概要
手塚治虫が『少年画報』に1965年5月号から1967年8月号まで連載した漫画およびその主人公。
地球征服を狙う宇宙の帝王ゴアに対抗するために、地球の創造主アースが作り出したロケット人間「マグマ大使」がゴアと戦う物語でバラエティに富んだ内容となっており、純粋な娯楽作品となっている。
作品だけでなく主題歌も非常に有名であり、一度は聞いたことがあるという人も多いだろう。
……と、いうかアース製薬(特にアースノーマット)のCMソングに採用された事もあるので、そちらの替え歌バージョンで憶えてしまっている人もいたりするかもしれない。
映像化
1966年、『ウルトラマン』(円谷プロ)に先駆け国内初のカラー放送特撮ドラマとしてピープロダクション(ピープロ)によって映像化された。
円谷プロの特撮番組の視聴率の高さに危機感を持ったフジテレビが自社の特撮ドラマを企画し、東急エージェンシーを通じてピープロに制作が依頼され、ピープロ社長のうしおそうじ(=鷺巣富雄)は親交のあった手塚に直談判し、『マグマ大使』のドラマ化を実現させた。
手塚にとって松崎プロが制作した実写版『鉄腕アトム』(1959年)のクオリティの低さ(それでいて高視聴率)は黒歴史となっており特撮を毛嫌いしていたが、うしおを信用して全て任せる事となった。
放映開始までのスケジュールがあまりにも切羽詰まっており、第一話はシナリオを書く余裕すらなく『マグマ大使』の漫画がそのまま絵コンテとして使用される程で、親交のあった円谷英二は自分の『ウルトラマン』そっちのけで『マグマ大使』の心配ばかりしていた(『マグマ大使』はどうにか全52話の撮影を乗り切る事ができたが、『ウルトラマン』は4ヶ月前から撮り貯めしていたにもかかわらず放映に追いつかれ39話で打ち切り)。
番組は日本特撮史に残る傑作となり、手塚も「予算とスケジュールが厳しい中、よくぞここまで作って下さいました」と褒め称えた。これによって特撮への偏見が消えた手塚は80年代に再びアトムの実写化を構想したという。
本作と『ウルトラマン』によって第一次怪獣ブームが巻き起こり、日本特撮にとっても一つの岐路となった。
本作の特徴は、4話完結で1体(或いは2体タッグ)の怪獣と戦う、ヒネリを効かせたストーリーである。
しかし、怪獣との戦闘が間延びするため、終盤は2話完結となった。
登場人物
地球を守るためにアース様によって作られたロケット人間(ロケット型知的生命体)。
体は金色で、身長7m、体重5t。特撮版ではゴアの手下の怪獣が現れた際には巨大化変身して闘った。
ロケットに変身した時には、マッハ11で空を飛ぶ(漫画版ではそのレベルではない超スピード飛行)。
腕は振り回すことでジェット気流を巻き起こし、腹からはミサイルを発射。頭の特徴的なアンテナからは熱線を放つ。
後述の超音波笛を三回鳴らせば呼び出せる。村上一家に出会ったことで「家族」の概念を知り、息子のガムをアース様に頼んで作ってもらった。
マグマの妻。人間の女性と同じ大きさのロケット人間。超音波笛を二回鳴らせば呼び出せる。戦闘ではスイムキャップ風のフードを装着。
- ガム
マグマの息子。村上マモルをモデルにつくられたロケット人間の少年。超音波笛を一回鳴らせば呼び出せる。両親と同じく飛行形態(ロケット)に変形出来、両親とは異なりコクピットを備えており人間を乗せることができる。武器は頭のアンテナから出す熱線。マモルとは兄弟のように仲が良く、マグマ一家の中で真っ先にマモルに呼ばれる事が多かった。
- アース様
地球の創造主。人間の前には老人の姿で現れる。動物を創造した神ではあるが、自然発生した植物と植物由来の人間モドキには全能ではなく、ゴアに対抗するためマグマ大使を作り出した。
宇宙の彼方オリンポス星には上司の神々も住んでいるらしい。
- 村上マモル
正義感の強い少年。冒頭でゴアの脅威と出会う。マグマ大使とアース様に助けられ、マグマ一家を呼び出す超音波笛を託される。こうして、マグマ一家と村上一家はゴアとの戦いを始める。
「マグマ大使〜!」♪ピポロパピ〜、ピポロパピ〜、ピポロパピ〜
- 村上厚
NPIの報道記者。息子マモルと共にゴアと出会う。報道を通して人類降伏を迫られていたが、むしろ持ち前の正義感で徹底抗戦を宣言。熱演したのは岡田真澄。
- 村上友子
マモルの母で専業主婦。ゴアの諜報員とすり替えられた為、暫くは行方不明になってしまう。
自称「宇宙の帝王」で数多くの星を征服している。次のターゲットとして地球を狙い、円盤に乗ってやってきた。様々な特殊能力を持つ怪獣を送り込んでくる。
- 怪獣
本作の怪獣は、ゴア円盤の中では人間体に変身してゴアと話す者も登場する。
- 人間モドキ
ゴアの配下として活動する戦闘員。植物由来の人間型生命体で、人間の姿をコピーして成り代わり、人間社会に潜伏したり出来る。ゴアは人間モドキを量産しての地球支配を目論むが、後に細菌兵器で一掃された。
