概要
分節の長い体は偏平で、頭部の後ろにある鋭い顎肢は毒腺をもち、複数の体節から1対の歩脚を備えている。足は取れても脱皮する度に再生する。
「百足」や「センチピード(centipede、百の脚)」などと呼ばれるものの、脚の対数はどの種も奇数であるため、足が本当に100本(50対)ちょうどあるムカデは存在しない。それにほとんどのムカデの脚はその半数の50本(25対)ですら及ばない、102本(51対)超えた種類はジムカデというグループだけである。
ムカデとヤスデ
よくムカデの話題には同じ多足類であるヤスデを引き合いに出されることがしばしば見られるが、ヤスデはヤスデ綱(倍脚綱)に分類される生物で、ムカデとは全く別のグループである。
両者の違いは以下の特徴からなる:
分類 | ヤスデ | ムカデ |
---|---|---|
胴体の形状 | 円柱状 | 扁平状 |
脚の付け根 | 腹側 | 両側 |
脚の対数 | ほぼ1節2対 | 1節1対 |
動き | 遅い | 素速い |
食性 | 主に腐植食性 | 肉食性 |
生態
その全てが肉食で、足が速い、顎肢に毒腺を持っていて、大型のものは非常に強力な毒を備える。毒腺で獲物を麻痺し、主食は昆虫など小動物の他、大型種はトカゲなど小型の脊椎動物を仕留めることもできる。
主に落ち葉の下や石の下など、多湿の環境を好む。そのため、乾燥した場所に長時間いると死んでしまう。
分類
オオムカデ目
ムカデの代表格、一般的にムカデを言及した場合はほとんどのこのグループを示す。タイワンオオムカデ;トビズムカデなどメジャーな種類は本グループに所属する。
脚は通常21~23対、頭部は円盤状、4対の単眼がある。
ジムカデ目
細長い胴体を持つ小型のムカデ、土中に潜む土壌生物である。脚は27対以上ほど多数であり、51対(102本)以上の種類も存在した。頭部は縦長く、眼が無い。
ゲジ目
いわゆるゲジゲジ(ゲジ、蚰蜒)、胴体は短くて脚は極端に細長く、とてもムカデとは思えない姿をしている。脚は15対、頭部は丸くて立体的、1対の複眼がある。
詳しくはゲジゲジを参照。
イシムカデ目
オオムカデによく似ているが、ゲジやナガズイシムカデに近い。脚は15対、頭部は円盤状、多数の単眼がある。
ナガズイシムカデ目
タスマニアとニュージーランドのみに生息する小さなグループ。オオムカデによく似ているがゲジとイシムカデに近い。脚は15対、頭部は縦長く、1対の単眼がある。
人間との関わり
大型のムカデ(主にオオムカデ類)に噛まれると、非常に激しい痛みを伴い、患部が酷く腫れるため、衛生害虫としても知られる。
だがその一方で、火傷や切り傷に効果がある民間薬としてオオムカデ類の油漬けや乾物が作られたり、観賞魚などの餌として冷凍のオオムカデが輸入されて市販されている。また前述の咬害についても、ゴキブリなど他の害虫を捕食するためにムカデが屋内に侵入したことが原因であることを考えると、特に農村部では害虫退治に一役買ってはいる辺りも頭の隅に留めて置いて欲しい。
オオムカデのなかでも特に巨大なものであれば、その毒による被害も大きいため、迂闊に手を出すのは危険である。ちなみに世界最大種はガラパゴスジャイアントと呼ばれるもので、大きいもので50cmを優に越える。日本ではヤンバルオオムカデが最大級の種であり、大きいものでは全長20cmを越える。
文化的側面
「非常に凶暴で攻撃性が高い」というイメージや、「絶対に後ろに下がらない(後退しない)」という俗信から、戦国時代にはムカデにあやかり、甲冑や刀装具等にムカデのデザインを取り入れたり、旗差物にムカデの絵を染め抜いた物を用いた例もある。
また、商家においても「客足が多い」縁起物として扱われることがあった。
「カエルの婿選び」と言う民話でも、「おあし(お金)をたくさん持ってる」と言う理由でカエルがムカデを婿にしたがるというオチがある。
大蛇と並んで妖怪としても扱われることがあり、その一方で毘沙門天の御使いともされる。
ムカデはなんだかんだで龍と関連のある生き物であり、沖縄県の昔話や俵藤太大百足退治では龍を苦しめる役所な一方、ムカデの別名が『天龍』だったりする。(先述の通り、毘沙門天の使いとされるが、同じく使いとされる動物には何の因果か龍と同じ干支であるトラとネズミがいる。)
