「Kaijins are as human as I am.(怪人は私たちと同じ人間です)」
演:平澤宏々路
概要
『仮面ライダーBLACKSUN』の登場人物の1人であり、本作のヒロイン。14歳。人間と怪人の共存を掲げ、差別の撤廃を訴える若き人権活動家の少女。国連でスピーチする等、世間から注目されている。両親は海外出張中で、養母の和泉美咲に預けられている。幼馴染は雀怪人である小松俊介。
活動内容から好奇や偏見の目に晒されながらも忌憚ない意見と気丈な態度を崩さない強い性格。
両親から貰ったペンダントを大事にしているが、南光太郎と出会い、それがキングストーンであった事から創世王を巡る戦いに巻き込まれていく。
キングストーンがきっかけにより護流五無との争いに巻き込まれ、美咲を殺され家を失う悲劇に遭うがなし崩しに光太郎に拾われて共同生活を送ることに。
徐々に心を開いていき「おじさん」と親しみ、自分を強くするよう訓練を申し込む。そんな時両親が海外から帰ってくるが…。
ここから先は、「仮面ライダーBLACKSUN」のネタバレが含まれています。
差別と闘い続ける少女。その生き様…
栖川中学校に通う2年生で、2008年10月14日生まれの14歳。怪人への差別撤廃を訴える人権活動家でもあり、国連におけるスピーチがメディアに取り上げられ、世界的に知られる存在となっている。
活動家の両親、川本英夫、莉乃夫妻は2000年に起きた警視庁本部爆破事件の容疑者として指名手配中で、2015年から日本を離れている。その際、葵は和泉美咲に引き取られ、以後は和泉姓を名乗っている。また、別れ際に両親から大事なものとしてキングストーンを受け取っており、葵はそれをペンダントにして常に身に着けるようになった。
その後、鮫栖横丁で暮らし始めた葵だが、変化した環境にすぐには馴染めず、気丈に振舞いながらも独りでいることが多かった。そんなある日、彼女は近所に住んでいる同い年の少年、小松俊介に声を掛けられる。素っ気ない態度で応じたものの俊介はその場を離れず、やがて彼とは幼馴染として交流を深め、無二の親友というべき関係性を築いていった。
2022年。葵は国連でのスピーチに引用した母の言葉、「人間も怪人も、命の重さは地球以上。1グラムだって、命の重さに違いは無いのです」が、かつてオリバー・ジョンソンが語っていた事と同じであったのがきっかけで、堂波真一やビルゲニアに目を付けられ、加えて怪人排斥を訴える反怪人団体からも命を狙われ始める。
帰国後、中学校では彼女の活躍を祝福するクラスに迎え入れられ、担任の教師にも賞賛されるなど穏やかな一時を楽しむが、校門前には「反日教育を行っている」と周辺住民の迷惑になるのも関わらず非難のスピーチをメガホンを使って騒ぎ立てる反怪人団体の姿が。下校する中でもしつこく付き纏う彼らに臆さず立ち向かうも、話すだけ無駄だと感じ俊介と共にその場を去る。バスに乗った後も怪人である俊介を拒んだり勝手に写真を撮る他の乗客にも強気な態度で抵抗し、面倒を避けたい俊介に「今逃げたら、一生逃げ続ける事になる」と勇気を胸に彼と共に乗り続け、無事に下車する。すると、彼女の拉致を命じられたクモ怪人が出現。背後には、暗殺を請け負って尾行していた南光太郎が迫っており、葵は彼によって命を絶たれそうになる。しかし、キングストーンを身に着けていたことから光太郎が翻意。ブラックサンに変身した光太郎がクモ怪人を殺害、逆に命を救われた。が、その際に腕を引き千切る、その腕を腹部に突き刺し腸を引き摺り出す、とどめに首を捥ぎ取るなどの残虐な闘いを目にし、流石に耐えられず気を失ってしまう。このままでは他のゴルゴム怪人に命を狙われると察し、光太郎により一次安全な所へ避難させられる。そのバスで光太郎と信彦の邂逅や、ヒートヘブンの存在を知る。
そして、「ゴルゴム党」から派遣されたアネモネ怪人により美咲の命が奪われると、身寄りがなくなった彼女は光太郎を頼ることに。戦い方を学ぶ一方で、少しずつ彼と心を通わせていくのだった。
