クジャク(ダイレンジャー)
くじゃく
演:森下雅子
「孔雀明王の化身」を称する女戦士。1対の短剣「孔雀剣」と、孔雀の羽を用いた手裏剣を武器とし、これを生かした格闘術を駆使する他、孔雀の姿となって炎を纏い相手に突進する「秘伝孔雀扇」や、「時間変化」などといった技を得意とする。
6000年前、宿敵であったガラ中佐の罠に嵌り、ゴーマ怪人・鏡化粧師の体内に閉じ込められていたが、自らと同調する気を持つ大五の活躍によって解き放たれ、現代に蘇る事となった。
このような経緯から、復活当初はゴーマ、とりわけガラへの強い復讐心に燃えており、ゴーマに操られた人間相手でも情け容赦なく攻撃を加えたり、幼い少女を利用してガラを誘き出そうとするなど、彼女から受けた屈辱を雪ぐためなら手段を選ばぬ非情な面が目立っていた。
とはいえ、元来のクジャクの性格は動物たちを愛する心優しいものであり、「戦士ならば情けは無用」とクジャクに一蹴されながらも、その信念を曲げる事なくクジャク本来の心を信じ続けた大五の優しさに触れる形で、徐々にではあるが失われた優しさを取り戻していく事となる。しかし・・・
残酷な運命と哀しい過去
復活からしばらく後、クジャクの身体は次第に変調を来すようになっていった。その原因は、彼女が生きていた6000年前には存在しなかった大気の汚れであり、これにより放っておけば生命に関わる状況にまで陥る事となってしまう。
その状況を何とかできる唯一の手段が、地球上のありとあらゆる汚れを消し去るとされる秘宝「聖なる孔雀の涙」であり、物語中盤からはこれを探し出す事がクジャクの主目的となった。またその聖なる孔雀の涙の探索を通し、かねてから心を通わせていた大五とは相思相愛の仲へと発展していく。
一方で聖なる孔雀の涙探索の過程で、クジャクとガラとの間に横たわる因縁の発端についても明らかにされていった。
彼女たち元々は同じダイ族の出身にして幼馴染であったが、ある時事故に巻き込まれたガラが頬に大きな傷を負うという悲運に見舞われた。自らを庇って負傷した事への恩を返すべく、クジャクは傷跡を治す力を得るため孔雀明王の元へ修行に旅立ったのだが、皮肉にもこれが両者の間に深刻なすれ違いを生む事となってしまう。
それから歳月が過ぎ、ダイ族とゴーマ族との間での抗争が勃発すると、孔雀明王の命によりクジャクもまたダイ族を助けるべく帰還を果たしたのだが、その彼女の前にゴーマの手先として立ち塞がったのが、他でもないガラその人であった。ガラにとって、傷を負った事自体に悔いはなかったが、友であるクジャクが自分に黙って姿を消した事で、裏切られたと感じたガラは何時しかクジャクへの憎しみを募らせ、ゴーマに身を投じたのだった。
物語終盤、大五の尽力によってついに聖なる孔雀の涙が発見されるのだが、肝心のクジャクが姿を消してしまっていた。
ダイレンジャーがその姿を探す中、突然現れた道士・嘉挧は非情な事実を大五に突きつける。
嘉挧「たとえ聖なる孔雀の涙をクジャクに飲ませても、この地球の大気が汚れている限り、クジャクの命は再び蝕まれる」
大五「……だったら聖なる孔雀の涙を開けて、地球の大気を綺麗にすればいいんです!」
嘉挧「人類を滅ぼしてもか?」
大五の言う通りにすれば確かにクジャクは助かり、大気汚染も改善される。一見万々歳のように思えるそれはしかし、そうではない。
今の地球人類は、汚染された大気に適応し、その中で数々の免疫を手に入れ、受け継いで生きている。聖なる孔雀の涙で大気を浄化すれば、同時に大気中の病原体も全て消え、現生人類の病気への抵抗力は低下。そうなれば、次なる病原体の出現時に、なすすべなく人類は滅びてしまう。
それでもいいのか、と道士は突き付けたのだ。
それを受け入れられない大五は嘉挧に抵抗するが、話を聞いていたクジャクは人類を犠牲にしてまで生き永らえるという道を選ばず、聖なる孔雀の涙の力を自らとの一騎打ちで傷つき失明したガラを救うために使用。6000年前からの宿願であった「ガラの傷跡を消す」という目的をも果たす格好となった。
唖然とするガラの前からクジャクは急ぎ足で立ち去り、大五の声を聞きつけたガラもその場を撤退。
そして、聖なる孔雀の涙を湖に投げ捨て、大五たちに看取られながら力尽きたクジャクは天上界へと昇天、自らが孔雀明王となり彼らの前から去っていった。彼女の象徴たる、孔雀の羽根一枚を大五の元に残して……。
昇天した後も、大五の持つ羽根を通して彼とは通じ合っていたようで、嘉挧によってダイレンジャーが解散させられた際には、彼が立てた2本の塔を巡って何かが起こると予見していた大五の前に幻影として姿を現し、また塔を守ろうとダイレンジャーが奮闘に及んでいた際にも、やはり幻影としてジンたちと共に現れ、5人を応援している。
そしてゴーマとの最終決戦にて、なおもゴーマに属していたガラと、大五・リンとで激戦が繰り広げられる最中、孔雀明王として地上に降臨したクジャクと大五は束の間の再会を果たすが、ここで彼女の口から告げられたのは、その場にいた誰もが思いも寄らない驚愕の事実であった。
「ガラ。あなたの魂は、既に昇天しているのです」
その言葉に続けて天上界より呼び出されたのは、地上にて大五たちと戦っていたガラと瓜二つの存在――「輝けるガラ」であった。
クジャクは6000年前の戦いにおいてガラが死亡し、その魂も既に天国に登っていた事、そして現代において相対していたガラが、シャダム中佐の遠大なる陰謀のために作り出された操り人形に過ぎない事を告げる。
そして「偽者のガラ」を土に戻して長きに亘る因縁に終止符を打つと、大五に対し永遠の別れと、シャダムの野望によって巨大な力――大神龍が三度再来する事を警告し、急ぎそれを止めるよう促すと、輝けるガラと共に再び天上界へと戻っていった。
だが、大神龍の襲来は、警告を残したクジャクが天上界に帰還したまさに直後であった……。