そんな優衣と士郎が想像で作り上げたのが、鏡の中の世界ミラーワールドだった。そこは優衣と士郎だけの、楽しいことしかない世界で、強いモンスターたちは、二人を助けてくれるのだ。そこで二人は延えんとモンスターの絵を描き続け、やがて二人の強い幻想は、ミラーワールドと、そしてモンスターたちを具現化させてしまったのだ。
(『仮面ライダー龍騎超全集 最終巻』p.56より)
概要
『仮面ライダー龍騎』の世界において、鏡の中に存在するもう一つの世界。
現実世界とそっくりだが左右が反転しており、ミラーモンスター以外の動物は生息していない。ミラーワールドではミラーモンスター以外の動物は生きていくことができないためである。
それは仮面ライダーですら例外ではなく、人間なら1分も持たず光の粒子になってしまい、仮面ライダーでも9分55秒以上連続でミラーワールドの中にいれば消滅してしまう。
また、逆にミラーモンスターも現実世界で生き続けることはできない。唯一現実世界で活動できるのが、高い順応能力を持つシアゴーストである(仮面ライダーディケイドでは、ゲルニュートが長時間現実世界にいたが、こちらのミラーワールドとは設定が異なる)。
ただし、例外もあり、神崎士郎はミラーモンスターでないにもかかわらず、常にミラーワールドの中で活動している。元々は普通の人間だったが、アメリカでの実験により鏡の中の存在と化したらしい。
さらに、ミラーモンスターが創造される以前から神崎優衣の分身体が鏡の中に存在しており、正確に言うと、その人物がイメージし、創造した存在(ミラーモンスター含む)もしくは士郎のように何らかの方法でミラーワールドに適合した人間であればミラーワールドでも生き続けることができると思われる。
劇場版に登場した仮面ライダーリュウガは、恐らく前者に該当する。
本編でも現実世界に戻ってからソノラブーマと戦闘しているが、この時も短時間で終了しているため、長時間活動できるかどうかは不明。
ミラーワールドへは鏡から侵入する方法があるが、光を反射する性質があれば、窓ガラスや水溜まり、川などからでも入ることができる。ただし、ミラーモンスターとライダー以外は出入りできない。ゆえに、ミラーモンスターに襲われた場合、ミラーワールドに引き込まれると、現実世界に戻れなくなり、死亡してしまう(ただし、ライダーと共に現実世界に戻ることは不可能ではない)。
また、第2話では、龍騎ブランク体が仮面ライダーナイトと同じガラスの鏡面からミラーワールドを脱出しようとするが通り抜けられず、蓮の「来た道を戻れ」という言葉に従い、自動車のボディから脱出するという描写がある。
なお、第29話では龍騎が「来た道」以外から現実世界に出ている。これが制作側の都合やミスではない場合、「来た道からしか戻れないのはブランク体のみ」と考えられるが詳細は不明。
ちなみに、ミラーモンスター達は様々な鏡面から自由に出入りできる。
ミラーワールドで起こった破壊が現実世界に反映されることはない。
第18話では、仮面ライダー王蛇が脱獄する際に現実世界の扉が破壊されているが、王蛇が扉を破壊するシーンは風景が左右反転していないため、単に王蛇が現実世界で扉を破壊したのだと思われる。
逆に、第3話で優衣が現実世界でガラスを破壊した際は直後に同じ位置のガラスが破壊されている(ただし、優衣のみミラーワールドに干渉できたという可能性もあるが、劇中では類似の描写が存在しないため、詳細は不明)。
その実態は、神崎兄妹が作り出した鏡の世界。両親からネグレクトされ通学以外に外に出してもらえずに家の一室に閉じ込められる彼らが、唯一許された絵を描くという行為の中で兄弟で想像を膨らませ、ついにはミラーワールドとミラーモンスターとを生み出してしまった。また、ミラーワールド内にある、ミラーワールドの心臓部たるコアミラーなるものに優衣の絵が集まることでモンスターとして実体化する。
ミラーモンスターが現実世界に現れる予兆として「キーン…キーン…」という不気味な音が鳴る。また、空間内でも特徴的な風の音が鳴る。
シリーズ構成の一人である小林靖子による初期設定では少し違っており、「隙間世界」と呼ばれ人間の感情がたまるとモンスターとして出現し、現実世界に適応するために人間の体を乗っ取るという者だった。この設定の一部は後年の『侍戦隊シンケンジャー』に流用される。
小説版
井上敏樹による『小説仮面ライダー龍騎』では、TV版とは異なり「一切音がしない」という設定があった。ライダー同士の意思疎通はテレパシーで行う。また、波風などの自然現象も起きない。
