概要
井上敏樹による『仮面ライダー龍騎』のノベライズ。どちらかと言えば「小説 仮面ライダー龍騎EPISODE FINAL」と呼ぶべきかもしれない(こちらも井上氏が脚本を務めた)。
一応分類上はライトノベルだが、筆舌に尽くしがたい残虐描写やエグい下ネタが多く、同作者による別のライダーノベライズにも引けを取らない非常にハードな作風で読者に衝撃を与えた問題作。
原作とは異なる設定がかなり多く、リ・イマジネーション龍騎と解するのが妥当なところである。というか後述する数々の点から、もはや仮面ライダーと呼んでいいのかどうかすら怪しい。
とはいえ、「なぜ命を懸けてまで願いを叶えようとするのか?」などの疑問に一つの回答を示すなど『龍騎の物語』としてはきちんと成立している。作者が井上氏なだけあって、食事シーンは多い。しかもめちゃめちゃ美味しそうである。
レーベルは講談社キャラクター文庫。なので、「講談社こども倶楽部」というサイトで商品情報が公開されていた。念のため断っておくと講談社の子供向け書籍を紹介するサイトである。
原作との差異
本作では「仮面ライダー」の呼称が登場せず、仮面契約者と総称される。
(以下、便宜上仮面契約者のことを「ライダー」と記す)
ミラーワールド
本作におけるミラーワールドは一切の音が無い空間であり、ライダー同士の意思疎通はテレパシーで行う。また、ライダーの変身可能時間も5分に短縮されており、一旦現実世界に戻ればまた5分活動可能。この往復は24時間以内に3回まで繰り返せる。
アイテム
本作に登場するライダーはアドベントカードを使わない。故にサバイブも出てこない。
代わりにそれぞれのライダーズクレストをかたどっていると思われる専用のエンブレムが渡され、それを使って変身する。
そして必殺技だが、思いっ切り心の中で技名を叫ぶ。契約モンスターの召喚もそいつの名前を心の中で叫ぶ。武器の召喚も念じることで行う。
これらの仕様故、真司や蓮はもちろんのことなんと浅倉までも技名を叫ぶダリナンダアンタイッタイ状態。悪い意味でミラクルワールド。
ライドシューターも存在しない。よって作中にバイクが出てくるのは変身者の移動シーンのみである。
一応、表紙には原作の龍騎の写真が使われている。
ライダーバトルのルール
- ライダーは、120時間おきに自身の契約したミラーモンスターに餌を与えなければならない。
- その餌とは、他のモンスター、もしくは別の契約者の命である。
本作におけるミラーモンスターは現実世界に干渉しないため、原作における仮面ライダーシザースのように生身の人間を契約モンスターに食わせることはできない。もしリミットを過ぎると、契約モンスターに契約者自身が食い殺される。
モンスターは契約者以外に全く実害を与えないため、もはや正義の味方という建前すらも存在しない。
登場人物の設定変更
おバカな真司、死んだ大切な人を蘇らせようとしている蓮や美穂、スーパー弁護士である北岡、浅倉が殺人犯であるなど原作と同じ設定も少なくないが、真司が以下のような立ち位置である為、清涼剤であったOREジャーナルは存在しない扱いであり、上記の人物の設定も大幅に変わっている。
13人ライダーは全員登場するわけではなく、合計で8人登場。また、神崎士郎ポジションもいるにはいるが、直接の言及はない。また劇場版ベースだが仮面ライダーリュウガが未登場。
登場人物
城戸真司(仮面ライダー龍騎)
本作の主人公。田舎町出身で、花火職人の一家の生まれ。
両親を事故で亡くし祖母に育てられてきたが、祖母が爆発事故で右目を失って以来「人の役に立つこと」に人生を懸けようとする。そのためか本作では会社勤めではなく自営業の何でも屋を営んでいる(万事屋をイメージすれば分かりやすい)。
ライダーバトルに耐えかねて自殺しかけた依頼人に押し付けられたエンブレムを受け取り、「人の命を助けたんでこりゃ神様が俺に幸運を運んでくれたんだな」と勘違いして「宝くじが当たりますように」と願を掛けてしまい、「次の」龍騎に選ばれてしまった。
良くも悪くもその場のノリに身を任せる明るい性格で、美穂にはいいカモにされている。安定の真司である。
好物はアイスクリームと醤油ラーメン。祖母の教えにより、アイスを食べ過ぎたらお腹を反時計回りに撫でてもらう。
秋山蓮(仮面ライダーナイト)
もう一人の主人公。バイク事故で昏睡状態に陥った恋人・小川恵里を助けるためにライダーバトルに参加した青年。優衣とは大人の関係。
幼い頃、警察官であったが犯罪者を射殺してしまった悔恨で発狂した父親に殺されかけ、おまけにその父が銃の暴発で即死したのを目の当たりにしたという凄惨な過去を持つなど、原作以上に踏んだり蹴ったりな目に遭っている。でも真司に名前は間違えられていない。