とまあ、昔話ではこんな風に悪役を務めることが多いが、『ムカデの医者迎え』では足の速さを買われて医者を呼びに行ったは良いものの、足が多すぎて草鞋を履くのに手間取るというコミカルな役所で登場する事も。こらそこ、Gや空飛ぶ昆虫に行かせれば良いとか言わない。
テレビなどの公共のメディアでは
よく気持ち悪い生き物の代名詞として、ゴキブリが挙げられるが、凶暴性、毒を持つという事もあり、ムカデは危険な存在と思われている。また、テレビでは、ゴキブリなどはモザイクがかからないのだが、特に多くの人が見る時間帯の番組では、ムカデにモザイクがかかることも多い(例:アニメ版『男子高校生の日常』他)。グロテスクに思う人が多いことから、苦情が来ないための配慮だろう。
創作におけるムカデ
基本的に凶暴な生物であるため、それが性格に反映されていることが多い。また、古来より力の象徴として描かれたり、体も大きいことから、強い存在として描かれることもある。
虫をモチーフにしたキャラクターや作品には高確率で登場する、メディアでは比較的ポピュラーな存在とも言えよう。しかし外見のグロテスクさや、その強力な攻撃力から、敵対する存在として描かれることの方が多いだろう。
関連タグ
関連作品
ムカデ人間 - ホラー映画
日々我人間 - 伊豆に移住した漫画家桜玉吉の、室内に侵入を繰り返すムカデとの闘争に多くを割かれた私記漫画。
東京喰種 - ヤモリがカネキへの拷問を行う際、ムカデ投入を行った。以降、ある意味でカネキの(覚醒の要因になったトラウマの)象徴になっている。
ムカデをモチーフにしたキャラクター
- ムカデ長老 ムカデ先輩 ムカデ後輩(ワンパンマン)
- ムカデンダー(ウルトラマンタロウ)
- ムカデラス ムカデタイガー(仮面ライダー)
- ムカデヨウキヒ(仮面ライダーX)
- 獣人大ムカデ(仮面ライダーアマゾン)
- ムカデンジン(仮面ライダー(スカイライダー))
- ムカデリヤ(仮面ライダースーパー1・ザ・カゲスター)
- ムカデ怪人(仮面ライダーBLACK)
- ムンデガンデ(仮面ライダーBLACKRX)
- センチピードオルフェノク(仮面ライダー555)
- センチピードアンデッド(仮面ライダー剣)
- 魔化魍ロクロクビ(仮面ライダー響鬼)
- ジオフィリドワーム(仮面ライダーカブト)
- マスカレード・ドーパント(仮面ライダーW)
- ギラティナ(ポケモン。アナザーフォルムの見た目がそれっぽい)
- フシデ ホイーガ ペンドラー(ポケモン。こちらは紛れもなくムカデ。)
- よろいムカデ かぶとムカデ かえんムカデ オニムカデ(ドラゴンクエスト)
- アンクヘッグ レモラーズ ハンドレッグ (ファイナルファンタジー 聖剣伝説)
- ムカデ バイオムカデ(MOTHER)
- 百足お銀(俺の屍を越えてゆけ)
- デビルドーザー(遊戯王)
- ムカムカデ(妖怪ウォッチ)
- ムカーディア(Yes!プリキュア5gogo!)
- マグネ・ヒャクレッガー(ロックマンX2)
- ムカデロン ムガデス(メタルマックス)
- 船虫(映画里見八犬伝)
- 巨大妖虫ムカデラー(魔人ハンターミツルギ)
- 大百足ドグマ(仮面の忍者赤影)
- 朱ムカデ(キカイダー01)
- 吸血ムカデ(変身忍者嵐)
- ムカデ鉄人(東映スパイダーマン)
- ムカデリンガー(ビーファイターカブト)
- ムカデモンガー(太陽戦隊サンバルカン)
- ネジクレボーマ(高速戦隊ターボレンジャー)
- オオムカデ(忍者戦隊カクレンジャー)
- ドレッドレッダー(星獣戦隊ギンガマン)
- ムカデネジレ(電磁戦隊メガレンジャー)
- 首領タウ・ザント マゲラッパ(忍風戦隊ハリケンジャー)
- ムカデンパンジー(爆竜戦隊アバレンジャー)
- 臨獣センチピード拳カデム(獣拳戦隊ゲキレンジャー)
- オオツムジ(侍戦隊シンケンジャー)
- ミイラのゼイ腐(天装戦隊ゴセイジャー)
- 上級妖怪オオムカデ(手裏剣戦隊ニンニンジャー)