仮面ライダーZO
かめんらいだーぜっとおー
完全生物・ネオ生命体の開発に執念を燃やす狂気の科学者・望月博士によってバッタの改造人間にされてしまった元助手の麻生勝は、放浪の末樹海の中で眠りについた。そして数年が経ち、謎の声に導かれた勝は復活を遂げ、ついに完成したネオ生命体・ドラスから望月博士の息子・望月宏を守るために立ち上がった!!
仮面ライダー誕生20周年記念作品として作られた劇場版オリジナルライダー(ただし、厳密には22周年)。
ZOの語源は、「ライダー生誕20周年にふさわしいタイトルを」「ライダーの歴史と強さを表すものを」ということで候補に上がった"20(ツーオー)"をそれぞれアルファベットのZとOに見立てたもの。原作者の石ノ森章太郎氏によれば「Z」は究極、「O」は原点という意味合いも含まれているとのこと。
牙狼<GARO>や鳥人戦隊ジェットマンの監督で知られる雨宮慶太が監督をつとめており、氏の得意とする生物的で奇怪なデザインの怪人や48分という短い尺の中にぎっしりと詰め込まれたストーリー(杉村升が脚本を担当)から本作を愛するファンは少なくない。
本作の宣伝を兼ねて3月27日にTBS系にてTVSP『闘え!ぼくらの仮面ライダー~最強のライダーZO誕生!!~』が放送された(ちなみに後番組はかの有名な『電光超人グリッドマン』である)。
前作『真・仮面ライダー序章』の人気を受けて続編として企画された時期もあったようだが、途中から完全新作を作る路線にシフトしていった。本作もまた続編企画が持ち上がった際にライダーベルトとマフラーを得るという案も上がっていた(出典:メディアワークス/角川書店刊『仮面ライダーアートコレクションヒーロー編』(2003)P074より)。
結果的に次回作は完全新作の『仮面ライダーJ』となった。なお、Jでは変身ベルトのような役割を果たしている「Jスピリット」と呼ばれるバックルが登場しており、ZOの続編案を思わせる。
1993年4月17日に『東映スーパーヒーローフェア』の一作として『劇場版五星戦隊ダイレンジャー』『特捜ロボジャンパーソン 母よ、永遠に!愛と炎の電脳手術室』と共に上映された。
当初、本作は単発90分での興行予定だったが、「1本の子ども向け特撮映画に90分は長すぎる」と判断されたことや、『ダイレンジャー』『ジャンパーソン』との併映が決定したことによってその半分の48分に短縮された。
入場者特典はヒーローがすぐ描ける「びっくりイラストプレート」と紙製のサンバイザー。
制作にはバンダイビジュアルが携わっており、ソフト化は東映ビデオからではなくバンダイビジュアルから行われている。
ネオ生命体のプロトタイプとして望月博士が無理矢理に麻生勝へ遺伝子改造を施し、作り上げたバッタの改造人間。前作主人公からより従来の仮面ライダーらしいデザインに近づいた一方で生物感が(グロテスクではない形で)残っているのが特徴。
元々はネオ生命体を完成させる行程上での試作モデルに過ぎなかったことから本来の性能は遥かに劣っており、特殊能力と呼べるものもなかったが代わりに強靱な肉体とパワーを持ち、眠りについていた四年間に大自然のエネルギーを吸収し続けたことによってそれらが更に強化、後に作られたネオ生命体の戦闘形態・ドラスとも互角以上の戦いを繰り広げた(他にもテレパシーのような能力で宏の危険を察知する場面もある。これは息子・宏を救おうとした望月博士がテレパシーを彼に送った結果とも取れる)。
変身パターンに種類があり、一つはバイクに跨って走行しながら変身するというもの、もう一つはお馴染みである変身ポーズをとって変身するというものでこれは初代仮面ライダー仮面ライダー1号のオマージュである。
アイテムを一切使用せず徒手空拳のみで戦う戦士でキレのある戦闘アクションの格好良さに定評がある一方、バトルのラストを飾ったライダーキックがワイヤーアクションに頼りすぎた弊害でいまいち締まらない絵になってしまったことがネタにされる。通称・ブランコキック。
ちなみに、念じることでオルゴールの修理をしたシーンがあり、他にも眠っていた間に超常の力に目覚めたような描写がなされている。
なお、実はエイリアンが憑依しているなんて事は全くない。
望月博士が完成させた完全生物。飽くなき進化を続ける怪物で、周囲の金属を取り込んで凄まじい強さを誇る金属生命体「ドラス」を生み出し、外界における行動用のボディとして使用できる。
