概要
この小説は、“もし藤岡弘、が事故に遭わず、仮面ライダーは本郷猛ただひとりだったら”というコンセプトで書かれている。
しかし、ショッカーの設定などを始めとしてオリジナルの設定が多く、「小説版仮面ライダー」という独立した作品となっている。
経緯
元々は五部作の予定で、本郷猛が改造される「誕生 1971」から1975まで構想されていたが、出版社での諸事情により「希望 1972」で一度打ち切りになっていた。
2009年に講談社からエンターブレインに移って完結編「流星 1973」が書かれ、「仮面ライダー1971-1973」として前2作と併せて収録された。
主な登場人物
仮面ライダー側
・本郷猛(小説版)/【仮面ライダー】
「ただ生きたいと願う魂を守る。自分の使命はそれだけだ」
本作の主人公。
明晰な頭脳と高い戦闘能力を併せ持ち、改造人間としてトップクラスの強さを誇る。
「流星 1973」では今までの度重なる戦闘から脳が変容を続け、最早ヒトではなくなっているということが語られている。
未来永劫ただひとりの【仮面ライダー】。
・ハヤト/【仮面ライダー】
「未来は、いい世界になってるだろう。……そうだよな」
「誕生 1971」で登場。
本郷を助け出し、改造人間の能力や、バイクの乗り方も教えた。
自身も改造人間であるが、改造に失敗していたため寿命は残り僅かだった。
最後は暴走した本郷を文字通り身体を張って止め、【仮面ライダー】の名と普段から首に巻いていたお気に入りのマフラーを授け、永遠の眠りについた。
名前から分かる通り、原作の一文字隼人に当たる人物。
・【弐番】/滝和也
「大した名前じゃないが……聞きたいなら、教えるよ」
「誕生 1971」から登場。
原作のようにFBIの人間ではなく、【アンチショッカー同盟】のコマンドになっている。
当初は名前が明かされなかったが、「希望 1972」の後半で明かされた。
「流星 1973」では、原作の相棒のようなやり取りを見せてくれる。
因みに著者は元々、【弐番】を滝和也とは考えていなかったらしい。
「……ありがとう、ありがとう、ありがとう」
「希望 1972」から登場。
その名の通り、みんなが知るおやじさんである。
ただ、緑川グループに関わる人間という設定から、原作とは多少違いがある。
「希望 1972」の後半で、死を覚悟した本郷を救っている。
・緑川ルリ子
「私は【ショッカー】と戦います」
「希望 1972」から登場。
聡明な人物であり、【ショッカー】から狙われている事実を受け止め、敢えて【ショッカー】と戦うことを選んでいる。
ショッカー
・楠木美代子
「本郷猛、あなたを愛しています!」
【ショッカー】の腕利きエージェント。蛇姫と言う改造人間らしいが怪人形態は無い。
本郷猛を改造人間にするため、拉致の中心的な役割を果たした。人生を変えた仇敵ともいえる。
しかし、「希望 1972」の終盤、【ショッカー】と戦おうと決意したルリ子に心惹かれ、緑川グループに移る。
性格は上記の台詞にもあるように、少しヤンデレ気味である。
モチーフは漫画版に登場するショッカーの女性怪人へび姫メドウサである。
・【大使】
「……『素晴らしき哉、人生!』」
【ショッカー】の最高幹部のひとり。表の顔は代議士秘書。
原作の地獄大使に当たる人物であるが、改造人間であるかは不明。
口の中を覗き込めば「地獄が見える」と揶揄されるほどの「悪意の天才」。本名は田中一郎。
その双子の弟である田中二郎は【アンチショッカー同盟】の幹部であり、地獄大使と暗闇大使の関係を思わせる。
・【大佐】
「走れ、本郷猛」
箱根にある【ショッカー】日本支部の支部長。フルネームはフランツ・フェルディナンド。
「誕生 1971」に登場し、最後は改造人間の姿【狼男】に変身し、【仮面ライダー】に倒される。
原作におけるゾル大佐に相当する人物だが、ヒトラーユーゲント出身とされている。
・【博士】
「我々は科学者だ。前進せねばならない」
【ショッカー】が誇る頭脳。原作の死神博士に当たる人物。
最新のコンピューターにも勝るほどの情報処理能力を持つ一方で、あらゆる免疫がなく、特別な液体で満たされた水槽の中以外では生きられない。白くやせ細った手足はイカに例えられている。その能力は超能力によるものであった。
・御子柴徹
【ショッカー】の科学者で、【博士】の片腕ともいえる人物、かつ彼の信奉者。
【博士】に心酔しており、彼の命とあれば組織に反旗を翻すようなこともためらわずに行う。
