「変身」への挑戦。
曖昧さ回避
この記事では『真・仮面ライダー序章』と言う作品について取り扱います。
主役の仮面ライダーについては「仮面ライダーシン」の個別記事を参照して下さい。
また、2023年の仮面ライダー生誕50周年記念作品は、『シン・仮面ライダー』の記事を参照してください。
概要
1992年2月20日発売のオリジナルビデオドラマが初出の、石ノ森章太郎氏が「本当の仮面ライダーを作りたい」という思いから企画した仮面ライダー作品。
正式名称は「真・仮面ライダー序章」。
石ノ森氏の最初の構想では仮面ライダーのコスプレをしている人物が事件に巻き込まれるというものだったが、
その構想に白倉伸一郎氏が反対してより原点回帰の内容を提案。結果的に生物的なヒーローという原点回帰を強調した現在の形となった。
その際に石ノ森氏は白倉氏の提案に苦笑いして後日それを承諾したため、白倉氏は無理なお願いをしたと感じたらしいが、実はこの案は石ノ森氏がBLACKの企画段階で考案した内容に非常に近いものであった。
奇しくも氏が過去にやろうとしていた方向性だったことが、白倉氏の案を承諾するきっかけになったと思われる。
本作の特徴
大人向けの作品であり、「脊髄ぶっこ抜き」に代表されるかなりグロテスクな描写や性的なシーン、石ノ森章太郎氏の案が元となったかなり生物的で怪人のようにも見えるデザインのライダー、陰鬱でハードなストーリーなどBLACKの頃より更に石ノ森氏の意向が強い作品で、従来にはあまりなかったアイディアが随所に盛り込まれている。
その真意は、タイトルに「真の」が付く様に仮面ライダーのテーマの1つである改造人間の悲哀や望まぬ力を得たバケモノの物語として展開を予定しようとしていたらしい事に由来する。
前述の様にあらゆる意味で当時のシリーズとしては異色な作品ながら、原作者の石ノ森章太郎氏が本来考えていた初代仮面ライダーの根っこのテーマに正面から向き合った作品である。
続編
タイトルにある通り、「序章」とあるが、続編は制作されていない。
続編の企画自体は立てられていたものの、『仮面ライダーZO』の制作に変更され、さらに、『ZO』の続編企画は『仮面ライダーJ』に変更されたため、「序章」以降の作品は制作されなかった。
本作で打ち切りになってしまった詳細な事情は判明していないものの、『オールライダー対大ショッカー』のスピンオフ作品『ネット版 仮面ライダーディケイド オールライダー超スピンオフ』では、当時としては売り上げも高かったと語られており、前述の通り、続編の企画自体は存在していたことから、少なくとも不人気が理由ではないことが窺える。
続編が制作されなかったことについて、ファン間ではしばしば『制作側の想像以上に売れすぎてしまった為に、続編が作られなくなってしまったのでないか』と推測されている。
上述したように、続編企画が新ライダー企画に変わった、あるいは劇場版企画が続編から予定が変更されたことからの推測ではあるが、完全に展開が打ち切られてしまった理由は特に公表されていないため、今のところは公式ではない。
だが、本作やお蔵入りになってしまった続編のアイデアは、後年に形を変えて使用されることが多く、仮面ライダーギルスのキャラクター造形や『仮面ライダーW』の設定に一部オマージュが見られるなど、数々の後続作品に非常に大きな影響を与えている。
あらすじ
遺伝子レベルで難病を治療する研究を行っている団体「ISS」にて、自ら被験者となり父・風間大門博士の研究を手助けしていた青年・風祭真。彼は度々、夜の街で暴れ回り大量殺人を繰り返す「怪物」になる夢を見ていた。おりしもその時、東京では謎の大量殺人事件が発生しており、真は自分が犯人なのではないかと疑い始める…
登場人物/組織
明日香愛:今作のヒロイン。
セーラ・深町:CIAの女性指揮官。
風祭新:小説作品(『MASKED RIDER SHIN EDITION -終わりの始まり、始まりの終わり-』)の主役。
財団(仮面ライダーシン):敵組織。
鬼塚義一:オカルト狂信者にしてマッドサイエンティスト。主人公の人生を狂わせた元凶。
豪島:組織に仇なす者を葬る暗殺者。日頃の動作等が通常の人間のそれと違う様だが…?