その後、カニ怪人にされた父親との悲しい再会と別れを経て、ビルゲニアの罠にはまって地図にない村へおびき出された葵は、意に反しカマキリ怪人へと改造されてしまう。しかも、ビルゲニアに拉致されていた母親の命まで奪われる。
怪人にされた影響で意識が混濁し、自分を救出に来た光太郎まで襲ってしまう葵だったが、光太郎の懸命の呼びかけにより自我を取り戻す。だが、ビシュムによってゴルゴム党本部へと拉致されると、次期創世王候補として創世王の前へ。二つのキングストーンを手にして創世王の前に立った際、幻視した過去の出来事から怪人にまつわる真実の一端を知ることとなる。そして、秋月信彦率いるレジスタンスと光太郎がゴルゴム党本部を襲撃してきた混乱の隙を突いてその場から逃げ出すと、光太郎と合流。地図にない村で落ち合う約束をして彼と別れ、続いて仲間や捕えられた人間達を救えず殺され、命からがら逃走していた俊介と再会する。だが、そんな中Satに命を狙われる人間達を目の当たりにする。彼らを助けるには怪人の力が必要だと俊介は告げるが、怪人に改造された恐怖で現実を受け止めきれない葵は変身を拒むも、「人間とか怪人とか、そんなの、葵が一番嫌ってた事だろ?」「俺達は『怪人』で『人間』なんだよ?」という彼の想いを受け止める。変身の仕方を彼に学び、人間達をSatから救うも、道中で他のSat隊員により彼らは全滅。その怒りを嘆くも、俊介は奪ったライフルでSat隊員を射殺してしまう。党本部から脱出した後、人を殺してしまった事に罪悪感に沈む彼を慰め、お互いの友情を改めて確かめ合い、光太郎と約束した地図に無い村に向かう為彼と別れるも…。
後日、葵は意識を失っていた光太郎の回復を見届けると、ノミ怪人が母から秘かに託されていた小さな鍵を手に村を出発。改めて立ち寄った鮫栖横丁で、俊介が反怪人団体のリンチにより落命したという悲しい事実を知り、しかも彼の遺体は警察により検死の名目の下押収されてしまう。親友を殺され、無慈悲な現実に打ちのめされている中、キングストーンを狙いビルゲニアが現れる。大人しく渡す様要求されるも不意をついて彼の腹部にカマキリの鎌を突き刺し、倒れた所を必要以上に蹴り続けるなど、以前の彼女には見受けられなかった暴力性が芽生え始める。
「ここでお前を殺しても…誰も戻って来ない!何も変わらない!!」
「でも…いつでも殺せるから…私を舐めるな…!」
そうビルゲニアに宣言し、心を奮い立たせてその場を後にする。
その後、彼女はとある教会「OMORI BAPTIST CHURCH」を訪れ、オリバー・ジョンソンの墓に秘匿されていた両親が遺した資料を入手。怪人誕生の真実を知る。そして、許さぬ気持ちはあれど行く宛てのないビルゲニアを帯同し、とある精神病院で秋月総一郎と面会。当時の話を聞くと、これらの真実を公表しようと決意した。
決行の前に、葵は道を違えた信彦との戦いで落命した光太郎のもとを訪れ、クジラ怪人の処置を手伝って光太郎の復活に立ち会う。その際、ヒートヘブンを口にして溢れ出る力に苦しみ暴れる光太郎の身体を仲間たちが押さえつけるなか、葵は自らの指を噛みちぎり、光太郎の胸に想いを込めた「∞」の文字を描く。
光太郎の廃バスの場所までビルゲニアに送迎されると、彼が両親から押収した「堂波道之助が怪人の実験に携わっていた映像を記録した8mmフィルム」をデータにした物を受け取る。
「いつかあんたを殺す。それは変わらないから」
両親の仇である彼を許してはいない想いを改めて告げた。
翌日、光太郎のアジトだった廃バスの中で、国連の会場に回線を繋げて怪人誕生の真実を公表。自身が変身した怪人の姿を見せつつ、怪人も人間であると訴えた。
だが、居場所を特定した堂波新一が口封じの為機動隊を向かわせる。抵抗する場合は射殺も辞さない彼らから葵を護る為、ビルゲニアは単身挑み、彼らを全滅させる。だが、同時に重症を負ってしまう。
「宣戦布告」と称したスピーチを終え、外で何が起こっていたのかを悟った葵は仁王立ちするビルゲニアの元へ走り出す。
「ビルゲニアさん…!」
そう語りかけるも、彼は既に息絶え、倒れてしまう。彼がへし折ったサタンサーベルを手に、死屍累々の荒野を眺めた。
