全集中の呼吸
ぜんしゅうちゅうのこきゅう
漫画・アニメ『鬼滅の刃』に登場する、鬼殺隊士達が必須技能として習得する特殊な呼吸法。
超越生物である人喰い鬼と渡り合える程に身体能力が強化され、そこから各“型”に沿った剣術を繰り出すことによって、岩塊よりも硬い鬼の頸をも斬り落とす事が可能となる。
あくまでも人間が身に付ける“技術”である為に、骨身を削りながら修練を重ねる以外に習得方法は無い。
鬼が使う、人喰いなどの要因によって突如目覚める“異能”、血鬼術とは対極に位置すると言える。
ただし、それを本当に習得できるか、あるいは習得した後にどこまで昇華できるかは、個々人の才能と努力次第であり、人によって使える呼吸のレベルは異なる。鬼殺隊士であっても必ずしも呼吸を完全に使いこなせる訳ではなく、知識はあっても技術としてそれを体得・昇華できない者も少なくない。剣の技量や呼吸のレベルが低い剣士は日輪刀の色も肉眼で分からない程に薄くなる。
主人公・竈門炭治郎の場合は、呼吸や型を修めるのに2年(実質1年半)かかっている。最初の1年で呼吸や型を知識として覚え、それから半年は師匠が指導を終わりにした事もあって殆ど進歩がなかったが、最後の半年間にイレギュラーなサポーター達に指導して貰ったおかげで無事に体得できた。
また、呼吸を体得した剣士は鬼になり難い事が分かっている。強い剣士である程に鬼になるのに時間が掛かり、稀に鬼にならない体質の者すらもいるらしい(詳細な理由は不明だが、後述する呼吸による身体強化や身体操作に伴う体質変化の影響だと思われる)。
元鬼殺隊の剣士だったとある鬼は、多くの血を鬼舞辻無惨から貰った上で、完全に鬼になるまでに丸3日もかかったという(ちなみに獪岳と彼はいずれも人間時代の記憶や人格を保っているが、これにも呼吸が関係しているのかは不明)。
無惨が鬼殺隊士を鬼にする事に消極的な理由はこれであり、上記の呼吸の剣士を鬼をして以降は無惨自身は呼吸の剣士を鬼にする事には完全に興味を無くしており、基本的には上弦が推薦してきた自ら鬼になる事を望むような者を、気まぐれで鬼にする程度である(尤もそんな剣士は殆どいないが)。
唯一数分で鬼化した例外もあるが、これについては無惨が死ぬ間際に自身の全ての細胞と血液を送り込み、対象者がそれを許容できた結果なので、当然ながら他にそんな実例は存在しない。
著しく増強させた心肺により、一度に大量の酸素を血中に取り込む事で、血管や筋肉を強化・熱化させて瞬間的に身体能力を大幅に上昇させる特殊な呼吸術。
当然ながら相応の負荷を使用者の体に強いる為に、基本的には戦闘時のみ使用する。この呼吸によって身体能力を強化した状態で、各々の流派に従った型(技)を以て、鬼と戦う。
鬼殺の剣士の基本且つ奥義でもある。
通常の全集中の呼吸よりさらに地道かつ過酷な鍛練の積み重ねにより、睡眠時を含む四六時中全集中の呼吸を維持し続ける、身体活性化の高等技術の一つである。
特に肺に負担が掛かる全集中の呼吸を常時行う為に、子供と同じくらいある巨大で硬い瓢箪を息を吹き込むだけで破裂させられる程度には呼吸器系を鍛えなければ、全集中の呼吸を常時維持する事はできない。故にこれが体得のスタートラインである。
一応、実際に肺活量を鍛える似たような訓練法があるが、此方は500mlペットボトルを使う(破裂する程やれば呼吸器系に過負荷が掛かり痛めるので厳禁)。
作中において炭治郎は常に全集中の呼吸を意識しながら、日中に刀の素振り、屋敷の庭でランニング、岩を使った筋力トレーニングなどの、かつて師である鱗滝左近次に課された修行メニューを、夜は酷使した肺を休める為に座禅を組んでゆっくりと呼吸する、という鍛錬でこれを体得した(三人娘達に、就寝中に全集中の呼吸が止まっていた場合は布団叩きで叩くよう依頼もしていた)。
ちなみにこちらも、当然だが体得・昇華できるか否かはやはり個々人の努力と才能次第であり、指導者無しだったとはいえ炭治郎は安定するまでに約1ヶ月かかったのに対して、胡蝶しのぶに指導があったとはいえ、我妻善逸と嘴平伊之助は僅か9日で体得している。
