仮面ライダー(漫画)
かめんらいだー
「お前たち『ショッカー』の野望を打ち砕き」
「人類の平和を守るため」
「大自然が遣わした正義の使者」
「『仮面ライダー』」
石ノ森章太郎氏は晩年に「萬画宣言」を出しており、正確には本タグも『仮面ライダー(萬画)』とすべきなのだろうが、ここでは表記しやすさや一般的な普及率を鑑みて「漫画」と表記させていただく。以降、気に入らない方は脳内で「漫」の字を「萬」に変換していただきたい。
漫画の王様・石ノ森章太郎が講談社の「週刊ぼくらマガジン」に連載したSF漫画。同誌の廃刊に伴い、「週刊少年マガジン」に移籍した。現在では中央公論社や秋田書店から単行本が発売されている。
本作はよく「原作版」と書かれたりするが、TV版とは内容が異なるパラレルな世界観であり、TVと漫画は同時並行して作成されたためどちらも原作ではない。いわばメディアミックスの一環なのだ。
連載当時の世情を反映し、環境問題などにも触れられている。仮面ライダー1号の冒頭の発言にもある通り、「自然」対「文明」の戦いの縮図とも取れる作品になっている。諌山陽太郎の『漫画・特撮ヒーローの倫理学』(鳥影社・2006年)では、「『文明』対『自然』の対決を描いた『ウルトラマン』とは対になる作品であり、ショッカーとは『悪』の『こころ』を持った科学特捜隊に他ならないのだ」と考察されていた。この後も石ノ森作品では環境問題に関する風刺が登場することが多い。
ただし、科学を「悪」と一辺倒に断じているわけではなく、科学は使い方次第であるという思想が随所に示されている。
本作では中盤にて本郷猛が死亡するという衝撃的な展開となり、一文字隼人に主役がバトンタッチされることとなる。
なお、映画『仮面ライダー THE FIRST』や『シン・仮面ライダー』はTV版を意識した描写もあるが、TV版ではなく本作が原作とされている。
漫画版のライダーはTV版のスーツよりも触角が太い(ミミズのような蛇腹)のが特徴で、胸板もかなり分厚く大きい。また腰のエナージコンバータはカプセル型(ジェット噴射で飛行可能)など細かい違いがある。仮面ライダー1号=本郷猛は感情を表に出すと顔に手術痕が現れるため、それを隠すために仮面を着用するという設定になっていた。
本作ではスーツの補修や新型サイクロン号の開発は本郷が集めた地下研究所のスタッフが行っているという設定である。
カラーリングに関してはバラツキが多く、サンコミ版などの表紙では新1号的でありながら、鼻筋は緑色である事が多い。
ベルトの色は旧1号同様に白とするもの(中公文庫コミック版)や、新1号同様の赤とするもの(サンコミ版)などのバージョンに分かれている。
また、基本的に特撮版のライダーは徒手空拳あるいは敵の武器を奪って戦っていたが、本作ではサイボーグ009同様に光線銃(レイガン)を用いる事があり、本作の仮面ライダー2号は出自がショッカーライダーの離反者という扱いであった為、ショッカーライダー戦ではサイクロン号を乗り回しながら光線銃を使って活躍しており、1号も終盤で滝を助けるべく、ケンタウロスに対して使っている。
「いまは『これ』が…『おれの顔』なんだ…! 『本郷猛』の仮面をかぶった…!」(ライダーの仮面をかぶった直後の本郷の台詞)
仮面ライダーの協力者たち
- 本郷猛:藤岡弘、の超濃い顔とは逆ベクトルのイケメン。第2話以降通っている大学が城南大学に変更されたTV版と違って城北大学に通っている設定が変更されなかったり、御曹司だったり、早瀬という親友がいなかったりとTV版と違う設定が少なくない。
- 一文字隼人:元はショッカーライダーの一員だったが頭に傷を負ったことで記憶を取り戻し、ショッカーライダーを倒して自らが死んだ本郷の後を継ぎ「仮面ライダー2号」となった。「てめぇはその泡でも被ってろ! 臭いからな!」「イエース仮面ライダーだ!」「天麩羅にでもなってやがれ!」など、台詞が一々平成ライダーっぽい。
- 本作では漁師町「水底村」の生まれとされており、ショッカーの計画に故郷が巻き込まれた為に母や幼馴染の美代が洗脳されたり、父である松五郎が死亡してしまったりと憂き目に遭っている。
