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獪岳

かいがく

獪岳とは、漫画・アニメ『鬼滅の刃』の登場人物である。
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「消えろよ」
CV:細谷佳正

概要

吾峠呼世晴による漫画『鬼滅の刃』の登場人物。

我妻善逸の回想にて存在が示唆されていた善逸の兄弟子。善逸とは、元“”の桑島慈悟郎の下で共に雷の呼吸の流派の修行を積んでいた間柄。
当初は名前が不明だったため、読者からは善逸に桃を投げつけていた姿から「桃先輩」という仮称で呼ばれていた。

桃先輩



師匠である慈悟郎のことを「先生」と呼び熱心な努力家で修行に励む雷の呼吸の継承者。
その一方で冷淡なところもあり、雷の呼吸の型を一つしか使えず泣いてばかりの逃亡常習犯の善逸を嫌い、何かと暴力的な言動をとっていた。善逸の回想シーンでは「先生がお前に稽古をつけてる時間は完全に無駄だ!!」だと善逸にきっぱりと告げ、剣士を辞めるように責め立てている。

兄弟子であることから善逸より早く鬼殺隊に入隊している模様。階級や入隊後の動向は一切不明。

『無限城決戦』編にて

落書き


相変わらず貧相な風体をしてやがる 久しぶりだなァ善逸

黒死牟によってとなり、鬼舞辻無惨配下の精鋭、十二鬼月の一人として登場。
敗死した堕姫妓夫太郎に代わって"上弦の陸"の座を与えられ、その席位に従い右目に「上弦」、左目に「陸」の文字が刻まれていた。
無限城での決戦にて、対面を望んでいた善逸と遂に対峙する。

彼の日輪刀は黄色であり、鎬に稲妻のような文様が入っている。この特徴は善逸の日輪刀と重なっており、彼も善逸同様”雷の呼吸”への高い適正があることがわかる。慈悟郎も善逸に「獪岳を見習え!!」「兄弟子のようになれ!!」と檄を飛ばし、善逸も獪岳を嫌ってはいたものの、自分とは違いひたむきな彼を尊敬していた。そして、その背中を見ていつか肩を並べて共に戦うことを願っていた。

しかし、善逸への発言からわかるように、獪岳は決して”良い兄弟子”ではなかった。
その性格は「自分の才能を正しく評価する者が善で、自分を正しく評価出来ない者が悪」という台詞からわかるように傲慢で独善的。彼は真面目で努力家であるが故に、”自分は認められて当然だ”という強い承認欲求を抱えていた。
弟弟子の善逸を露骨に見下し蔑み、自分も素質に偏りがあったにも関わらず、己の才能を絶対視していたこと。そして、それが認められない現状に勝手に不満を募らせることから、善逸とは違う方向の問題児の側面も見受けられる。

善逸はそんな彼を「どんな時もアンタからは不満の音がしてた 心の中の幸せを入れる箱に穴が空いてるんだ」と評している。

過去

彼は“岩柱”悲鳴嶼行冥が心を閉ざす原因となったとされる。
かつて、悲鳴嶼が多くの孤児と共に住んでいた頃の話で『ある子供が、言いつけを破って夜に出歩いていた時に鬼と遭遇し、自分一人が助かるために鬼に悲鳴嶼と他の子供を売った』という事件が起こった。
その回想シーンで、ビジュアルの類似性と身勝手な行動から、その時の子供こそ、慈悟郎に拾われる前の獪岳ではないかという推測もなされていた。その後、原作17巻にてそれが獪岳本人であると明言された。
事件の真相は、寺の金を盗んだことが他の子供達にバレ、彼らから責め立てられた末にその日の夜に追い出され、遭遇した鬼に彼らを売ったというものであった。
子供達は悲鳴嶼に気を揉ませまいとしたのか保護者に相談もなく追い出した後ろめたさからか、獪岳は寝ていると嘘を吐き、悲鳴嶼自身も目が見えないこともあり鬼に言われるまで獪岳がいない事に気づかなかった。
彼が寺での生活についてどう思っていたかは不明だが、悲鳴嶼の回想シーンや単行本のオマケページでは食事や悲鳴嶼に頭を撫でられた時に屈託なく笑っている場面が描かれ、師匠である慈悟郎や善逸と暮らしていた時と違う面も見せている。

