阿古丸
あこまる
物語中盤より登場する、ゴーマ族の幹部の一人。至るところにボタンがあしらわれた衣装が特徴。見た目こそ10歳前後の少年ではあるものの、持ち前の頭脳やカリスマ性は目を瞠るものがあり、ゴーマ十五世からもお気に入りの存在として、多大な寵愛を受ける立場にある。
常に手にしている吹き戻しは、単に玩具としてのみならず吹き矢としても用いられるが、阿古丸自身の戦闘能力はそこまで高い方ではなく、コウと直接取っ組み合いになった際には殆ど一方的に殴られてもおり、基本的には御付きの怪人である地獄の三人官女を仕向ける事がほとんどである。
阿古丸は、三幹部の一人であるシャダム中佐の実子に当たるが、元より情愛というものを侮蔑している冷血漢のシャダムは言うに及ばず、生まれてすぐに養子に出された事もあって実母からも愛情を受けずに育ったという経緯がある。
こうした幼少期故に、その性格も非常に捻くれたものとなっており、記事冒頭にも示した台詞からも窺えるように実の両親への憎しみを原動力として育ってきた節がある。
当然ながら、幹部という立場でのシャダム(と、他の二人)との関係は極めて険悪なものでしかなく、自身の養父にして後見人である田豊将軍の庇護の元、シャダム達を失脚させゴーマの実権を掌握する野望を抱いている。
その野望達成のための格好の道具として、阿古丸が目を付けたのがキバレンジャーこと吼新星・コウである。
元々阿古丸が前線に派遣されたのは、キバレンジャーの復活を阻止する命を受けての事であったが、一方で阿古丸はキバレンジャーの正体を暴き、ゴーマへと引き入れようと目論んでおり、偶然にもコウと遭遇したのをきっかけに彼こそがキバレンジャーの正体であると看破してからは、より一層コウをゴーマへと引きずり込む事に執念を燃やすようになる。
手始めに、阿古丸は自ら「柊香澄」という少女に変装し、転校生としてコウに接触。同じ境遇同士として親近感を抱かせつつ、母親(に扮したネックレス官女)に自分を虐待させる様を見せつける事で、コウの母親に対する思慕の念を憎しみへと反転させ、それによって彼の中に流れるゴーマの血を活性化させる策に出た。
が、この作戦は将児達の介入等もあって失敗に終わり、さらに阿古丸自身も自ら正体を明かしてコウを嘲った事で、コウからも「自分の心を弄んだ許せない奴」と認識されるようになり、ここに両者に明確な因縁が生ずる事となったのである。
「僕の手を握ってドキドキしたかい?」
その間、シャダムの工作によって作戦指揮権が自らの手から離れた後も、阿古丸は経緯こそ不明だが身柄を確保していたコウの母親を盾に取りつつ、共に暮らす事と引き換えに自らの軍門に降るよう迫った。
・・・が、それすらも拒絶された為にコウの母親をどこへともなく飛ばした直後、並行して繰り広げられていたウォンタイガーと三人官女との戦いの余波で発生した落石に巻き込まれ、巨岩の下敷きとなってしまう。そして、なおも母親の行方を訊ねようと食い下がるコウに対し、
「まだ分からないのかい・・・? 君の母親は、君を捨てて逃げたんだ。
それを僕が見つけて、隠しておいたんだ・・・」
「コウ・・・君は二度と、母親に会えない。一生母親を捜して、苦しむがいい・・・」
と言い遺し、そのまま阿古丸は息絶えたのであった。こうして、歯切れの悪い幕切れを迎えたかに見えた両者の因縁であったのだが・・・。
物語後半、キバレンジャーの正体がダイレンジャーにも露見したのと時を同じくして、ゴーマ十五世はシャダム達が開けた地獄への穴から、早口旅ガラスの遺した釣り竿を利用して阿古丸を現世に戻す事を画策。その目論見は成功し、阿古丸は現世へ復活を遂げる。
一度地獄に落ちた事で霊力の備わった阿古丸は以前の何十倍も強力な力を得ており、口からの火炎や指から放つ妖力による捕縛といった技、それに何でも見通せる千里眼をも備えるようになった(※)。これを利用して阿古丸はコウの夢の中に介入。彼を10歳の誕生日まで目覚めさせないようにする事で、自動的にゴーマにしようと仕向けてもいる。
