蟲の呼吸
むしのこきゅう
しのぶ「頸が落ちていないからといって油断してはいけませんよ」
鬼殺隊が人食い鬼と戦う為に編み出した、一度に大量の酸素を血中に取り込む事で瞬間的に身体能力を大幅に上昇させ、鬼と互角以上の剣戟を繰り出す“全集中の呼吸”の一つ。呼吸は師である育手もしくは剣士自身の我流により、様々な種類が存在する。
蟲の呼吸は、水の呼吸の派生である花の呼吸からさらに派生しており、蟲柱である胡蝶しのぶが編み出した独自の流派だが、他の呼吸と比べるとかなり異色な呼吸と言える。なんと、この呼吸は鬼の頚を落とす事を最初から想定していない。全集中の呼吸は人の身で鬼の頚を落とす為に編み出された技術である以上、これだけでもこの呼吸の異常性が分かるだろう。
ではどうやって鬼を倒すのかというと、その答えは毒である。日輪刀に鬼に有効な藤の花から抽出した毒を仕込み、鬼の体内に注入する事による毒殺、それを目的としてこの呼吸は編み出された。鬼の頚を落とすだけの力を持たないしのぶが、鬼を殺す為に開発した流派であり、彼女は鬼の性質に合わせて毒を調合して戦う。また、物を突く事に対する力と速度を得意とするしのぶの流派である為に、強烈な踏み込みとそれによる神速の突き技に特化した型である。その為に、それを実現するだけの柔軟な体幹の能否が重要になってくる。
ただし、鬼の情報共有能力によって毒の成分が見切られ分解されるという弱点があり最悪の場合は毒を克服しかねないので、調合を変えたり無暗に手の内を見せないと言った対処が必須となる。また、戦闘や相手によってその都度毒の調合を変える必要がある為に、当然ながらこの毒について専門知識を持った者しか扱う事はできない。即ち事実上しのぶ本人しか使えない型であり戦闘手段なのである。
オリジナルの剣技である為か、獣の呼吸と同じく技は「○ノ型」ではなく「△ノ舞」と名付けられているのも特徴で、頚を落とす必要性が存在しない為に、上記の通り斬撃ではなく彼女が得意とする刺突技を主としている。それに伴い、日輪刀も根元と切っ先だけを残して刃引きした、刺突剣に近い形状のものとなっている。ちなみに彼女の日輪刀の鞘の内部は、毒を貯蔵して調合や種類を現場で変えられるような仕組みになっており、その仕組みはしのぶと担当刀鍛冶である鉄地河原鉄珍しか知らない。
対応する日輪刀の色は藤色なのだが、刃の殆どが刃引かれている為に分かり難い。使い手が“柱“に就任した場合の肩書は「蟲柱」。エフェクトはそれぞれの技に対応した半透明の虫。
- 蝶ノ舞 戯れ(ちょうのまい たわむれ)
空高く跳躍し、蝶が舞う様に滑空めいた身軽な動きで翻弄した後、視認できない程の速度で敵の身体を複数回突き刺す。
アニメにおいてはエフェクトが超強化。蝶の群れが通り過ぎたあと、残った一匹の蝶に触れた相手の体が腐食していく幻覚の直後にしのぶの刺突が炸裂するという演出となっている。
……もはや幻術の類いである。
- 蜂牙ノ舞 真靡き(ほうがのまい まなびき)
強烈な踏み込みにより一瞬で相手との距離を詰め、蜂の毒針の如く敵を刺し貫く技。
その突きの速さは、上弦の鬼である童磨が手で受け止められない程である。
- 蜻蛉ノ舞 複眼六角(せいれいのまい ふくがんろっかく)
近づきざまに目にも止まらぬ速度で六方向からの連続突きを放つ。
一度に大量の毒を注入する為、しのぶの決め技と言ってもいい。蜻蛉とはトンボの事。
- 蜈蚣ノ舞 百足蛇腹(ごこうのまい ひゃくそくじゃばら)
地面を抉る程の力強い踏み込みと四方八方にうねる百足のような動きで相手を撹乱した後、その隙を狙い深く沈みこんでから敵の懐を穿つ。蜈蚣とはムカデの事。
『公式ファンブック鬼殺隊見聞録・弐』の斬られ心地取材では、蟲の呼吸は「小さいから舐めてたのよ、突きの攻撃だしね」「今まで経験したことのない部類の痛み」「毒の説明された時の絶望感やばい」「いいじゃない可愛いんだから許してあげなよ」だそう。
他の大半の呼吸同様、鬼からは恐怖の対象として見られる事が多い蟲の呼吸だが、最後に答えた相手は斬られ心地ではなく使い手への感想である。自重してくれ。
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