旧1号
きゅういちごう
仮面ライダー1号のバリエーションの一つ。
物語上最初に登場した際の姿であり、TVシリーズのうち第1クール(第1話 - 第13話)と、第40,41,49,51,52話に登場する。このうち第40話以降の少々カラーリングが異なる旧1号には初登場した場所にちなんでファンから「桜島1号」という愛称が付けられており、第1クールに登場したものを特に「旧1号」と呼んで区別することも多く、本項でも第1クールのものについて記載する。
サスペンスホラーに重きを置いていたTVシリーズ初期の作風を反映してか、濃紺のヘルメットに灰色のクラッシャー(口元のパーツ)、ピンク色の目(赤目のマスクも存在)、青緑色のコンバーターラングとグローブ&ブーツと、全体的に彩度が抑えられたカラーリングも相まって、後の基本形態となる新1号とは趣を異とする出で立ちをしている。
本作が世に出るまで、特撮ヒーローと言えば月光仮面やマグマ大使、それにウルトラマンなどのように、白や銀色、金色などの明るい色合いの出で立ちが多かったのに対し、仮面ライダー(旧1号)はそれらとは一線を画した、どちらかと言えばダークな雰囲気を醸し出す存在であった。
このダークな雰囲気は、没案の「スカルマン」「クロスファイヤー」も黒が基調であったことからも窺えるように、企画段階から既に強調されていたものでもあり、最終的に仮面ライダーのモチーフとされたバッタ自体も、保護色を使う生物であるため黒っぽい色をしているという特徴を持っていた。デザインを手掛けた石ノ森章太郎は、あえて「気持ち悪い」「異形の」ヒーローを描きたかったらしく、バッタを最終的なモチーフとしたのも、その顔つきが微妙にドクロに似ていたからであると述べている。
後に1号に代わって登場する仮面ライダー2号(旧2号)のカラーリングも概ね旧1号に準じているが、マスクはクラッシャーと中央の縦線の色が銀、さらに両腕と両脚に1本ずつ太い銀ラインが入り、ベルト帯の色が赤(旧1号は白)という点で差異が付けられている。また、制作上の都合によりカラーリングも必ずしも一定している訳ではなく、話数によってその細部にも微妙な変化が存在し、後に登場する桜島1号もその延長線上の存在である。
劇場版での桜島1号や後発のライダー達の多くとは異なり、変身には「ベルトの風車ダイナモに風圧を受ける」というプロセスを要する。これにより発生した風力エネルギーが体内の超小型原子炉を起動させ、さらにエネルギーが人工筋肉の内部を通ることで肉体が変化し、最後にマスクが着装されることで変身が完了する。
風圧を受ける際は、主にサイクロン号で疾走しながら向かい風を受けるという方法を取るが、それ以外にも爆弾が炸裂した際の爆風や、高所から飛び降りた際の風圧を利用するなど、状況に応じて異なる方法も用いられている。要するに風ならなんでもいいとも言えるが、変身が必要なタイミングでそう都合よく強風が吹いているとは限らないため、状況によっては変身できなかったり、またショッカーの側もその点を突いて変身を阻害しようとしたこともある。
ライダーの姿では常人の十数倍の体力を持ち、15.3mの高さまでジャンプできる。また、複眼型カメラアイ「C(キャット)アイ」は常人の3倍もの視力と広い視界を有し、赤外線による暗視能力やズーム機能も兼ね備えている。この他にも超聴力器、超触覚アンテナといった部位は、いずれも周囲4kmの音や電波を感知し、額のOシグナルも半径100m以内の怪人に鋭敏に反応するなど、感覚的な部分でも人間を遥かに凌ぐ性能を発揮する。
必殺技のライダーキックは岩をも楽々と砕く破壊力を持ち、幾多の怪人を葬ってきた。