- また、カメラマンとしての設定が掘り下げられており、原爆を題材にした『黒い雨を追って』という写真集の出版経験があったり、社会問題に対して思うところがあるような発言をするなど生来の正義感の熱さが垣間見える。特に「汚職、公害、うそつき政治、エログロナンセンス…」の下りは『仮面ライダーspirits』でもオマージュされている。
- 緑川ルリ子:本郷猛の恩師、緑川博士の娘。TV版同様に本郷が緑川博士を殺したと勘違いしてしまう一方、父親どころかTV版では生存している友人のヒロミまでもショッカーのせいで失っている。頭に傷を負った一文字を助け出し、彼を蘇生させたため、ぶっちゃけこの人がいなければ地球はショッカーの物になっていた。
- 緑川博士:本郷の恩師。生体科学の研究の第一人者であり、ショッカーに拉致されて改造人間手術に無理矢理協力させられていた。本郷と共に脱走するが蜘蛛男に絞殺される。
- 立花藤兵衛:本郷家に仕える禿頭とヒゲが特徴の老執事。剣道の有段者。猛を「坊ちゃま」と呼び、猛からは「藤兵衛」と呼び捨てにされている。後にテレビマガジンにて石ノ森氏が連載した漫画版『仮面ライダーアマゾン』にも登場する。やはり小林昭二演じるTV版とのギャップが大きい。
- 滝二郎:ショッカーの犯罪を捜査するFBI捜査官。いつもサングラスを掛けており、光線銃を所持している。勿論滝和也がモデル。
- 浩二:被爆二世であり、白血病に苦しみながらも、隼人を兄のように慕う。一文字はそんな彼のためにショッカーの科学陣を攫って治療を試みるも、基地の爆発によって連れて来る事は叶わず息を引き取ってしまった…。
- 順子:日の下電子に受付嬢として務めている女性で、隼人が好意を寄せている。一文字の部屋に誕生日プレゼントと称して時限爆弾を仕掛けたこともあったが、ショッカーによる遠隔洗脳のためであり、本人は決して悪人ではない。
- 日下甲之助:ショッカーに洗脳されて「10月計画」に加担してしまった日の下電子の社長。
- 日下礼奈:甲之助の娘。ショッカーの洗脳を免れており、一文字に協力する。
ショッカー
- 蜂女:空気というか蝙蝠男の部屋で世間話してただけの怪人。
- コブラ男:TV版よりずっとコブラっぽい外見で、改造手術前から蛇姫と付き合っているリア獣。廃液を垂れ流しにする工場の用心棒。首が伸びる。
- 蛇姫メドウサ:漫画オリジナル怪人。全身タイツに頭から機械の蛇が生えた女性の姿をしている。頭からは毒針やビームを発射する。
- ショッカー戦闘員:TV版に輪をかけてダサい。漫画版では旧1号期のショッカー戦闘員やデルザー軍団戦闘員のように上官の怪人ごとに戦闘員が区別されているために、上官の怪人ごとに衣装が異なる。
- ショッカーライダー:本郷を始末するために創り出された12人のバッタ型改造人間。一撃でライダーを倒すほどの威力の光線銃で武装している。
- カニ男(クラブマン):漫画オリジナル怪人。両腕の巨大なハサミ、口からの泡、小型ジェット噴射による飛行など多彩な武器を持つが、2号に苦戦し、首領の命令で基地ごと自爆する。
- 毒蛾男:女性秘書に変装して『日ノ下電子』へ侵入。「ショッカーから脱走した」という作り話で隼人に接近して暗殺を企んだ。武器は改造人間をも眠らせる鱗粉と鋭い口吻。
- ジャガーマン:TV版と違い黒豹そのままの姿。2号ライダーを圧倒するスピードと攻撃力で追い詰める。
- ビッグマシン:ショッカーの日本征服作戦「10月計画(オクトーバープロジェクト)」の総指揮を行っていた怪人。機械を狂わせる超音波を放つ能力を有する。
- ショッカー首領:ショッカーの支配者。部下からはただ単に「ボス」、あるいは「ゴットショッカー」と呼ばれている。基本冷酷な性格ではあるが、改造人間自体が貴重(莫大な金がかかっているのだぞ、などと言っている)である為、寛大な処置を施すことが多い大物。十面鬼ゴルゴスは彼の爪の垢を煎じて飲むべきだ。なお、TV版同様声のみで怪人や配下の者たちに指令を下しており、作品自体も途中で終わってしまった為、後に『仮面ライダーEVE』で語られるまでは、その正体は謎に包まれていた。