善逸は獪岳のことを「クズ」と評し、その苛烈な性格から確かに嫌っていた。それでも、善逸にとってたった一人の兄弟子であり、上述したように、彼の”雷の呼吸”の継承者としての確かな才能とその弛まぬ努力を尊敬しており、他の隊員が彼を馬鹿にしていた時は殴りかかった事がある(当の本人からは、『問題起こすなカスが』『お前みたいなのがいるのは本当に恥だぜ』と吐き捨てられているところにすれ違いがある)。また、善逸は修行場を離れた後も獪岳にまめに手紙を送り、心の底では「兄貴」と呼んでいた。しかし、それが獪岳の心を満たすことはなかった。

獪岳が善逸を嫌っていた最大の理由は、善逸の性格とは別のところにある。

善逸が“雷の呼吸・壱ノ型”しか使えなかったのに対し、獪岳は“雷の呼吸・壱ノ型”だけが唯一使えなかったのだ。

そのことから、師匠である慈悟郎は二人を共同で”雷の呼吸”の後継者にしようと考えていた。
しかし、獪岳は弟弟子と自分が同列に扱われるのが我慢ならず、善逸が贔屓されていると考えていたのだ。実際は慈悟郎は獪岳と善逸を平等に慈しんでおり、揃いの羽織まで渡している(残念ながら獪岳がその羽織に袖を通すことはなかった)。
獪岳が善逸ばかり贔屓されていると感じたのは、自分には出来ない壱の型が使える嫉妬や、善逸が甘えたがりで慈悟郎に懐いていたからだと考えられる。

そんな獪岳の運命の分岐点は十二鬼月最強の鬼、"上弦の壱"黒死牟に遭遇してしまったことである。良くも悪くも一般人的な感性を持っていた彼にとって、黒死牟の存在は目にするだけで恐怖と絶望感を与えるものであった。その圧倒的な力に追い詰められて彼に土下座をしてまで命乞いをした結果、それを聞き入れた黒死牟によって提案されたのは鬼への勧誘。
そして獪岳は、恐怖に震えながら無惨の血を摂取。その結果、人を貪る鬼へと変貌してしまった。

末の逆説



……生きてさえいればいつかは勝てるという彼の考えによって、惜しくも自分の命を捨ててまで相手に立ち向かおうという考えに行くことはなかった

最期

そして、無惨の本拠である無限城にて善逸と対峙することとなる。鬼化したことで精神の歪みが加速したのか、善逸が伝えた弟子に鬼を出した不始末の償いとして自刃を選んだ慈悟郎のことも侮辱する。しかし、善逸は一言の元に吐き捨てた。

雷兄弟


善逸
俺がカスならアンタはクズだ
壱ノ型しか使えない俺と壱ノ型だけ使えないアンタ
後継に恵まれなかった爺ちゃんが気の毒でならねぇよ
獪岳
テメェと俺を一緒にすんじゃねぇ!!!
死んで当然なんだよオオ!! 爺もテメェもォオ!!
俺を正しく評価し認める者は“善”!! 低く評価し認めない者が“悪”だ!!

善逸との戦いでは、雷の呼吸に加えて鬼化で得た相手の体を崩壊させる血鬼術を組み合わせた技で、善逸に致命傷に近い傷を負わせる。しかし、善逸が他ならぬ「いつか獪岳と肩を並べて戦うため」に編み出した漆ノ型によって頚を刎ねられる。

鳴



散々見下していたはずの善逸が、自分だけの新たな型を生み出す。そして、自分がその技を受けて敗北する。その事実を受け入れられない混乱の中で、力尽きた善逸も死ぬ以上負けではないとほくそ笑む。
だが、そこに愈史郎と他の隊士が駆けつけて善逸を救出する。そして、愈史郎から今までの自分勝手な言動に対する嘲りと哀れみの言葉を浴びせられる。

鬼滅の刃筆絵「村田さんと獪岳」


あらゆるものを踏みにじってまで保とうとしていた己の自尊心が覆しようのない形で折れていく事実に、もはや声にならない断末魔を上げながら消滅した。

一応上弦の陸という位を与えられていたものの、ですらない善逸一人に倒されるという他の上弦の鬼と比較すると明確に格落ちする呆気ない最期であった。言わば補欠合格のような形で上弦の地位を得たに過ぎないことからこの噛ませっぷりも仕方のない所がある。

それでも愈史郎いわく“善逸が生き残れたのは獪岳がまだ自分の術や能力を使い熟せていなかったから”という事情もあり、"もし戦いが一年後であったら善逸は即死していただろう"とフォローはされている(実際、獪岳同様血鬼術と全集中の呼吸を融合させた闘技を使う黒死牟の無双振りを見れば、愈史郎の評価も納得が行く)。

戦闘能力

血鬼術 / 全集中"雷の呼吸"

