概要
週刊少年マガジン(講談社)にて、1974年から1978年にかけて連載された。
古代の人類「三つ目族」の末裔写楽保介が、親友の和登千代子と一緒に様々なオカルト事件を解決していく伝奇SF作品。
ストーリーの魅力として、現存する遺跡の謎を手塚治虫独自の発想にて写楽に謎解きをさせていくというところがある。既に失われた文明が残した謎の遺跡に写楽が挑み、その全貌を解明する。
同時に「盛者必衰」の摂理も裏テーマとして扱っており、「古代超文明の末路はいずれ現代社会にも訪れ得る」ことを暗に示すエピソードは多い。
またそれらを通じて、人間の傲慢さと相対する信愛の念が起こす人間模様も端々に描いており、単なるオカルト冒険漫画では括れない、闇と光の入り混じる「手塚ワールド」らしい奥行を与えている。
ブラック・ジャックと同時期に連載され、少年漫画と言う戦場での手塚治虫完全復活を印象付けた作品。第一回講談社漫画賞をブラック・ジャックと同時受賞している。
また、W3事件以降疎遠になっていた手塚と講談社の関係修復のきっかけになった作品でもある。
後世の作品に与えた影響
本作を語る上で欠かせないのが主人公・写楽とヒロイン・和登さんのキャラ造形が後世に与えた影響である。
まず和登さんはいわずもがな、ボーイッシュな「ボクっ子ヒロイン」のトレンドの起源と呼べるキャラであり、彼女が人気を博して以降、この種のヒロインが爆発的に増え、定着して現在に至っている。
そして主人公・写楽は「大人しくて善良なキャラが、何かのトリガーで正反対の荒々しいダークヒーローとなって大活躍する」というキャラ造形の起源と呼べる。
モチーフにしたと明言されている、またはモチーフにしたと思われるキャラは、有名どころだけでも『BASTARD!!』の主人公ダーク・シュナイダーや、『3×3EYES』のヒロイン「パイ・パールヴァティ―」、『遊☆戯☆王』の主人公武藤遊戯など幾人もおり、特に武藤遊戯は「チビの少年が、ダークヒーローモードになると額に第三の目(のシンボル)がつき、制服ジャケットをマントのように羽織る」など、キャラデザイン的にもはっきりオマージュキャラとなっている。
ストーリー
ある嵐の夜、犬持医師の許に1人の若い女性が訪れる。
彼女は自分の腕に抱えた赤ん坊、写楽保介を犬持に預かってほしいと頼み、その直後に犬持の前で雷に打たれて、死亡してしまう。
写楽の養父となることを決めた犬持だったが徐々に写楽の凄まじいまでの知能レベルの成長と額の真ん中にできた第三の眼に背筋の凍るものを覚え始める。日に日に過激になる写楽の悪戯に業を煮やした犬持はついに写楽の額の眼を絆創膏で塞いでしまう。
それ以来、写楽はまるで幼児そのものなり、以後、この絆創膏が外されることはなくなった。
それから月日がたち、中学生となった写楽はその無邪気さが災いして、いじめに遭い、クラスメートの和登千代子に助けてもらう日々が続いていたが不良グループに絆創膏をはがされたことで第三の眼を展開した写楽は天才的な頭脳で不良グループに逆襲し、和登は犬持から写楽の正体は古代に栄えた三つ目族の末裔であることを知らされる。
以降、三つ目の写楽は時に世界支配を目論む恐ろしさを見せながらも和登たちと共に超古代の様々な謎を解き明かしていく。
主な登場人物
- 写楽保介(CV:藤田淑子 / 伊倉一恵)
- 和登千代子(CV:高島雅羅 / 松井菜桜子)
- 犬持先生(CV:岸野一彦 / 嶋俊介)
- 須武田教授(CV:田中康郎)
- 雲名警部(CV:熊倉一雄 / 石塚運昇)
- ヒゲオヤジ(CV:八奈見乗児 / 緒方賢一)
アニメ
1985年8月25日に日本テレビ系列局にて、24時間テレビのプログラムのひとつとして、「悪魔島のプリンス 三つ目がとおる」というタイトルの単発作品として放送された。アニメーション製作は東映動画。
その後、1990年10月18日から1991年9月26日にかけて、テレビ東京系列局にて、連続アニメという形で放送された。こちらのアニメーション製作は手塚プロダクション。
日本テレビ版はイースター島航海編がベース。
テレビ東京版は当初は1話完結が主体だったが第3クールからは長編が主体となった。
最終章は原作の怪鳥モア編をベースとしたデビルコンツェルン編(以前からの話にも登場しており、最終章で正体が判明)を展開。
デビルコンツェルンの手で誕生したスーパーボルボックが写楽と和登に心動かされたことで人類にチャンスを与え、地球と一体化して、眠りにつく結末となった。
主題歌(テレビ東京版)
オープニングテーマ
『?のブーメラン』
作詞:青木久美子/作曲:小杉保夫/編曲:信田かずお/歌:徳垣とも子
エンディングテーマ
『ちょっと魔法でばんそうこ』
作詞:冬杜花代子/作曲:つのごうじ/編曲:信田かずお/歌:中島安名(コーラス:つのごうじ、ヤング・フレッシュ)
『FRIEND』(最終回用エンディング)
作詞:青木久美子/作曲:小杉保夫/編曲:牧野三朗/歌:CHIEMY
派生漫画作品
チャンピオンREDにて2016年11月号(9月中旬発売)から2018年5月号にかけて派生漫画作品「三つ目黙示録〜悪魔王子シャラク〜」が連載された。
メインキャラクター達は高校生になっており、1話目からお色気シーンやバイオレンスなシーンも連発している。
2020年にマイクロマガジン社による手塚治虫トリビュート企画「テヅコミ」において石田敦子の手により『三つ目がわらう』としてリメイクされた。
同様の企画によって石田が手がけた『HeiSei七色いんこ』同様、パラレルワールドとして石田の独自解釈がふんだんに盛られ「人間の悪意」をテーマとした作品となっている。