- 国際緊急出動隊(国際スクランブル)
ゴアの脅威に対抗する為に作中で結成される、いわゆる地球防衛軍。設立には村上記者も携わっている。
各話リスト
話数 | サブタイトル | 登場怪獣 |
---|---|---|
第1話 | わたしがゴアだ | 大恐竜 |
第2話 | 宇宙怪獣モグネス襲来す | モグネス |
第3話 | ガム!モグネスを倒せ! | モグネス |
第4話 | 危機一髪 東京! | モグネス |
第5話 | 怪獣バドラ誕生す | バドラ |
第6話 | マグマ大使対バドラ | バドラ、アラン星人チクル |
第7話 | 危うし!マグマ大使 | バドラ、アラン星人チクル |
第8話 | バドラの最後 | バドラ、アラン星人チクル |
第9話 | 謎の空飛ぶ円盤 | フレニックス、ルゴース2号 |
第10話 | 音波怪獣フレニックス | フレニックス、ルゴース2号 |
第11話 | 人間モドキを倒せ! | フレニックス、ルゴース2号 |
第12話 | 怪獣フレニックス最後の日 | フレニックス、ルゴース2号 |
第13話 | 最後の遊星人 | アロン、パル遊星人リーザス、ルゴース3号 |
第14話 | ドクロ島 | アロン、パル遊星人リーザス、ルゴース3号 |
第15話 | 怪獣アロンを撃て! | アロン、パル遊星人リーザス、ルゴース3号 |
第16話 | 地球最後の日 | アロン、パル遊星人リーザス、ルゴース3号 |
第17話 | ガレオン地球を攻撃せよ! | ガレオン |
第18話 | 生き人形の怪 | ドロックス、ガレオン |
第19話 | バランゴ作戦 | ドロックス、ガレオン |
第20話 | 死斗 二大怪獣 | ドロックス、ガレオン |
第21話 | 細菌を追え! | ストップゴン、スペクター |
第22話 | あの宇宙ロケットを停めろ!! | ストップゴン、スペクター |
第23話 | 怒る怪獣ストップゴン | ストップゴン、スペクター |
第24話 | 地球人反撃せよ!! | ストップゴン、スペクター |
第25話 | 悪魔からのクリスマスプレゼント | ダコーダ、ミクロン人間 |
第26話 | 冷凍作戦完了す | ダコーダ、ミクロン人間、サルタン、巨人人間 |
第27話 | 裏切り者サルタンを殺せ | ダコーダ、ミクロン人間、巨人人間、サルタン |
第28話 | 怪獣ダコーダの最期 | ダコーダ、ミクロン人間、巨人人間、サルタン |
第29話 | マグマ大使と自由の女神 | テラバーデン、ザムザ人間 |
第30話 | 怪獣テラバーデン対スクランブル | テラバーデン、ザムザ人間 |
第31話 | ゴアの魔手から地球を守れ! | テラバーデン、ザムザ人間 |
第32話 | 大涌谷の決斗 | ゼウス、テラバーデン |
第33話 | 恐怖の怪虫ピドラ | ピドラ |
第34話 | 迫る魔の手 宇宙植物ネスギラス | ネスギラス、ピドラ |
第35話 | 危うし!マグマ基地 | ネスギラス、ピドラ |
第36話 | 地球を救え! | ネスギラス、ピドラ |
第37話 | 狂人と水爆 毒ガス怪獣サソギラス登場 | サソギラス、バラモン |
第38話 | 水爆を探せ!さらば!毒ガス怪獣サソギラス | サソギラス、バラモン |
第39話 | 怪獣グラニヤただ今出現 | サソギラス、バラモン、グラニア |
第40話 | 急げ!マグマ大使 くたばれ水爆怪獣グラニア | グラニア、バラモン |
第41話 | 幻し怪獣バルザスの猛襲 | バルザス |
第42話 | マグマ大使とバルザスの激斗 | バルザス |
第43話 | マグネット怪獣ジギラ現る! | ジギラ、ガベル |
第44話 | マグマの使命 | ジギラ、ガベル |
第45話 | 日光に現れた海坊主の謎 | 海坊主 |
第46話 | 怨霊怪獣海坊主対マグマ大使 | 海坊主 |
第47話 | 電波怪獣カニックス新宿に出現! | カニックス |
第48話 | 東照宮の危機!電波怪獣カニックス大あばれ | カニックス |
第49話 | 再生怪獣キンドラ出現! | キンドラ |
第50話 | くたばれ!宇宙カビ怪獣キンドラ | キンドラ |
第51話 | 宇宙怪獣ゴアゴンゴン襲来す! | ゴアゴンゴン、ロボットオウム |
第52話(最終話) | 宇宙の帝王ゴア対マグマ大使最後の戦い | ゴアゴンゴン |
関連タグ
ビッグX:本作と同じく巨大ヒーローが登場する手塚作品(うしおに『マグマ大使』と共に制作権を提示された。外れた後には、1964年にトムス・エンタテインメントの前身組織・東京ムービーによってアニメ化された)。
獅子王凱:初期のイメージソースとして大使をモデルとする。
グランディア:敵キャラとして登場するマグまじんが、このマグマ大使にそっくりである。