雷兄弟


雷の呼吸と血鬼術を組み合わせた技を使う。血鬼術により刀の斬れ味が強化され、呼吸の演出も善逸と異なり黒い雷になっている。
その斬撃を喰らうと体に亀裂が奔り、肉体を罅(ひび)割り続ける。

  • 弐ノ型 稲魂(いなだま)

雷の呼吸 弐ノ方


瞬きの間に行われる高速五連撃。

  • 参ノ型 聚蚊成雷(しゅうぶんせいらい)
標的の周囲を回転しながらの波状攻撃。

  • 肆ノ型 遠雷(えんらい)

雷の呼吸肆ノ型


詳細不明。劇中の描写からおそらく壱ノ型と同系統の踏み込みからの斬撃と思われる。

  • 伍ノ型 熱界雷(ねっかいらい)
皮膚を!!肉を!!罅割って焼く斬撃だ!!

雷の呼吸伍ノ型


下から上へ斬り上げる。その威力は受けた善逸が天井に激しく衝突するほど。

  • 陸ノ型 電轟雷轟(でんごうらいごう)
喰らった斬撃はお前の体で罅割れ続ける

電轟雷轟


詳細不明。劇中の描写では空中で放たれ、受けた善逸は体の至る場所に斬撃を喰らった。

総評

今まで鬼になったことで精神が歪んでしまった者や、鬼と出会って人生が一変してしまった者はいたが、鬼と出会う前から心の空白が明言される人物は彼が初めてである。

鬼になる前から「自分さえ良ければいい」という心情の元、多くの人物の心を傷つけ、死に追いやり、その事を一切悔いずに果てた事は到底許されない。
過酷な子供時代の影響から「生きてさえいればいつかは勝てる」と考えており、悲鳴嶼の寺での回想や、黒死牟と出会い鬼となったことからもそれがわかる。

人間的に未熟な部分も、素晴らしい部分も理解しようとしていた善逸と慈悟郎の本心を見抜けず、「泣き虫なお前と努力している自分を一緒にされたくない」「自分の才能や努力を評価してほしい」という強い承認欲求の末、二人を裏切り、獪岳は鬼となった。
更に言えば獪岳の行為によって被害を受けた悲鳴嶼や責任をとって切腹した慈悟郎も憐れみこそすれ、決して獪岳を恨んだり、責める言動はしていない。
理解者であった周囲の人について、思いやることなく自分を理解してほしいと願い、その欲望のまま生きた結果、獪岳は誰にも認められることなく最期を迎えることとなったのである。

よって、結論から言うと獪岳がエゴイストであるのは確かで善逸の台詞の通り「クズ」であったこのは否めない。
更に言えば自身の力だけに執着し逆に自分の過度な自己中心性という短所に向き合わずに自分を絶対視した傲慢さも彼を破滅に追いやったといえるだろう。

ただ寺を追い出された事や彼の末路は自業自得そのものだが、鬼と出会ったのは偶然である(より細かく言えば、その地域では鬼の驚異の伝承が根強く残り、藤の花の香炉で夜は自衛する風習があった危険地域であったので、子どもたちに自覚は無かったとはいえ『夜に藤の花の香炉の効果外に追い出す』ことは誰にとっても不幸を招く行動だったとも言える)。また、いくら鬼殺隊に入隊した後とはいえ黒死牟と出会ったことに関しては不幸としか言いようがない。
寧ろ、彼の人生を大きく分けた二回の選択の機会に提示された選択肢はどちらも「自分が死ぬか、或いはそれ以外の誰かが死ぬか」という究極の二択だった。
「他の命を犠牲にしてでも自分の命を守って生きる」というのは必ずしも間違った行動とは言えないが、真の過ちは愈史郎の言った通り、彼自身が自分の命を守ることだけに固執し、他者に分け与える事を拒んだ結果が巡り巡って運命を決めたとも言えるだろう。

罅




余談

  • 公式ファンブック「鬼殺隊見聞録」にて無惨による上弦への評価では他の鬼への評価は全て判明しているものの、発売時期の影響か獪岳のみ無惨からの評価が判明していない。
  • 彼や悲鳴嶼の運命を大きく変えた寺での盗みの行動であるが、理由や動機は描かれおらず、その場面以外に彼が金銭に関心を持った場面も一切描かれていないため、何を思って盗みを働いたかは劇中では明かされていない。現実において、『試し行動』と呼ばれるわざと保護者を困らせる行動を行って愛情を確かめようとする、特に子供に多く見られる心理・行動があるが、彼の行動がそれだったのかは不明。


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