概要
北アメリカのロッキー山脈のカナダ側(ブリティッシュコロンビア州の一角)にある化石産地、「バージェス頁岩 (けつがん)」(Burgess Shale)の中から化石が発見されたカンブリア紀の古生物、動物たちのこと。アノマロカリスやオパビニア、ハルキゲニアが有名。
年代は、カンブリア紀を迎え動物が爆発的な進化をした(カンブリア爆発)のしばらく後、約5億1,000万~5億500万年前(カンブリア紀中期)である。
嫌気性の高い粘土状態で急速に化石となったらしく、硬い殻や骨格だけでなく、柔らかい部分まで良好な状態で保存され、体の組織が隅々まで観察できる。そのため通常は残らない柔らかい動物の化石まで綺麗に残っていて、注目された。
発見当初の20世紀初期では、これらは現生の動物とは若干異なる程度だけの原始的な仲間(例えば節足動物っぽいものなら甲殻類、ワーム状のものならゴカイ)と考えられた。しかし20世紀中期以降では、多くが現存の動物から逸脱した奇妙な姿であると判明し、それまでのカンブリア紀の生物への認識を大きく変えた。
当時、これらの動物は「奇妙奇天烈動物」と呼ばれるほど異質性を強調され、現在の動物の枠組みには当てはまらない独自の系統に属すると考えられた。しかし90年代以降では研究が進み、その多くが現存する動物との根本的な共通点を判明し、それぞれの原始的な種類として認められるようになった。例えばこの動物群の代表格でもあるアノマロカリスとオパビニアが、現在では原始的な節足動物として広く認められるようになっている。
バージェス動物群は発見と研究の歴史が長く、カンブリア紀の動物群として知名度が高いが、似たような構成の動物群は後にも次々と発見され、中国の澄江動物群や、グリーンランドのシリウスパセット動物群など数多く知られている。
主な種類
★が付くものはバージェス動物群に特有。
- アイシェアイア★(葉足動物)
- アノマロカリス(節足動物、ラディオドンタ類)
- アミスクウィア(ヤムシに近い)
- アラルコメネウス(節足動物、メガケイラ類)
- イソキシス(節足動物)
- ウィワクシア(軟体動物)
- エルドニア(不明確)
- オダライア★(節足動物)
- オドントグリフス★(軟体動物)
- オパビニア★(節足動物)
- オレノイデス(節足動物、三葉虫)
- オットイア(エラヒキムシ)
- カナダスピス(節足動物)
- カナディア(環形動物、ゴカイ)
- カンブロラスター(節足動物、ラディオドンタ類)
- サンクタカリス★(節足動物、鋏角類)
- シドネイア(節足動物)
- スタンレイカリス(節足動物、ラディオドンタ類)
- チョイア(海綿)
- ティタノコリス★(節足動物、ラディオドンタ類)
- ディノミスクス(不明確)
- ナラオイア(節足動物)
- ネクトカリス(不明確)
- ハベリア★(節足動物、鋏角類)
- ハルキゲニア(葉足動物)
- ピカイア★(脊索動物)
- ピラニア(海綿)※学名「Pirania」、カナ転写が魚類のピラニア(piranha)と同じ。
- フルディア(節足動物、ラディオドンタ類)
- ペイトイア(節足動物、ラディオドンタ類)
- マーレラ(節足動物)
- メタスプリッギナ★(脊索動物)
- ヨホイア(節足動物、メガケイラ類)
- レアンコイリア(節足動物、メガケイラ類)
- ワプティア(節足動物)