体得に成功すれば新陳代謝が活性化し、増大した肺活量に肉体が対応するので身体能力がさらに向上し続ける。突然強くなったりするような技術ではなく、効果が上がる迄には相応の年月と鍛錬を必要とするが、順当に鍛錬を重ねて常中を維持すれば、日ごとに着実に強くなっていける。
応用発展として、酸素を取り込む事で血管の一本一本に至るまで意識をめぐらせて、血管や筋肉を収縮させて傷口を閉じたり、心臓を一時的に強引に止めるなどの身体操作が行えるようになる。
これらの身体操作の技術は、当然ながら高位の剣士程より深く精通しているが、特に当代の柱達の身体操作能力はかなり高位のものであるらしく、実際に目撃した上弦の鬼や始まりの呼吸の剣士その人である上弦ですら「人間にできる芸当ではない」として驚愕している。
全集中・常中について、蟲柱・胡蝶しのぶは「会得には相当な努力が必要だが、初歩的な技術」、炎柱・煉獄杏寿郎は「“柱”への第一歩」と述べており、全集中の呼吸が通常の剣士にとっての基礎であり奥義とするなら、常中は柱級の剣士にとっての基礎であり奥義と言えるだろう。
基本となる呼吸(及び剣術)の流派として炎・水・風・岩・雷の五系統を、他の流派はここから派生している。特に炎と水は歴史が古く、煉獄曰く“炎柱”と“水柱”はどの時代にもいたという。実際に作中でも、炎柱と水柱だけは現役の柱と元柱の両方が登場している。
また、煉獄家にある書物によれば、全ての始まりとなったのは炭治郎の家で代々伝えられている“ヒノカミ神楽”の基になったとされる“日の呼吸”であり、他の呼吸法は全てその派生であるという。
元々は、上記の五系統の名を冠するただの剣術の流派に過ぎなかったが、始まりの剣士がそれぞれの流派を極めた当時の柱達に、彼らの適正毎に呼吸法を変えて指導した結果、剣技と呼吸法がセットになった全集中の呼吸という形になり、今現在まで受け継がれている。
後に炭治郎が師である鱗滝から聞いた話によれば、剣士が己の適性に合わせて使っている呼吸を変える事や新しい呼吸を派生させる事はよくある事らしい。
水の呼吸
どんな形にもなれる水のように変幻自在な歩法で、如何なる敵にも対応できる柔軟な型。基本的には受けを重視した型であり、唯一鬼に苦痛を与えず安らかに死なせる技があるのも特徴。五大流派の中では炎の呼吸と並んで歴史が古く、いつの時代にも“柱”がいた。技が基本に沿ったものである為に型の数も多く、ここから派生した流派も多い。最も多くの隊士に使われている流派でもある。
雷の呼吸
身体の寸法や筋肉の一つ一つを把握し認識することで高速の移動や斬撃を繰り出す型。脚に一番意識を集中させることで、雷鳴の如き動きと速度を生み出す。
炎の呼吸
脚を止め力強い踏み込みから、間合いを一気に詰めての強力な斬撃が多い攻めの型で、変幻自在の脚運びを主とする受けの型である水の呼吸とは対照的である。主に煉獄家が一子相伝で伝えてきた流派であり、五大流派の中でも水の呼吸と並んで歴史が古く、やはりいつの時代にも“柱”が存在したという。
岩の呼吸
岩のように頑強な防御に長け、筋力に物を言わせた荒々しさが特徴の攻守に優れた型。足さばきや体さばきによって技の威力を底上げする他の呼吸法と違い、単純な力押しであるが故に弱点が少ない呼吸である。しかし、強力な筋力を持つ事が前提である為に使い手の数も最も少なく、一つの流派として堅実すぎるが故に派生した流派も少ない。
風の呼吸
暴風のように荒々しい動きから鎌鼬のように斬り刻むのが特徴の攻撃特化の型。また、他の呼吸は剣士が纏うオーラや気迫が雷や炎等のイメージとして可視化されるだけだが、この呼吸だけは単なるイメージではなく、剣技によって起こした鎌鼬状の風が実際に殺傷力を持って敵を攻撃する。
日の呼吸
現在の全ての全集中の呼吸の源流となった、始まりの呼吸。
基本流派 | ||||
---|---|---|---|---|
呼吸(読み) | 源流 | 柱の呼称 | 日輪刀の色 | 呼吸音 |
水(みず)💧 | 日☀ | 水柱(みずばしら) | 青🔵 | ヒュゥゥゥゥ |
雷(かみなり)⚡ | 日☀ | 鳴柱(なりばしら) | 黄色🟡 | シィィィィ |
炎(ほのお)🔥 | 日☀ | 炎柱(えんばしら) | 赤🔴 | |
岩(いわ)🪨 | 日☀ | 岩柱(いわばしら) | 灰色⚪ | ゴウゴウゴウン |
