環形動物
かんけいどうぶつ
環形動物門に分類される動物のこと。ミミズ・ヒル・多毛類(ゴカイ、イソメなどの類)が代表的。ウネウネと動くワームであり、身体がリング状の節に分れることから名付けられた。学名「Anellida」も、ラテン語で「小さなリング」を意味する「anellus」由来である。
ユムシやチューブワームなどは前述した体節構造を持たず、かつて環形動物とは別の門と考えられたが、遺伝子解析により、体節構造を退化した環形動物であると判明した。
多毛類は先頭に目があり、節ごとに触角や触手、脚などの肢を持ち、名前の通りふさふさしているが、他のグループではこれらが退化的で体がシンプルな筒状である。
小さいものが多いが、巨大な多毛類「オニイソメ」は1~3m、世界最大のミミズ「メガスコリデス」は3mを超える。
ミミズは陸棲で土中に住み、ヒルは主に淡水性で川などに生息するが、他のグループはほとんどが海洋生物である。
食性は肉食(イソメなど)から濾過摂食(ケヤリムシなど)、腐植食(ミミズ)、吸血(多くのヒル)、寄生(スイクチムシ)まで種類により様々。チューブワームに至っては消化器官が退化し、体内に共生する細菌を介して栄養を得る。
かつてはよく似た体節構造を持つ節足動物や有爪動物(カギムシ)、緩歩動物(クマムシ)に近縁と考えられた。しかし21世紀以降ではそれは間違いであり、環形動物はむしろ軟体動物などに近いことを判明した(詳細は「前口動物」を参照)。
内部系統については、海棲の多毛類ゴカイの間からその他の環形動物のグループが派生したと考えられる。
ミミズとゴカイは釣り餌や肉食ペットの餌として利用されることが多い。ミミズは良質な土を作り上げるため農業での益虫とされる。
多くが見た目で一般に好かれていないが、愛好家にペットとされることもあり、特にケヤリムシはワーム状の本体がチューブに隠れ、外で見える頭の触手が花のように美しいため、サンゴやイソギンチャクと共にアクアリウムで飼育されることが多い。
吸血性のヒルは人間をも狙い、抗凝固の唾液のせいで傷口も長く出血するため、通常は避けるべき厄介な存在であるが、その抗凝固性で手術など医療の分野に活用されることもある。
一部のゴカイは危険を感じると鋭い顎で噛み付いて、ウミケムシは体に毒針がある。これらは種類により激痛が走る危険生物レベルのものもいるため、素手で触れないように注意すべきである。