他にもはさみ蹴り「ライダーシザース」、一発で直径10㎝の金属棒をへし折る威力を持つ「ライダーチョップ」(講談社『キャラクター大全 仮面ライダー 1号・2号編』より)、必殺の鉄拳を叩きこむ「ライダーパンチ」、相手を掴んで飛び上がり地面に叩きつける「ライダー返し」など、数多くの必殺技を持つ。
基本スタイルは徒手空拳だが、戦闘中に戦闘員の武器を奪って使用するなど、状況に応じた柔軟な戦い方を見せることもある。
マスクは上部がFRP製、クラッシャー部分がラテックス製で、襟足からは着用者の髪の毛が出ているなど、この点においても「仮面のヒーロー」であることが強調されている。Cアイは前述の通りピンク色であるが、これは特に塗料によって着色したものではなく、当時使用されていた透明ポリエステルが厚みが増すことで赤みを帯びる性質を持っていたことに起因するものである。
スーツには当初鹿革が使用されており、後にアクションに不向きとのことでビニールレザー、もしくは本皮を使用したものへと改められている。
前述の通り、物語の導入部となる「旧1号編」は怪奇色が強く、出血などのグロテスクな描写も多かった。また、怪人が倒される際に爆発するのはコブラ男以降であり、それ以前は溶けるなどして消滅することが多かった。これは本作に対する制作費が安かったというのもあり、チープさを補うためにスリリングな映像美とシナリオの巧みさが求められたことに因るものである。
放送当時は既に第一次怪獣ブームが過ぎ去っていたこともあり、特撮に子供たちを引き付けるにはさまざまな工夫が求められた。ライダーがストレートに「今だ!ライダーキーック!!」などと叫んでいたのも、視聴者に技の名前を覚えてもらうためだったとする説があるほどである。
一方で、怪奇色を前面に出すべく暗いシーンが多くなったことは、全体的に暗めのカラーリングであった旧1号が画面の暗さにまぎれてしまうという、思わぬ難点も浮き彫りにする結果となった。さらに、第10話の撮影中に本郷猛役の藤岡弘が事故で重傷を負ったことから、第9話以降の放送分については、既存の本郷の映像を継ぎ接ぎするとともに、声の吹き替えを納谷六朗が担当(※)するという、苦肉の策でしのぐことを余儀なくされた。
最終的に、本郷は「一文字隼人救出後に彼に日本の守りを任せて渡欧した」という形で、第1クールの終了と同時に物語からも一時的に姿を消し、一文字が変身する新たなる主役・仮面ライダー2号の到来を迎えることとなる。そして旧1号も桜島1号へのマイナーチェンジや、藤岡の本格的な復帰を経て、明るい配色に変更された新1号へと移行したのである。
(※ ショッカー首領役の納谷悟朗の実弟としても知られる六朗であるが、キャスティングした録音演出の太田克己は、このことを知らずにキャスティングしたことを後に証言している。また六朗は後年のインタビューにて、「アクション作品の事故でアフレコの代役というのも珍しくなかった」「藤岡さんの芝居は自分に似ていたので、クセが掴みやすくスマートにアテられた」と、出演当時を振り返っている)
昭和ライダー 本郷猛 立花藤兵衛 滝和也 緑川ルリ子 仮面ライダーSPIRITS
仮面ライダーTHEFIRST:2005年公開の映画作品。本作のリブート版に当たり、作中に登場する仮面ライダー1号も、旧1号のスタイルをブラッシュアップしたものとなっている。
仮面ライダー大戦:2014年公開の映画作品。本作からも仮面ライダー1号と2号が登場しているが、クライマックスでは変身時に一瞬だけ旧1号の姿が現れるという演出が盛り込まれている。
スーパーヒーロー戦記:2021年公開の映画作品。TVシリーズ以来となる、旧1号の姿での活躍が描かれている。
仮面ライダー1型:『仮面ライダーゼロワン』に登場するヒーローの一人。同作に登場する仮面ライダーの原点とも言える存在であることから、カラーリングも旧1号のそれに寄せたものとなっている。