風(かぜ)🍃 | 日☀ | 風柱(かぜばしら) | 緑🟢 | シイアアアア |
派生流派 | ||||
呼吸(読み) | 源流 | 柱の呼称 | 日輪刀の色 | 呼吸音 |
蛇(へび)🐍 | 水💧 | 蛇柱(へびばしら) | 青紫 | |
花(はな)🌸 | 水💧 | 花柱(はなばしら) | 桃色 | フゥゥゥ |
蟲(むし)🦋 | 花🌸 | 蟲柱(むしばしら) | 藤色 | |
音(おと)🎶 | 雷⚡ | 音柱(おとばしら) | 橙色 | |
恋(こい)💖 | 炎🔥 | 恋柱(こいばしら) | 赤紫 | |
霞(かすみ)💭 | 風🍃 | 霞柱(かすみばしら) | 白 | フウウウウ |
獣(けだもの)🐗 | 風🍃 | 不明 | 藍鼠色 | カァァァァ |
その他の流派 | ||||
呼吸(読み) | 源流 | 柱の呼称 | 日輪刀の色 | 呼吸音 |
日(ひ)☀ | なし | 不明 | 黒⚫ | ゴオオオオ |
月(つき)🌙 | 日☀ | 不明 | 紫🟣 | ホオオオ |
鬼滅の刃が社会現象となるほどに大ヒットし国民的な作品となった事に伴って、全集中の呼吸も注目され「現実に全集中の呼吸(或いはそれに近い呼吸)はできるのか?」「もしできればどんな効果があるか?」といったことがファンの間で語られ始め、やがては呼吸法自体に関心が向けられるようになった。
そんな中、2020年5月19日に出版社アスコムが、自社から発行されている順天堂大学の医学部教授である小林弘幸医師の著書『自律神経を整える「長生きの呼吸」』を参考に、全集中の呼吸にある「呼吸によって血液中の酸素濃度を高める」事が現実に可能なのか検証したところ、小林医師が語るにはゆっくりと深く呼吸をすれば取り込まれる酸素量が増え、酸素を全身の細胞に運ぶために血流量もアップし細胞の活性化に繋がる。それにより呼吸のやり方によって本当に体の回復を早くさせたり、力を引き出したりする事ができるという。
また、小林医師曰く人が無意識にしている呼吸は1日2万回以上にも及ぶにもかかわらず、殆どがいい加減に呼吸してしまいがちだと指摘しており、呼吸の質の良し悪しで様々な体調不良の原因となっているという。もし、上述した『全集中・常中』のように、質の良い呼吸を24時間続けられるようになれば、呼吸しているだけで病気や不調を遠ざけてくれるとの事で、医学的な健康法として本当に世間的に注目されてきている。
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異能の力によって超常的な現象を引き起こす血鬼術とは違って、あくまでも身体能力を強化するものとそれによる剣技である為に、水や雷と言った自然物を操ったり、それらを物理的に出しているという訳ではない。あくまでも剣士達が呼吸を用いて技を繰り出した際に、太刀筋が剣士達の気迫やオーラによって水や雷や火を纏って戦っているかのように見える、というだけである(読者への演出という訳ではなく、物語中でも実際にそう見えている)。
アニメ版ではUfotableの変態技術による浮世絵風のエフェクトが用いられ、特に第19話のヒノカミ神楽は、作者も驚愕する程に美麗なものとなった。
ちなみに、単行本17巻おまけページで「剣士達は水などを出しているのではなく、見ている人がそう感じる、そう見えるというだけです」と改めて解説されている。加えて、そうしたエフェクトがはっきり出せるのは「型を使いこなしている証」でもある為に、才能に乏しい隊士の場合は、一応は出せるが日輪刀の色と同様に薄すぎて見えないという悲しい結果になる。
この設定は、コラボ先の自然物を操る術(魔法)が普通に存在する世界へ迷い込んだ時もしっかりと維持されており、鬼殺隊(煉獄杏寿郎)の戦闘中の動きを見た向こう側のキャラは「炎のような踏み込み」と言っており、実際には炎は出ていない様子が窺える。
『鬼滅の刃』炭治郎の「水の呼吸」「ヒノカミ神楽」は実在する技がある? 武術のプロに聞いてみた:エキサイトニュースより。現実でも再現ができる本格的なものとなっている。試す場合は自己責任で
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