目的のためなら手段を選ばず、原作と異なり殺人に対する躊躇も見せない冷徹な男だが、ごくたまに優しい部分を見せることもあり、真司についても最初は邪険に扱っていたが、次第に仲間意識を抱くようになる。
好物は血の滴るステーキ。カルボナーラとオニオンコンソメスープがあればなお良し。
北岡秀一(仮面ライダーゾルダ)
今をときめくスーパー弁護士。イヤミったらしい気質は原作以上。
旧華族の一族の出身で、真司が出会った中で一番とされるほどの美貌に恵まれている。それだけでなく年収は少なく見積もっても真司の100倍、彼女はそれぞれ国籍の違うイイ女が8人、大学在学中に司法試験に合格するほどの知能と三拍子そろったスーパーマンだが、実は若年性認知症を患っていた(原作でも持病持ちであったが、そちらでは具体的な病名は明かされず、症状も異なる)。
記憶を初めとする脳の機能が次第に失われていき、そして……。
好物はフランス料理。だが生姜焼きもアリ。外食<ゴロちゃんの手料理になっている。
霧島美穂(仮面ライダーファム)
耳かき専門店に勤める美女。浅倉に殺された両親を生き返らせるためにライダーバトルに参加した。
自分に入れ込んだ男性客とトラブルになりかけ、その解決を依頼したことで真司と出会い、腐れ縁となる。そんなこんなで真司からは結婚詐欺師呼ばわりされているが、原作と異なりこちらでは実際には手を染めていない。
真司をカモ兼パシリとして体よく使っていたが、次第に仲を深め恋愛感情を抱くようになる。
後半、真司に正体を知られたことで殺そうとするほどの激しい言い争いになるものの、結果的に真司への愛情を自覚し深い関係を結ぶ。しかし、その矢先にライダーバトルで深手を負い……
好物は焼きそば。紅ショウガたっぷりがいいらしい。ちなみに、劇場版と違ってお好み焼きに青のりをかけることを嫌がっていない。
浅倉威(仮面ライダー王蛇)
原作を超えた最凶最悪の狂人。この作品のグロ要素をほぼ一手に担っている。
蓮曰く「契約者の中でも一番イカれたヤツ」、医者にも「彼には分析するものがない」と匙を投げられ、収監中には「モンスター」とのみ呼ばれていたという。
生まれて七日で母親を殺し、幼少期には養護施設の児童や職員を殺し、少年時代にはホームレス生活を営む中で同じホームレスを殺し、さらに山の中で獣同然の生活をし、縄張りに入った者を片っ端から殺し……と、凄まじい数の人命を奪ってきた。その手口も明らかにテレビでは放送できないほど凄惨なものが多い。
その生来の残虐性は汲み取り式の共同便所の中に産み捨てられたという生まれの悲惨さにあり、浅倉は自分を含めた全ての人間に糞尿の臭いを覚えている。血を浴びることでその臭いを消しているらしい。
このような猟奇性の一方で、とっさに砂中に身を隠して敵を奇襲する、優衣がただの人間ではないことを初見で看破するなど、一筋縄ではいかないカンの良さも恐るべき点である。
終盤ではコンビニで立てこもり事件を起こし、その場に居合わせた人々を惨殺。この件は他のライダーを説得してライダーバトルを止めようとしていた真司をして、浅倉に対してだけはライダーバトルで殺害することを決意させた。
変身形態では口がクラッシャーになっているという設定が追加されており、噛み付きが可能。
テレビではトカゲを食っていたが本作では野良犬を焼いて食う。お前もう人間じゃねぇよ…
神崎優衣
蓮の友人で看護婦。その正体は、原作を知ってるならもうわかるよね?
由良吾郎
北岡に仕える秘書。原作の強面だが男前な印象とは正反対に凄まじい不細工らしい。
少年の頃から罪を犯してきた過去を持ち、成人した後に強盗傷害で有罪になりかけたところを北岡に弁護されて釈放され、人生を北岡に捧げることにした。
北岡の病気を知ったことで、病気の快癒のため、神に沈黙を誓った。この誓いの一環としてお口チャック(物理)をしており、会話は手話で行っている。
北岡に対する忠誠心は篤く、北岡の為なら殺人さえも厭わない決意を匂わせる場面もある。
仮面ライダーシザース
卑怯もラッキョウも大好きな嫌なヤツ。ナイトと戦う際には必ず背後から不意打ちを仕掛けるという。
仮面ライダーインペラー
どこにでもいる平凡な顔の幸せになりたかっただけのヤツ。
仮面ライダーライア
モンスターの首を一撃で刎ねる威力を持つムチを振るう強力なライダー。でも王蛇には手も足も出ず縊り殺されてしまった。
以上の三名は変身者の名前すら出ないうちに殺されてしまう。
関連リンク
TELEMAGA.net公式ページ『小説 仮面ライダー龍騎』
関連項目
ダークファンタジー お茶の間の良い子号泣シリーズ 俺の知ってるのと違う
RIDER_TIME_龍騎:こちらは原作の関連作品。当作ほどではないが、こちらも井上節全開の内容である。