改造兵士、改造兵士レベル2、改造兵士レベル3(プロトタイプ):財団指揮下の怪人。
漫画版
別冊コロコロコミックで連載された読み切り作品。設定が大きく変わっており、氷室巌が優秀な科学者で自らを改造した末に暴走し、部下であった風祭真もまた改造されて、氷室を殺した所から物語は始まる。そして氷室の息子は大怪我を負った折に、風祭から輸血。その影響で彼の周りで事件が起こるというもの。敵は改造兵士ではなく、コウモリ男。
作画を担当したのはなんと藤子・F・不二雄先生のアシを務めていたたかや健二先生。
設定は大きく変わっているが、仮面ライダーに共通するテーマを描き切っている。
主題歌
- Forever
作詞:阿木燿子/作曲:宇崎竜童/編曲:湯川徹/歌:渡辺典子
エンディングテーマ。
余談
続編が作られていれば、仮面ライダーシンはスーツとバイクを手に入れて”仮面ライダーに成る”予定で、呼称も「仮面ライダーガイア」になるはずであった。ちなみに、この名前は小説「仮面ライダーEVE」の主役に流用されている。
その前に、名前を本郷猛にしておけば時系列が円環して制作の必要すらなかったのだが、それいったら問題が早田進まで及ぶし……
仮面ライダー・ザ・ダイナーではこの作品全体をイメージした料理『空“真”菜ライダー~序章~』として登場。この料理は、まだ序章(前菜)に過ぎない…
「発表から約30年が経過しているが、存在が判明しているのは序章のみである」
永遠に続編が作られない序章などと揶揄されがちであるが、2023年春に庵野秀明監督によるまさかの「シン・仮面ライダー」が公開される事が決定。本作の要素がもしかしたら拾われるのかもしれない…と思っていたがそもそも初代のリブート作品のためそんなことは無かった。尤もメインビジュアルに描かれていたのは1号ライダーであるためその時点でお察しではあるが……。
また、真・仮面ライダーとシン・仮面ライダーの音が同じ、シン・仮面ライダーにおける、本郷が無理矢理マスクを外した時の顔が変身途中の真に似ている、などの理由でシン・仮面ライダーが真・仮面ライダーの本編なのではないかと言う者もいるが、明らかではない。というより、ほぼネタ扱いである。
2021年に行われたNHK主催の「全仮面ライダー大投票」では、「仮面ライダー部門」で見事87位にランクインを果たした。
関連タグ
昭和ライダー/平成ライダー ネオライダー 石ノ森ヒーロー 東映特撮
仮面ライダー真:主役ライダーの漢字表記版
真・仮面ライダー序章、真仮面ライダー:作品タイトルの表記揺れ
仮面ライダーアマゾン:ベルト状のアイテムで変身する事はなく、感情の高ぶりによって全身が生物的なデザインへと“変態”して変身する。
仮面ライダーBLACK:キングストーンが無ければバッタ怪人になってしまう。
強殖装甲ガイバー 鋼王伝series(サイバーコミックス037):ビデオ巻末の予告編仲間・及び遠縁。
髑髏戦士ザ・スカルソルジャー_復讐の美学:同年にリリースされた特撮ドラマ。こちらも主人公が改造人間であり、バイオレンスな描写や性的なシーンなどが共通している。
機動戦士ガンダムF91:本作と同じくバブル末期に制作されるも、続編が作らずにプロローグのみで止まっている作品。
仮面ライダーBLACK RX → 真・仮面ライダー 序章 → 仮面ライダーZO