そして、最後の戦いに向かった光太郎が新たな創世王になってしまう。彼の廃バスで眠りについていた時、サタンサーベルが赤く輝いているのを目にする。秋月博士から創世王を倒す方法を知り思い出した葵は、光太郎をとの約束を果たす為ゴルゴム党本部へと侵入。入り口でバトルホッパーを目にした後、警備の怪人達が彼女の前に立ちはだかる。
「おじさん…」
覚悟を決めた葵は光太郎と同じ構えを取り、ベルトを腹部に出現させる。
「変身!!」
決意の変身を見せつけ、彼らに立ち向かうも、数の差で追い詰められる。だが、鯨と蚤が彼女を救う為乱入。一人創世王の部屋へ向かう。
新たな創世王となってしまった光太郎。彼の願いを受け止め、彼にサタンサーベルを突き刺す。
「もう…泣かないで…」
最期に彼女の目に映ったのは、心優しい光太郎の姿だった…。
新創世王は塵となり絶命。大切な人を自らの手で殺めた事に泣き崩れるも、残った二つのキングストーンを手にする。
怪人の真実が世界中に公表されるも、世間は以前と変わらず怪人達への差別が続いている。
「移民政策絶対反対!」
「外国人を、排除せよ!」
「日本を崩壊させるな!」
反移民を掲げる団体の前に、たった一人で平和を訴える少女。彼女に小銭を渡す者も入れば、突き飛ばし、プラカードを踏みつける者もいた。そんな彼女に手を差し伸べたのは、黒い衣装を纏った葵だった。
地図の無い村へと案内された少女が目にしたのは、大勢の墓と、殺人術を学ぶ少年少女達の姿だった。
国会では、自衛隊の海外への武力行使についての会議が取り行われていた。
蚤「これからどうする…?」
そう問いかける蚤に葵は答える。
「悪い奴がいる限り…『闘う』よ…」
そう言って立ち上がり、見上げた空には、BLACKSUNの胸に刻んだマークが描かれた旗と、新たな日食が始まっていた……。
世の中はどう動いていくのか。葵の戦いはまだ終わらない……。
余談
演者の平澤宏々路女史は、過去に特命戦隊ゴーバスターズで幼少期の宇佐見ヨーコ、ネオ・ウルトラQでは波多野マヤ、ウルトラマンオーブではユウカ(劇場版でも同役で出演し、エクスデバイザーを拾って来るという重要な役割を果たしている)を演じており、何とわずか15歳までに三大特撮ヒーロー番組の出演を制覇するという、とんでもない記録を残す事になった。
また、上記の結末には『(テロによる)過激な暴力革命の肯定なのでは?』と否定的な意見がある。
(石ノ森氏へのオマージュである、という意見もあるが彼は政府に批判的だったことは漫画版を見れば確かに明らかではある。一方で一説に過ぎないがドラマ版のショッカーのモチーフは日本赤軍とされており、彼は『政府には批判的だが(テロによる)過激な暴力革命も肯定しない』立場であったことが窺える)
小説版では境遇は同様だがエピローグでは地図にない村で暮らし、ノミカイジンが開発した新たなサプレッサーを付け2つのキングストーンを収めることに成功。その結果日本国民全てをカイジン化出来る能力を手に入れ、その気になればいつでも発動ができるとある種の核爆弾的存在となり、世界情勢が酷くなれば行使することも辞さない気でいた。
そのサプレッサーのシステムの名前は「Regalia of Xenogeneic」で異種間の王位の象徴を意味する。
太字の頭文字を取ると……?
関連タグ
秋月杏子:原典におけるヒロインであるがキャラクター性や人物像は大きく異なっている。原典では信彦の妹であったが今作で信彦の妹は存在せず葵は信彦とは赤の他人設定になったため義妹でもなくなった。なお杏子はこちらの光太郎とは2歳違いの同世代である。
的場響子:原典の続編に登場するヒロイン。葵に近い役回りだが、こちらは生身の人間のため怪人態を持ってない。響子と光太郎は推定で5~6歳ほど年齢が離れているが、それでも葵と光太郎(BLACK SUN)に比べるとまだ歳が近い方である。
水澤美月、泉七羽、イユ:同じく昭和ライダーのリブート作品に登場する前作のヒロインである。
葛木葵:仮面ライダー作品における「葵」繋がり。