面ライダーアマゾンオメガ - 前作のリブート作品の主人公、咆哮しながら変身する点が共通。また両者共に生物的なフォルムの変身フォームがある。
乾巧 - 一見クールで冷徹そうな印象だが内面には熱い物を持っている、劇中で境遇が似た数々の怪人達(元人間)と戦う、怪人態が存在する点などが類似している。
桐生戦兎 - 10代の頃に非人道的な人体実験を受けその反動で記憶喪失となってしまった悲劇の主人公繋がり。こちらも光太郎と同じく身近な存在に黒幕がおり和解して逆に共闘する関係になった者も居る点で共通している。
昭和ライダーリブートの主人公系譜
本郷猛(TheFirst)→水澤悠→南光太郎(BLACKSUN)→???