不気味な容姿とは裏腹に、生まれて間もないためか声や性格が幼く(アフレコも子役を起用している)、その純粋さと相反する残酷さを感じさせるキャラクターは一種のトラウマものである。
しかし、その言動からは「自分ではなく宏ばかりに愛情を向ける父への怒りと哀しみ、宏への嫉妬」が滲み出ており、一概に純粋悪と切り捨てることはできない。
映画「MOVIE大戦2010」においてもスーパーショッカーの切り札であるネオ生命体が作り出した“最強最悪の怪人”という扱いで登場。平成ライダー12人を圧倒する強さを見せつけた。
当初の設定は悪の仮面ライダーという位置づけで見た目がどことなく仮面ライダーっぽいのもそれが理由。
シャドームーン同様ソフビも歴代ライダーのように箱入りであった。
なお、小説版や漫画における彼の配下の怪人たちはZOと同じく改造人間という扱いである。
望月博士の11歳の一人息子。ゴーマ族の血は引いていない。
生後すぐに母を亡くし、父が研究で忙しく、祖父の下で育てられた。
クリスマスに父から貰ったオルゴール付きの懐中時計がお気に入りで肌身離さず持っている。
生みの親からの愛を欲しがったネオ生命体(ドラス)に執拗に付け狙われるが、幼生の頃にオルゴールの音色を聞かせていた事が終盤での鍵となる。
- 望月清吉
二足歩行器など珍妙な発明を繰り返しては失敗している町内のちょっとした有名人。72歳。
宏を息子に代わって我が子同然に育てた。
行方不明になった息子の手がかりを追っており、麻生にネオ生命体の研究書類を見せている。
コウモリ男相手に自分が発明した電撃バットを構えるなどなかなかにガッツのある爺さんである。
- 望月博士(小説版では望月敏郎)
臨床遺伝子工学の世界的権威で、自宅に望月遺伝子工学研究所を設立した。42歳。
かつては音楽を愛する息子思いの良き父親であったが、ある時を境に「感情などに惑わされない完全生物」を作ることを目標にネオ生命体制作に着手、次第にマッドサイエンティストへと落ちぶれていき、助手の麻生をネオ生命体のプロトタイプとしてZOに改造。
その2年後に自我を持ったネオ生命体により廃工場の生体プールに繋がれ、公には失踪という事になっていた。
息子への良心は残されていたのか、麻生にミュータントバッタ(巨大なトノサマバッタで後年に販売されたZOロックシードにも描かれている)を通してテレパシーで息子を守るよう訴え、麻生が目覚めるきっかけとなった。
最期はドラスから息子を庇い、生体プールの一部を破壊してZOの手助けをしたが生体プールを離れては生きられない体になっていたために死亡した。
小説版ではネオ生命体研究のきっかけとなった出来事が妻との死別となっている。一方、漫画版ではドラスの優秀さを証明すべく、自分の意思でドラスの強化を行っているなどよりマッドサイエンティストとして描かれた。
前者ではドラスの心情を理解して逝くという点が本編とは一線を画しており、漫画と小説共通して廃工場の爆発に飲まれて死ぬという点は共通している。
- 玲子
東松館道場の師範代。女宇宙刑事ではないし、時空戦士の姉でもない。
剣道と格闘技に長けた宏の姉貴分。クモ女に攫われるもZOによって助けられた。
漫画版では「ナオミ」という名前の同ポジションの人物が登場し、麻生を叱咤激励した(元ネタは玲子を演じた森永奈緒美さんだろうか?)。
- 黒田
最年少ながらも黒帯に達した空手の達人。特別救急捜査隊ではない。
西村と共に宏の警護に当たった。
- 西村
空手の達人であり、道場での地位は高い模様。宇宙刑事でもないし、アンパン屋でも、アフリカ代表でもない。
コウモリ男には敵わず敗北している。
- 宮崎
棒術の達人。WSP隊長ではない。
その腕前は本物であり、なんとコウモリ男を一撃で叩き落としたスゴイ一般人である。
- 仮面ライダー20周年記念イベントにて上映された特報映像では、『仮面ライダーBLACK』のスーツがZOのシルエットとして使用されていた。
- 本作はシノプシス案や準備稿が多数存在しており、火山の大噴火や宇宙艇など大規模なSF作品と思われる要素が見受けられる『天空の騎士』(石ノ森氏によるもの)や、NASAに招喚された後に宇宙空間で遭難し、未知の宇宙船にて強化改造を施された本郷猛(ただし役者やデザインは一新)が、ヒロインの少女・望月祐子を守るためテロ組織や国際軍事産業を相手取る『劇場版・新仮面ライダー・シノプシス』(杉村氏によるもの)など、現在の『ZO』からは想像もつかないような初期案が存在していた。