さらに地獄から従えてきた怪物・イカヅチを使役し、コウの母親の行方を追うダイレンジャーを妨害もしているが、これが思わぬ誤算を生じさせる事となる。イカヅチの持つ強大な妖力に反応して、一度は宇宙へ帰っていったはずの大神龍が再度地球に飛来。その結果、ゴーマにも甚大な被害をもたらしたのである。
この事態を受け、危機感を抱いたシャダム達は阿古丸の排除とコウの母親の抹殺に動き出し、後者こそ未遂に終わったものの、前者についてはシャダムが一計を案じてゴーマ十五世を翻心させ、コウの母親をみすみすダイレンジャーの手に渡した責を取らせる形で、阿古丸をゴーマから追放する事に成功している。
ゴーマ皇帝の寵臣という立場から一転、組織を追われ後がなくなった阿古丸はあくまでもコウを自らの軍門に降らせ、母親にその姿を見せつけ絶望させる事に執念を燃やし、イカヅチと妖力合身してダイレンジャーを圧倒するも、ここでダイレンジャーと行動を共にしていたコウの母親から、阿古丸とコウが双子の兄弟であり、互いに何も知らぬまま兄弟同士で死闘を繰り広げていた、という驚愕の事実を突きつけられ、動揺を隠せない阿古丸は戦線を離脱してしまう。
そこへ追い打ちをかけるかのように、阿古丸に止めを刺すべく現れたシャダムもコウの母親の言葉が事実であると肯定。さらに冥土の土産として、ダイレンジャーの解散と引き換えに再度の休戦協定が締結され、最早キバレンジャーをゴーマに引きずり込む必要すらなくなったと、自らの存在意義を徹底的に否定された末、妖力弾による攻撃で致命傷を負わされるに至った。
満身創痍の阿古丸は、巨大戦やコウに対する洗礼の儀式の影響で崩落する洞窟に彷徨い込み、そこで命懸けでコウを救いながらも落盤に巻き込まれた母親と再会。死に際に初めて母の愛情に触れた阿古丸は、安堵と共に母親と運命を共にしたのであった。
「母上・・・私の母上・・・会いたかった・・・!」
「私の・・・可愛い息子・・・阿古丸・・・!」
結局、コウには自分が血の繋がった実の兄であると知られる事はなく、また実の父であるシャダムからその死を悼まれる事もなかったが、その最期が母親と心を通じ合えた上でのものであった事だけは、せめてもの救いだったのかもしれない。
阿古丸の生き様は言うなれば、道を間違えたコウの「IF」の姿とも言える。
実の父親に捨てられた阿古丸には、陰ながら支えようとしてくれる者達こそいたものの、本当の意味で阿古丸を成長させる者は誰もおらず、自分を気にかけていた実母ですら死に際に初めて愛情に触れるのがやっとであった。
結局のところ、阿古丸にとって本当に必要だったのは分かち合える仲間であり、1人で背負えるはずのないものを無理に1人で背負ってしまったのが一番の不幸だったと言える。
(※阿古丸が霊力を発揮したりイカヅチと妖力合身する際には、額に巻いているベルトを取る事もあり、地獄に落ちた際に負ったものと見られる醜い傷跡が露わにされる)
演者の柴田は、同年公開の映画『仮面ライダーZO』にも望月宏役として出演しており、本作へはこれに続いての出演となった。また前述の通り、役柄上では双子の兄である阿古丸だが、実年齢でいえばコウ役の酒井寿より2歳年下で、出演当時はまだ小学4年生であった。
前述した女装を駆使しての作戦については、その回の脚本を手掛けた荒川稔久のアイディアによるもので、「第13・14話以降は面白ければ何をやってもオーケーという流れになった」という経緯がその背景にあった事を、後年のインタビューにて述懐している。
衣装のデザインは篠原保が担当。特徴的なボタンを多用した意匠は、シャダム達三幹部がベルトや紐、ファスナーといった服飾絡みのパーツをアレンジして使ったことを踏まえたものである。また、短めのマントを羽織ったような肩周りは元々、前年の『ジュウレンジャー』にてゴウシの衣装をデザインする際にも同様の形状を取り入れようとしたところ、「この形状では型紙が取れない」という理由でボツにされ、その際の衣装担当とのやり取りから「どうやったら(この形状を)できるのかな?」というのを自分なりに考えた上で盛り込まれたものであるという。
五星戦隊ダイレンジャー シャダム中佐 吼新星・コウ 哀しき悪役
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