また、本作ではライダーのタイムリミットも9分55秒から5分に短縮されており、さらに120時間おきに他のミラーモンスターか契約者の命を与えなければ自分自身が契約モンスターに喰われるという設定も追加された。本作ではミラーモンスターは基本的に契約者以外の人間を襲うことはないため、TV本編の仮面ライダーシザースのように一般人を襲わせることはできない。逆を言えば、TV版の真司のようにミラーモンスターから人間を守るために戦うこともできないため、もはや『正義の味方』という建前すら存在せず、ライダーになった以上は他のライダーと殺し合う以外に生きる術はないという設定がTV版以上に強調されている。
仮面ライダーディケイド
仮面ライダーに変身した裁判官が判決を争う場として登場した。
いわゆる野良モンスターはすべて絶滅しているため、人間が中に引きずり込まれて死亡するといったことは起こらない模様。また、ライダーバトルに敗れたライダーもバトルから脱落するだけで死亡するわけではないため、原典の殺伐とした設定と比べると比較的平和である。
原典同様、制限時間の有無は不明。
なお、『仮面ライダーウィザード』第52話では、魔宝石の世界の龍騎が抵抗した住民をやむを得ず一時的に鏡の世界に閉じ込めているが、ここでもかなり時間が経過しているにもかかわらず、住民たちは普段と変わらずに活動していた。
また、それ以外にも仮面ライダーディケイド龍騎が龍騎の世界以外でも攻撃手段や移動に用いることがあるため、ディケイド上の設定では基本的にはどの世界にもミラーワールドが存在すると思われる(以降のオールライダーでも同様で、龍騎は鏡の中を忍者のように移動しながら相手を翻弄して戦うことが多い)。
仮面ライダージオウ
EP21・22の「リュウガ編」で再登場。モンスターが出現した時のSEも健在である。
ただし、裏真司や裏ソウゴ以外のミラーモンスターの存在は不明。
門矢士がウールに語ったところによると、「数千回に一回鏡が割れる瞬間にだけ繋がる、失われた鏡の中の世界」とされている。これを信じて実践したウールによって再び開かれている。
本作に登場する常磐ソウゴ(鏡の中の異世界)/仮面ライダージオウ(ミラーワールドバージョン)は原典における13ライダーと同様に、ミラーワールドと現実世界を自在に行き来する能力を持っている。
本エピソードで、一時的にソウゴがミラーワールドの中に進入しているが、肉体が消滅することはなかった上、進入した場所とは別の場所から生身の状態で脱出する(厳密には、裏ソウゴが変身した裏ジオウの攻撃を受けて叩き出されて脱出した)など、とんでもないことをいくつもやってのけている(ミラーワールドの存在が干渉されたことで脱出したとも捉えることができる。また、生身での時間が短かったうえ、ライダーに変身したことから消滅を免れ、脱出できたのかもしれない)。
もっとも主人公であるソウゴ自身謎も多い特殊な人物であるため、原典のミラーワールドとどこまで設定が共有されているかは不明。
なお、サブタイトルや公式サイトでは「ミラーワールド」と表記されているものの、登場人物からは終始「鏡の中の(異)世界」などと呼ばれており「ミラーワールド」という言葉は一度も出なかった(名前を知っていそうな人物が門矢士とウォズ二人くらいしかいないため、当然といえば当然なのかもしれない)。
RIDER TIME 仮面ライダー龍騎
設定は『仮面ライダージオウ』を引き継いでおり、ライダーバトル参加者が閉じ込められているという設定であるためか、生身の状態で長時間いても肉体が消滅することはなく(これに関してはEPISODE3の描写からある仮説も挙げられている)、変身についても鏡面にデッキをかざす必要はなく、カードデッキを構えるだけで変身することができる(これについては『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』で城戸真司(ミラーワールド)がミラーワールドで鏡面にデッキをかざすことなく変身したことに起因すると思われる)。また、全員飲まず食わずではなく、それなりの食料も確保されている模様。契約モンスター以外の野良モンスターも種類は少ないが、原典同様に存在し、捕食を狙ってくる。
ただし、変身前後問わずに致命的なダメージを負うと黒い塵になり、消滅してしまう。特に今作ではミラーワールドでも生身で襲われるリスクも高くなっていることが原因で、原典以上に不意の油断や予想外の出来事が命取りになりやすい事態に陥っている。