- 本作は制作費2億円の低予算で作られており、それを聞いたアメリカの映画関係者は「そんな低予算であんなすげーもんが作れるの!?」と驚いたらしい。
- 一部のファンの間では、その完成度の高さから本作を『45分間の芸術』と呼ぶ者もいる。
- ZOのスーツが一般に初公開されたのは、なんとあの「紅白歌合戦」だと言われている。1992年の大晦日に放映された『第43回NHK紅白歌合戦』にて、あの少年隊が「レッツゴー!!ライダーキック」を歌唱する場面があり、その際に新1号からシン(RXと同一人物であるBLACKは不在)までの歴代先輩ライダーとともに颯爽登場。オリジナルと思われる敵戦闘員とチャップを蹴散らし、先輩たちと共に決めポーズを取って締めくくった。
- そもそもなぜ少年隊が「レッツゴー!!ライダーキック」を歌唱したのかというと、この6年前の第37回紅白歌合戦にて少年隊がヒット曲「仮面舞踏会」を披露した際に、白組司会の加山雄三が「少年隊、仮面ライダーです!」と、曲名を盛大に言い間違えたことが発端。リーダーのニッキは歌い始める前に「加山さん見てますか!」と、その事件を明らかに意識した一言を残した。
- ZOとドラスの戦いにおける、約2分間の長回し戦闘カットが語り草となっているが、これはアクション監督の金田治が「撮影日数が足りないからワンカットで撮ってみよう」と当日に急遽発案したもの。
- 小学館スーパークエスト文庫から1993年5月に射口巌による『仮面ライダーZO-闇の少年-』が刊行された。設定は原作をベースとしつつも、細部が異なる。
- 漫画家島本和彦のコミカライズ版もある(徳間書店の月刊少年キャプテンで連載)。元々仮面ライダー大好きな島本先生はノリノリで取り組んだものの、「映画の完成度が高すぎる(≒このままでは雨宮監督の丸パクリにすぎない)」と判断し、無理を言ってまで「いつもの島本の作風」で仕上げた。あらすじはおおむね映画版に準ずるのでちゃんとコミカライズとしても成立している、はず。
- ZOが道着を着用して滝で修行をする絵面は本作の有名な1シーンとして語り草になっている。
- 小学館の児童誌「てれびくん」1993年2月号〜11月号にて青木たかおによるコミカライズが連載。
- ただし、ZOはウィルスによる肉体変化により誕生した設定。7月号までは純粋に映画のコミカライズとなっているが、途中から『仮面ライダーBLACKRX』とのコラボ路線にシフトした。
- 1994年5月13日、本作のメガCD用ゲームソフトが東映ビデオから発売された。映像は映画本編の物を使用しており、ゲーム進行によっては映画公開版では削除されたシーンも見る事も可能。開発はウルフチームが担当し、ゲームシステムはウルフチームが手がけた「サンダーストームFX」、「タイムギャル」、「ロードブラスターFX」、「忍者ハヤテ(日本未発売)」、セガが発売した「ドラゴンズレア」とほぼ同一のシステムである。
- 『機動戦士Vガンダム』の前期エンディングテーマの『WINNERS FOREVER~勝利者よ~』は元々は本作品のために作られた曲だったが、諸事情により曲のみが宙に浮いた状態になっていたところを富野由悠季監督に見込まれて流用されたという逸話がある。尚、当初の曲名は『RIDERS FOREVER』だったと言われている(実際、歌詞を見てみると王道のヒーローソングであり、陰惨な内容のVガンダムよりかは仮面ライダーの方が雰囲気に合っている)。
- 望月宏が通っている道場の先輩たちはいずれもメタルヒーローシリーズにおいて主人公・準主人公を演じた俳優がキャスティングされている。
- ゲーム筐体への登場はガンバライド以来見られていないが、2017年にバトルラッシュ、2018年に仮面ライダーあつめ、2019年にシティウォーズと、ソーシャルゲームには一通り参戦している。
- 2023年、ガンバライジング最終弾であるゲキレツグランプリ3弾にて、仮面ライダーシンと共についに参戦。数ヶ月だけの栄光...かに思われたが、後継作のガンバレジェンズではなんとガンバライジングのカードが全て使用可能。雨宮監督がネオライダー3人(とディケイド)を使用してプレイしている様子をツイートしていた。
- 2021年に行われたNHK主催の「全仮面ライダー大投票」では、「仮面ライダー部門」で「仮面ライダーオーガ」同率で80位にランクイン(ネオライダー三部作の中で最高順位)した。
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