概要
古生代カンブリア紀に生息した節足動物の種類(属)の1つ。マレラ、マルレラともいう。学名「Marrella」は記載者(チャールズ・ウォルコット)の友人である古生物学者ジョン・マーから。
主にカナダのバージェス動物群に属する1種「Marrella splendens(マーレラ・スプレンデンス)」の化石によって知られるが、中国からも同属の未命名化石がわずかに発見される。
化石の多さ(1万を超える)と保存状態の良さに恵まれて、完全度の高い立体復元が可能になった。
特徴
頭部は四辺形で大きく、心臓と胃が格納される。目を持たず、左右と上方から後ろに湾曲した4本の大きな角が体の末端近くまで長く伸びる。角の下からそれぞれ1対の触角と、オールのような平たい肢が生えている。
メイン画像のように、左右の角が顕微構造により虹色の構造色を反射する説があったが、その顕微構造とされた部分はただの内部構造の見間違いで、すなわち構造色はなかったという可能性もある。
重武装な頭部に対して胴部は貧弱で、20前後の体節ごとに羽毛状の鰓が付いた華奢な脚が生えて、後方ほど小さくなる。
独特な姿をしているが、体長最大でも2.5cmで小さく目立たない。
脚で海中のプランクトンなどを集めて食べる同時に、鰓で呼吸したと考えられる。移動はゲンゴロウやマツモムシのように、オール状の肢で前後に羽ばたいて泳いだと推測される。
分類
最初は甲殻類と考えられたが、後に「マルレロモルフ類」という、どの現生節足動物にも属さない独特なグループに分類されるようになった。
マルレロモルフ類はカンブリア紀のマーレラの他に、オルドビス紀のフルカ(Furca)、シルル紀のキシロコリス(Xylokorys)、およびデボン紀のミメタスター(Mimetaster)とヴァコシニア(Vachonisia)なども含まれる。その中でフルカとミメタスターの系統がマーレラに近いと考えられる。
なお、このマルレロモルフ類の他の節足動物との類縁関係は不明確である。ぱっと見ては三葉虫などの類(アーティオポダ類)を彷彿とさせるが、基本体制は根本的に異なり、近縁として考えられにくい。(頭部の肢は特化が進みアーティオポダ類と似ておらず、胴部にアーティオポダ類のように出張った甲羅もない。)