「忘れたとは言わさん!」(第23話)
演:天祭揚子
概要
ゴーマ族の3幹部の紅一点で、シャダム中佐、ザイドス少佐と共に強硬派に属する。他の2人と同様にボンデージ衣装に身を包んでおり、衣装の随所にあしらわれたファスナーが特徴の一つともなっている。
高慢にしてヒステリックな気性の持ち主で、3幹部の中でも残忍さに関しては随一であるが、一方で後述の理由から、他の2人のように野心や出世欲にはそこまで旺盛という訳では無い。
サーベルやビーム状のムチを駆使した白兵戦を得意とする他、手から放つ光弾「妖魔牙」や、風を操る「突風地獄」など、多彩な妖術も武器としている。また3幹部共通の能力である、金属質の仮面を被っての能力強化も可能で、彼女の場合は仮面が他の2人とは異なり金色となっている。
呪術にも通じているようで、物語終盤では「生き霊ガラ」と呼ばれる、自らの分身を生み出してもいる。これは自身に流れる妖魔の血を、藁人形に注ぎ込むことで出現させたものであり、ガラと瓜二つの容貌を持ちながらも、長髪を露わにし装甲と一体化した白いボディスーツを纏っているという点で大きく相違している。生き霊なだけあって、ガラ本人が倒されない限りは不死身という特性を持つ一方、彼女が戦意を喪失するとそれに連動して消滅するというデメリットも有する。
クジャクとの因縁
第1クール終盤より登場するクジャクに対しては、物語の始まる遥か以前より激しい敵愾心を燃やしており、6,000年前の戦いでは罠に嵌めて鏡化粧師の体内に封印せしめ、現代に蘇ってからも度々彼女を亡き者にせんと策略を巡らせた他、直接干戈を交えたこともしばしばである。またクジャクのみならず、彼女と関係を深めていったシシレンジャーこと大五とも必然的に対峙する機会が増えていくこととなる。
このようにクジャクに執着を見せる理由は、物語も終盤戦に差し掛かる頃にようやく明かされることとなる。実のところガラは元々はダイ族の人間で、同じダイ族のクジャクとは親友同士という、それまでの因縁を思うと俄には信じ難い間柄にあった。にも拘らず敵同士となったのは、ガラがクジャクをかばって顔に傷を負った後、クジャクが自分に黙って姿を消したことに起因する。
クジャクの真意はあくまでガラを救うことにあった(クジャクの記事も参照)とはいえ、その真意を理解できず見捨てられたと感じたガラは、何時しかクジャクへの憎しみを募らせ遂には復讐のため、ゴーマ族に身を投じるに至ったのである。
物語終盤では、生命の尽きかけていたクジャクと決着を付けるべく、前述の通り呪術で「生き霊ガラ」を生み出してダイレンジャーを妨害し、自らはクジャクとの一騎討ちに臨むも、死闘の末に深手を負うのみならず失明という憂き目に遭ってしまう。
敗北を悟ってなお、クジャクへの呪詛を口走るガラであったがしかし、そのクジャクによって自らの延命と引き換えに顔の傷跡と目の負傷を治されたことで、ようやくガラもクジャクが自分の前から姿を消した真意を悟るに至った。
これにより、ガラは戦意を喪失し生き霊ガラも消滅。両者の因縁も一応の決着を見たかに思われたのだが・・・そんなかつての友の自己犠牲をもってしてもなお、ガラの中の憎しみは遂に氷解することはなかったのである。
本物と偽物
ともあれ、これ以降もなおゴーマ族に留まり、シャダムと嘉挧との間で繰り広げられた皇位継承戦においても前者の側で暗躍を見せていたガラであったが、その過程でダイレンジャーに敗北を喫したザイドスの思わぬ最期も目撃しており、これにはさしものガラでさえ狼狽の色を隠せずにいた。
程なくして始まった、ダイレンジャーとゴーマとの最終決戦においては、前述した因縁からシシレンジャー、そして彼に同行したホウオウレンジャーと相対し、2人と熾烈な戦いを演じることとなる。