上記以外にも、名称不明のイソギンチャクの怪人やエビ怪人(一文字曰くエビの化け物)、終盤には劇画調のTV版の怪人(プラノドン、ナメクジラ、ハエ男等)の他ケンタウルスまで登場する。
また、基地のモニター画面にはアマゾニア、クラゲダール、ドクダリアン、カニバブラー、ガマギラー、ドクガンダー(成虫)、ヤモゲラス、地獄サンダー、エイキングが映っている。
この他にも殺し屋や牧場の管理人など怪人ではない構成員も存在する。
その他
- 総理大臣:その名の通りでどこかで見たことのある風貌。常に平和を謳っているが、それをテレビで見ていた隼人はつまらないものと失笑する。実は「10月計画(オクトーバープロジェクト)」の本来の発案者で、最終的にはそれが発覚して野党議員に糾弾されてもちっとも反省していなかった。その様子を入院先のテレビで見ていた滝二郎は怒り心頭で花瓶をテレビに投げつけた。
1999年12月3日に日立マクセルから販売された。
原作漫画に編集を施し、台詞に声を当てたもの(一部シーンでは吹き出しにない台詞にも声が当てられている)。
「怪奇蜘蛛男」、「13人の仮面ライダー」、「仮面の世界」の3話と藤岡弘、へのインタビュー映像が収録されており、他のエピソードはダイジェスト形式で紹介されている。
1979年に石ノ森章太郎氏は「絵コンテ漫画 仮面ライダー」と題してもう一つの仮面ライダーサーガを描いている(現在は「仮面ライダーアマゾン」完全版に収録)。
漫画と絵コンテをミックスしたような映画のメイキング風の作品であり、その内容とは記憶を失った風谷光二という男が、TVで放送されている「仮面ライダー」を見て自分がかつて南米でショッカーのブロッケンハイムという科学者に改造された事を思い出し、1号/2号そっくりの仮面ライダーとして戦うという物語。勿論、サイクロン号も登場する。
風谷は眉村洋子から自分がかつて眉村達也博士の助手であり、彼と共に古代科学研究のために向かった先の南米で、ブロッケンハイム博士の調査隊に合流してから、眉村博士が死亡扱いとなった事を知らされる。しかし、博士は本当は生きており、「重力制御装置」を開発した組織の関係者であった事が明らかとなる。
なお、ショッカーの目的の一つが「人口の調整」となっているが、これは『仮面ライダー(新)』のネオショッカーと同じである。
なお、本作の仮面ライダーには正式名称はなく、作中でも「仮面ライダー」の名前しか出てこないのでファンからは「風谷ライダー」とも呼ばれている。
- 『仮面ライダーSPIRITS』:ストロンガーとコマンダー軍団との戦いが、「雨の中」「正義のライダーと悪のライダー12人が戦い」「悪のライダーの一人は正義の心を取り戻す」という本作に酷似した展開になっている。また、本郷や一文字の感情が昂ぶると顔に手術跡が浮かび上がるという本作の設定がそのまま取り入れられたりもしている。
- 『仮面ライダー龍騎』:13人の仮面ライダーのバトルロワイヤル。
- 『仮面ライダーW』:脳髄だけになった本郷が一文字と感覚を共有してサポートするという設定は「2人で1人の仮面ライダー」の元祖と言われている。また、左翔太郎が単独変身する仮面ライダージョーカーは、変身の際に顔に手術跡のような文様が浮かぶ演出が入る(『仮面ライダーキバ』のキバの鎧にも同様の描写がある)。
- 『仮面ライダーOOO』:鴻上ファウンデーションの製作した映画「仮面ライダーオーズ対ショッカー」に漫画版(並びにそれを原作とした「仮面ライダー THE FIRST」)の要素が多く取り入れられている。
- 『スーパーヒーロー大戦』:ビッグマシンという名前の巨大ロボが登場。
- 『仮面ライダードライブ』:下級ロイミュードのモチーフがそれぞれ蜘蛛、蝙蝠、コブラになっている。
- 『スーパーヒーロー大戦GP』:ライダータウンの設定が一部漫画版の本郷家の設定に酷似している。
- 『仮面ライダービルド』:物語の根幹に関わる敵のフルボトルがそれぞれコウモリ、コブラ、クモ。
- 『仮面ライダーゼロワン』:不破諫が変身する仮面ライダーバルカンは、変身の際に顔に手術跡のような文様が浮かぶ演出が入る。
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