多足類
たそくるい
節足動物の大グループの1つ。分類学上は多足亜門という。ムカデとヤスデが一番よく知られている。
名前の通り沢山の脚を持つ。学名「Myriapoda」は「1万本の脚」という意味だが、脚が一番多い多足類は、653対1,306本の脚をもつ Eumillipes persephone というヤスデの1種である。
頭部は1対の触角と3対の顎を持つのが基本で、この点は昆虫とよく似ている。複眼が単眼や無眼に退化した種類がほとんどで(退化していないのはゲジだげ)、他の節足動物によくある頭部中央の単眼も存在しない。
胴部は同形の体節と脚の繰り返しで、昆虫や甲殻類に見られる胸部・腹部といった区分はない。
この様な同規的な体制は、節足動物の祖先の形に近いとも言われる。
体が長く伸びるものが多いが、フサヤスデやタマヤスデ、エダヒゲムシなどコンパクトな種類もいる。
全てが陸棲で気管で呼吸をし、多くが湿った環境を好む。食性はムカデでは肉食性だが、他のグループは主に腐植食性である。
また、陸棲動物が初登場したシルル紀の化石によると、多足類は地球史上初の陸棲動物である。
1万3,000以上の種が知られ、現生節足動物の4大亜門の中では最も少ない方である(むしろ残り3つのグループが数万~百万規模で破格すぎるというべきか)。
昆虫などの陸棲節足動物と同様、一般に「虫」と呼ばれる動物であるが、昆虫ではない。ただし昆虫などの六脚類によく似た頭部(1対の触角と3対の顎)と呼吸器官(気管)を持つので、かつては六脚類に近いと思われた。
しかし遺伝子分析によると、これらの共通点は他人の空似で、六脚類は甲殻類から派生したものである一方、多足類は系統的にそこから少し離れたグループであると判明した。
┗┳━多足類
┃ ┗┳━ムカデ
┃ ┗┳━コムカデ
┃ ┗┳━ヤスデ
┃ ┗━エダヒゲムシ
起源は謎で、今の系統関係から見ると昆虫や甲殻類とは別の海洋生物祖先から上陸したと解釈する方が合理的だが、明確な化石証拠は見つからない。カンブリア紀で既に出現した海棲節足動物ユーシカルシノイド類がその祖先に近い説があるが、口の細部以外多足類とはあんまり共通点がなく、初期の進化の様子が推測しにくい。
多足類の内部は4グループに分かれている。未だに議論もあるが、そのうちムカデは最も系統が古く、コムカデはその次で、ヤスデとエダヒゲムシはお互いに最も近いというのが通説である。