「馬鹿め!フン。あんな安っぽい同情で、私の心が変わるとでも思っているのか?」
「私はゴーマに魂を売ったのだ。フン。例え救われようと、それが何だって言うんだ?」
シシレンジャーから、前述したクジャクの自己犠牲のくだりを持ち出されてなお、最早引き返せないところまで至っていたガラは、上記の台詞をもってこれを一蹴し妖力技で2人を圧倒してみせるが、昇天後もなおクジャクの心を踏みにじるかのようなガラの態度に2人も発奮したことで、彼等の繰り出す気力技により一転して追い詰められてしまう。しかし、シシレンジャーがガラに止めを刺そうとしたその時、昇天していたはずのクジャクが地上へと降臨。彼女の口から飛び出したのは、
「6000年前の戦いの時、ガラ・・・あなたは死にその魂はとっくに天国へ・・・
今のお前はシャダムが作り出したただの操り人形に過ぎない」
という、この場にいた誰もが予想だにしなかった事実であった。クジャクとの最後の対決や、自己犠牲による恨みの原因の解消を経てなお、彼女への憎悪の念がまるで変わらずにいたのも、ある意味では当然のことだったのである。
そしてその言葉を裏付けるかのように、天上界からはクジャクの呼びかけに応じ本物のガラが出現。本物の手によって、術を解かれたゴーマのガラの身体はザイドスと同様に見る間に土塊へと転じていったのである。自らの身の上に降り掛かった残酷な事態に絶望しつつ、それでもガラは最後まで大五達に対し、
「たとえ泥人形であろうと、私はお前たちを永遠に憎む!」
「私は・・・ゴーマのガラなのだ・・・!! ア・・・アァ・・・!!」
と、怨嗟の言葉を吐きそのまま自壊。ガラを称していたその残骸もまた、本物のガラによって風と共に吹き飛ばされ、地上から消え去っていったのであった。
ガラの最期の台詞の中にあった「お前たち」は、クジャクやダイレンジャーだけでなく、シャダムのことも指していたと思われるが、そのシャダムもクジャクが再臨する直前、ゴーマ宮に乗り込んできたリュウレンジャー達に対しガラが泥人形であることを明かしていた。そして当のシャダムもまた、ガラと同じ立場に立たされていたことを程なくして知ることとなるのである・・・。
備考
衣装のデザインは篠原保が担当。シャダムの記事でも説明のあった通り、当初は他の2人も含めてスキンヘッドという案も提示されていたが、流石に女優にスキンヘッドは無理との声が上がったため、逆に全員頭を隠す形でデザインが起こされている。
生き霊ガラや輝けるガラもやはり篠原の手によるものだが、前者についてはデザイン画稿に「ガラのヨロイ」とあるように、シャダムと同様のバトルスタイル的な形態として考案され、着ぐるみであるゴーマ怪人とのバランスも考慮して普通の甲冑からは外した形としている。また後者は特に深く考えず、キャラクターのイメージから仏教っぽい要素を盛り込む形で描いたものであるという。これについては両者とも、多少の東洋っぽい要素を意識していたのではないかと後年のインタビューにて振り返っている。
放送当時、児童誌『てれびくん』で連載された漫画版では、用済みという形でシャダムの手でザイドス共々泥人形へと戻されるという、ゴーマ十五世に近い最期を迎えていた。
関連タグ
ドクター・マゼンダ:超獣戦隊ライブマンの登場人物の一人。ガラと演者を同じくする3幹部の紅一点であり、かつての旧友達との因縁の果てに、人ならざるものとして散っていったという共通項も有する。
フィメール:『ヘルレイザー』シリーズに登場する怪人の一人。ガラと同様にボンデージファッションに身を包んだ女性であり、また前述の通り初期のラフでスキンヘッドとする案があったことなどを踏まえ、彼女をオマージュしたキャラクターがガラなのではないかと指摘する向きもある