・【将軍】
【ショッカー】の幹部で、【大佐】の死後、暫定的にその地位にあった【大使】の後に正式な支部長となった。
原典におけるブラック将軍同様、ロシア革命を生き延びた設定であり、相当に高齢の人物。
・【彼】
ショッカーの怪人達
・蜘蛛男
兵隊クラスの怪人。走行している自動車を絡め取って動けなくするほどの強力な糸を吐く。本郷を逃がそうとした緑川博士を殺した張本人であり仮面ライダーの初の対戦相手。
原作の蜘蛛男に当たる。
・蟷螂男
本名は石渡昭と言い青葉ヶ丘第三小学校の理科教諭だが実は凶悪な殺人犯で253人を殺害した。その高い知能と残虐性を買われ、ショッカーにスカウトされ、怪人となって趣味の快楽殺人を続ける。
原作のかまきり男に相当する。
・蝙蝠男
美代子に仕える怪人。飛行能力を持ち、美代子や対象人物の上空を人知れず旋回して監視を行う。
テレビ版の蝙蝠男に相当。
・人間カメレオン
美代子に仕える怪人。仮面ライダーでも感知できないくらいの隠蔽能力を持つが戦闘力は低い。
テレビ版に登場する死神カメレオンに相当する怪人。
・蜂女
ショッカーの中でも完全な飛行能力を持っているが、その能力と引き替えに身体そのものは脆弱で格闘能力は低く、体内で生成する一撃必殺の毒針を武器とする。
テレビ版の蜂女に相当する。
・モスキート
機動性特化の暗殺用怪人。本名は里村新一。戦闘力は決して高くないもののライダーとの戦いを極力避けつつ、確実に標的を始末する狡猾な戦い方をしており、そのやり口により本郷は挫折寸前に追い込まれた。
テレビ版に登場する怪人モスキラスが基である模様。
・カミキリ男
復元されたS.M.R.のデータを反映して作られた、対仮面ライダー用怪人。
モチーフはカミキリキッドと思われる。
・ミミズ男
ショッカーの戦闘員で多数存在する。ここの能力は低いが高い生命力と物量で相手を苦しめる。
テレビ版に登場したミミズ男に相当するがこちらは沢山いる戦闘員である。
・コンドル男
飛行能力を持った怪人。
テレビ版のゲバコンドルに当たる。
・蟹男
水陸両用型の改造人間。頑強なプラスチックアーマーを持つ。
・浜岡正午/〈G素体〉
ショッカーの箱根基地が襲撃された際に脱走した改造人間。新型特殊細胞の実験体で、接触した生物を吸収・合成・再生する能力を持ち、蝙蝠男と蟹男を取り込み蟹と蝙蝠の合成怪人となった。
この組み合わせから見てテレビ版に登場したゲルショッカー怪人ガニコウモルが基になっている。
・大蟻男
大量にいる戦闘員怪人。戦闘力はやや低め。
テレビ版にはアリキメデスと言う蟻の怪人がいるのだが多数いる蟻の改造人間と言う点は『仮面ライダー(新)』に登場するネオショッカーの戦闘員アリコマンドに近い。
・Dチーム
新型の強化服と武器を装備した新型改造人間の部隊。
マシンガンを装備した蛇男と滑空砲を装備したゾウガメ男からなる中距離支援チーム〈バレッツ〉。電磁槍を装備した蝎男と二振りの刀を持つ毒蜘蛛男、巨大な鉈状の超硬合金製ギロチンを持った蜥蜴男からなる接近戦専門チーム〈スラッシャーズ〉と言うチームが存在する
またドリルを持ったモグラ男と火炎放射器を装備したサイ男もいる。
デストロンの機械合成怪人に相当する。ちなみにデストロンのシンボルマークはサソリである。
・カンガルー男
【将軍】によるテラーマシン計画の候補らしい。
恐らくは奇械人ガンガルに相当する。
その他
・【アポロ】
【ショッカー】の上位に位置する、【GOD機関】から出向した男。
改造人間ではないが、ヒトの能力を遥かに超えており、【マイス】と呼ばれる。その能力は本郷を圧倒するほど。
原典シリーズにおけるアポロガイストに相当する存在だが、外見の描写はサイボーグ009に登場するアポロンが近い。
・美咲百合子
【ショッカー】から「芽」と呼ばれている超能力者集団のメンバー。後に【少女結社サクラ】を結成する。
原点シリーズにおける岬ユリ子に相当する人物で本作では改造人間ではなく超能力者。
The present day
エピローグ。
2009年に時代は移るが、そこでも、漆黒の強化服に飛蝗を模した仮面を着け、赤いマフラーを巻き、腰に【三連タイフーン】を装備して【サイクロン13】を駆る、あの戦士の姿があった。
おまえは走る。仮面ライダー。その名前と、ともに
関連タグ
講談社キャラクター文庫:後に小説仮面ライダーシリーズを発売したレーベル。扱われている作品はすべて平成ライダーである。