活動の制限がない代わりに、現実世界との出入りはできず、タイムリミットである7日目までに最後の一人になり、失われた記憶を取り戻し、現実世界に帰還することが戦いの目標として扱われている。
仮面ライダーアウトサイダーズ
前述の作品に登場するミラーワールドと大きく異なり、ミラーワールドの中でも生身の状態で活動することができ、カードデッキを所持していれば、自由に出入りができる。また、仮面ライダーの姿でも現実世界で活動することもできる。
劇中では、仮面ライダーオーディンがライダーの姿を維持した状態で現実世界に出現している。さらに、オーディンが撃破された後にミラーワールドが崩壊し、浅倉威が仮面ライダー王蛇の姿で現実世界に戻っても、変身は解除されず、自身でカードデッキを引き抜いて解除していた。
王蛇が参戦した時点で生き残っていたライダーは、ゾルダ、ライア、ガイ、オーディンの4人だったが、元々の人数は不明。また、最終的に王蛇がオーディンを倒して「最後の一人」になったが、原典のように勝者に対して何かしらの特権が与えられるという描写は存在しない。
これは、財団Xがオーディンのカードデッキをデザストの復活に利用しようと、清明院大学の江島教授が残したデータを買い取ってミラーワールドを復元したため、最初から特権のようなものは存在しなかったと思われる。つまり、オーディンを含む参加者全員が財団Xに利用されていたのである(もっとも、浅倉はただ闘うことだけが目的だったため、そのようなことはどうでもいい、と考えていたと思われる)。
ミラーワールドに似たものが登場する作品
特撮
仮面ライダー(スカイライダー)
鏡の世界(鏡の迷路のような世界)と現実世界を行き来できる怪人・カガミトカゲが登場。スカイライダーは合わせ鏡を使って鏡の世界に入り、カガミトカゲを打ち倒した。
制限時間等については不明だが、カガミトカゲが鏡の中に閉じ込めていた人間が無事に帰って来れたところを見ると、特に存在しないのかもしれない。
また、連れ去られた人間と入れ替わりに現れる、オリジナルと左右逆になった殺人鬼「鏡人間」は、鏡像の城戸真司を思わせる。
仮面ライダーBLACK RX
鏡の中の世界自体は登場しないが、「鏡渡りの術」で鏡の中を行き来できる怪人・武陣が登場。
マリバロンも鏡渡りの術を使える。
ミラーマン
主人公・鏡京太郎/ミラーマンは鏡の世界の二次元人と三次元人のハーフであり、鏡の向こうにある二次元の世界はインベーダーの手により壊滅している。
鏡京太郎は鏡の中に突入することでミラーマンに変身できるが、二次元との間にある鏡の中に長時間滞在すると死ぬという弱点を持っている。最終回では二次元世界を再建するために旅立ってしまった。
生死不明の父親から幾度も助言を受ける点、鏡の世界が侵略者に滅ぼされた点など後の『KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT』との共通点も多い。
インベーダーも鏡の世界で活動することができるが、それだけでは死なない模様。
鏡の世界での戦いもしばしば行われているが、龍騎のミラーワールドと異なり、現実と左右が反転しているわけではない。
ウルトラシリーズ
バド星人やスペクターなど、鏡の中を行き来する怪獣・宇宙人が登場する。
漫画・アニメ・ラノベ・ゲーム
ドラえもん
「逆世界入り込みオイル」「入り込み鏡」などという道具を使用し、鏡の中の誰もいない世界に入る話がある(時間制限はないが、出入り口が1個しかないので壊れたらいろいろ大変である)。
大長編及び映画「のび太と鉄人兵団」ではこの道具で入り込んだ鏡の中の世界が重要な舞台の一つになっている。
また、他にも「出入り鏡」という話では現実世界に干渉するミラーワールドが登場している。
ローゼンメイデン
「nのフィールド」という鏡の中の世界(正確には「鏡面から出入りする精神世界」)で人形が現実世界の人間と契約し、果てなきバトルロワイヤルを…つまり、そういう作品である。ちなみに放送時期も「龍騎」放送開始から間もない。
召喚教師リアルバウトハイスクール
ここでは「SAMURAI GIRL」について。
涼子たちが戦うソルバニアは、小型怪獣を棍棒程度の武器でも倒せる裏世界。
大作曰く「重力が小さいのかな?」とのことだが、ストライクベントも並のライダーパンチの10倍の威力。
当初はミラーワールドも異常重力圏で、現実では威力が下がっていたのかもしれない。
ONEPIECE
「四皇」ビッグ・マムの8女シャーロット・ブリュレの能力ミラミラの実により作り出されたミロワールドが登場。
他の作品とは異なり、内部は果てしない迷宮になっている。ビッグ・マムの治めるホールケーキアイランド全ての鏡と通じており、ブリュレ及び彼女に触れているもののみが鏡の中を行き来できる。
星のカービィシリーズ
『鏡の大迷宮』にて、願いを叶える鏡「ディメンションミラー」が登場。
これを通じて鏡の世界に入ることができる。ラスボス・ダークマインドによって暴走を起こし、姿を映した者の邪心を実体化させる能力を得た結果、シャドーカービィ・ダークメタナイト・ブラックデデデといった黒く悪しきコピーを生み出した。
ただしカービィには邪心が殆ど無かった為、彼から生まれたシャドーも悪戯好きな程度であり、事件解決後には鏡の世界の守り手となっている。
ジョジョの奇妙な冒険
第5部に登場するイルーゾォのスタンド「マン・イン・ザ・ミラー」は鏡の中に標的を引きずり込む能力を持つ。本人の意思により対象を任意の部位まで引きずり込めるなどかなり細かい指示ができる。
ひみつのアイプリ
作中にアイプリバースという鏡の中(厳密には鏡から出入りするメタバース空間)の世界が登場し、主人公たちはこの空間でライブを行う。
共通点として、『鏡の前』でかつ『とあるキーアイテム』を使用することが挙げられる。
海外ドラマ
KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT
『仮面ライダー龍騎』の北米向けリメイク作品。鏡を通じて行き来できるもう一つの地球のような世界になっており、名称もベンタラに変更されている。
地球と全く同じ環境の別の惑星とでも言うべき場所であり、滞在するだけで人間が消滅したりはしない。
左右は反転しておらず、原典の映像を流用した場面でも文字や画像が反転している部分は再び映像を反転し直して使用されている。
本来は地球上の人間と同じDNAを持つ双子とでもいうべき鏡写しの人類が住んでおり、惑星外から訪れたゼイビアックス将軍の侵略に対し、アドベント・マスターの開発したカードデッキで変身する仮面ライダーの力で対抗していたが、ある事件により仮面ライダーのほとんどがベント(アドベント空間と呼ばれる場所に封印されること)され、残された人々も全てゼイビアックス将軍の軍勢に拉致された。
そのため、本編ではベンタラには人間が存在しておらず、ゼイビアックス将軍配下のミラーモンスターたちが巣食う住処になっており、ゼイビアックス将軍の命令で鏡を通じて地球の人間をも拉致している。
撮影方法
ミラーワールド内の撮影は各作品によって異なっている。
『龍騎』本編の場合は、鏡像用の左右反転スーツを着用したスーツアクター全員が鏡写しの動き(つまり武装などは左右逆に持つことになるため、左利き演技だった)でアクションし、それを編集で左右反転させるという手法がとられた。
高岩成二氏も含めて、スーツアクター陣は慣れない左利きでのアクションに相当苦労したらしい。
『ディケイド』は、看板などを反転させた物に取り替えた手法がとられた(最初からそうしろというツッコミは禁句。スタッフが龍騎で学んだという証言もあるようなので)。
『ジオウ』は、『龍騎』や『ディケイド』と異なり、鏡像の自分と戦うという描写が組み込まれたため、また別の意味で難解な撮影になった。
東映公式サイトの白倉Pの証言によると、
1.背景用の看板を2種類つくる(通常のジオウ撮影用と裏ジオウ撮影用)
2.このカットは被写体は正像で背景が鏡像、このカットは被写体が鏡像になっているため、背景は正像、このカットは両者が入り乱れる合成
と、カットごとに緻密に計算した上で撮影したとのことで、丸一日がかりの撮影になったという。
なお、撮影を終えた田﨑監督と宮崎アクション監督は、編集された映像を見て「あんだけ苦労したのに、つないだらたったこれだけ?!」と愕然としていたとのこと。
『RIDER TIME 仮面ライダー龍騎』では、『ディケイド』と同様の手法で撮影されたため、王蛇が右手で武器を持っていたりしている。
関連項目
KAMEN_RIDER_DRAGON_KNIGHT 駈斗戦士
アンダーワールド ヘルヘイムの森…仮面ライダーシリーズに登場する異世界
チャリンコヒーロー:ミラーワールドがステージとして登場しており、あの音も存在。